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2025/03/17

コーヒーブレイクストーリー::数字の先にあるもの::

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コーヒーブレイクストーリー::数字の先にあるもの::
  「この会社、買う価値ありますかね?」  会議室の片隅で、三浦は資料をめくりながら呟いた。買収を検討しているのは、創業50年の製造業。売上は年々下降気味。社長は高齢で、後継者はいない。典型的な事業承継案件だ。  「資産価値はあるが、収益性は微妙ですね」  隣の席で財務担当の佐伯が冷静に言う。「設備は老朽化しているし、社員の平均年齢も高い。コストがかかる割に、成長の余地があるかどうか…」  三浦はため息をついた。買っても負担が増えるだけ。数字だけ見れば、そういう判断になる。  「けど、この会社、すごい技術持ってるんですよ」  会議室の奥でパソコンを叩いていた新人の高橋が、突然口を開いた。「他じゃ作れない部品を作ってるんです。航空機とか、精密機械のパーツ。これがなくなったら困るメーカー、結構ありますよ」  三浦は資料をめくった。確かに、特許技術を持っている。しかし、現場は古参の技術者たちに支えられ、新しい人材はほとんど入っていない。  「つまり、技術はある。でも、それを継ぐ人がいない」  佐伯が腕を組んだ。「社長が引退したら終わりですね」  「じゃあ、終わらせなきゃいいんじゃないですか?」  高橋が真っ直ぐこちらを見た。「設備を入れ替えて、若手を採用して、技術を残せるようにすればいいんです」  三浦は鼻で笑った。「言うのは簡単だよ。そんなにうまくいくか?」  その時、会議室のドアがノックされ、仲介アドバイザーの岸本が入ってきた。細身のスーツを着こなし、落ち着いた表情で資料を手にしている。  「村井社長からの連絡がありました。直接会いたいとのことです」  三浦は驚いた。「そんなに前向きなんですか?」  岸本は軽く頷いた。「ええ。彼は会社を売るというより、技術を残す方法を探しているようです。通常のM&Aとは違うアプローチが求められるかもしれません」  佐伯が眉をひそめた。「しかし、条件が合わなければ意味がありませんよ」  岸本は静かに笑った。「だからこそ、私たちがいるんですよ。企業価値を数字だけで測るのは難しい。でも、適切な形に整理すれば、Win-Winの着地点を見つけられるかもしれません」  三浦は少し考えた。確かに、M&Aは単なる数字のゲームではない。譲渡側の想い、買収側の意図、そこにアドバイザーが加わることで、より良い解決策が生まれる。  「……一度、話を聞いてみましょう」  岸本はスマホの返信画面を開き、村井のメッセージを再確認した後、ゆっくりと入力した。  “お時間をいただきます”  数字だけでは測れない価値がある——そう岸本は心の中でつぶやいた。
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