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会社売却とは?M&Aのポイントや成功事例、IPOとの違いも解説

2023年05月21日

昨今、M&Aを行う企業は増加傾向にあります。安心して会社を売却するにはどのような点に注意すればよいのでしょうか。会社を売却する側の目線で、売却のメリットやデメリットを解説していきます。会社売却を検討している経営者の方は、参考にしてみてください。

 

 

 

会社売却とは

会社売却とは、会社を第三者に売り渡すことを指します。M&Aも同様の意味ですが、M&Aは「Mergers(合併) and Acquisitions(買収)」の略であり、譲受企業(買収する側)の目線の言葉です。一方で「会社売却」は、譲渡企業(事業や株式を売却する側)に立った言葉として使用されます

また、会社売却の手法は、「株式譲渡」と「事業譲渡」の2つに分けることができます。以下で、詳しく見ていきましょう。

 

株式譲渡

株式譲渡とは、会社の株式を譲渡し、会社を売却することを指します。株式譲渡ではもともと譲渡企業の株を持っていた株主が、保有する株式を、譲受企業に譲渡します。これにより譲受企業は、譲渡企業を子会社化することができ、株主は株式譲渡による対価を受け取ることができます。

譲渡企業の会社組織を譲受企業がそのまま引き継ぐため、原則として従業員や資産は譲受企業の手元にそのまま移行します。同様に、負債もそのまま譲受企業のもとへ移行することとなります。

 

 

事業譲渡

事業譲渡とは、会社が行う事業のうち一部を売却することを指します。会社自体が売却されるわけではないため、事業譲渡によって生じた利益は会社の利益として計上します。

売却時に従業員や資産等を移行させるのは株式譲渡と同じですが、事業譲渡の場合は、譲渡対象の事業の従業員・資産のみを引き渡すケースが基本です。

特定の事業のみを選んでやりとりすることができるのは、双方のメリットでしょう。譲渡企業にとっては、続けたい事業を手元に残しておくことができます。また、譲受企業にとっては、負債などを踏まえた上で譲り受けたい事業のみを選び取れるため、リスクを回避しやすくなります。

ただし事業譲渡は、対象となる資産・債務負債・雇用関係などを移行する手続きを、一件ずつ個別に行わなくてはならないため、株式譲渡に比べて手続きが煩雑である傾向にあります。また、対象事業に不動産が含まれる場合は、登記手続きも必要となります。

 

 

M&Aで会社を売却する6つのメリット

会社売却に踏み切る企業は増加傾向にあります。大企業だけでなく、中小企業にも動きは広がっています。

では会社を売却すると、企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、以下の6つのメリットを解説します。

1. 会社の後継者を見つけられる

2. 売却利益を得られる

3. 倒産を免れ会社を存続させられる

4. 買い手企業とのシナジーによる成長が期待できる

5. 経営者保証を解除できる

6. 会社売却の事実が経営者としての評価につながる

 

 

 

1.会社の後継者を見つけられる

後継者不足に悩む企業は増えており、東京商工リサーチが行った『2020年「後継者不在率」調査』によると、2020年の企業の「後継者不在率」は57.5%にものぼりました。

これは前年より1.9ポイント上昇した数値であり、多くの企業が後継者探しに奔走していることがうかがえます。これには少子高齢化により、後継者となる若い世代が少なくなっているという背景があります。

また、かつては当たり前とされてきた「子が親の事業を継ぐ」という状況が当たり前ではなくなってきたことも、後継者不足の要因になっていると考えられます。

後継者が見つからない場合、やむを得ず廃業という選択をする企業があります。しかし廃業してしまうと、従業員が職を失うだけでなく、取引先が連鎖倒産するなどの悪影響も考えられます。また、事業を終わらせてしまうことに強い戸惑いや葛藤がある経営者も多いでしょう。

そのような場合、会社売却をして第三者に事業を承継することができれば、廃業は免れます。そして商品やサービスを世の中に残すことができるだけでなく、従業員や取引先を守ることができます。

 

 

 

2.売却利益を得られる

会社売却をすれば、企業価値に応じた売却利益を得ることができます。会社の資産価値によって額はもちろん左右されますが、会社売却によってまとまった資金を手に入れられるケースが多いです。

仮に売却による利益が多くないという場合でも、廃業に伴う建物の取り壊し・処分を考えると費用の節約になる場合があります。廃棄費用がかさむと事業資金は手元にほとんど残らず、場合によっては手持ちの資金を越えてしまう可能性もあります。

しかし、会社売却という手法を取れば、建物をはじめとする資産を譲渡企業にそのまま引き継ぐことができ、廃業費用の心配をなくすことができます。

 

 

3.倒産を免れ会社を存続させられる

会社を倒産せずに存続させられるのは、経営者にとって大きなメリットです。負債を抱えていて倒産の可能性がある会社は売却先が見つかれば、倒産を免れます。

株式譲渡なら負債を譲受企業へ引き渡すことができ、事業譲渡も事業の一部を現金化することで財務状況に余裕を生じさせることにつながります。

また、財務状況を健全化することができれば、残りの現金で新規事業への投資に活用することによって会社を立て直すことが可能です。

 

 

4.買い手企業とのシナジーによる成長が期待できる

買い手企業とのシナジーが生まれることで、会社の成長につながる可能性があるのもメリットです。良いパートナーに巡り会えた場合は、買い手企業の事業と相乗効果が生まれます。自社だけで事業を進める場合よりも、さらに大きな成果をあげることで、会社の財務基盤を強化できるのです。

もちろん、売却すれば、すべての企業間でシナジーが生まれるわけではありません。自社の強みを活かし、事業を加速させられるような相手を見つけることが大切です。

 

 

5.経営者保証を解除できる

経営者保証とは、経営者が会社の保証人になることです。金融機関からの融資を受ける際に、個人保証人として経営者の名前が設定されることがあります。もし個人保証人になっている場合は、金融機関からの支払い請求に応じなくてはならないため、経営者自身の生活にリスクが及ぶ契約です。

しかし会社を売却すれば、原則は個人保証も買い手企業に移行することになり、個人保証人に設定されているという経営者にとっては、会社売却はリスクの観点からも大きなメリットとなります。

 

 

6.会社売却の事実が経営者としての評価につながる

会社を売却するということは、「買収したいと思うほど評価される事業を営んでいた」ということでもあります。価値のある事業を行い、それが評価されて売却した場合は、会社売却の事実が経営手腕の証明につながるのです。

このように、会社売却をすることで、M&Aを経験したアントレプレナーとして、高く評価される可能性があります。

 

 

 

M&Aで会社を売却する3つのデメリット

M&Aを検討する際は、メリットだけでなくデメリットも考慮しなければなりません。
会社売却によって発生するデメリットとしては、以下のとおりです。

1. 売却後も一定期間は事業に関わらなければならない

2. 同じ事業領域に一定期間携われなくなる

3. 買い手を見極めないと失敗するリスクがある

 

ここでは、M&Aで会社を売却する3つのデメリットについて説明します。

 

 

1. 売却後も一定期間は事業に関わらなければならない

会社を売却しても、経営陣が事業に関わり続けなくてはいけないという規則が定められる場合があります。この規則はロックアップと呼ばれ、売却した事業が売却後に立ち行かなくなってしまうことを防ぐためのものです。

例えば、売却時に事業の責任者が抜けてしまうことで利益が減るということがあれば、譲受企業は、買収金額に見合う効果を得られないことになります。それを回避するために、譲渡企業の経営陣が残ることで、体制をしっかりと構築する期間が必要です。

ロックアップが設定されている場合、会社を売却してもすぐに仕事が手離れするということにはなりません。一定期間であっても、残留して拘束されることに不自由を感じる経営陣はいるでしょう。会社を売却したらすぐに別事業を始めたいと計画している場合も、計画を始めるまでに数年を要することになる可能性があります。

 

 

 

2. 同じ事業領域に一定期間携われなくなる

譲渡企業は、同じ事業領域の業務を行うことに制約が課せられます。この制約は競業避止義務」と呼ばれ、会社売却の制約後に譲渡企業のみに課せられる義務です。

競業避止義務の目的は、譲受企業の事業に対して競合する事業を、譲渡企業が行ってしまうことを防ぐことです。これは、譲受企業の利益を保護する目的で生まれた義務で、譲渡企業がすぐに同じ事業を始めてしまうと、譲受企業にとっての脅威となり、M&Aの意味合いが変わるためです。

具体的には、同一市町村、または隣接する市町村では同一の事業を20年間行ってはいけないとされています。年数は最大30年まで期間延長することが可能です。競業避止義務は会社法21条にて明確に定められているため、会社売却の契約に盛り込まれていないという場合でも、会社法によって制約が課せられることに注意が必要です。

 

 

3. 買い手を見極めないと失敗するリスクがある

会社売却は、買い手をうまく見極めないと、失敗してしまうリスクがあるのが難点です。売却後は、買い手が経営権を握るため、経営方針や雇用条件、労働条件の変更、取引先との契約内容の変更など、買い手によって売却後の命運が左右されます。売り手と買い手双方の認識の齟齬から、売却後にトラブルが発生する可能性もゼロではありません。

M&Aは、しばしば結婚にたとえられます。買い手を探す際は、以下のようなポイントに注意し、自社に合うパートナーを見つけましょう。

・自社と企業理念がマッチするか・こちらが求める資本力・規模を有しているか

・売却により、今後の成長が期待できるか

・相応の売却額を提示してくれるか

・従業員の雇用やそのほかの条件について保証してくれるか

 

 

 

 

会社売却に関する3つの疑問

会社売却に踏み切った場合、社長や社員にはどのような影響が起こりうるのでしょうか。また、商号や取引先はどうなるのでしょうか。基本的には経営権を持つ買い手次第ですが、事前に希望を表明したうえで、買い手探しを行うことも可能です。

ここでは、会社売却でよくある3つの疑問について解説します。

・会社売却後の社員や社長はどうなるのか

・会社売却後の商号はどうなるのか

・会社売却後の取引先はどうなるのか

 

 

 

会社売却後の社員や社長はどうなるのか

後継者が見つからず、会社を承継したいという理由で売却をした場合、多くの経営者は売却後に引退を希望します。売却すると、資金を得ることでその資金で悠々自適に余生を過ごしたいと考えるためです。もちろん、新たな趣味や事業にチャレンジするというケースも多くあり、第二の人生を楽しむことができます。

なお、契約によっては売却後も社長や役員として残ることは可能です。譲渡企業の希望によっても、引継ぎ期間を長く設定するなどで、一定期間会社に残り続けなくてはならないケースもあります。双方の要望をすり合わせて選択していくことが重要です。

 

社員の雇用契約は、経営者ではなく会社に紐づく契約であるため、会社が存続する以上は、雇用契約も継続することになります。国が定めた労働契約承継法では、会社を転籍するとなった場合に転籍後も同じ雇用条件になるように社員を保護することが定められています。法で守られているため、売却による雇用条件の悪化などの悪影響は避けることができます。

ただし売却のかたちによっては、社員が行う仕事の内容や進め方が大きく変わる可能性もあり、従業員のためにも契約時には丁寧に確認・交渉をする必要があるでしょう。

なお、売却をきっかけに社員が退職を願い出るというケースも考えられます。その場合は、もちろん希望に応じて雇用契約を断つことになります。

 

 

会社売却後の商号はどうなるのか

会社売却後に、売り手企業の商号をそのまま残す(続用)ことも可能です。基本的に、商号を変えるかそのまま残すかの決定権限は、新しい株主である買い手企業にあります。買い手が売り手の希望に応えれば、商号はそのまま残ります。

商号を残したい場合、買い手探しの段階から、条件として「社名・ブランド名を維持したい」と伝えることが可能です。希望を伝えれば、その条件を前提に交渉を進められます。

 

 

 

会社売却後の取引先はどうなるのか

取引先との関係性を継続するかについても、買い手次第です。基本的には、買収した企業の価値をより高め、相乗効果を生み出すために必要な取引先については、継続して取引を続ける傾向にあります。有力な販路だった企業から取引を停止されて困るのは、買い手企業であるためです。

取引先との関係性を継続したい場合は、商号と同様に、買い手探しの段階で条件として「取引先との関係性継続」という希望を伝えておきましょう。

 

 

 

会社売却の進め方

会社売却は、M&Aの専門家にサポートしてもらいながら進めるのが基本です。M&A専門会社と契約して会社売却を実施する際は、以下のステップで進めましょう。

《会社売却の進め方》
1. M&A専門会社と契約する
2. 自社の情報を整理し資料を作成する
3. 買い手企業を探す
4. 買い手企業と交渉を進める
5. デューデリジェンスを受ける
6. 最終契約を締結する

 

ここでは、会社売却を進めるステップについて解説します。

 

 

 

1.M&A専門会社と契約する

M&Aを検討したタイミングで、M&A専門会社に相談しましょう。

会社売却を実施するためには、企業価値の評価や税務・法務など、専門的な知識が必要です。さらに、買い手と直接契約すると、売り手にとって不利な契約でM&Aが進行し、条件や金額をめぐってトラブルが発生するリスクが考えられます。

そのため、客観的にM&Aをサポートしてくれる仲介会社かアドバイザリー会社と契約するのが一般的です。

 

 

 

2.自社の情報を整理し資料を作成する

専門会社との契約後、自社に関する詳細な説明資料を作成します。これをIM(インフォーメーション・メモランダム)といい、財務データや取引先、組織体制など、会社関係者以外は知り得ないような情報が記載される重要な資料です。

IMは、買い手候補が買収を決意するか否かを判断する材料となります。IMの作成にあたって、M&A専門会社の担当者に多くの資料を提出したり、インタビューを受けたりすることが必要です。

 

 

3.買い手企業を探す

IMを作成したら、いよいよ買い手企業を探す段階に入ります。M&A専門会社が、買い手候補を数十社程度リスト化します。売り手はそこから興味のある企業を5~10社程度に絞り込み、M&A専門会社が個別にアプローチを開始する、という流れです。

幅広くアプローチする段階では、売り手の情報が漏洩しないよう、社名や具体的な情報は伏せたまま探すのがポイントです。その後、興味を示した買い手候補が現れたら、買い手と売り手双方が秘密保持契約を結んだのち、自社のIMを開示します。

 

 

4.買い手企業と交渉を進める

買い手候補が売りに興味を持ち、M&Aの交渉を本格的に進めることになった場合、買い手から売り手にLOI(意向表明書)を提出します。LOIは、買収の対価や支払方法、買収後の経営方針や条件を記載したものです。

LOIを提出した買い手候補の中から、売り手が1社を選び、いよいよ本格的な交渉に入ります。この時点で独占交渉権が発生するケースが多いです。

 

 

5.デューデリジェンスを受ける

買収に相応しい企業であるかを判断されるために行われるのが、デューデリジェンス(DD)です。デューデリジェンスでは、以下のような項目について調査が行われます。

「デューデリジェンスの項目」
事業DD
財務DD
法務DD
労務DD
ITDD
人事DD
など

 

デューデリジェンスは、正式な企業価値評価やM&Aを実施するリスクの明確化、経営統合に向けた準備などを目的に行われ、M&Aを円滑に進めるためには不可欠です。公認会計士や弁護士など専門家の協力を得ながら、1~2ヵ月ほどかけて進めます。

 

 

6.最終契約を締結する

デューデリジェンスで問題がなく、売り手と買い手双方が合意したら、最終契約を締結して終了です。株式譲渡の場合は株式譲渡契約書、事業譲渡の場合は事業譲渡契約書を交わします。最終契約書には法的拘束力があり、この締結をもって、はれてM&Aが成立します。

成立後に、従業員や取引先などにM&Aの事実を公表するのが一般的です。M&A成立後は、スムーズに統合できるよう、PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)を実施します。

 

会社売却を成功させるための3つのポイント

関係者に対して多大な影響を与えることになる会社売却ですが、だからこそ「絶対に失敗できない」という思いで慎重になっている経営者も多くいるでしょう。

安心して売却するためには、正しい知識のもとで進めていくことが重要です。ここからは、会社売却を成功させるための重要なポイントを見ていきましょう。

 

 

1.会社売却は業績好調の際に行う

会社売却は、業績が好調なときに決断するのが重要です。業績が右肩上がりというタイミングで売りに出せば、より高い企業価値になると考えられるためです。反対に売上や利益が少ない状態で売却に踏み切ると、売却価格や企業価値が下がってしまう可能性があります。

事業が好調なタイミングで売却に出すのは難しい判断です。しかし、経営にかげりが見えはじめた状況でマッチング先を探しても相手が見つからないことがあります。いい条件で売却成立ができるようにタイミングを見計らいましょう。

 

 

2.事業にあった売却先候補を見つける

自社事業とのシナジー効果の高い会社に売却をすることも重要なポイントです。どのような相乗効果が考えられるのか、幅広く精査していきましょう。

また事業内容だけでなく、企業文化の相性についても事前に検討しておく必要があります。買い手企業との関係は売却して終了ではなく、従業員をはじめとする多くの人が今後も長く関わることになります。売却後の経営についての考えも、事前に確認しておくとよいでしょう。

より好条件での契約を実現させるためには、買い手の候補をできるだけ多く探すことも大切です。多くの候補の中から選ぶことで、最高のパートナーに出会える可能性が高まります。

 

 

3.会社売却はM&Aのプロに相談して進める

会社売却を行う場合、多くのケースでは、譲受企業と譲渡企業の間に仲介業者を置きます。スムーズな会社売却のためには専門的な知識が必要となるためです。専門知識を持っていない担当者同士が単体で交渉してしまうと、トラブルの原因となります。金銭のやりとりが滞ったり、契約条件の認識にずれがあって揉めたりというケースが、実際に起こっています。

そんなトラブルを回避するためには、M&Aのプロに頼むことが1つの手段です。安心できるというメリットだけでなく、相場よりも高い価格での売却が実現する可能性もあります。さらにプロは豊富なネットワークを有しているため、自分では探せないような理想的な買い手を探してもらうことができます。

 

 

 

IPO(新規上場)と会社売却(M&A)の比較

出口戦略(イグジット)としては、大きくIPOとM&Aによる会社売却の2パターンが考えられます。

IPOでは、証券市場に株式を上場させ、株式を売却して利益を得ることで、イグジットを実現させるのがポイントです。一方、M&Aでは第三者に会社を売却し、その対価として利益を得ることでイグジットします。

アメリカではM&Aによるイグジットが多い一方、日本では、IPOの割合が大きいのが特徴です。ここでは、IPOとM&Aのメリット・デメリット、それぞれが適しているケースについて解説します。

 

 

IPOと会社売却(M&A)のメリット・デメリット

IPOと会社売却(M&A)のメリット・デメリットをまとめると、以下のとおりです。

メリット デメリット
IPO ・株主に配慮する必要はあるものの、経営の自由度はある程度担保される
・市場からの多くの資金調達ができる
・上場企業となることで社会的信用が高まる
・準備に時間やコストがかかる
・上場のハードルが高い
・敵対的買収のリスクがある
M&A ・基本的には株式がすぐにキャッシュになり、多くの創業者利益を確保できる
・上場に比べると準備にかかるコストが少なく済む
・事業が小規模だったり、成長性が見込めなかったりなど、上場基準に満たない場合でもM&Aなら実行できる可能性が期待できる
・経営権は買い手企業に移るため、経営方針や組織体制などが大きく変化する可能性がある
・買い手企業を見極める必要がある
・M&A後の統合作業(PMI)を怠ると失敗してしまうリスクがある

 

双方のメリット・デメリットを理解して、出口戦略としてどちらを選択するべきか検討しましょう。

 

 

IPOが適しているケース

出口戦略としてIPOが適しているケースは、以下のとおりです。

・引き続き経営者として事業に関与し続けたい場合

・組織体制や経営方針などをあまり変化させたくない/従業員や取引先への影響を抑えたい場合

 

IPOとM&Aの大きな違いは、IPOでは経営者が株主として会社に残り、事業に関与し続けられる点です。M&Aでは、株主として残ることはほとんどなく、基本的には経営権を手放すことになります。

IPOにより、外部の株主が経営に関わることもありますが、基本的には組織体制や経営方針などをあまり変化させることなく、経営を続けられるのもポイントです。

 

 

 

会社売却(M&A)が適しているケース

一方、以下のようなケースでは、会社売却(M&A)が適しています。

・外部の株主が入ることを防ぎたい場合

・準備の時間や費用負担をなるべくかけずにイグジットしたい場合

・保有する株式をまとめて現金化したい場合

・さまざまなスキームの中から、自社に合うスキームを柔軟に選びたい場合

 

M&Aの大きな特徴は、IPOに比べて短期間で実行できる点と、保有する株式を一気に現金化し、まとまった金額を得られる点です。経営権を買い手に委ねて退任したい場合や、短期間でリターンを得たい場合に適しています。

 

 

 

会社売却の成功事例

最後に、会社売却に成功した事例を2つ紹介します。

◎会社売却で企業価値の向上に成功した企業事例

◎事業譲渡で利益の獲得に成功した企業事例

 

納得のいく相手に巡り合い、自社の成長を実現できるようなM&Aを叶えるためには、然るべき準備が必要です。会社売却や事業譲渡の成功事例を参考に、余裕を持ってM&Aに取り組み、準備を進めましょう。

 

 

会社売却で企業価値の向上に成功した企業事例

レストランやホテルなどの予約サービスを展開するA社は、2016年、ある大手インターネット関連企業に対して会社売却を実施しました。

A社が会社売却を行った目的は、買い手が運営する検索エンジンからのユーザー流入です。また、会社売却によって事業を補完できる可能性も期待されました。A社の予約サービスは、高級ホテルやレストランが中心です。一方、買い手が運営していた宿泊予約や飲食店予約サービスは、ビジネスホテルや日常的に使えるレストランを対象にしていました。双方の手薄な領域を補完し、事業を成長させられるというのも、会社売却が実施された理由の1つです。

会社売却の結果、1株あたりの純資産額が増加し、A社は企業価値の向上に成功しました。

 

 

事業譲渡で利益の獲得に成功した企業事例

大手製薬会社のB社は、2021年、2型糖尿病治療薬4製品の販売事業をある製薬企業に売却しました。事業譲渡で利益の獲得に成功した事例です。

B社は、過去に海外の製薬企業を買収し、多額の長期借入金を負っていました。借入金を返済して負債比率を低下させるため、過去にも事業売却を何度も行っています。

製薬業界では、特許が切れると価格競争が激しくなり、売上が大きく低下するのが特徴です。そのため、B社は製薬ポートフォリオの入れ替えを頻繁に行っていました。

この事業譲渡で、B社は多額の特別利益を計上し、利益の獲得に成功しています。

バトンズでの事例①システム開発会社の会社譲渡

1件目は、WEBサービスの受託開発を行うIT企業の事例です。スタートアップ企業に特化して受託開発をしていた本企業は、質の高いエンジニア/デザイナー集団として、3期連続の黒字経営を続けていました。

一方、社員がそれぞれバラバラのプロジェクトに取り組んでいることで、会社の仲間と一緒に何かに取り組んでいるという感じがなくなっていたことから、「良いサービスを展開していて、エンジニア不足の会社と手を組めば、世の中に役立つサービスに一丸となって取り組めるんじゃないか」というところから、M&Aを検討。

最終的に、資格試験予備校を中心とした、教育事業をメインに事業展開を行う会社に全株式を譲渡し、完全子会社化として事業参画することになりました。

インタビュー記事はこちら▼

 

バトンズでの事例②130年以上続く総合小売事業の引継ぎ

2件目は、130年以上地域に愛されてきた小売業の事例です。創業以来、5世代に渡って親族内承継を続けてきましたが、5代目の社長が2014年に事業を受け継いだとき、すでに経営状態は悪く、20期連続の赤字・債務超過状態にありました。しかし、社長の真摯な取り組みが奏功し、5年後には債務超過を解消するまでに回復をしました。それでも、親族や従業員の中からは引き継ぐ先が見つからなかったため、売却を決意することとなりました。

インターネットのマッチング支援サイトを7〜8ヵ所ほど利用し、引き継ぎ先を探しました。相手先探しのこだわりはただひとつで「本気で事業を良くしたい」という強い意志があるかどうかでした。

結果、バトンズを通して中小・ベンチャー企業向けに経営支援を行う企業に出会い、熱心で数字を重視した経営を行える理想的な相手先だったことから安心して納得いく事業の引き渡しができました。

インタビュー記事はこちら▼

 

バトンズでの売却事例はこちら▼

 

まとめ

会社売却は、後継者問題の解決や倒産回避のための有効な手段です。タイミングや譲渡先の探し方など、本記事で紹介したポイントを押さえて納得の会社売却を実現しましょう。

経験を積んだプロの力に頼ることができれば、安心して会社売却を進めることができます。知識の少ない担当者間で進めてしまうと、確認すべき事項が抜けてしまうなど、トラブルに発展する可能性があるため、専門家の知識を借りることがおすすめです。

バトンズを利用すれば、日本全国の士業・コンサルタントを中心とした約1,200社の中から、最適な専門家を紹介することができます。また、費用の安さや制約までの速さも特徴的です。失敗のない本気のM&Aを目指す場合は、累計マッチング数10万件という豊富な売却実績があるバトンズに、ご相談ください。

 

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