運送業界は、 M&Aの需要が高まっている業界のひとつです。その背景には、後継者不足や2024年問題などさまざまな理由があり、事業規模の大小問わず、各地域でM&Aが活発化しています。
また、公的機関や金融機関のバックアップやM&Aプラットフォームの台頭により、M&Aのハードルが下がっていることも要因として考えられます。
本記事では、運送業界の現状と動向に触れながら、運送業がM&Aを行うメリットや注意点、実施方法について解説していきます。
運送業とは
運送業とは、トラックなどの車両を利用して物を運ぶ業務のことを指します。
運送業と物流業の違い
物流業とは、生産者から消費者にモノを届けるまでの業務全般のことを指します。物流業に関わる会社は、商品の輸送だけでなく、倉庫での保管や荷役、包装や流通加工、物流情報処理などの役割も担っているのが特徴です。物流における保管・荷役・包装・流通加工・運送の5つの機能は「物流5大機能」と呼ばれており、最近ではこれに情報を加えて「6大機能」と呼ばれることもあります。
運送業の分類
総務省が提供する日本標準産業分類では、運輸業は下記の分類に分けられます。
大分類【H-運輸業、郵便業】 | |
---|---|
中分類 | 小分類 |
鉄道業 | 鉄道業 |
道路旅客運送業 | 一般乗合旅客自動車運送業〔431〕 一般乗用旅客自動車運送業〔432〕 一般貸切旅客自動車運送業〔433〕 その他の道路旅客運送業 |
道路貨物運送業 | 一般貨物自動車運送業〔441〕 特定貨物自動車運送業〔442〕 貨物軽自動車運送業〔443〕 集配利用運送業〔444〕 その他の道路貨物運送業 |
水運業 | 外航海運業〔451〕 沿海海運業〔452〕 内陸水運業〔453〕 船舶貸渡業 |
航空運輸業 | 航空運送業〔461〕 航空機使用業(航空運送業を除く) |
倉庫業 | 倉庫業(冷蔵倉庫業を除く)〔471〕 冷蔵倉庫業 |
運輸に附帯するサービス業 | 港湾運送業〔481〕 貨物運送取扱業(集配利用運送業を除く)〔482〕 運送代理店〔483〕 こん包業〔484〕 運輸施設提供業〔485〕 その他の運輸に附帯するサービス業 |
郵便業(信書便事業を含む) | 郵便業(信書便事業を含む) |
参考:国税庁「日本標準産業分類からみた事業区分」
運送業界の現状・課題
2024年問題
2024年問題とは、働き方改革法案によりドライバーの労働時間に年960時間の上限規制が適用されることで生じる問題のことを指します。
トラックドライバーは長時間労働が慢性化しているため、労働環境を良くしようという目的で働き方改革関連法が2024年4月より適用されます。運送業界のホワイト化を目指した改定になりますが、これにより以下のような課題が生じることが予想されています。
事業者 | ・1日に運べる荷物の量が減り、収入が減少する可能性 ・ドライバーが確保できない可能性 ・ドライバーの離職につながる可能性 |
荷主企業 | ・必要な時に必要なものが届かない可能性 ・輸送を断られる可能性 |
消費者 | ・人件費が増加し、配送料が増加する可能性 ・翌日配達などが受けられなくなる可能性 |
これらの課題を解決する手段のひとつが、M&Aです。M&Aによって人材を確保できたり、積載効率の最適化をはかることができるといったメリットがあります。
トラックドライバーの不足
ドライバーの人材不足は、運送業界が抱えている課題のひとつです。国土交通省が提供する「物流を取り巻く現状と課題」によると、2021年時点でトラックドライバーが「不足」「やや不足」していると回答した企業の割合は54%となっており、半数以上の企業が不足を感じているというデータとなっています。
参考:国土交通省「検討の背景②物流を取り巻く現状と課題」
データ上では、2018年の70%をピークに、2020年には39%と一気に低下していますが、これは新型コロナウイルス感染症拡大による緊急事態宣言により、物流に一時的な影響があったためであると考えられます。
人材不足は運送業だけでなく、各業界で課題となっています。その中でも運送業は、トラックドライバーが免許必須であることや、副業等で取り組むことが難しい業界であるため、より正社員の人材の必要性が高くなります。
人材不足を解決する手段の一つに、M&Aがあります。M&Aでは、会社ごとドライバー人材を確保することができるため、即戦力を獲得することが可能になります。
M&Aプラットフォームのバトンズでは、トラック運送業の譲渡案件が600件近く登録されています。(一部非公開案件あり)
従業員の高齢化
運送業は中高年層男性の割合が多くを占めています。厚生労働省の統計によると、令和4年において40歳未満の割合が23.9%、40~50歳未満の割合が27.4%、50歳以上の割合が48.8%となっており、年々高齢化が進んでいます。
参考:全日本トラック協会「日本のトラック輸送産業 現状と課題2023」
女性人材の不足
女性労働者の不足は、運送業界が抱える課題のひとつです。国土交通省の提供する資料によると、運送業の女性の割合は2.5%と、全産業と比較して低い状況となっています。
その背景には労働環境の問題があり、女性用トイレや更衣室の不足や、育児との両立がしづらい課題などが挙げられます。企業によっては、制度や環境整備に力を入れることで、女性進出を推進しているところもあり、女性が働きやすい会社が求められています。
単価の下落と燃料費の上昇
国土交通省の提供する資料によると、軽油・ガソリンの価格は年々上昇傾向にあります。近年では、コロナ禍やロシア・ウクライナ情勢の問題といったさまざまな理由による燃料価格の高騰が考えられますが、それにより運送業界は大きな影響を受けています。
運送業界の市場動向
全日本トラック協会が提供する「日本のトラック輸送産業 現状と課題2023」に記載された「トラック運送事業の営業収入の推移」(※国土交通省の資料参照)によると、物流事業全体の市場規模はおよそ29兆円。そのうち、トラック運送事業の市場規模は、令和元年度において19兆3,576億円となっており、物流市場全体の約7割を占めています。
参考:全日本トラック協会「日本のトラック輸送産業 現状と課題2023」
トラック運送事業者数の推移
全日本トラック協会の提供する資料によると、トラック運送事業者数は貨物自動車運送事業法施行以降、トラック運送事業の規制緩和によって新規参入事業者が急増。年々右肩上がりに推移し、平成19年度末の総事業者数は1.5倍以上の6万3000者を超える数値となっています。
新規事業者が急増したことで、結果として事業者間の競争が激化。以降は、これまでの推移と比べるとおおよそ横ばいに推移しており、新規参入事業者数も徐々に減少傾向となっています。
🔹トラック運送事業者数の推移(単位:者)
資料:国土交通省 (注):退出事業者数には、合併・譲渡により消滅した企業を含む。
参考:全日本トラック協会「日本のトラック輸送産業 現状と課題2023」
有効求人倍率の推移
国土交通省が提供する「物流2024年問題について(2023年9月20日)」によると、トラック運送業の有効求人倍率は、コロナ禍の一時的な下落を除いて上昇傾向にあります。
参考:国土交通省「物流2024年問題について(2023年9月20日)」
日本では、人口減少・少子高齢化によりさまざまな業界で人材不足が進んでいますが、トラック運送業の有効求人倍率は全職業平均より2倍ほど高く、より人材不足が深刻であることがわかります。
国内貨物輸送量の推移
国内貨物の輸送量は、トンベースで自動車が9割超、トンキロベースでは自動車が約5割、内航海運が約4割、鉄道が5%程度となっています。(※) 2020年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響により減少となっていますが、翌年には上昇傾向を示しています。
(※)トンベースは、輸送した貨物の重量(トン)の合計。トンキロベースは、輸送した貨物の重量(トン)に、輸送距離(キロ)を乗じたもの。
参考:国土交通省「我が国の物流の革新に向けた取組みの動向(2024年3月25日)」
年間所得と労働時間の推移
トラック運送事業における年間の労働時間は、全職業の平均より約2割(400〜450時間)長いというデータとなっています。また、年間賃金のグラフを見てみると、トラックドライバーの年間賃金は全産業平均より5%〜15%(20万〜60万円)低いという数値を示しています。
これらのデータから、トラックドライバーは他産業と比較して「低賃金で長時間労働を強いられている」産業であり、これらの解決にはM&Aを含めた抜本的な解決が求められます。
参考:国土交通省 中部運輸局自動車交通部「物流2024年問題について」
EC業界の拡大と宅配事業の推移
国土交通省が提供する「令和3年度 宅配便等取扱個数の調査及び集計方法」のデータによると、宅配便(※)の取り扱い数は過去30年で急増中。今後も上昇推移をすることが見込まれます。一方、、人手不足と働き方改革関連法に基づいた時間外労働の上限規制により、物流における課題はより深刻化していくことが予想されています。
(※)宅配便の定義は参考URLに記載
燃料価格の推移
グラフからもわかる通り、燃料価格は上下落を繰り返しており、先行きは不透明な状況となっています。直近では、ウクライナ情勢の長期化による影響を受け、軽油価格の高止まりが続いています。
これらの燃料価格の推移は、小規模事業者をはじめとする運送業に大きな影響をもたらすでしょう。
運送業界のM&A動向
運送業界は、M&Aが大きく増加している産業のひとつです。その背景には、経営者の高齢化や2024年問題への対応などが挙げられます。レコフデータによると、物流業界のM&Aは2024年1〜6月期で57件、前年同期の40件から42.5%増加し、同期間で最多を記録しています。
参考:MARR Online「『物流業界のM&A動向(3)』 中小企業から大企業へ、再編の波高まる」
業界再編
運送業界のM&Aは中小企業だけではありません、レコフデータによると、2024年1〜6月期に行われたM&A57件のうち、上場企業が売り手となるM&Aが4件。大企業同士のM&Aが複数件行われており、業界再編の波が高まっています。
参考:MARR Online「『物流業界のM&A動向(3)』 中小企業から大企業へ、再編の波高まる」
経営者の高齢化
会社の経営を継ぐ人がいない「後継者不在」の問題は、業界全体の大きな社会課題となっており、運送業界も例外ではありません。帝国データバンクの調査によると、2023年時点の社長の平均年齢は60歳を超えており、50歳以上の割合は年々右肩上がりに増加しています。業界別に見ると、運輸業は60.3歳となっており、平均年齢が高い業界のひとつといえます。
参考:帝国データバンク「全国「社長年齢」分析調査(2023 年)」
ドライバーの獲得
全国商⼯団体連合会付属中⼩商⼯業研究所が実施した「運送事業者の実態アンケート」によると、「トラックドライバーの時間外労働の上限が年間 960 時間以内となることにより懸念されることはなにか」という質問に対し、「ドライバーの確保」の回答が最も高い61.6%を示しており、労働の改善においてドライバーの確保が重要な課題であることがわかります。
参考:全国商⼯団体連合会付属中⼩商⼯業研究所「運送事業者の実態アンケート」
ドライバーを確保するためのひとつの方法として、M&Aが挙げられます。M&Aでは、ドライバーの即戦力を獲得できるだけでなく、その会社がもつ取引先や拠点なども同時に引き継ぐことができます。
それにより、効率的な輸送の実現に繋がり、結果としてドライバーの労働時間問題も解決できる可能性があります。
M&Aプラットフォームのバトンズでも、さまざまな理由でM&Aを検討する運送事業者が登録されています。とくに、経営者の高齢化が進んでいる昨今、事業を次世代に引き継ぐためにM&Aを検討する事業者も多く登録しています。
DX化の推進
経済産業省では、産業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進に向けて、様々な施策を展開しています。運送業においては、荷主・物流事業者における物流効率化の推進に当たり、「デジタルサービスの活用」は有効な手段の一つとし、物流の2024年問題解決に向けて推奨を促しています。
しかし、デジタルサービス導入にはコストや工数がかかったり、サービス管理やマネジメントを行う人材がいないなど、さまざまな理由で導入が難しい中小企業が一定数いるのが現状です。そのため、DX化をすでに進めている企業の傘下に入ることで、会社のDX化を進めることも有効な手段として考えられます。
参考:経済産業省「荷主・物流事業者のための物流効率化に資する『物流デジタルサービス』事例集」
運送業界におけるM&Aのメリット
運送業を買収・売却する目的はさまざまです。
以下では、運送業におけるM&Aのメリットについて解説します。
運送業界におけるM&Aのメリット:譲受(買収)側
・拠点の獲得
トラック運送の生産性向上において重要なポイントは、「1回の稼働でどれだけ効率よく荷物を運ぶことができるか」という点です。新たな物流拠点を確保することで、配送ルートの選択肢が増え、効率的に荷物を運ぶことに繋がります。
また、中継地点を構えることで、ドライバーの交代を行うことができ、長時間労働の削減にも繋がります。
参考:国土交通省自動車局貨物課 令和2年:中継輸送の取組事例集
・配送業務の効率化
配送業務の効率化を目的にM&Aを検討する会社もあります。M&Aにより新たな取引先との接点を持つことで、既存の配送ルートや配送スケジュールの見直しなどを行い、荷物を積んでいない走行距離を減らすことで実車率を上げる、積載率を高めることで配送効率を上げるといった配送業務の効率化が実現できます。
・ドライバーの確保
前述の通り、トラックドライバーは多くの企業で不足しています。M&Aを行うことで、実務経験があるドライバーを確保することができれば、採用プロセスをカットすることができ、人材不足の解消にも繋がるため、大きなメリットであるといえます。
運送業界におけるM&Aのメリット:譲渡(売却)側
・後継者問題の解決
M&Aによって、後継者問題を解決することが可能です。運送業は、拠点やトラック、取引先の確保など、さまざまな理由で買収検討をしている企業が多く、M&Aの需要が高まっています。
・従業員の雇用維持
廃業を選択した場合、従業員は仕事を失ってしまいます。年齢が若ければすぐに新しい職場を見つけられる可能性は高いですが、年齢を重ねていると同等の条件で再就職先を探すのは厳しくなるかもしれません。
株式譲渡では、会社と従業員の間の雇用契約は維持されます。そのため、労働契約法16条が適用され、解雇できるケースはかなり限定的となります。
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
前提として、M&Aを行う買収企業の多くは、従業員を含めた資産価値を評価してM&Aを決断します。そのため、ほとんどの企業が従業員の雇用を維持したいというのが通常であり、M&Aは従業員の雇用を維持するためにも有効な手段であるといえます。
・経営基盤の安定化
自社より大きい企業の傘下に入ることで、事業の安定化が見込めます。収入アップや福利厚生が手厚くなるなど、目に見える変化は従業員のモチベーション向上に繋がります。
・譲渡益の獲得
廃業を選択した場合、廃業費用がかかってしまいますが、M&Aを行うことで譲渡対価を得ることができます。譲渡対価を得ることで「譲渡資金で新しいビジネスを始める」「別の事業の投資に回す」「売却益を得て老後資金に充てる」など、さまざまな目的に資金を活用することができます。
・個人保証の解除
個人保証とは、企業が金融機関から融資を受ける際に、経営者個人が連帯保証人となることです。保証人の責任等について、民法第446条では以下のように定義されています。
保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。
参考:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
M&Aで会社の保証ごと譲受企業に引き渡すことで、個人保証が解除できるといったメリットがあります。
参考:中小企業庁「経営者保証」
M&Aプラットフォームのバトンズには、運送業を営む約1500社の買い手候補企業が登録そており、日々多くのマッチングが成立しています。
運送業界におけるM&Aのデメリット・注意点
譲受(買収)側のデメリット・注意点
・簿外債務等を引き継ぐリスク
簿外債務とは、貸借対照表に記載されていない債務のことを指します。本来、企業が抱える負債は貸借対照表に記載する必要がありますが、買掛金や引当金といった負債が何らかの事情で貸借対照表に記載されない場合があり、M&Aにおいて大きな論点となり得ます。
株式譲渡などの包括承継を実施する場合、簿外債務や偶発債務ごと引き継ぐ形になるため、デューデリジェンス(DD)を十分に行い、事前に精査することが重要となります。
・従業員が流出するリスク
M&A後に、従業員が退職するケースもあります。とくに、M&A直後は従業員はさまざまな不安を抱えているかもしれません。「解雇通知を出されないか」「給与を下げられないか」「信用できる社長なのか」など、ネガティブな思考になってしまっている可能性もあるため、M&A実施後すぐに譲渡側の従業員一人一人とコミュニケーションをとり、前向きな会話ができるよう心がけることが重要となります。
・許認可の引継ぎができない可能性
前述の通り、運送業は国からの許認可が必要になります。運送業は人を運ぶ「旅客運送」と荷物を運ぶ「貨物運送」の2種類に区分され、許認可の種類は「一般旅客自動車運送事業」「特定旅客自動車運送事業」「貨物軽自動車運送事業」に大別されます。
【許認可の種類】
一般旅客自動車運送事業
⇨他人の需要に応じて、有償で、自動車(3輪以上の軽自動車及び2輪の自転車を除く)を使用して貨物を運送する
特定旅客自動車運送事業
⇨単一特定の荷主の需要に応じ、有償で、自動車を使用して貸物を運送する(荷主の輸送を代行する事業といえる)
貨物軽自動車運送事業
⇨不特定多数の荷主の貸物を、有償で、軽自動車を使用して輸送する
M&Aで許認可の引継ぎができない場合があります。例として、事業譲渡を行う場合、経営母体が変更になるため、許認可は買収企業側で新たに取得する必要があります。このように、許認可が引き継げないことで事業が運営できなくなるという可能性もあるため、事前の調査や専門家に依頼することをおすすめします。
譲渡(売却)側のデメリット・注意点
・競業避止義務
M&Aにおける競業避止義務とは、事業や会社を売却する企業が、売却後に同様の事業を行い、買収した企業に不利益を生じさせないよう定められた義務のことです。
M&A後、譲渡側は一定期間同じ事業を行うことができなくなるため注意が必要です。
・希望価格で買い手がつかない可能性
M&Aでは、金額において譲渡側と譲受側で逆の力学が働きます。お互いが納得できる価格感に着地するのが理想ですが、売り手はできるだけ高く売りたいと思う一方で、買い手はできるだけ安くという買いたいという傾向が現れるため、最初に想定していた通りの価格にならない可能性があります。
とくに、買い手側は買収後にその事業を成長させていく必要があります。そのために、設備や人材投資などを鑑みると、買収金額以上の投資を想定して事業を考える必要があります。
・取引先等に反発される可能性
M&Aについて、取引先がマイナスに捉える可能性があります。M&Aによって、取引先は「これまで通りの条件で取引できるのか」「コミュニケーションがスムーズにとれる相手か」などの不安を抱えているかもしれません。
丁寧なコミュニケーションを行い、不安解消に努めることが大切となります。
運送業界のM&A相場
M&Aにおける売却価格は明確に定められているわけではありませんが、おおよその企業価値を算定する方法があります。
企業価値評価の手法・種類
企業価値評価(バリュエーション)とは、企業全体の価値を評価することです。現在の企業価値だけではなく、今後期待される収益力や無形資産も含めた企業価値を評価します。M&Aにおいては、「企業価値」「事業価値」「株式価値」の3種類の価値を査定します。
バリュエーションで使われる算出方法には、以下の3つが用いられます。
・コストアプローチ
コストアプローチは、M&A対象会社の純資産に着目した企業評価方法です。純資産を用いて算出されることから、ネットアセットアプローチとも呼ばれています。
・インカムアプローチ
インカムアプローチは、対象企業における将来の見込み利益やキャッシュフロー予測に基づいたリスクも加味して算出する方法です。リスクは割引率として表され、安定した経営では低く、多くのリスクを抱える場合には割引率が高く算出されます。
・マーケットアプローチ
マーケットアプローチは、対象企業と同じ市場の企業や業界を基準として、比較して企業評価する方法です。市場株価を基に算出されるため、コストアプローチやインカムアプローチと比較した際に、より客観的な評価として用いられます。
運送業におけるM&Aの評価方法
中小企業の運送業におけるM&Aの一般的な評価方法は、コストアプローチによる「時価純資産法+営業権」です。株式譲渡と事業譲渡、それぞれの売却相場の算出方法は以下の通りです。
・事業譲渡:事業資産+事業利益×2~5年
バトンズでは、譲渡を検討している方に専門スタッフが無料相談を受け付けています。情報整理方法や交渉の進め方などを無料でサポートしており、ご希望の方向けに有料サポートプランも用意しています。
運送業界のM&A事例
大企業によるM&A事例
リコーとSBSホールディングスによるM&A事例
2018年8月、リコーは物流子会社のリコーロジスティクスを、中堅物流会社のSBSホールディングスに売却。発行済み株式の66.7%を約180億円でSBSに売却し、残る33.3%は大塚商会との共同出資会社を通じて保有を続けると発表した。
参考:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30688650Y8A510C1000000/
中小企業によるM&A事例
ハンディーズと丸升運輸によるM&A事例
2022年8月、八潮ホールディングスの傘下であるハンディーズは丸升運輸有限会社の全株式を取得。八潮ホールディングスは「創業100年・年商100億円」を目標に掲げており、事業拡大に向けてM&Aを実行しています。
SUEMARU HOLDINGS株式会社と有限会社第一輸送によるM&A事例
複数の企業を参加にもつSUEMARU HOLDINGSは、トラックやトレーラーによる貨物運送業を営む第一輸送を譲受。一般貨物運送業へ新規参入を検討していたSUEMARU HOLDINGS。初期コストなど含め、参入障壁が高い事業をM&Aで加速させたいと考え、実績豊富な第一輸送の買収に至っています。
運送業におけるM&Aの手続き・流れ
M&Aの仲介を行う企業・期間
M&Aを円滑に進めるためには、M&Aをサポートする専門家の存在が欠かせません。ここでは、M&Aの仲介・サポートに取り組まれている企業・機関について説明します。
銀行
銀行は、M&Aの相談先として選ばれる機関のひとつです。経営者は融資の相談などで銀行と関わりを持っているため、銀行からM&Aの提案を受けたり、後継者の相談等を銀行の担当者に行うケースもあります。
一方で、銀行が対象とするM&Aは大規模なものが多く、他の相談先と比較して手数料が高い傾向にあります。そのため、多くの中小企業は相談先として選択するのが難しいかもしれません。
しかし近年では、事業承継・引継ぎ支援センターやM&Aプラットフォームなどが銀行と提携することで、銀行に相談があった小規模事業が成約まで進むケースも増えてきています。
特に地方銀行などでは、地域活性化や地域の事業推進を進めるべく、M&Aに積極的に取り組む銀行も増えています。
事業承継・引継ぎ支援センター
事業承継・引継ぎ支援センターとは、全国47都道府県に設置された、後継者不在の中小企業・小規模事業者と譲受を希望する事業者とのマッチングを支援する機関です。無料窓口の相談件数は、令和 4年度で22,361者にまで及び、多くの事業者の相談窓口となっています。
また、各地域の専門家やM&Aプラットフォームと協力体制を構築することで、支援センターに相談があった事業者を提携先に紹介し、多くの事業を成約まで繋げています。
M&A仲介会社・FA
M&A仲介会社は、M&Aアドバイザリー業務を専門に行う会社のことを指します。FA(ファイナンシャル・アドバイザー)はM&A仲介と同様、M&A実行を支援する専門家のことを指しますが、どういった立場でM&A支援を行うかに違いがあります。
M&A仲介が譲渡側・譲受側双方の間に立ってM&Aを支援するのに対して、FAはどちらか一方と契約をしてサポートを行います。
M&Aプラットフォーム
M&Aプラットフォームとは、譲渡側(売り手企業)と譲受側(買い手企業)がインターネット上でマッチングできるサービスのことです。インターネットを活用することで、全国から最適な相手先を選定できるというのが特徴です。
とくに、ネット活用に慣れているIT企業の事業者は、他の業界と比べてM&Aプラットフォームの活用が多い傾向にあります。もともとM&Aを前提として事業に取り組む経営者も多く、M&Aに対する印象もポジティブな経営者が他業界と比べて多い印象です。
今すぐにM&Aを検討していない場合でも、一度市場に出してみることで、自社にどれくらいの価値がつくのか、どれくらい求められているのかなどを把握できるだけでもメリットがあると言えます。
運送業のM&Aならバトンズ
バトンズは、成約数・登録案件数No.1※のM&A・事業承継支援サービスです。毎月800件以上の新規案件登録があり、地域・業種・規模感など、網羅性のある案件から探すことができます。また、買い手は優良企業や個人など22万以上の登録があり、日本で最も多くの成約実績を誇るM&Aプラットフォームとなっています。
運送業においては、買い手としての登録数が約1500社、そのうち売上5億円以上の企業が約400社ほど登録しています。また、譲渡希望の企業は580件ほど登録しており、日々多くのマッチングが成立しています。
運送業界は、人材不足や2024年問題などの観点から今後もM&Aが活性化していくことが予想されます。
M&Aを検討する際には、ぜひ一度バトンズにご相談ください。
こんなお悩みありませんか?
つなぐマッチングプラットフォームです。
累計5,000件以上の売買を成立させています。
またM&Aを進めるためのノウハウ共有や
マッチングのための様々なサポートを
行わせていただいておりますので、
まずはお気軽にご相談ください。
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