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M&Aで抑えておきたい競業避止義務とは?概要や事例を紹介

2020.09.15

中小企業感でもM&Aが盛んになり、事業承継やM&Aを検討し始める企業が増加しています。複雑な法令や税制が絡み合うM&Aですが、中でも抑えておきたい法令が「競業避止義務」です。ここでは、競業避止義務の概要や誕生した背景、守らなければならない期間などを詳しく解説していきます。これからM&Aを行おうと考えている方はぜひ参考にしてみてください。

 

競業避止義務とはどのような義務なのか?

競業避止義務は大きく「労働者向け」のものと「M&A用語」の2つに分けられます。

M&A用語としての競業避止義務は、譲渡企業(事業や株式を売却した側)が、M&Aによって事業や企業を手放した後に同様の事業を行い、譲受企業(買収した側)に不利益を生じさせないように定められた決まりのことです。

M&Aの契約を締結する際に、具体的な期間や制限される事業の範囲を取り決め、競業避止義務を設定します。

仮にM&A時に競業避止義務が設定されなかったとしても、会社法によって競業避止義務についての制約が課されているので、注意が必要です。

会社法21条には、事業譲渡から20年のあいだは「同じ市町村」や「隣接する市町村」で同一の事業を行うことを禁止する、と明記されています。この20年という期間は原則であり、特約を設けることで最大30年まで延長できます。

 

競業避止義務を負うのは誰か?

競業避止義務を負うのは譲渡企業、つまり「事業や企業を売却した側」です。

例えばSaaS事業を展開していたA社が、B社へSaaS事業を売却したと仮定します。この時点でA社は譲渡企業、B社は譲受企業となります。譲渡企業のA社は一定期間の間、B社のもとへ移ったSaaS事業を脅かすような事業を行ってはいけません。

先ほど紹介した会社法に照らし合わせれば、少なくとも同業のSaaS事業を同じ商圏エリアで展開することは制限されます。譲渡企業はもしM&A後に同じ事業を展開するにしても転居を余儀なくされるため、お互い事業計画に支障をきたしてしまわないように留意しておかなければいけません。

 

競業避止義務が生まれた理由は?

競業避止義務は譲受企業の利益を保護するために生まれました。仮に競業避止義務が存在しなかった場合を想定してみましょう。

譲受企業が事業譲渡の際に支払う金額は「年買法」という算出方法で計算されるのが一般的です。年買法では「譲渡資産時価+営業権」によって買収価格が設定されますが、このうちの「営業権」には今後得られるはずの利益が含められています。具体的には、実質的な利益の2〜5年分が見積もられます。

しかし、この見積もりには、「ノウハウや人脈を有した譲渡企業が競合してくること」は見込まれていません。譲受企業は対価を支払って事業を買収したにも関わらず、直後にノウハウや人脈を有した企業が台頭してしまうと、太刀打ちできずにシェアを奪われてしまい、M&Aのメリットが無くなってしまいます。

こうしたリスクをなくし、フェアな取引を行うために誕生したのが競業避止義務です。譲受企業の利益を保護し、M&Aによって生まれたメリットを活かしてさらに企業を成長させていくためにも、競業避止義務は欠かせない制度です。

 

M&A時に守るべき競業避止義務のポイントを紹介

競業避止義務はM&Aに欠かせない制度の一つなので、M&Aを検討している方はぜひ抑えておきましょう。ここからは、M&A時に守るべきポイントを詳しく紹介していきます。

 

・競業避止義務はM&A時に細かく設定できる

 

競業避止義務の取り決めについては、先述したようにM&Aの契約締結時に詳しく設定することができます。会社法では20年という期間が設定されていますが、これを短くしたり長くしたりするのも2社間の取り決めによって策定できるのです。

あらかじめトップ面談の際などに競業避止義務について話し合っておくと、契約締結の際に揉めることなくスムーズに進められるので、ぜひ注意しておきましょう。

 

・競業避止義務を違反すると事業の差止めや損害賠償請求が課される

 

実は、競業避止義務を違反したケースはあまり多くありません。

しかし、ECサイトを売却した後にまた同じジャンルのECサイトを立ち上げて競業避止義務に違反した方の判例が存在します。その判例では違反した側の方には事業の差止めと損害賠償請求が課されました。

新たに立ち上げたECサイトは、ジャンルが同じであるうえにデザインが譲渡したECサイトに酷似しており、前サイトの顧客にも営業をかけていたため、競業避止義務に違反しているという判決が下されたと考えられます。

競業避止義務に該当するか否か、という判決は難しく、損害賠償請求を行うにも「具体的に被った被害額」を算出したり、裁判を起こさなければならなかったりするので、大きなコストや心労がかかってしまいます。

 

従業員に課される競業避止義務との違いを理解しておく

M&A時の競業避止義務と従業員に対して課される競業避止義務には若干のニュアンスの違いがあります。M&Aにおける競業避止義務は「譲渡企業に対して、同一の事業を行わないように」定める義務ですが、従業員に対しての競業避止義務は「退職後に競合他社に入ったり、独立して自社の利益を脅かしたりしないように」課される義務です。

どちらも「企業の利益を守る」ための義務ではありますが、従業員に対して課される競業避止義務は副業規定のように「職業選択の自由を縛る」というニュアンスとしても考えられます。そのため、従業員に対して競業避止義務を設定する場合は「その従業員に競業避止義務を設定する合理性」が重要です。

とくに理由もなく競業避止義務を設定しても、裁判になった際に無効と判断されてしまうので、自社内で設定する競業避止義務についてもあわせて理解しておくと良いでしょう。

 

競業避止義務に抵触した事例を紹介

 

ここからは、競業避止義務に抵触した事例について詳しく見ていきましょう。

 

・ドライクリーニング洗剤を扱う企業の事例

 

ドライクリーニング溶剤が配合された洗剤を代理店や楽天、ヤフーショッピングといったインターネットのショップページで販売していたA社。

しかし、債務超過になったことや代表が病気を患い事業の継続が困難となったことから、加盟店の代表者が新会社として企業を設立します。A社は販売事業をすべて譲渡し、新会社がドライクリーニング用洗剤の販売事業をスタート。

新会社の代表は、これとは別にA社代表との間でコンサルタント契約を結び、A社代表から助言や指導を受けます。コンサルタント料を支払うことで、A社代表が抱えていた負債を支払えるようにしていました。

ところが、譲渡後にA社代表が、洗剤の製造を委託していた企業に新会社との契約を破棄するように求めます。A社代表が「新たに洗剤等の販売事業を始める」などと発言していたこともあり、新会社の代表はコンサルタント契約を解除しました。

その後、A社代表は、譲渡したはずの商標と非常に酷似した名前の洗剤を扱うことを自分のWebサイトで発表し、販売するようになります。それからもA社代表は、「テレビショッピングなどを用いて商品を販売する新会社の方針について違和感を持っていた」といった主旨の小冊子を他の加盟店に配布したり、既に新会社の顧客となっていた企業との取引を再開したりと、競業避止義務に違反する行為を行っていたのです。

新会社はA社に対して、譲渡事業の商標を用いた洗剤販売事業の差止めや損害賠償を求めて提訴しました。

 

競業避止義務を理解してM&A(売却)の準備を進めよう

 

M&Aはヒト・モノ・カネ・情報のすべてが大きく動くため、成功させるためにはリスクを丁寧に排除していくことが必要不可欠です。その一つとして、競業避止義務を理解しておくことは大切ですが、M&Aに関するリスクの火種は他にも存在します。

 

実際にM&Aの契約を進める上では専門家のアドバイスは欠かせません。M&Aによる事業承継を検討している際は、ぜひバトンズに一度お問い合わせください。

 

参考事例の引用元:West Law Japan https://www.westlawjapan.com/pdf/column_law/20170410.pdf

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