スモールM&Aアドバイザー/ M&A支援機関登録専門家
今回は「スモールM&AとマイクロM&Aとは?」について、解説します。
スモールM&AとマイクロM&A‥?
どちらも通常のM&Aよりも規模が小さいM&Aと言うイメージを持たれるのではないでしょうか?
その通りです。
スモールM&A・マイクロM&Aは、小規模企業、個人事業などの小規模事業を対象とした第三者承継(M&A)であり、近年、M&Aマッチングサイトを活用した成約事例が急増しています。
ですが、スモールM&AとマイクロM&Aの違いや、両者特有のメリット・デメリットを知らない方は多いのではないでしょうか?
今回は、スモールM&AとマイクロM&Aについて、
・スモールM&AとマイクロM&Aのメリット・デメリット
を中心に、「スモールM&AとマイクロM&Aとは?」を、解説していきます。
【必見!】巻末にスモールM&Aアドバイザー・合同会社アジュール総合研究所 代表 伊藤氏よりM&A実務に即したワンポイントアドバイスや注意点も掲載しています!是非、最後までご刮目下さい!
スモールM&AとマイクロM&Aの違い
まずは、スモールM&AとマイクロM&Aの違いを解説して行きます。
スモールM&Aとは
実はスモールM&Aの定義は、明確には定まっていません。しかし、一般的には以下のような事業承継・M&AがスモールM&Aと呼ばれています。
つまり、通常のM&Aは譲渡価格(成約価格)1〜10億円ほどとなりますが、それよりもサイズが小さい事業承継・M&AがスモールM&Aの分類に入ることとなります。
スモールM&A案件は、買い手側からすると、買収金額がそれほど高くならないことから、投資に対する意思決定も早期に下すことが可能となります。そのため、成約までの期間は半年もかからないケースが一般的です。
M&Aと聞くと、どうしても中小企業の中でも大企業に近い、売上高が数十~百億、従業員が100名以上ではないと買い手先が見つからないというイメージを持っている経営者がほとんどですが、スモールM&A案件の買収を希望している企業は想像しているよりも多いため、小規模事業の経営者が、会社や事業の売却を成約するケースは珍しくありません。
むしろ、スモールM&A案件を中心に買収している買い手さえいます。
マイクロM&Aとは
マイクロM&Aとは、スモールM&Aよりもサイズの小さいM&A案件のことです。
譲渡金額(成約価格)も1,000万円以下で取引が成立し、案件規模(ディールサイズ)が小さいことから、M&A起業(M&Aを活用した独立開業)を目指す個人の方にも人気の案件となっています。
マイクロM&Aの案件事例としては、企業の一部事業や個人事業の売却が多いことから、譲渡スキーム(譲渡方法)の9割方が事業譲渡となります。
スモールM&AとマイクロM&Aは同じ?
スモールM&AとマイクロM&Aの一般的な定義は上記でご説明しましたが、両者は、しばしば同様のものと考えられています。イメージ的には、スモールM&Aの中にマイクロM&Aが含まれると言ったところです。
どちらも対象となる承継事業体は、小規模企業や個人事業であり、小規模事業のM&AがスモールM&A・マイクロM&Aであると言えます。しいて言えば、ディールサイズ(案件規模)が違うと言うだけなのです。
また、大企業であっても小規模の事業体のみを切り離し、事業譲渡する場合は、スモールM&A、時にはマイクロM&Aとなり得ることもあります。
M&A起業には大人気!
前述の通り、ディールサイズ(案件規模)が小さいことから、スモールM&A・マイクロM&Aは、M&A起業(M&Aを活用した独立開業)希望者には、非常に人気のある案件です。
弊社がM&Aマッチングサイトで買い手募集を開始すると、個人の方からのマッチング(お問い合わせ)も必ず入ります。売却価額が1,000万円以下のマイクロM&Aは勿論のこと、スモールM&Aであっても金融機関からの借入を利用し、自己資金と合わせて3,000万円規模の売却案件を成約する方もいます。
個人M&Aの成功事例も各M&Aマッチングサイトに取り上げられていますので、検討している方は、ご覧いただく事をお奨めします。
最近のトレンド?大企業もマイクロM&Aをターゲットに!
大企業がスモールM&Aを成約することは、ここ何年かの流れになっていましたが、最近ではマイクロM&Aもターゲットにしています。
以前より、大企業が比較的にサイズの小さい案件を年間数件購入し、リスク分散させるトレンドはありましたが、1,000万円以下の案件も成約事例が増加中です。
この事例は、主に飲食業が多く、資力の有る企業が、この感染症の状況下で経営不振に陥っている飲食店を買収するケースが見受けられます。
大企業のM&A戦略も、時代の流れによって変化していることがうかがえます。
スモールM&AとマイクロM&Aのメリット・デメリット
ここからは、スモールM&AとマイクロM&Aにおけるメリット・デメリットを、売り手側と買い手側に分けてご説明します。
スモールM&A・マイクロM&Aにおける売り手のメリット
①会社や事業を継続できる
小規模事業や個人事業であっても、廃業してしまうと周りへの影響は少なからず出てしまいます。得意先・取引先への影響も大きいですが、特に従業員は新たな職場を探さなければなりません。
しかし、スモールM&A・マイクロM&Aが成約すれば、経営者が一生懸命続けてきた会社や事業の継続も可能になりますし、従業員の雇用も守れます。
ただ廃業してしまうのではなく、後世につなげるというのも代表者としての役目なのではないでしょうか。
②赤字や債務超過でも売却可能
赤字や債務超過など財務的にマイナスな側面があったとしても、スモールM&A・マイクロM&Aにおいては、譲渡契約が成立することは珍しいことではありません。むしろ経営手腕のある代表者が購入し、経営立て直しに成功するケースも怏々としてあるのです。
買収動機は、単に儲かっているからとは限りません。人員確保や、販路拡大、多角化戦略などのシナジー効果を目的としている買い手も多くいるのです。また、借入時の個人保証も肩代わりしてもらえるケースもあります。
ここで重要なことは、買収動機は買い手によって多種多様であり、経営状態が悪いから売却不可と、勝手な自己判断をしないことです。私自身も、思いもよらない理由でM&Aが成約したケースを多々経験しています。売却は無理と思わず、出口戦略としてM&Aも検討することをお奨めします。
③廃業コストがかからない
事業を廃業する際は廃業コストがかかります。小規模事業、個人事業であっても数百万円かかる場合があります。しかし、事業の売却が無事に成約できれば、廃業コストをかけることなく引退することが可能となり、譲渡代金まで手にすることができるのです。
④売却代金、創業者利益の獲得
上記でも述べた通り、廃業コストをかけずに引退できるわけですが、それにプラスして、譲渡代金を手にすることができます。事業から引退し、予定していなかった退職金がもらえるというイメージです。
また、起業家であれば、IPOを果たすことは叶わなかったものの、財務内容が良好の場合、売却することによる多額の創業者利益が得られます。そして、その売却代金を利用し新たなビジネスを立ち上げることも可能です。
⑤通常のM&Aよりも成約までの期間が短い
スモールM&AやマイクロM&Aとはその名のとおり、通常のM&Aよりも規模の小さいM&Aです。
ディールサイズも小さいことから、買収金額も手ごろであり、また、買収後の計画(PMI:ポスト・マージャー・インテグレーション)も立てやすいことから、買い手側にとっても買収可否の意思決定を早く下せます。早い場合、2~3カ月ほどで成約することもあります。
スモールM&A・マイクロM&Aにおける売り手のデメリット
①M&A交渉で主導権を取られるリスクがある
スモールM&AやマイクロM&Aにおける売り手は、小規模企業、個人事業の経営者となりますが、買い手が大手企業や優良中小企業となる場合があります。
彼らは何度も買収を繰り返している、いわゆるストロングバイヤーの可能性があり、M&A経験も豊富なため、交渉において完全に主導権を取られてしまうこともあります。
売り手側は、「まあ、損が出ず、いくらかでも値段が付けばいいか」と、考えてしまう方が多く、なすがままにされてしまいます。
売り手の9割はM&A交渉が初めてなので、どう交渉したらいいかなどは分かりません。資料の開示範囲や契約書類の取り交わしなども同様です。 そこをつけこまれて、買い手有利に交渉をすすめられ、買いたたかれてしまう可能性が高くなります。
これの対処法としては、やはりM&AのプロであるM&Aアドバイザーに依頼し、対等な交渉を進行してもらうことをおすすめします。
②全ての売却条件を通してもらうことは難しい
売買価格以外にも、売却後の旧代表者や、従業員の待遇、個人保証の肩代わりなど、条件は様々あるわけですが、売り手から提示した全ての条件を買い手にのんでもらうことは非常に難しいです。なぜならば、買い手にも様々な、事情があるからです。
このデメリットは、買い手のデメリットでもあります。お互いの提示した条件下の中で、どうやって折り合いをつけて譲渡契約書にサインするかを模索する方が建設的です。
③売却後は買い手の統制下で経営が遂行される
M&A成約後、経営権は買い手側に移ることが一般的です。
買収後も旧代表者が、そのまま代表や役員として残るケースもありますが、運営は買い手がコントロールするので、買い手の経営方針に従わなければなりません。
デメリットともとれますが、M&A完了後、買い手の言うとおりに運営してみると業績が好転し、役員報酬や給与が上がったというケースもありメリットともとれます。
この点、ご自分が経営してきた事業を、新たな経営者がどう発展させて行くのかを、見守る姿勢が必要ではないのでしょうか。
スモールM&A・マイクロM&Aにおける買い手のメリット
①投資金額を回収し易い
買収したからにはもちろん、買収した事業で儲けを出し続け、投資資金を回収し、さらなる儲けを出さなければなりません。一般的にスモールM&A・マイクロM&Aの場合、売買価格の算定(バリュエーション)は年倍法で算定します。
【年倍法】
時価純資産 + 年間の簡易CF × 1~3年(営業権、いわゆる「のれん」)= 売却価格
株式譲渡の場合、その売却価格をいち早く回収し、プラスに転じなければいけません。
スモールM&A・マイクロM&Aの場合、買収金額は高くはなく、シナジー効果や単体では活用できなかった財務レバレッジをうまく利用することで、投資回収のスピードを上げることも可能です。
②環境や経営資源がそろっている状態で、独立開業することが可能
脱サラし独立開業をする場合、事業計画を立て、それに沿って人員の確保や設備の導入、マーケットの開拓など行いますが、個人でも手の届く金額で売買されているスモールM&A・マイクロM&A下では、環境や経営資源がそろった状態で、独立開業することが可能です。
起業を検討されている方は、自分の起業したい業種の案件が売りに出ていたら、売り手にアプローチし、一度ご面談することをおすすめします。条件などが合わず、交渉がブレイクしたとしても、次回検討の際にその経験が必ず役立つからです。
諦めずに何度もチャレンジすることで道は必ずひらけます。
③リスク分散可能
大手企業の買収劇ばかりメディアで報道されているので、意外と知られていませんが、優良な中小企業も事業拡大のためにM&A戦略を何度も活用しています。
つまり一度だけではなく、複数回、企業買収を行っている中小企業も数多く存在するということです。
通常のM&Aの買収金額のサイズは大体5億~10億円といったところですが、スモールM&A・マイクロM&Aの場合、1億円を下回る案件であり、1,000万円を下回ることも珍しくありません。買い手としてはサイズの小さい案件を複数社買収し、リスクを分散することが可能になるのです。
まさに投資思考と一緒で、ポートフォリオを作成して1つの事業が減退しても儲かっている事業が赤字を帳消しにし、尚且つ黒字にさせることが可能となります。
スモールM&A・マイクロM&Aの場合、それが通常のM&Aよりも戦略として取りやすいのです。
スモールM&A・マイクロM&Aにおける買い手のデメリット
①情報不足のリスク
小規模事業、個人事業の経営者の場合、会計処理を税理士事務所に任せきりにしていることや、自社で処理していても管理体制に問題があり、経営者自身が自社の実態を把握していないケースもあります。重大な事実を知りえないまま、会社や事業を買収することは大変なリスクを背負いこむこととなります。
特に、簿外債務や、偶発債務、係争中の案件などは注意が必要です。このリスクについてはデューデリジェンス(買収監査)を実施することで明るみに出ることが多いですが、完全に把握するということは不可能です。
M&Aでの買収にはある程度、腹をくくる覚悟は必要となります。
②人材、顧客、取引先が離れてしまう
買収後、新たな代表者とのそりが合わず、キーマンの辞職や、大量に従業員が退職してしまうケースもあります。また、顧客や取引先が旧代表者とのつながりで取引を続けていたが、会社売却とともに離れてしまうことも残念ながらあるのです。
ただ、これについてのリスク回避方法は、買収後も旧経営者が元気な限り、何らかの形で会社に残っていただくことをおすすめします。
買収交渉の中でもここの部分は綿密に協議し、条件を明確にしておきましょう。
③良い案件がなかなか見つからない
スモールM&A・マイクロM&A市場は非常に活況です。圧倒的に購入希望者の方が多く、売却希望が出てきても優良案件はすぐに売れてしまいます。
本業で多忙というのも、もっともですが、本気で買収を行いたいのであれば、それなりのレスポンスが必要です。常にアンテナを高く張りつつ、希望の案件が出てきたらすぐにでも交渉に動ける環境を整えておくことが重要です。
まとめ
以上、「スモールM&AとマイクロM&Aとは?」を、ご説明しました。
今回の内容を、おさらいしましょう。
◆スモールM&AとマイクロM&Aの違い
1.スモールM&Aとは
一般的には以下のようなケースがスモールM&Aと呼ばれている。
- 小規模事業、個人事業を対象としたM&A
- 譲渡金額(成約価格)、1億円以下
- 売上高が数千万円~5億円以下
- 従業員数が100名以下
つまり、通常のM&Aは譲渡価格(成約価格)1~10億円ほどとなるが、それよりもサイズが小さいM&AがスモールM&Aの分類に入る。
2.マイクロM&Aとは
マイクロM&AとはスモールM&Aよりもサイズの小さいM&A案件のこと。
譲渡金額(成約価格)も1,000万円以下で取引が成立し、案件規模(ディールサイズ)が小さいことから、M&A起業(M&Aを活用した独立開業)を目指す個人の方にも人気の案件である。
3.どちらも同じもの!?
イメージ的には、スモールM&Aの中にマイクロM&Aが含まれると言ったところ。
どちらも対象となる承継事業体は、小規模企業や個人事業であり、小規模事業のM&AがスモールM&A・マイクロM&Aであると言える。
◆スモールM&AとマクロM&Aのメリット・デメリット
1.スモールM&A・マイクロM&Aにおける売り手のメリット
①会社や事業を継続できる
スモールM&A・マイクロM&Aが成約すれば、経営者が一生懸命続けてきた会社や事業の継続も可能で、従業員の雇用も守れる。
②赤字や債務超過でも売却可能
買収動機は買い手によって多種多様であり、経営状態が悪いから売却不可と、勝手な自己判断をしないこと。
③廃業コストがかからない
事業の売却が無事成約できれば、廃業コストをかけることなく引退することが可能となり、譲渡代金まで手にすることができる。
④売却代金、創業者利益の獲得
事業から引退し、予定していなかった退職金がもらえるというイメージ。
また、起業家であれば、IPOを果たすことは叶わなかったものの、財務内容が良好の場合、売却することによる多額の創業者利益が得られる。
⑤通常のM&Aよりも成約までの期間が短い
ディールサイズも小さいことから、買収金額も手ごろであり、また、買収後の計画(PMI:ポスト・マージャー・インテグレーション)も立てやすいことから、買い手側にとっても買収可否の意思決定を早く下せる。
2.スモールM&A・マイクロM&Aにおける売り手のデメリット
①M&A交渉で主導権を取られるリスクがある
M&Aに慣れている買い手だと、有利に交渉をすすめられ、買いたたかれてしまう可能性が高くなる。
これの対処法としては、やはりM&AのプロであるM&Aアドバイザーに依頼し、対等な交渉を進行してもらうことをおすすめ。
② 全ての売却条件を通してもらうことは難しい
売買価格以外にも、売却後の旧代表者や、従業員の待遇、個人保証の肩代わりなど、条件は様々あるが、売り手から提示した全ての条件を買い手にのんでもらうことは非常に難しい。
③売却後は買い手の統制下で経営が遂行される
買収後も旧代表者が、そのまま代表や役員として残るケースもありますが、運営は買い手がコントロールするので、買い手の経営方針に従わなければならない。
3.スモールM&A・マイクロM&Aにおける買い手のメリット
① 投資金額を回収し易い
スモールM&A・マイクロM&Aの場合、買収金額は高くはなく、シナジー効果や単体では活用できなかった財務レバレッジをうまく利用することで、投資回収のスピードを上げることも可能。
② 環境や経営資源がそろっている状態で、独立開業することが可能
脱サラし独立開業をする場合、事業計画を立て、それに沿って人員の確保や設備の導入、マーケットの開拓などを行うが、個人でも手の届く金額で売買されているスモールM&A・マイクロM&A下では、環境や経営資源がそろった状態で、独立開業することが可能。
③ リスク分散可能
買い手としてはサイズの小さい案件を複数社買収し、リスクを分散することができる。
まさに投資思考と一緒でポートフォリオを作成し一つの事業が減退しても儲かっている事業が赤字を帳消しにし、尚且つ黒字にさせることが可能となる。
4.スモールM&A・マイクロM&Aにおける買い手のデメリット
① 情報不足のリスク
売り手経営者自身が、自社の実態を完全に把握していない可能性が高く、M&Aによるリスクを背負いこむ可能性がある。
特に、簿外債務や、偶発債務、係争中の案件などは注意が必要。
② 人材、顧客、取引先が離れてしまう
買収後、新たな代表者とのそりが合わず、キーマンの辞職や、大量に従業員が退職してしまうケースあり。
また、顧客や取引先が旧代表者とのつながりで取引を続けていたが、会社売却とともに離れてしまうことも残念ながらある。
③ 良い案件がなかなか見つからない
スモールM&A・マイクロM&A市場は非常に活況であり、圧倒的に購入希望者の方が多く、優良案件はすぐに売れてしまう。
以上、今回記事のおさらいでした。
スモールM&A・マイクロM&A案件は、値頃感から非常に人気が高く、半年程度で成約することが可能です。(弊社がご依頼いただいた案件でも、だいたい3カ月程度で成約に至ることが多いです。)
ですが、今回記事でご紹介させていただいた通り、デメリットも存在します。
M&A交渉においては、ある程度のスピード感も必要となります。しかし、ディールサイズ(案件規模)が小さいからと言って、トップ面談や現地調査、そして、デューデリジェンス(買収監査)などの重要なM&Aプロセスを、おろそかにしてはいけません。
ましてやショートカットしてしまうことは言語道断です。やるべきM&Aプロセスを踏まずに成約してしまうことで、後々思わぬトラブルに発展する可能性もあります。
M&Aにおいて、油断は禁物です。
スモールM&Aアドバイザー・合同会社アジュール総合研究所 伊藤氏からのワンポイントアドバイス!
みなさんこんにちは!
この記事を監修させて頂きました、スモールM&Aアドバイザー「合同会社アジュール総合研究所」代表の伊藤と申します。
ここからは、スモールM&A専門家である、わたくし伊藤が、M&A実務に即した、成約に大きく前進するためのアドバイスと注意点などを、なるべくわかりやすく(そして、くだけた感じで?)スモールM&Aの現場の経験をもとに解説していますので、是非、ご刮目下さい!
はいっ!
今回は、「スモールM&AとマイクロM&Aとは?」について解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
スモールM&AもマイクロM&AもM&Aマッチングサイトで取引することが一般的になってきており、私のようなM&Aアドバイザーもサイトに登録し、売り手と買い手探しを日々行っています。
この投稿がバトンズへの掲載記事と言う事もあり、すでにどこかのM&Aマッチングサイトへの登録が済んでいる方が、ご覧いただいているのでは?
※バトンズへの登録がまだお済ではない方はこちら!
一般のM&A案件(ここでは売却価額1億円以上の案件とします)と比較し、スモールM&A案件、マイクロM&A案件は、取引金額の手ごろ感から非常に人気があり、M&Aマッチングサイトには、会社経営者のみならず、個人事業主や独立を目指す個人も登録をしています。
サイトには、買い手・売り手問わず、多くの方がアカウントを取得しており、それだけ事業承継・M&Aが世間に浸透してきたことが伺えますよね。
ですが、それと同時にスモールM&A・マイクロM&Aにおける失敗や取引事故も増加しており、その危険性がメディアで取り上げられているのも事実なわけでして...
M&Aアドバイザーの私が言うのもなんですが、M&Aって、かなり複雑怪奇で、無事安全に成約させるって、かなり大変なことなんですね。
M&Aアドバイザーに依頼せずにM&Aが成約するケースもかなりありますが、売り手と買い手がM&A初心者同士の場合、「それって大丈夫かな??」って思ってしまうんですね。
M&Aプロセス上、重要な場面で税理士や弁護士など各専門家に相談していれば問題ないと思うんですが、全く相談もなしにフリマアプリ感覚で会社や事業を売買するってやっぱりリスクが高いんですよね。
これを回避するためには、スモールM&A・マイクロM&Aの失敗要因を深く理解する事が必要だと思うわけでして。
と言う事もあり、今回のワンポイントアドバイスでは、スモールM&A・マイクロM&Aの主な失敗要因を、解説してきます。
スモールM&A・マイクロM&Aの主な失敗要因としては、
の、8つが挙げられます。
ではでは、順を追って説明していきましょう!
①準備不足
会社や事業を売却したいにもかかわらず、必要な資料が全くそろっていない事や、ノンネームシート(簡易概要書)のみを作成し、企業(事業)概要書を作成していない経営者が散見されます。
買い手としては、買収検討する際、どういった会社(事業)であるか、生み出されるシナジー効果、内在するリスクなどを把握した上で、売り手の希望売却価額と照らし合わせ、買収に踏み切るか否かを決定するわけなんですね。
そのためには、M&Aにおいて必要な資料は何かを知り、ノンネームシート(簡易概要書)と企業(事業)概要書を作成しておく必要があるんですね。
特に企業(事業)概要書は、売却したい会社や事業の詳細だけではなく、アピールポイントやリスクを記載し、案件を「商品化」(M&A上、一般的に案件化と呼びます)する事を目的に作成されます。
これがしっかりと作成されていないと、買い手に詳細が伝わらず、「買い叩き」にあう可能性が高くなるんですよ。
必要資料がそろっていない場合は、特に注意が必要で、手に入らないものがあると、譲渡契約はもちろん、交渉すらしてもらえない事もあります。
また、M&Aアドバイザーに業務委託する場合も同様で、売り手が早期売却を希望したとしても、M&Aアドバイザーは安全交渉・取引に努めるため、必要資料がそろっていない以上、前に進むことが出来ず、期限切れでM&Aを断念する事にもなり得るわけです。
自身でM&Aを行う場合は、決して準備作業は怠ってはならず、M&Aアドバイザーに依頼する際は、指示に従い必要書類の収集やヒアリングを受け、企業(事業)概要書を作成してもらいましょうね。
②事業承継・M&Aの基礎知識がない
企業買収を行おうとしているにも関わらず、事業承継・M&Aの基礎知識が全く欠如している方もいます。
M&Aの手続きや交渉は、非常に難解で複雑なため、M&Aアドバイザーに業務を委託する事が望ましいのですが、その場合でも、最低限の知識は身に付けおいて欲しいんですね。なぜならば、ある程度の知識がないとM&Aアドバイザーから説明される内容を理解できないからです。
これ結構重要で、M&Aアドバイザーは職務上、当然、安全取引に勤めるため、よく理解していない(または理解しようとしない)売り手・買い手との業務委託契約(アドバイザリー契約)を締結したがらないんですよ。
もちろん、基礎知識のない方は自身でのM&Aも成約する事は出来ませんよね。M&Aを成約させたいのであれば、まずは自分でも学習する事ですね。
最近では、M&Aマッチングサイト主催のM&Aセミナーも開催されています。
(バトンズでもやってますよ!)
M&Aの基礎知識が身に付くだけではなく、サイトの上手な活用方法などの説明も受けられるので、是非、セミナーに参加される事を強くお奨めします。
③M&Aスキーム(譲渡方法)の検討・確認
M&A上級者向けの論点になります。M&Aスキーム(譲渡方法)と聞くと、株式譲渡をイメージするかも知れませんが、事業譲渡という方法もあります。(厳密に言うと他のM&Aスキームもあります。機会があれば解説したいですね!)
売り手がM&Aマッチングサイトにノンネームシート(簡易概要書)を登録する際、株式譲渡を選択する事が多々ありますが、案件状況によっては、事業譲渡を選択した方が、売り手・買い手にメリットがでるケースも珍しくありません。
事業譲渡よりも株式譲渡の方が手続き上簡便なため、後者が好まれますが、スモールM&A・マイクロM&Aの特性上、事業譲渡を選択した場合でも、そこまで譲渡プロセスが煩雑にならないケースも実際にあります。
M&A交渉上、売り手と買い手が合意すれば、M&Aスキーム変更しても全く問題ありません。また、個人事業も事業(営業)譲渡は可能です。(※M&Aスキームは、実は種類も多く、奥が深いのです。)
両者間でM&Aスキーム(譲渡方法)の検討・確認を行い、最善のスキームを選択するようにしましょう。
④M&A計画策定を怠る
スモールM&A上(特にマイクロM&A上)、よくあるケースですが、「ノリと勢いで買収する」買い手も多く存在します。
買収理由は「利益がでているから」「希望買収業種(または地域)だから」というもので、シナジー効果や買収後の運営方法などを全く考えていないケースですね。
これはスモールM&A、特にマイクロM&A特有の論点となりますが、買収金額がそこまで高額とならないため、M&A計画策定を疎かにしてしまう方って結構いるんですね。
買い手側にとってのM&A計画は、M&Aを成約するまでではなく、買収後の事業を成功させ、その後も事業を拡大させる事を念頭に設計しなければなりません。
そのためには、シナジー効果やPMI(ポスト・マージャー・インテグレイション)を意識したM&A計画策定は必須となります。
ノリと勢い任せのM&A成約は厳禁ですよ!
⑤デューデリジェンス(買収監査)を実施しない
小規模M&Aにおいて、デューデリジェンス(買収監査)を省略したがる方も多くいますが、これは厳禁ですね。
特にスモールM&Aよりも規模の小さいマイクロM&Aの場合、買収金額も僅少なため、自己判断でM&Aを成約してしまう方も少なくありません。
確かに、デューデリジェンスには費用もかかり、省略したがるのも分かりますが、財務・税務・法務・労務・事業、その他各リスクを洗い出すのは、慣れていない方には非常に難しいです。
必ず専門家に依頼し、デューデリジェンスを実施して下さい。
最近では、小規模M&A向けのデューデリジェンスを実施してくれる専門家もいるので、基本合意を締結するタイミングで相談する事を強く推奨します。
⑥契約書の内容を理解せずに契約締結
これは完璧にアウトです!
小規模事業者は契約事に慣れていない方が多く(特に売り手)、M&Aマッチングサイトでダウンロードした譲渡契約書の雛形を元に、雑な内容で契約締結する方も実際にいます。
これは必ず取引事故を起こします。
「秘密保持、付帯合意、表明保証、競業避止義務、損害賠償・補償、チェンジオブ・コントロール(COC)」等々、理解されてますか? そして、弁護士や司法書士から契約書のリーガルチェックは受けましたか?
また、厳密に言うと譲渡契約書の締結だけでは、譲渡契約は完了しません。
「株主総会議事録、取締役会議事録、株主名簿書換請求、株主名簿書換承認通知、譲渡後の株主名簿、委任状、印鑑証明、謄本、開業届・住民票(個人事業の場合)」等々
これらの書類はそろっていますか?
この点は、必ずM&Aアドバイザー(専門家)に相談し、内容説明や必要書類の確認を実施しましょう。
⑦経営者になる覚悟が出来ていない
これは個人M&A特有の論点となりますが、あなたは経営者になる覚悟はできていますか?
M&Aを用いるか、自分で会社を立ち上げるかにかかわらず、独立開業する事は相当な覚悟が必要なんですね。
交渉がうまく進み、あと一歩でM&A成約と言うところで、気持ちの整理がつかず、M&Aを断念する方って結構いますよ。
M&Aは起業に比べ、事業や社員、取引先を最初から保有できスピード感を持ってビジネスを加速させることが可能という大きなメリットがある反面、スタート時から双肩に大きなものを背負うわけですよ。
そして、M&A成約と同時に経営者としての資質を日々試されますよ。
そのプレッシャーに耐えられず、せっかく買収した会社の経営を投げ出すような事になっては、今までの努力が無駄になるだけではなく、多くの関係者に迷惑が掛かります。
また、経営者になる覚悟が出来ていない場合、交渉の中で相手方に空気を読み取られてしまい、交渉を中止されてしまうことさえあります。
M&Aを検討する前に、しっかりと心の整理をつけ、経営者になる覚悟した上で交渉に臨みましょう!
⑧PMI(Post Merger Integration)計画策定が不十分
PMIとは、Post Merger Integration(ポスト・マージャー・インテグレーション)の略で、M&A成約後に実施される、経営統合作業のことです。
M&Aの成功は、成約させることではなく、その後の事業経営にシナジー効果をもたらし、企業価値を高めることです。そのためには、PMI計画を綿密に策定し、成約後の経営統合作業を速やかに行い、シナジー効果を最大化させることに注力しなければなりません。
そういう意味でも、PMIはM&Aにおいて重要なプロセスなんですね。逆に言うと、PMI計画策定が甘いと成約後の経営統合作業が速やかに行えず、シナジー効果を最大化させることができません。
しっかりとしたPMI計画を策定しましょう!
今回記事の「まとめ」の「マトメ」
以上、「スモールM&AとマイクロM&Aとは?」をご紹介しました。
日本企業の99%が中小企業と言われていますが、その中でも規模の小さい事業のM&AがスモールM&A・マイクロM&Aとなるわけですね。
この中には、個人事業も含まれるわけです。
私自身、「スモールM&Aアドバイザー」という肩書で、小規模事業の事業承継・M&Aのお手伝いをしているわけですが、初対面の方には、
と、よく言われるんですね。
そう言われる度に、「まだまだ小規模事業の事業承継って浸透していないんだなあ」と、日々感じます。
顧問税理士や取引金融機関から一度は、事業承継・M&Aのご案内を受けたことはないですかね?
どうでしょうか?
ここで、心に留めておいていただきたいことは、
「小規模事業でも事業承継・M&Aはできる」
と言うことなんですね。
毎回のようにお話しさせていただいてますが、小規模事業を営んでいるとしても、事業承継・M&Aを諦めて欲しくないんですね。
小規模事業を承継希望の買い手さんって想像しているよりもたくさんいますよ。
経営者って孤独ですよね。分からないこともたくさんありますよね。
「M&Aって、ちょっと怖いな」って、思っている方も多いと思います。
そんな時は、身近にいる顧問税理士や取引金融機関に相談してみてください。事業承継の悩みをうちあけることで、気持ち的に楽になることもあります。私のような「スモールM&Aアドバイザー」を、紹介してくれることもあります。
悩み事の一番の解決方法は、行動です!
一人で悩まずに、まずは専門家に相談です!
今回のワンポイントアドバイスでは、「スモールM&AとマイクロM&Aの失敗要因」について解説しましたが、今後もM&A実務に即したネタをご紹介しますので、これからもご覧いただけますと幸いです。
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最後に、みなさまのM&Aが、安全にご成約されることを心よりお祈り申し上げます。
また次の記事でお会いしましょう!
それでは!
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