ノウハウ

2020.03.06

事業承継とは何か準備の方法や注意点まとめ

現役の経営者にとって、「事業承継」という避けられない問題について、気にはなるものの、できれば先延ばしにしたいと思ってしまうものではないでしょうか。しかし、実際に承継のタイミングがやってきたときにスムーズに進めるためには、早い段階から動き出す必要があります。

今回は、事業承継の方法や注意点などを解説します。

 

事業承継の方法

事業承継には、大きく分けて3つの方法があります。まずは、それぞれの概要を見てみましょう。

親族内承継

最もポピュラーな事業承継の方法は、経営者の親族に会社を引き継ぐことです。しかし生き方を自由に選ぶのが当たり前になってきている今では、子が親の会社を継ぐというケースは以前より減ってきています。しかし、できることなら親族内での承継を検討したい、という経営者も多いのではないでしょうか。

親族内承継のメリットは、後継者の準備期間を設けやすく、引継ぎもスムーズに進めやすい点です。また、従業員にとっても、現在の経営者の親族が後継者になるというのは納得しやすい流れでしょう。

ただし、子どもやほかの親族に会社を継ぐ意思がなければ、もちろん無理強いはできません。また、後継者となった親族に適性がなければ会社の経営が傾いてしまう可能性もあります。経営者としての適正の見極めを行い、場合によっては別の後継者候補を立てる必要もあります。

親族外承継

親族内に後継者候補がいない場合に検討されることが多いのが、会社の従業員など親族以外への承継です。長い間その会社で働いてきた人物であれば、会社の内部事情や経営方針も理解しているため、スムーズに物事を進めることができるはずです。

また経営者にとっても、従業員の働きぶりから前もって適性を見極めることができるというメリットがあります。

ただし、親族以外の人物が後継者となる場合、ほかの従業員から反発が出ることも考えられます。また、相続権を有する経営者の親族とトラブルが発生する場合もあるので、慎重に対応しなければいけません。

第三者への承継

近年増えているのが、親族でも社内の人物でもなく第三者に承継するケースです。会社をほかの会社に売却するM&Aなどがこれに当てはまり、後継者の候補となる人物がいない場合に第三者への承継が検討されます。

経営者にとって、第三者への承継には、後継者がいなくても事業を存続させることができるというメリットがあります。一方で会社の買い手にとっても、今ある事業を拡大したり利益を上乗せしたりできるというメリットがあり、双方に利益をもたらします。

以前は会社の売却に対してあまり良いイメージがなかったため、M&Aを避けたがる経営者も数多くいました。しかし、今では事業承継の手段のひとつとして広く認識されています。

 

後継者不在の企業が事業承継を諦めるべきでない理由

ここまで、事業承継の3つの方法を見てきました。第三者に承継するという方法を利用すれば、後継者がいなくても事業承継はできる、ということがわかったと思います。そしてこのように、親族や従業員から後継者が見つけられなくても事業承継を諦めるべきではありません。その理由を見ていきましょう。

事業・雇用の継続

事業を存続させることで、事業そのものに加えて雇用も守ることができます。もし会社を廃業してしまうと、今まで育ててきた事業はなくなり、同時にこれまで会社のために働いてきてくれた従業員も解雇しなければいけません。

しかし、会社を承継することで事業も雇用も継続させることができます。地域社会や従業員に対する責任という観点からも、事業承継には意味があるのです。

廃業にかかるコストと外部承継した場合のコストを考える

M&Aの実現に手間がかかるのは事実ですが、会社を廃業するのも決して簡単なことではありません。廃業する場合、手続きを依頼する専門家の費用や設備の廃棄費用など、様々なコストがかかります。保有する資産を売却するとしても廃業時は評価が低く見積もられることが多く、差し引きすると手元にお金が残らなかったりマイナスになることもあるでしょう。

一方で外部に承継した場合は、経営者は会社を売却して現金を得ることができます。廃業よりも外部承継した場合の方が、金銭的なメリットがあることが多いのです。廃業にかかるコストと外部承継した場合のコストを比較し、より有利なのがどちらかを検討してみるとよいでしょう。

会社の成長を止めるか、外部承継して成長を続けるか

廃業するということは、会社の成長をその時点で止めてしまうということです。一方で、外部承継すれば規模が拡大し、シナジー効果が生まれることで事業を成長させることができます。

今まで大切に育ててきた会社に愛着があればあるほど、それを終わらせてしまいたくはないという思いもあるのではないでしょうか。たとえ後継者がいなくても、事業を存続させるために外部に承継するという選択肢を一度は検討してみるのがオススメです。

 

事業承継の準備

ここでは、実際に事業承継を進めるためにはどのような準備が必要なのかを見ていきましょう。

現状把握

まずは、会社の現状把握に努めましょう。中でも重要なのは、後継者候補がいるのかどうかということです。親族の中に会社を任せたい相手がいたり、会社を継いでほしいと感じる従業員がいたりする場合は、早い段階で意思確認をする必要があります。相手に経営者になる意思がまったくない場合は、別の選択肢を考えなければいけません。

また、会社の財務状態や経営者の個人保証なども整理しましょう。後継者候補がいる場合は、このような作業を共に行うことで会社の現状を相手に伝えることができます。

会社を譲渡しやすい状態にする

第三者への承継を検討している場合は、会社を譲渡しやすい状態にしておくのがベターです。具体的には、採算の取れていない事業の整理やコンプライアンスの強化などの経営改善に手を付けるとよいでしょう。会社の魅力を向上させることで、承継する相手がスムーズに決まりやすくなるからです。

親族や社内の人物など関係者に承継したい場合も、会社の経営改善に向けた努力を重ねることで、相手に前向きに検討してもらえるようになる可能性は高まるはずです。

事業計画書の作成

会社を計画的に承継するためには、事業計画書の作成が必須です。事業計画書では、経営理念や中長期の目標を言語化したり、いつまでに後継者に引き継ぐのかといった期限を定めたりして、そのために必要な手続き等を視覚化していきます。

このような計画書を作成することで、経営の核となる様々な事項を後継者と共有することができます。また、今後いつまでにどのような手続きを進めればいいのかを整理できるため、関係者がそれぞれの行動を理解し着手することができるようになります。中小企業庁HPから記入例のPDFがダウンロードできます。(https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/shoukei20/q18.htm)

 

事業承継の注意点

事業承継を進めるときにはいくつかの注意点がありますが、中でも重要なポイントを見てみましょう。

後継者として任せられる適切な人材を見つける

まずは、経営者にとって最も大切なポイントです。

経営者は、後継者として信頼して会社を任せられる人材を見つけましょう。せっかく会社を存続させても、事業が傾いてしまっては意味がありません。適切に事業を存続できる人物を後継者にしたり、事業拡大に力を入れてくれそうな会社に売却したりできるよう、見極めが必要です。

親族や社内から後継者を立てる場合には、時間を割いて経営者になるための教育をするとよいでしょう。また、ほかの会社等に売却する場合には、できるだけ不満の残らない形で売却できるように契約前にしっかり交渉しましょう。

資金繰りに注意

次に、最もトラブルにつながりやすい金銭面とポイントです。

会社を承継する際、財務状態はしっかり確認し、後継者に伝えるようにしましょう。承継後に想定していなかった負債が発覚すると、経営が傾いてしまうこともあります。

また、事前に伝えていた財務状況と実際のものが異なる場合、表明保証違反によって損害賠償請求をされるリスクもあります。後継者のためにも、自身の引退後の生活のためにも不安な点はクリアにしたうえで承継するのが重要です。

 

事業承継時に知っていると助かるかもしれない制度

スムーズな事業承継を促進するために、種々の公的な制度が用意されています。必要なときに利用できるよう、概要を把握しておくとよいでしょう。

事業承継補助金制度がある

中小企業庁による、「事業承継補助金」という制度があります。これは、事業を承継したあとに経営革新や事業転換の取組を行う中小企業に対して、その経費の一部を補助する制度です。

事業承継の促進と承継後の新たな取組の支援が主な目的で、金銭的な支援を得ることで後継者が新たな投資をしやすくなるというメリットがあります。

事業承継補助金は申請したからと言って必ずもらえるものではありませんが、最近では徐々に採択率が上がっていて、かなりの応募者が実際に補助金を得ています。申請の期間は限られているので、こまめに中小企業庁のホームページなどで最新情報をチェックするとよいでしょう。

経営承継円滑化法

「経営承継円滑化法」とは事業承継を円滑に進めることを目的として定められた法律で、ポイントが2点あります。

1つめは、事業承継に際して公庫からの融資を受けられるという点です。事業承継では、経営資源を整理したり税金を納めたりするために様々な場面で資金が必要になります。そのような場合に、都道府県に申請をして認定を得ることで、日本政策金融公庫などから低金利で融資を受けたり信用保証枠を得て資金を借り入れたりすることができるようになるのです。

2つめは、納税が免除されるという点です。後継者が相続や贈与などで自社株式を取得したとき、そこにかかる税金の一部または全部が猶予されます。また猶予された税金は条件を維持することで免除になるので、後継者の納税負担が軽くなります。

ただし、後継者がその後5年間会社の代表者であり続けることなど一定の要件があり、これを満たさない場合は猶予されていた税金を全額納付しなければいけないので、注意が必要です。

 

事業承継の準備は早めに行おう

会社の経営者は、どこかのタイミングで必ず「事業承継」という問題に直面します。この記事ではその概要を解説しましたが、複雑で大変そうだと感じた方も多いかもしれません。

事業承継を成功させるために最も大切なポイントは、早めにスタートしておくことです。多くの経営者が実際の承継のタイミングより数年は前から取り組みを始めていることからもわかるように、後継者を選定したり経営状態を改善したりするためにはある程度の時間が必要です。

時間をかけて後継者を育成し、有利な制度を学ぶ機会を増やすためにも、早めの段階から計画を進めるのが大切です。準備期間をしっかり確保し、事業承継を成功させましょう。