ノウハウ

2018.10.22

小さな事業を売る「事業譲渡」という方法

▼事業の売却を検討する際、会社自体を売却する方法のほか、会社の一部を譲渡する「事業譲渡」という方法も選択肢となります。事業譲渡は、経営改善の手法としても、事業の現金化の手法としても活用できる半面、気をつけておくべき点も存在します。今回は、そのような事業譲渡の概要、メリット、デメリットを紹介します。

 

 

「先代から受け継いだ会社は残しておきたい」という想いも叶えることができます

 

株式譲渡と事業譲渡の違いとは

 

株式譲渡も事業譲渡も会社の事業を第三者に譲り渡すという点では共通しています。しかし、その対象となる範囲と法的な態様は異なります。

株式譲渡は、株式譲渡契約にもとづき、売主である既存株主がその保有株式を買主に譲渡し、会社の支配権を意味する株式自体を譲渡することです。つまり、株式譲渡は会社を丸ごと譲渡する方法であるということができます。

これに対して、事業譲渡は、事業譲渡契約にもとづき、会社が保有する特定の事業を譲渡することです。つまり、会社の事業部門や会社資産の一部を譲渡することが可能となるため、事業譲渡は会社の一部を譲渡する方法であるということができます。そのため、事業譲渡は売主が売却範囲を任意に選択できることになり、戦略的な目的で事業譲渡を活用することが可能となります。

 

事業譲渡のメリット

 

こうした特徴から事情譲渡には次のようなメリットがあります。

・会社を保有したまま一部を現金化

まず、事業譲渡は会社を丸ごと譲渡する方法ではないため、会社自体を手放す必要がありません。会社の経営権は保持したままで事業を譲渡するため、会社の資金余力が増すというメリットがあります。また、先代から受け継いだ会社なので譲りたくないという思いも叶えることができます。

・不採算事業を切り離すことが可能

事業譲渡は不採算事業の切り離しを行いたい際に活用できます。不採算事業であっても、買主によっては再生することが可能であったり、買主の事業とシナジーを生んだりする場合があります。不採算事業を切り離すことにより、会社の利益が押し上げられ、企業価値が高まることが期待できます。

・買主にとってもリスクが限定的

株式譲渡では、法人をそのまま引き継ぐので、仮にその法人に簿外債務などがあった場合、原則として買主がそのリスクを負担しなければなりません。これに対して、事業譲渡では対象となる事業の資産や負債が契約で明らかにされているため、買主に安心感を与えることができます。

 

事業譲渡のデメリット

 

・株主総会の特別決議が必要

事業の全部または重要な一部を譲渡する場合には、株主総会の特別決議が必要となります。特別決議では議決権の過半数を有する株主が出席して、その3分の2以上の多数で決議する必要があり、普通決議より要件が厳格です。ただし、いわゆるオーナー会社などの場合はそれほど障害にはならないでしょう。

・資産・負債の移転手続が煩雑

株式譲渡では法人をそのまま引き継ぐため、株式譲渡の前後において、資産や負債の帰属関係、契約上の名義などに変更はありません。これに対して、事業譲渡では資産や契約ごとに引き継ぎの手続が必要になります

たとえば、譲渡した事業に含まれる不動産などの資産は個々に所有権移転登記などの手続をしなければいけません。また、債務について個別に債権者の承諾を得る必要もあります。また、従業員にとっては、雇用主が変わることになるため、雇用契約などの労務関連についても従業員の同意を得て、個々に変更する必要です。

・許認可などの取得

事業譲渡の対象が許認可を要する事業である場合、受け入れ先の企業で新たに許認可を取得しなければならない可能性があります。株式譲渡では法人で取得している許認可に関しては改めて取得し直す必要はないが、事業譲渡では事業を行う主体が変更しているので手続が必要です。

以上のように、手続が煩雑になる面はあるものの、特定の事業だけを売却したい場合には事業譲渡の活用を検討すると良いでしょう。今回紹介した手続以外にも、事業譲渡では譲渡益に対して法人税が発生するため、譲渡価額その他の条件については専門家と十分に協議することが望まれます。