ノウハウ

2019.06.17

ROAとROEの違いとは?きちんと使い分けたい重要な財務指標

M&Aに興味をお持ちの方も、これから株式投資を始めようと考えられている方も、企業の財務諸表やその分析指標の用語の多さに苦労されているのではないでしょうか。
今回はその指標の中でも、ROAとROEという二つの指標について、それぞれの意味や違いを説明していきます。

ROAって何の指標?

ROAは主要な財務指標として広く活用されています。ここではその計算方法や意味を説明します。

ROAとは

ROAとは「return on assets」の略称で、総資産利益率と和訳されています。
企業の経営効率を表す指標の一つです。

ROAの計算式

ROAは「当期純利益÷総資産×100」で計算されます。

ROAから分かることとは

総資産に対する利益の比率を表した指標であり、「どれだけの資産を使ってどれだけの利益を生み出したか」が分かります。

利益が増えればROAは高くなり、総資産が増えればROAは低くなります。少ない総資産で多くの利益を生む企業がROAの高い企業、つまり経営効率の良い企業と判断されます。

ROAを高くするためには、無駄な資産を極力減らしながら利益率を上げていく必要があり、投入する資産と生み出す利益のバランスをしっかりとコントロールしなければなりません。

このように、ROAは企業の成長戦略の基本指標といえるもので、この指標を経営目標に掲げている企業は、こういった経営課題をしっかりと認識している企業だと判断できます。

ROAを見る際に注意すべき2つのこと

(1)借金による先行投資で指標は悪化してしまう

ROAを見る際に注意すべきことは、事業を拡大し利益を増やすため、借金を使って先行投資を実施した企業のROAは一時的に悪化してしまう、ということです。運輸業や大手小売業、レジャー施設など、事業の拡大や刷新のために大きな設備投資が必要な業種の場合、先行投資をすると固定資産が急増します。自前のキャッシュを元手にできれば総資産は増えませんが、借金で資金を調達した分は総資産が増加します。

一方で、設備が順調に稼働し、利益を生み、借金を返済するまでにはどうしてもタイムラグが発生します。先行投資は一時的な総資産の増加と利益の減少の原因となるため、ROAは悪化してしまうのです。とはいえ、先行投資は将来的にはROAの向上につながる施策ですので、こういった要因で一時的にROAが悪化している企業を、他社と比較して経営効率が悪い(あるいは過去と比較して経営効率が悪くなった)と判断することは正しい分析とはいえません。

貸借対照表の推移から建物や機械装置といった資産の増加額を確認し、多額の設備投資が見られる場合は、投資額を総資産から差し引いたROAを計算してみるなど、その影響度を調べておきましょう。また決算報告書には主な事業投資について記載されていることもありますので、投資内容も確認しておきましょう。

(2)本業に関係なく上下することがある

ROAは本業以外の要因で変動することがあります。保有している株や外貨の価値変動によって、本業の業績に関係なく資産価値が変動してしまうことがあるためです。
例えば企業が保有している株式の株価が上昇した場合、含み益*の増加は利益には反映されませんが資産は増加します。企業が外貨資産を保有している場合も、為替が円安に動くと、円換算した際の資産が増えることになります。どちらのケ-スでもROAの計算における分母が増えるため、ROAは下がります。

*含み益…所有する不動産や証券の価格が上昇することによって生じる、会計帳簿には現れない利益

こういった本業以外の要因による指標の変動が大きくなると、過去推移を正しく分析できなくなってしまうので、影響の度合いを把握しておきたいところです。これを見抜くためには貸借対照表の推移をチェックします。資本項目の「その他の包括利益」です。大幅に増減している場合は、その増減を総資産から差し引いてROAを計算することで、本業だけで見た経営効率の推移を把握できます。

ROEって何の指標?

ROEもROAと同じく、主要な財務指標として活用されています。ここではその計算方法や意味を説明します。

ROEとは

ROEとは「return on equity」の略称で、自己資本利益率と和訳されています。
企業の経営効率を表す指標の一つです。

ROEの計算式

ROEは「当期純利益÷自己資本×100」で計算されます。

ROEから分かることとは

自己資本に対する利益の比率を表した指標であり、どれだけの自己資本を使ってどれだけの利益を生み出したか、が分かります。

当期純利益が増えればROEは高くなり、自己資本が増えればROEは低くなります。少ない自己資本で多くの当期純利益を生む企業がROEの高い企業、つまり経営効率の良い企業と判断されます。

自己資本は出資者、つまり株主からの出資を元手にしています。ROEは株主にとって、出したお金がどれだけ効率的に利益を生み出しているかを表す重要な指標です。
この指標を経営目標に掲げている企業は、株主への還元を意識した経営をしているという点で、投資先として魅力のある企業だと判断できます。

ROEを見る際に注意すべき2つのこと

(1)借金を増やせばROEは高くなる

ROEを高くするためには、無理な借金をしてでも事業を拡大し、利益を増やすという方法があります。借金を増やしても自己資本は増えません。そして自己資本を増やさずに利益を増やせばROEは高くなります。つまり借金を元手にした資産を使って利益を増やすことができればROEが高くなるのです。

これは事業拡大の戦略の一つなので決して悪い手法ではありません。むしろROE向上のための基本戦略でもあります。しかし借金は自己資本と違い返済期限が決まっており、また支払利息の費用負担もあります。その借金が企業規模に見合うものかどうか、またその事業が確実に利益に結び付くのかどうか、といった判断は慎重にしなければなりません。

したがって、ROEだけを見るのではなく、貸借対照表の推移から、借金が増え続けていないかを確認することも大切です。借金の増加により自己資本比率が下がると、銀行からの融資条件も悪くなり資金繰りが厳しくなっていきます。ROEが高くても自己資本比率が下がり続けている企業は要注意と考えましょう。

(2)本業に関係なく上下することがある

ROEも本業以外の要因で大きく変動することがあります。これはROAと同様に保有する株式や外貨資産などの評価額の増減が、ROEの分母である自己資本に反映されてしまうからです。

こういった本業以外の要因による指標の変動が大きくなると、過去推移を正しく分析できなくなってしまうので、注意が必要です。

ROAと同じように貸借対照表の推移から資本項目の「その他の包括利益」を確認し、大幅に増減している場合はこれを自己資本から差し引いてROEを計算し、本業だけで見た経営効率の推移を把握しておきましょう。

ROAとROEの違い

ROAもROEも経営効率を表す指標です。ではその違いについて説明していきます。

ROAとROEの類似点

いずれも経営効率を表す指標で、どちらも分子を当期純利益としています。つまり、収益性を改善して当期純利益を増やせば指標の向上につながる、という点で似た指標といえます。

ROAとROEはどう違う?

ROAは分母が総資産、ROEは分母が自己資本という違いがありますが、これは何を意味しているでしょうか。

ROAは企業の全ての資産がどれだけの利益につながったかという、企業戦略そのものを表す指標です。そのため、この指標は投資家だけではなく取引先や銀行といったあらゆる利害関係者が注目する指標です。

一方、ROEは自己資本がどれだけ利益に直結したかを表す指標ですので、自己資本の元手である株主(およびその予備軍である投資家)にとって特に関心の高い指標です。投資家は株式投資に限らず、さまざまな投資先の利回りの高さとリスクの大きさを見計らって投資するかどうかを決定します。ROEはそういった投資家の判断基準として重要視される指標となっています。

このように、ROAとROEは指標を見る人によって位置付けや重要度が異なる指標です。

ROAとROEの使い分け

それでは、実際に指標としてこの二つを使い分ける時はどのように見たら良いのでしょうか。ROAとROEの違いを踏まえて、どのように使い分けるのかを具体的に説明していきます。

ROAとROEはどちらが重要?両方を見る必要はある?

ROAとROE、どちらが重要かは、その企業のM&Aを検討している人と、その企業への株式投資を検討している人とで違ってきます。しかしながら、どちらかだけを見ておけば良いというものではありません。

企業のM&Aを検討している人にとって、その企業の総合的な経営効率を見るためにROAは最も重要な指標の一つです。それに加えて、株主重視という今の時代の流れの中で、株主の要請にしっかりと対応することはM&A後の重要な経営課題です。ROEは株主や投資家が重視する指標ですので、M&A後の投資家からの関心を高めるために、ROEを意識することも大切です。

一方、投資家はROEを重視して投資効率の高い企業を投資先として探すだけではなく、継続的に利益を生み続ける、強い経営基盤を持つ企業を探す必要があります。そういった意味で、企業の総合的な稼ぐ力を表すROAは、投資家にとっても企業の経営基盤を測る目安となる非常に有意義な指標です。

見る人の立場によって重要度は違いますが、どちらも見ておくべき指標と考えておきましょう。

ROAとROEはどのように使い分ける?

いずれの指標も、主に以下のように使われています。

・同業他社と比較し、同業種におけるその企業の位置付けを理解する。
・その企業の過去推移を比較し、改善(悪化)傾向とその理由を理解する。
・業種別に比較し、業種による特徴や違いを理解する。

一方で、ROEは株主の持ち分である自己資本からどれだけの収益を得たのかを測るため、株主にとって重要な指標です。それに対しROAは他人資本を含むすべての経営資源を使っての収益性を測れることから、M&Aなど経営者視点での指標として使われます。ただし、ROEは資金の集まりやすさの指標になるため、ROEもM&Aにおいて重要な指標になります。

ROAとROEはどちらも重要な財務指標

ROAとROE、どちらも企業の経営効率を表す重要な財務指標です。まずはそれぞれの意味と違いを理解することが大切です。その上で、自分がどのような立場でその企業と関わろうとしているのか、それによってどちらの指標を重視すれば良いのかを整理して、しっかりと使い分けて活用しましょう。