今回は、「M&Aにおけるトップ面談とは?意味や目的、行われるタイミング」について、解説します。
通常のトップ面談とは、経営者同士が顔を合わせて商談やヒアリングを行う、ビジネス上、重要な局面であることは想像に容易いことでしょう。
では、M&Aにおけるトップ面談とは、どういった意味や目的、どのタイミングで行われるのでしょうか?
今回は、M&Aにおけるトップ面談についての、
①M&Aにおけるトップ面談とは?
②M&Aにおけるトップ面談の目的
③M&Aにおけるトップ面談が行われるタイミング
④M&Aにおけるトップ面談の内容
⑤M&Aにおけるトップ面談に向けた事前準備
※今回の記事のワンポイントアドバイスでは、「【トラブル防止!】M&Aにおけるトップ面談では必ず議事録をとるべし!」も解説していますので、是非、ご覧ください!
を中心に、解説していきます。
【監修者プロフィール】
スモールM&Aアドバイザー/ M&A支援機関登録専門家
伊藤 圭一(いとう けいいち)
「小規模企業と個人事業の事業承継を助けたい!」そんな想いから、2019年7月に小規模事業専門のM&Aアドバイザー「スモールM&Aアドバイザー・合同会社アジュール総合研究所」を設立。
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M&Aにおけるトップ面談とは?
M&Aにおけるトップ面談とは、売り手企業と買い手企業のトップ、つまり経営者同士が直接面談を行い、M&Aについての交渉やヒアリング等を行うことです。
M&A交渉において、ディールサイズ(案件規模)が大きいケースだと、まずは担当者レベルでの面談交渉からスタートしますが、小規模M&A(スモールM&A・マイクロM&A)の場合は、最初から経営者同士のトップ面談交渉となることが一般的です。
【参考記事はこちらから】
▼スモールM&AとマイクロM&Aとは?両者の違いとメリット・デメリットを解説
▼【完全攻略】事業承継とは?
M&Aにおけるトップ面談の目的
トップ面談の一番の目的は、売り手、買い手の企業文化や経営理念、ビジョンなどの確認であり、M&Aを実行する相手として相応しいかどうかの見極めを行うことにあります。
M&Aは、単に財務上の数字やビジネスモデルの親和性、相乗効果のみで検討されるわけではなく、「お互いの相性の良し悪し」がM&Aの成約を左右すると言っても過言ではありません。
特に、初動から経営者同士のトップ面談が実施されることの多い小規模M&Aの場合は、売却価格や条件の交渉よりも「お互いの相性」が判断材料とされる比重が大きく、お互いが気に入り、売却価格と条件が妥協できる範囲内であれば、そのまま成約に向けての交渉と手続きに発展する傾向にあります。
なぜならば、お互いの相性が良く、好意的であれば、その後の交渉も友好的のものとなり、M&Aプロセスもスムーズに進行させる事が可能になるからです。この点は、ディールサイズ(案件規模)の大小かかわらず、同様と言えるでしょう。
つまり、M&Aとは机上の空論だけでは成約足りえず、感情的な要素も含め検討されることから、トップ面談はM&Aプロセス上、非常に重要なファクターであると言えるのです。
M&Aにおけるトップ面談が行われるタイミング
トップ面談が行われるタイミングは通常、買い手が、M&Aマッチングサイトに登録されているノンネームシートを閲覧し、売り手に交渉打診を行い、両者間でメッセージのやり取りを行った後、前向きな検討が可能と判断されたタイミングで行われます。
一般的には、買い手から売り手に打診する事が多く、近年ではオンラインで実施する事が主流になっています。
また、M&Aアドバイザーが仲介業務を行っている場合は、秘密保持契約締結後、買い手がM&Aアドバイザーから提示された企業概要書を閲覧し、強い興味を持った場合、即時トップ面談が打診されることもあります。
特に小規模M&Aでは、トップ面談が即時打診されることが色濃い傾向にあります。
なぜならば、小規模M&Aの場合、金額に手ごろ感であり、買収合戦が熾烈なものとなる優良案件であれば、初面談後2~3カ月程で成約に至ることも珍しくはなく、それだけスピード感を持った交渉が求められるからです。
また、トップ面談は複数回行われることが一般的で、2回目以降のタイミングとしては、
・意向表明書の提示や、基本合意書の締結時またはそれらの前
・デューデリジェンス(買収監査)時
・最終条件の調整時
などが挙げられます。
【参考記事はこちらから】
▼M&Aの意向表明書とは?意味や目的、基本合意書(LOI)との違いなどを解説
▼デューデリジェンスの意味とは?目的や注意点を解説!
▼中小企業に特化した「バトンズDD(企業調査)」
つまり、M&A交渉における重要なプロセスのタイミングで実施されるわけです。
トップ面談は、回数を重ねるごとに売り手と買い手の親交も増していく傾向にあるので、M&A後の将来像の話題で話に花が咲くこともあり、M&Aアドバイザーとしては、何度も面談を行うことを推奨します。
また、必ずしも上記のタイミングのみで行わなければならないという訳ではありません。経営者同士の都合が合うようなら、必要に応じて何度でも実施し、リアルタイムで状況確認するようにしましょう。
M&Aにおけるトップ面談の内容
トップ面談は、初面談とそれ以降の面談によって内容が異なります。
それでは、それぞれの内容についてみて行きましょう。
初めてのトップ面談の内容
初面談の場合、初めての顔合わせとなるので、お互いに簡単な挨拶や自己紹介、経営理念、経営ビジョン、企業文化、将来像などビジネス的な部分に加え、経営者の考え方、人柄など企業としてだけではなく、経営者としての相性の確認も行います。
財務情報やビジネス自体を深堀した内容と言うより、M&Aを行う相手として相応しいかどうかを、お互いに見極める事を目的として行われるわけです。
お互いのアイスブレイク的な要素も多く、時には出身地や、趣味趣向の話題も織り交ぜて、親交を深める目的もあります。初面談においては、M&A交渉は行われず、あくまで「お互いの相性の確認」に主軸がおかれることが一般的と言うことを、覚えていて下さい。
2回目以降のトップ面談の内容
前のセクションでも解説した通り、2回目以降のトップ面談は、
・意向表明書の提示や、基本合意書の締結時またはそれらの前
・デューデリジェンス(買収監査)時
・最終条件の調整時
などのタイミングで行われます。通常の連絡事項のやり取りは、メールやチャットなどで行い、重要な場面は顔を合わせて実施するというイメージです。
内容もビジネス的な部分や財務情報の確認など、かなり深掘りしたものとなり、デューデリジェンス(買収監査)に近い内容となる事が一般的です。
もちろん、条件交渉や合意事項の確認なども本格的に行われるため、経営者として非常に難しい舵取りを迫られます。ここで重要なことは、初面談のように当たり障りのない内容だけではなく、お互いの言い分も素直に打ち明けることです。
なぜならば、お互いに何かしらのわだかまりがあったまま交渉が進み、M&Aが成約してしまった場合、後になって交渉中に生じていたフラストレーションをぶつけ合っても遅いからです。
トップ面談において、時には意見がぶつかる場面もあるかも知れません。
(この点、M&Aアドバイザーが仲介に入っている場合は、調整役をしてくれます。)
条件交渉においては、妥協する部分も出てくることでしょう。
しかし、妥協とは、お互いの意見を伝えあった上で生まれるものであり、我慢の上に成り立つものではありません。トップ面談においては、お互いの意見をしっかりと伝え合うことが重要ということを覚えていてください。
M&Aにおけるトップ面談に向けた事前準備
トップ面談はM&A交渉における重要なプロセスで実施されるという事は前述のとおりですが、それゆえ、事前準備にも力を入れておきたいところです。
ここからは、トップ面談に向けた事前準備について、売り手側・買い手側に分けて解説してきます。
売り手側の事前準備
まずはトップ面談に向けた売り手側の事前準備について解説します。
必要書類の収集と基本情報の確認
基礎中の基礎ですが、必要書類の収集と自社の基本情報の確認は必須です。
これらの例として、
・定款、株主名簿、財務資料、就業規則、各種契約書関係などの収集
・財務内容、ビジネスモデル、強み・弱みの確認
・業務内容の棚卸し
・経営上の問題点、M&A実行によるリスクの把握
などが、挙げられます。
上記で挙げたものの準備がおろそかになると、トップ面談の際、買い手からの質問にスムーズに答えることができず、せっかくの面談も台無しになってしまいます。
さらに、不正確な情報を買い手へ共有してしまったことで、誤った情報や誤解を生じさせてしまった場合、後々トラブルになる恐れもあります。
この点、経営者としてしっかりと頭に叩き込んでおくようにしましょう。
自社の状況をフレームワークで分析
ここからは、トップ面談における一歩踏み込んだテクニックを解説します。
会社や事業を高く売却するには、対象となる会社や事業を、どれだけ魅力的な売却案件であるかを買い手に訴求できるかにかかっています。
財務上、収益が出ており内部留保も潤沢であれば、買い手も優良案件と判断し、即買収準備に入りますが、売却案件の魅力度は数字からのみで計測されるものではありません。
買い手は、売り手企業の状況や将来性など総合的な見地から買収するか否かを判断します。魅力的な案件であるという事を理解してもらうためには、3C、4P、SWOTなど、フレームワークを活用した分析は非常に効果的です。
なぜならば、フレームワークを活用した分析結果で、M&Aによるシナジー効果を買い手に認識してもらい、自社を高値で買収してもらうよう働きかける事が可能だからです。
また、フレームワークを活用し、自社の魅力を買い手に伝えることは、安く買い叩かれないための予防線ともなるのです。
【参考記事はこちらから】
▼SWOT分析とは?やり方や活用方法を具体例とともに分かりやすく解説!
シナジー効果の分析
上記、フレームワーク分析を行うことで、自社の状況を深く理解できたことでしょう。
次にやることはシナジー効果を分析することです。
M&Aにおけるシナジー効果は、買い手が最も期待するところで、買収における醍醐味とも言えます。
買い手側もシナジー効果を考察した上で買収を検討しますが、売り手側からも自社を買収することにより期待できるシナジー効果をトップ面談時に提示すべきです。
なぜならば、買い手側が発見・想定していなかったシナジー効果をアピールすることで、案件評価を上げる可能性があるからです。
これについては、各買い手候補の状況にもよるため、何が買い手の心にヒットするかは一概には言えません。そのため、想定し得るシナジー効果を数多く列挙しておき、各買い手候補に提示できるものを予め準備しておくことが重要です。
買い手との交渉の中で、新たなシナジー効果を発見する事も珍しいことではなく、交渉が活性化する事で、M&Aの成約に一気に近づく事も期待できます。
【参考記事はこちらから】
▼シナジー効果とはどういう意味?各種類の特徴や3つのメリットも解説
ネガティブ要因の把握
フレームワーク分析は、シナジー効果等、自社のポジティブ要因のみを洗い出すものではありません。分析を行うことで、ネガティブ要因も見えてきます。
可視化されたネガティブ要因は当然、買い手へも提示しなければなりません。
売り手としては、M&A交渉を進めるうえで、売却価額の引き下げや、不利な条件を提示されるような情報も買い手に共有しなければならいことは多々あります。
それを嫌がり交渉が少しでも有利になるようにと、虚偽の情報を申告しては決していけません。
特に、デューデリジェンス(買収監査)時に調査人から受けたインタビューの内容は、デューデリジェンス(買収監査)レポートにも記録されます。
当然の話ですが、一度嘘をつくと後々つじつまが合わなくなるため、自分で自分の首を絞める結果となってしまいます。
確かに売り手側としたら、公表したくない情報もあるでしょうが、買い手側からしたら、今後自分の経営する事業のリスクは完全に把握しておきたいものです。
これについては、勇気を出して買い手に正確な情報をシェアしなければなりません。特に表明保証条項違反により損害賠償を受けることは、売り手にとって最大のリスクと言えますので、この点は要注意です。
むしろ、ネガティブな内容を積極的に買い手に開示することで好感を受け、交渉条件を譲歩してもらえることさえあります。ネガティブな情報であっても、虚偽申告は決してせず、買い手と調査人に正確な情報を伝える準備をすることが重要です。
【参考記事はこちらから】
▼M&Aにおける表明保証とは?役割や手続きなどをわかりやすく解説!
買い手側の事前準備
次は、トップ面談に向けた買い手側の事前準備について解説します。
売り手情報もう一度チェック
トップ面談に差し当たり、ノンネームシートや企業概要書が手元にあるはずです。当たり前の話ですが、それらすべての情報をもう一度全て見直してください。
そして、提示を受けた資料情報だけではなく、ホームページ、あれば代表者のSNS、商品サービス情報、その他、収集可能な情報をかき集め全てを頭の中に入れておいてください。ある程度、自分なりに資料で纏めておき、当日持参してもOKです。
なぜ、情報の再確認や派生した情報までを調査する必要があるのでしょうか?
それは、売り手の好印象を得るためです。
「この買い手候補、よくうちの事を調べているな」と、思われたら勝ちです。
これだけでも本気度や誠実性、信頼性を見せることができます。
特に優良案件の場合、買い手候補が殺到するため、トップ面談時に少しでも加点し、ライバルに差をつける必要があります。
たまにホームページやSNSに代表者の趣味などが掲載されている場合もあります。それら業務と関係のないことも調べておき、アイスブレイクに役立てると尚いいでしょう。
【参考記事はこちらから】
▼「ノンネームシート」と「企業概要書」とは?M&Aアドバイザーが詳しく解説
質問事項は事前にメールで送っておく
トップ面談の時間は大体1時間、長くても2時間です。全ての質問やヒアリングをしていては時間がいくら有っても足りません。工場や設備などがあれば、実際に見せてもらう必要もあります。
トップ面談の時間を有意義なものとするために、質問事項は事前にメールで送っておきましょう。
これは買い手だけではなく、売り手にとってもトップ面談の準備が可能となり非常に有効的です。なぜなら、予め質問事項に対する回答を考えておいてもらえるからです。
かなり踏み込んだ質問でも決して失礼には当たりません。なぜならば、本気で買収を考えているが故に詳細が知りたいからです。
丁寧な文面でお送りすれば、全く問題がありません。様式も簡単なもので大丈夫。エクセルで質問事項を列挙する程度でもOKです。
当日は印刷し、持参するといいでしょう。
売り手の業界をチェック
新規事業の買収であれば必須です。トップ面談当日、売り手の話についていくためにも、業界の勉強は必須です。また、買収が成功したならば、全くの異業種の経営をしなければならなりません。
ここで面談テクニックをご紹介すると、あらかたの業界知識を勉強してトップ面談に臨んだあなたは、売り手にあえて業界の質問を投げかけて下さい。
「業界も良く調べているようだし、興味津々のようだ」と、売り手に思わせることができます。
逆に知ったかぶりはいけません。売り手はこの業界で何十年も経営してきた、いわば百戦錬磨です。単なる一夜漬けの知識だけで、生半可なことを話すと、かえって悪い印象を与えることになる可能性もあります。
分からないことについては、素直に教えをこう姿勢が必要です。
「なかなかスジがいいかも?」と思われればOKです。
買い手のプレゼンテーション
買い手のプレゼンの用意も必須です。M&Aマッチングサイトでのファーストコンタクトでも既出でしょうが、面前でのプレゼンは、より売り手に響きます。
他の買い手候補に差をつけたいのならば、プレゼン準備を入念にしておきましょう。
・自社の事業の詳細
・買収動機
・買収後の経営方針
・期待できるシナジー効果
・資金調達方法
など、できればパワーポイントで作成しましょう。売り手にも検討材料が必要なのです。
必要資料を調べておく
M&Aに必要な資料をあらかじめ調べておきましょう。
・履歴事項全部証明書
・定款
・財務・税務資料
・不動産関係書類
・取引先や金融機関等との契約書
・許認可証
・保険関係書類
など様々です。これらは売り手の状況によって変わってきますが、ご想像されているよりもかなりのボリュームになります。事前に調査して、今後もらいたい資料をまとめておきましょう。
口頭ではダメです。必ず収集漏れが発生します。収集漏れを防ぐために、必ず一覧表を作成し、入手済み、未入手資料を共有できる環境を整える必要があります。
売り手からすると資料収集や共有はかなりのエネルギーを消費します。なるべく2度手間、3度手間のかからないように買い手からエスコートしましょう。
まとめ
以上、「M&Aにおけるトップ面談とは?意味や目的、行われるタイミングについて」を、解説しました。
今回の内容を、おさらいしましょう。
①M&Aにおけるトップ面談とは?
M&Aにおけるトップ面談とは、売り手企業と買い手企業のトップ、つまり経営者同士が直接面談を行い、M&Aについての交渉やヒアリング等を行うこと。
②M&Aにおけるトップ面談の目的
トップ面談の一番の目的は、売り手、買い手の企業文化や経営理念、ビジョンなどの確認であり、M&Aを実行する相手として、相応しいかどうかの見極めを行うこと。
M&Aは、単に財務上の数字やビジネスモデルの親和性、相乗効果のみで検討されるわけではなく、「お互いの相性の良し悪し」がM&Aの成約を左右する。
つまり、M&Aとは机上の空論だけでは成約足りえず、感情的な要素も含め検討されることから、トップ面談はM&Aプロセス上、非常に重要なファクターであると言える。
③M&Aにおけるトップ面談が行われるタイミング
トップ面談が行われるタイミングは、買い手が、M&Aマッチングサイトに登録されているノンネームシートを閲覧し、売り手に交渉打診を行い、両者間でメッセージのやり取りを行った後、前向きな検討が可能と判断されたタイミングで行われる。
また、トップ面談は複数回行われることが一般的で、2回目以降のタイミングとしては、
・意向表明書の提示や、基本合意書の締結時またはそれらの前
・デューデリジェンス(買収監査)時
・最終条件の調整時
など、M&A交渉における重要なプロセスのタイミングで実施される。
④M&Aにおけるトップ面談の内容
トップ面談は、初面談とそれ以降の面談によって内容が異なる。
初面談の場合、初めての顔合わせとなるので、お互いに簡単な挨拶や自己紹介、経営理念、経営ビジョン、企業文化、将来像などビジネス的な部分に加え、経営者の考え方、人柄など企業としてだけではなく、経営者としての相性の確認も行う。
2回目以降のトップ面談は、ビジネス的な部分や財務情報の確認など、かなり深掘りしたものとなり、デューデリジェンス(買収監査)に近い内容となることが一般的。
初面談のように当たり障りのない内容だけではなく、お互いの言い分も素直に打ち明けることが重要。
【参考記事はこちらから】
▼デューデリジェンスの意味とは?目的や注意点を解説!
⑤M&Aにおけるトップ面談に向けた事前準備
【売り手側の事前準備】
・必要書類の収集と基本情報の確認
・自社の状況をフレームワークで分析
・シナジー効果の分析
・ネガティブ要因の把握
【買い手側の事前準備】
・売り手情報もう一度チェック
・質問事項は事前にメールで送っておく
・売り手の業界をチェック
・買い手のプレゼンテーション
・必要資料を調べておく
当然の話ですが、経営者の本来の役割は、M&Aを進めることではなく、事業の業務を遂行することにあります。
お互い本業で多忙の中、貴重な時間を割いて行われるトップ面談です。M&Aをトラブルなく成約させるには、そんな中でも、密度が濃く、効率的に面談を行う必要があります。
今回の記事を閲覧頂いたことで、有意義なトップ面談が行われたら幸いです。
スモールM&Aアドバイザー「合同会社アジュール総合研究所」伊藤氏からのワンポイントアドバイス!
こんにちは!この記事を監修させて頂きました、スモールM&Aアドバイザー「合同会社アジュール総合研究所」代表の伊藤と申します。
ここからは、スモールM&A専門家である、わたくし伊藤が、M&A実務に即した、成約に大きく前進するためのアドバイスと注意点などを、なるべくわかりやすく(そして、くだけた感じで?)スモールM&Aの現場の経験をもとに解説していますので、是非、ご刮目下さい!
はいっ!
今回は、「M&Aにおけるトップ面談」について解説しました。
売り手側でも買い手側でも日頃より業務上、クライアントとの面談を行っている方であれば、そんなに難しい話ではなかったのかなと思います。
記事の内容も、商談方法やビジネスマナーの心得のある方であれば、すんなり頭の中に入って来たんじゃないですかね? そういった方であれば、普段からクライアントと行っている面談方法をM&Aの面談に置きかえれば、トップ面談もうまくいくと思います。
M&A初心者の方であっても、場数を踏めばM&A交渉も上手になって行きますので、どんどんトップ面談の打診をして行きましょう!
ですが、業務上あまり面談を行わない方も多いと思うんですね。
特に、個人M&Aでの独立を目指している方などは、商談とは縁遠い部門や業務を行っている方もいるので、慣れてないとトップ面談を打診するのもされるのも抵抗感があると思うんですね。
今回記事の内容は、そんな方にも読んでいただきたい基本的な内容だったので、トップ面談に臨む前には、再度読み返していただきたい内容でした。
まあまあ、基本的な部分は上段で解説したとして、今回も一歩踏み込んだことを解説したいと思います。
ここで私から皆さんにご質問ですが、普段メモって取ってますか?
会議や講義、セミナーのメモ。なんでもいいですよ。とにかく重要だなって思ったことはメモるべきだと思うんですね。
人間って忘れやすい生き物なので、非常にアナログな話ですけどメモを取るって結構重要だったりするんです。
トップ面談はM&A交渉上、重要なプロセスと言う事は常々ご説明してきたわけですが、それだけに面談内容の議事録は必ず取って欲しいんですね。
というのも、交渉事ってM&Aにかかわらず、言った言わないや、誤解などのトラブルってかなり多いんですね。それの予防策として、議事録って非常に有効なんです。
それ以前に、ビジネスマナーとして当然にやるべきこととも思いますし、ここはひとつ初心に立ち返って、トップ面談内容はメモる!
もう一度いいですか? 議事録は必ず取る!
ダイジですよ~!!!
ということで、今回のワンポイントアドバイスは「【トラブル防止!】M&Aにおけるトップ面談では必ず議事録をとるべし!」を解説していきます!
【トラブル防止!】M&Aにおけるトップ面談では必ず議事録をとるべし!
ではでは、M&Aにおけるトップ面談での議事録が必要であることについて解説していきましょう!
今回解説するポイントは以下の2つです!
①議事録を取って、そのまま基本合意書を作成!
②議事録を取ることで本気度や熱意をアピールする
それでは順に、ご説明しましょう!
①議事録を取って、そのまま基本合意書を作成!
M&Aの成約とは、最終譲渡契約書を締結し、クロージング作業が完了し、譲渡資産の明け渡しを行い、譲渡代金が決済されて初めて成立されるものです。
ここがM&Aの最終プロセスである、「クロージング」の部分となりますが、M&Aプロセス上、中間的なプレ契約として「基本合意書の締結」をすることが、一般的なんですね。
基本合意書の締結。これもまたM&Aプロセスにおいては非常に重要な局面で、合意締結後は、デューデリジェンスや最終条件の調整・合意、最終譲渡契約書の作成など、クロージングに向けてのプロセスが一気に進行します。
【参考記事はこちらから】
▼M&Aの意向表明書とは?意味や目的、基本合意書(LOI)との違いなどを解説
では、この基本合意書の内容っていったい何に基づいて作成されるんですかね?
言い方を変えましょう。何を「合意」するんですかね?
売買金額やら諸条件ですよね。
では、この売買金額やら諸条件はどこで決定しますか? どうやってお互いに合意しますか?
トップ面談の時ですよね。時にはメールや電話で決定するかも知れませんが、重要なことってやっぱりお互いの顔を突き合わせて、対面で話しますよね?
その「重要事項(合意事項)」を決めるトップ面談の協議内容ってメチャクチャ大事ってことですよね?
ならば、トップ面談で議事録を取るって必須だなって思いませんか?
先ほどもお話ししましたけど、交渉事ってM&Aにかかわらず、言った言わないや、誤解などのトラブルってかなり多いんですね。
最終譲渡契約書の条文には「完全合意」という条項が付くことが一般的なんですが、この「完全合意」の条項の意味って、ざっくりいうと、
って、ことなんですね。なので、合意事項の抜け漏れって絶対にあってはならないんですね。
では、お互いに取り決めた合意事項の抜け漏れを防止して、誤解がないように確認し合うためには何が必要ですか?
トップ面談内容の議事録ですよね。
この内容が、そっくりそのまま基本合意書の内容(基本合意事項)になるわけですよね。
極端な話。基本合意書の締結後、デューデリジェンス時になんの問題もなく、そして、最終条件の調整・合意も全くもめることもなく、すんなりそのままの売買金額と諸条件で決まる場合、最終譲渡契約書の内容は、基本合意事項の内容と遜色のないものになるわけですよ。
逆に言うと、トップ面談時の議事録をしっかり取って、M&Aマッチングサイトからダウンロードした基本合意書の雛形に当て込めば、交渉内容を正確に反映させた基本合意書が完成するわけですよね。
※細かい修正もあると思うので、内容の確認は必須ですよ!
議事録を取るって面倒くさいと感じている方っていっぱいいると思うんですね。
だけど、どうでしょう?
真面目にトップ面談の議事録を取ってたら、基本合意書ができちゃいましたよ! その基本合意書の内容をもとに、最終条件の調整・合意を反映させたら、最終譲渡契約書もできちゃいましたよ! しかも、交渉内容の抜け漏れがない、そして、今後のトラブルも防止した内容で!
これってすごいことですよね! しかも、単純な話だったでしょ!
と、言いたいところですが、作成した後に、いざ売り手・買い手、双方で内容を確認してみると、色々と修正してほしいとか要望は出てくるんですけどね。
(こういうところがM&Aの難しいところなわけでして・・・)
ただ、M&Aプロセスというのは複雑で時間を要します。
少しでも効率よく、そして抜け漏れ・トラブル防止のためには議事録作成は絶対です。
トップ面談の際は、必ず議事録を作成しましょう!
②議事録を取ることで本気度や熱意をアピールする
ここは心情的な部分になりますが、M&Aって本気度や熱意を示すって、とても大事なんですね。
特に小規模M&A(スモールM&A・マイクロM&A)の場合、最初から経営者同士のトップ面談で始まるので、この点のアピールって本当に重要になってきます。
【参考記事はこちらから】
▼スモールM&AとマイクロM&Aとは?両者の違いとメリット・デメリットを解説
売り手側は複数の買い手候補とのトップ面談を実施することが多く、買い手は何かとほかの買い手候補と比べられてしまうわけです。
買い手の準備のセクションでも話しましたが、何か一つでもライバルに差をつけていかないと買収が難しくなってしまうわけですが、トップ面談の際、メモを取っているのとそうでないのとでは、売り手側の印象って全く違うものになるんですね。
やっぱり、せっせと手を動かしてメモを取っている方が良い印象を与えるわけで、本気度や熱意も伝わります。
「えっ!こんなことが!?」と、思うかも知れないですけど、私の立会いの下でトップ面談を実施した際は、終了後、必ず売り手・買い手と個別面談を行い、感想戦をするんですね。
売り手側との個別面談をしてみると、買い手側のトップ面談に取り組む姿勢ってよくよく観察されているんですね。
会話中に相槌が多いのももちろんですが、熱心に売り手の話に耳を傾けてメモを取る姿って、安心感も与えるわけで、
「この人しっかりしているな。この人ならウチの会社を譲っても安心かも?基本合意書を取り交わしてもいいかも(※つまり、独占交渉権を付与してもいいかもと言うこと)。」
って、感じるわけです。
【参考記事はこちらから】
▼M&Aにおける独占交渉権と優先交渉権とは?意味や目的を専門家が解説
売り手側って、M&A交渉中は常に不安なんですね。
「本当にうちの会社を買ってくれるのか?」
「譲渡した後に、従業員や取引先を大切にしてくれるのか?」
「ちゃんと譲渡代金は払える人なのか?」
など、挙げればきりがありません。
そんな暗闇の中でも、買い手から誠実さを示されると、ある意味「光」にも感じるんですね。
本気度や熱意を見せること。これの効果って結構大きくて、金額交渉にも快く応じてくれることもあるくらいなんですよ。
議事録を取るだけで印象が良くなり、ライバルに差をつけられ、条件も緩和される可能性もでるなら、やらない手はないですよね!
本当に基本的な、単なるビジネスマナー程度の事なんですが、トップ面談の議事録。
必ずやってみてください!
今回記事の「まとめ」の「マトメ」
以上、「【トラブル防止!】M&Aにおけるトップ面談では必ず議事録をとるべし!」を解説しました。
トップ面談時、議事録をとることの重要性が分かっていただけたのではないでしょうか。
ここで一つ注意事項!
議事録は、「紙とペン」でとって下さい。
どういうことかと言うと、議事録をパソコンに打ち込む方もいますが、パソコンばっかり見ちゃって相手のことを見れてないんですね。
相手の顔を見ないで話すのは、良い印象を与えないですし、交渉中って相手の反応を見るというのも非常に重要なんですね。
交渉内容に肯定的か?否定的か?
ここら辺、どういった反応を示したかを見落とすことにもなるので交渉を失敗する原因にもなりますよ。
また、ボイスレコーダーも良くないですね。これは単純に、「感じワル~」って、なります。それだけではなく、お互い委縮しちゃって本音で話せなくなるんですね。
冒頭でもお話ししましたが、トップ面談の一番の目的は、「お互いの相性の良し悪し」を見ることなんですね。
この2つの方法で議事録をとることは、絶対に禁止というわけではないですし、ボイスレコーダーについては、むしろ正確性もあり、抜け漏れ防止にもなりますが、相手方に良い印象を与えるかと言うと、そんなことはないと思うんですね。
「う~ん、なんかこの人なぁ~」って、なるとその時点で、友好的な交渉は難しくなってしまうので、M&Aアドバイザーとしては、やっぱりおススメしないですね。
少し話がそれますが、気遣いというができるかどうかって相手にも伝わるんですね。
案外、金額や条件よりも、ここら辺を重要視する売り手ってたくさんいるんですよ。
(案件情報で、希望売却価額「応相談」って、なってる案件はその傾向が強いです。)
結論、相手を気遣いリスペクトしたうえで、トップ面談にのぞむと言うことが、最重要だと思うんですね。
面談に慣れていない方は、トップ面談って非常に緊張するものだと思います。面談相手が、こういった状況であったならば、手を差し伸べてあげてください。助け合ってみてください。
それが自然にできる相手であるならば、その方がM&Aのパートナーとして、相応しい方ですよ!
今回のワンポイントアドバイスでは、「【トラブル防止!】M&Aにおけるトップ面談では必ず議事録をとるべし!」について解説しましたが、今後もM&A実務に即したネタをご紹介しますので、これからもご覧いただけますと幸いです。
また、この記事が良かったなと感じたら、SNSでのご紹介をお願いします!
最後に、みなさまのM&Aが、安全にご成約されることを心よりお祈り申し上げます。
また次の記事でお会いしましょう!
それでは!
【監修者プロフィール】
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