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2024/03/25

傷病手当金の様式が「立替金」勘定に及ぼす影響

記載者情報
■休職期間中の社会保険料
2023年1月に全国健康保険協会(愛称「協会けんぽ」)の傷病手当金支給申請書の様式が変更されています。旧様式には受取代理人の欄がありましたが、現様式では削除されています。 傷病手当金は、被保険者(休職者)に直接支給されるのが原則です。ただし、旧様式では、この受取代理人の欄を用い、被保険者の委任の元、事業主が代理受領することができました。 休職につき給与額が0の場合、社会保険料を控除することができません。そこで、事業主が傷病手当金を代理受領し、被保険者の同意の元、社会保険料(および住民税)を控除した上で、残額を被保険者(休職者)に支払うという方法に使われていました。社会保険料(被保険者負担分)の確実な回収のためです。
■「立替金」勘定に及ぼす影響
 現様式では、この方法をとることができません。よって、休職中の被保険者から事業主に対し、社会保険料を振り込んでもらう必要があります。「休職中なので、会社からの連絡はプレッシャーです。」「復職後、給与から(または賞与から)まとめて控除してもらえませんか。」と避けられているうち、立替金は溜まっていきます。  たとえば、標準報酬月額が40万円の場合、社会保険料(被保険者負担分)は1ヶ月約6万円です。1年6ヶ月溜めてしまうと約108万円です。復職したとしても容易に控除し終える金額ではありません。ましてや「復職する」「しない」「させない」と揉めた場合には、回収さえできないことが想定されます。毎月督促し確実に回収することが、管理部門の業務ということになります。  つまり、管理部門が能動的に回収をしない限り、「立替金」は膨らみやすい勘定科目になっているといえます。DD(デューデリジェンス)の際、勘定科目「立替金」に休職者・退職者の社会保険料未回収額が含まれている場合には、回収可能性の精査が必須といえます。 問い合わせ先:中小PMI支援センター株式会社 コンサルタント 社会保険労務士 松田 茂樹 e-mail:info@pmis.jp
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