M&A
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2024/09/17

M&Aによる事業拡大とPMI

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はじめに
 後継者がいない会社の事業承継の方法として第三者への会社譲渡(第三者事業承継)が中小企業でも増えています。売り手がいるということは一方で、M&Aによる事業拡大を狙っている買い手会社も増えているということになります。本稿では、M&Aの買い手会社にとっての戦略目的と留意点について、解説します。
事業成長にかかる時間とコストの削減
 買い手にとってのM&Aの目的として、「時間を買う」「コスト削減」が挙げられます。既に実績を持つ企業を迎え入れることで、短期間で市場のシェア獲得や新規事業への参入が実現します。スケールメリットを生かして、仕入コストの削減や大量生産によるコストの引き下げなども期待できます。
弱みを補い強みを融合するシナジー効果の獲得
 M&Aの買い手にとっては、自社の弱みを補い、強みを伸ばすことが可能になり、事業規模の拡大以上のシナジー効果を実現できる可能性があります。例えば、買収会社の商品を既存の市場に向けて販売したり、既存製品を買収会社の新たなチャネルに向けて販売することにより、1+1=2以上の売上拡大が期待できます。また、社内のリソースやイノベーションの増加により、新たな商品やサービスが生まれる可能性も生まれます。
新規事業参入による事業の多角化
 ゼロからのノウハウ蓄積や技術の開発、人材の獲得、新規顧客開拓などのコストやリスクを押えながら、新商品分野や新市場分野に参入ができ事業の多角化が図れます。事業の多角化は経営リスクの分散にもつながり、経営基盤の安定化や持続的な成長基盤が築けます。
留意点-戦略目的の明確化とPMIの重要性
 ただし、こうしたM&Aの経済効果を実現するためには、M&Aのクロージング前からM&Aの戦略目的を明確化しておくことや(初期検討)、経営統合の方向性の整備、売り手会社との信頼関係の構築(プレPMI)、基本合意後速やかに業務統合の準備を開始するなど前倒しでPMIを進めていくことが重要になります。  M&Aの成功は取引の成立ではなく、戦略目的を達成することです。そのためには、M&A戦略立案時から戦略目的を明確化し、PMIまでの一連の取組を実施していくことが鍵になります。戦略立案からM&A、PMIまで自社のみでは難しい場合は、必要に応じて、専門家の助言を借りることも重要です。お気軽に当社までお問合せください。    問い合わせ先:中小PMI支援センター株式会社 コンサルタント            中小企業診断士 村上豊 e-mail:info@pmis.jp
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