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2024/11/28

SDGsと相性の良い事業承継

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遅れているSDGs
 「SDGs」。この言葉は最近耳にすることが増えたのではないかと思います。ジャケットの襟にSGDsのバッチをつけているサラリーマンの方もよく見かけるようになり、かなり浸透していることを実感します。ただ、実は今2030年に達成を目指す各目標に届かなさそうだということはご存じでしょうか。例えば、国民の貧困率を2030年までに2015年と比較して半減できる国は、3分の1にとどまる見通しです。SDGsの取り組みが遅れているのです。(※1 国連プレスリリース)  17のゴールと169のターゲットの達成に向けて2030年までに達成すべき具体的な目標を立てました。それが「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」です。「持続可能」、企業で言えば、ゴーイング・コンサーン(継続企業の前提)となるでしょうか。このSDGsの目標に対し取り組む企業も多くなってきました。最近では、SDGsの取り組みが企業価値向上となるため、企業理念と重ね、パーパスやミッション・ビジョンと組み合わせ、その目標に向けてバックキャストで経営戦略の策定に取り組む企業も増えてきました。企業理念に沿った少し先の経営目標とSDGsのゴールとを結びつける考え方で進められているようです。
SDGsと相性の良い事業承継
 経営理念に基づくSDGsの取り組みを長期経営計画の策定と重ねあわせた考えですが、私自身、SDGsのプロジェクト事業に関わっている経験から、事業承継と相性がいいと感じております。  そもそも事業承継には時間が掛かり、事業承継の意思を伝えてから新しい経営者が就任するまでの期間に5年以上かかるケースが全体の約32%という統計もあります。(※2:2021年中小企業白書より)  実は、この事業承継にあたり、10年間の計画を立てる『計画書』があるのをご存じでしょうか?それが「事業承継計画書」です。この計画書は、現経営者が次期経営者と共に10年後の自社に向けて、以下の5つのステップで進めると記されています。 ① 事業承継に向けた準備の必要性を認識 ② 経営状況、経営課題等を把握し(見える化)、 ③ 事業承継に向けた経営改善を行う(磨き上げ)、 ④ 課題に向けてのアクションを定める(事業承継計画を策定)、 ⑤ 事業承継を実行(※3 2017年中小企業白書より)  一方で、SDGsは2030年を目標とし長期的なビジョンを定め、その中で持続的な開発目標に向けて取り組みます。SDGsにおける環境保護、社会的責任、ガバナンス(いわゆるESG経営経営の視点)などの目標は、事業の安定性と持続可能性を高める経営戦略となります。ここには、企業理念から経営戦略、次の時代も見据えた計画などが含まれます。その時間の流れから、経営者が変わる時期も含まれることは想像に難くないでしょう。SDGsと事業承継との相性は良く(進むべき方向性)、同じ考えで取り組むことが多くなるわけです。
「事業承継計画書」の内容
 事業承継計画書はいくつかのフォームもありますが、「事業承継ガイドライン」や東京都の事業承継促進事業で使われるフォームは一般的で使いやすいものです。この計画書は計画期間を10年のスパンで考えており、事業承継に向け以下の5つのポイントがあります。 ①会社の中長期目標の設定(今後の事業の方向性、将来の売上・利益目標など)、 ②現経営者の行動の設定(後継者選定や専門家への相談など)、 ③後継者の行動の設定(社内外の研修、実務経験)、 ④会社としての行動の設定(定款の変更、経営者への退職金支給)、 ⑤関係者との事業承継計画の共有 これらを10年程度の期間で取り組みます。①の会社の中長期目標の設定は、SDGsの1~16までの目標に結びつき、17番目の「パートナーシップで目標を達成しよう」に結びつくわけです。  10年後となりますと、小学6年生が大学を卒業する年齢となり、このコラムを読まれている方の会社に就職を希望する学生がいるかもしれません。そんな学生から見ても、魅力ある会社にする準備がSDGsと共に考える事業承継となるのではないでしょうか。 出典、参考文献 ※1 『持続可能な開発目標(SDGs)報告2023:特別版』発表に関するプレスリリース(2023年7月10日付・日本語訳) | 国連広報センター (unic.or.jp) ※2  2021年 中小企業白書 「第2-3-30図」 事業承継の意思を伝えられてから経営者に就任するまでの期間 04Hakusyo_part2_chap3_web.pdf (meti.go.jp) ※3 2017年 中小企業白書「第2-2-2図」事業承継に向けたステップ 04Hakusyo_part2_chap2_web.pdf (meti.go.jp) 問い合わせ先:中小PMI支援センター株式会社 コンサルタント 中小企業診断士/文書情報管理士 森 彦明 e-mail:info@pmis.jp
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