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M&Aにおける表明保証とは?役割や手続きなどをわかりやすく解説!

2022年11月03日


【監修者プロフィール】


株式会社LifeHack 代表取締役/ M&A支援機関登録専門家
冨田修平(とみたしゅうへい)

一般社団法人茨城県事業承継センター 代表理事/
横浜国立大学経済学部卒業。大学卒業後、地元茨城県の税理士法人勤務を経て、2018年株式会社LifeHackを設立。
中小・零細企業のM&A支援業務に特化し、第三者M&Aに関しての啓蒙活動にも注力している。
会社HP:https://www.mangama.jp/

 

表明保証とは

表明保証の目的

M&Aにおける表明保証とは、契約の当事者である売り手・買い手が、それぞれ相手方に対して、交渉の中で伝えてきた情報や開示してきた資料が正しいことを表明し、保証することを指します。契約の当事者同士が表明保証をすることによって、売り手・買い手それぞれのリスクを分担することが可能になります。

 

表明保証の重要性

M&Aにおける契約書(株式譲渡契約書、事業譲渡契約書等)において、最も重要と言っても過言ではない条項がこの表明保証に関する条項となります。そのため、最終契約時に締結する事業譲渡契約書、株式譲渡契約書には、必ずと言っていいほど表明保証に関する条項が盛り込まれています。

契約書を作成する専門家(M&Aアドバイザー、弁護士など)の間でも、表明保証条項にどのような内容を盛り込むのか、契約書の最終調整の段階でも非常に重要な交渉となります。

 

表明保証の内容

表明保証の内容として、どの様なものが表明・保証されることになるのでしょうか。

売り手・買い手によって、表明保証する内容や項目は異なります。下記に、売り手・買い手それぞれにおける代表的な表明保証の内容、項目を列挙致します。

 

[売り手の表明保証の例]

  1. 適法に存在している法人である(売り手が法人の場合)
    違法に設立された法人でないこと、架空の法人格ではないことを表明するもの
  2. 許認可について適法に取得している事業者である(許認可を持っている事業者の場合)
    違法に取得した許認可でないこと、架空の許認可ではないことを表明するもの
  3. 反社会的勢力ではないこと
    売り手、売り手の役員等が反社会的勢力と関係がないことを表明するもの
  4. 財務資料は正しく作成されたものであること
    交渉の過程で開示した決算書類や会社情報などが、正確であり適法に作成されたものであることを表明するもの
  5. 簿外債務がないこと
    決算書等に記載のない債務がないこと、発生しそうな債務がないことを表明するもの
  6. 紛争・訴訟がないこと
    取引先や従業員との間で、訴訟や紛争となっている事案がないこと、訴訟や紛争となりそうな事案がないことを表明するもの
  7. 税金等の滞納がないこと
    法人税、消費税、固定資産税などの税金や、健康保険料や年金保険料などの社会保険料などに関して、滞納がないことを表明するもの

 

[買い手の表明保証の例]

  1. 適法に存在している法人である(買い手が法人の場合)
    違法に設立された法人でないこと、架空の法人格ではないことを表明するもの
  2. 許認可について適法に取得している事業者である(許認可を持っている事業者の場合)
    違法に取得した許認可でないこと、架空の許認可ではないことを表明するもの
  3. 反社会的勢力ではないこと
    買い手、買い手の役員等が反社会的勢力と関係がないことを表明するもの

 

上記が全てではありませんが、一般的にはこの様な項目が表明され、保証されることとなります。ご覧になって頂けると分かる通り、特殊なものはあまりなく、普通に運営していれば特段問題となる様な項目は少ないです。

そして、買い手の表明保証する事項よりも、売り手が表明保証する事項の方が多く、細かくなることが多いです。売り手によっては、自信を持って表明できることと、あまり自信はないけど表明すること、内容によっては表明保証までは出来ないことが発生するという場合も多いです。

 

表明保証違反となった場合

表明保証した事項に違反があった場合、どうなってしまうのでしょうか?

表明保証違反に対するその後の対応については、大きく2つのケースが想定できます。

⚫︎損害賠償費用の支払いが発生する

⚫︎契約が解除となってしまう

 

違反事項の内容やそれに伴う損害の金額にもよりますが、実務的にはよほど悪意のある違反(決算書類を改ざんしている、本当は知っているマイナスの情報を内緒にしている、など)でない限りは、各当事者が負担すべき金額で調整するといった対応となることが多いです。

実際には、売り手が意図的に違反しているケースよりも、財務や法務の知識が浅く、無意識に事実と違うことを表明してしまったりするケースの方が多いのが現状です。また、細かい差異や違反事項に関しては、訴訟にかける労力や時間を鑑みて、買い手側が泣き寝入りするケースも多い様です。

 

表明保証の注意点

売り手が注意するポイント

上記を踏まえ、売り手・買い手が表明保証をする際に注意すべきポイントを解説します。まず、売り手が注意すべきポイントですが、自信を持って表明保証できない事項については事前に正直に伝えておく、説明しておくことです。

懸念点を説明せず、何となく正しいものとして表明保証したにも関わらず、後で事実と異なることが判明した場合のマイナスや買い手からの印象の悪化は大きいものとなります。

それであれば、事前に把握できている懸念点がある場合には、それらの事項については表明保証の対象から除外しておくことが望ましいでしょう。そうでもしておかないと、大きな損害賠償を請求されてしまうリスクがあります。

 

買い手が注意するポイント

買い手が注意すべきポイントは、売り手がどこまで理解して表明保証しているかを把握することかと思います。例えば、契約書の表明保証事項に関して、売り手オーナーのみしか確認していない場合、条文の意味や単語の意味を理解しないまま、何となく進めてしまっているケースがあると思った方が良いと思います。

顧問弁護士の先生などがフォローして下さっている、契約書確認を実施してくれている、そんなケースであればしっかり確認されている、そんな見立てを行うことが可能です。

また、交渉を有利に進めるためのポイントとして、売り手から表明保証事項の除外項目があまりに多い場合などには、譲渡金額について減額交渉の材料とするのも良いでしょう。

 

表明保証保険とは

どれだけ売り手・買い手が注意をしていても、お互い人間です。予想だにしていなかった問題が発生してしまう、見過ごしてしまっていた問題が顕在化してしまう、そんなケースもあるでしょう。そんな時に、売り手・買い手を守る保険があります。それが「表明保証保険」です。

 

表明保証保険の概要

表明保証保険とは、損害保険の一種で、売り手・買い手がそれぞれ表明・保証した事項に違反があり損害が発生した場合に、その損害をカバーする事が出来る保険です。一般的に保険料を負担するのは買い手サイドとなり、保険料の金額は設定した保険金額の1〜5%前後となっております。

この表明保証保険ですが、日本では最近でこそ保険各社がこぞって発売を開始してきておりますが、ひと昔前はあまり一般的ではありませんでした(欧米などでは昔から一般的だった様です)。

これまで日本で普及してこなかったのは、保険料の見積もりを取るのが大変で、見積もりを行うだけでも数100万円の費用が必要であったり、保険料自体が割高すぎたからです。最近ではだいぶ保険料も安くなっており、加入する売り手・買い手や、加入を推奨するM&A仲介会社なども増えてきています(バトンズでも、バトンズDD✳︎を実施した買い手様に対して、自動的に保険を付加しています)。

国としても表明保証保険の普及に関して支援しており、M&A専門家への費用が対象となる事業承継・引き継ぎ補助金においても、補助金の対象になっています。

✳︎バトンズDDについての詳細はこちら↓

 

表明保証保険を活用するメリット・デメリット

この表明保証保険の良いところは、保険によって助かるのは売り手も買い手も両方である点です。

売り手、買い手、それぞれのメリット・デメリットは以下の通りです。

 

売り手のメリット・デメリット

表明保証保険を活用することでの売り手のメリットは、後々発生するかもしれない意図しない損失を保険でカバーできる点です。仮に保険に加入せずに契約を締結し、数ヶ月後に表明保証違反を指摘された場合、数百万円、場合によっては数千万円の損害を賠償するリスクがあるのです。

表明保証保険を活用することでの売り手のデメリットは、顕在化している問題に関しては保険が適用できない点です。生命保険を例に考えると分かりやすいのですが、病気の人が保険に保険に加入できないのと同様に(がんの方はがん保険に入れないなど)、表明保証違反がすでに顕在化している場合には、保険自体に加入できないのです。

 

買い手のメリット・デメリット

表明保証保険を活用することでの買い手のメリットは、交渉を円滑に進めることが出来る点です。これまで少しでもリスクがある案件は見送っていた買い手も、仮にリスクが顕在した際の費用の補填があるのであればリスクをのむ決断を実施することが可能になります。

表明保証保険を活用することでの買い手のデメリットは、リスクを値引きに転嫁することが難しくなるため、売却価格の減額が難しくなる点です。これまで売り手の表明保証できないリスクがあった場合、そのリスクを譲渡価格に反映し、減額交渉を行ってきた買い手も多くいました。今後は、表明保証保険の保険内容で調整する場面が増えてくるでしょう。

 

表明保証保険を活用する際の注意点

「知る限り」(知らなければ保証しなくてOK)、「知り得る限り」(合理的な調査で分かることは保証しなければならない)など、表明保証事項には細かい言葉の違いによる意味合いの大きな違いが発生することがあります。上記でも説明しているように、顕在化している問題に関しては表明保証保険の対象にはなりません。

特に買い手として注意しなければならない点になりますが、保険に加入しているから大丈夫だとたかを括るのではなく、契約書に記載の条文内容から、どのような問題が発生したら保険適用の対象になるのか、どんな問題では保険適用外となるのか、事前に確認しておくことが必要となるでしょう。

 

中小スモール企業間でM&Aを進めるに際し、注意すべきこと

ことスモールな企業間で進められるM&A交渉の場合、そもそも「表明保証」の重要性を認識している売り手、買い手は少ないのが現状です。重要な項目であるという認識がないため、どれだけ専門家やアドバイザーが表明保証条項を整理したとしても、チェックも蔑ろに進めてしまうケースも多いのではないかと思います。

この点については、アドバイザーや仲介担当者、弁護士などの専門家が、売り手、買い手共に重要性を説明した上で、合意を図る必要がある点ではないかと思います。

 

まとめ

M&Aの契約・交渉において、いかに表明保証が重要かについてお分かりいただけましたでしょうか。

また、M&Aを活用して新規事業を始めてみたいけれども一歩踏み出す勇気がない、騙されたらどうしようと不安になっている、そんな方々も少しご安心頂けたのではないでしょうか。

会社を買う場合、会社を売る場合、それぞれの立場で表明する事項は変わってきます。どんな案件でも必ず入れておいた方が良い一般的な事項もあれば、契約によっては必要となる内容もあります。

M&Aの交渉に慣れてくると、契約を進めていく中で「本当かどうか分からないけど、この内容については相手に真実だと保証して欲しい」そんな内容を記録しておいて、最終契約時に譲渡契約書にその内容を盛り込んでもらう、その様な進め方をしていくとリスクを最小限に抑えられるのではないでしょうか。

表明保証条項に記載する内容をしっかり意識する、契約でカバーしきれない項目については表明保証保険でカバーする、など、売り手・買い手いずれの立場としてM&Aの交渉を進めていく場合においても、意識してみることをお勧めします。

 

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