| 公開日 | 2023/07/04 |
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| 記載者 | 株式会社トマック |
M&A
社長が急逝したら、売る前に整えること──代表者・議決権・資金繰りの順番
売るか継ぐかの前に、判断する人を決めます
後継者を決めないままオーナー社長が亡くなると、残された家族は、短い間に大きな判断を迫られます。会社を継ぐか、売るか、廃業するかです。
M&Aで売ると決めても、すぐに相手探しを始められるわけではありません。会社を代表する人がいない、社長の株式の議決権を誰も使えない。この状態のままでは、相手と約束を交わす当事者が定まらないからです。
この記事では、社長の急逝から売却の検討に入るまでに、会社と相続人が整えることを順に並べます。
1|まず、会社を代表する人を選びます
ほかに代表取締役がいない会社では、社長が亡くなると、契約・届出・登記など、会社を代表する行為が止まります。
会社法は、任期満了か辞任で退任した役員にだけ、後任が就くまでの権利義務を残しています。亡くなった役員の職務を、当面引き継ぐ人はいません。
M&Aの準備も、ここで止まります。相手候補に決算書などの会社の資料を出すかどうかも、会社として判断する人がいなければ決められません。
次の代表者の選び方は、会社の形で変わります。
・取締役会がある会社:取締役会で、新しい代表取締役を選ぶ。取締役が法律や定款の人数を下回ったときは、株主総会で補う
・取締役会がない会社:定款の定めに従い、取締役の互選や株主総会で選ぶ
・取締役が社長1人だった会社:株主総会で、新しい取締役を選ぶ。株主全員が同意すれば、招集の手続きを省いて総会を開ける
・社内の手続きで後任を選べない会社:本店所在地を管轄する地方裁判所に、一時取締役を選んでもらう
代表取締役が変わったら、2週間以内に変更の登記をします。怠ると、100万円以下の過料の対象です。
最初に、登記事項証明書、定款、株主名簿をそろえます。どの手順に当たるかと、社長の株式の議決権を誰が使うかを、この3つで確かめます。
2|売り手になるのは、株式を受け継ぐ相続人です
社長の株式は、遺産分割が終わるまで、相続人全員の共有です。共有の株式は、原則として、権利を使う人を1人決めて会社に通知しないと、議決権を使えません。
株式を売る場面でも同じです。買い手と株式譲渡契約を結ぶ売り手は、遺産分割で株式を受け継ぐと決まった人か、相続人全員です。売り手が定まらないうちは、価格や条件の話を詰めても、契約には進めません。
遺言で株式を受け取る人が決まっていれば、話は早く進みます。遺言がなければ、相続人の話し合いで決めます。話し合いが長引くと、役員の選任も、決算の承認も止まります。
株式に譲渡の制限がある会社では、売るときに、取締役会や株主総会による会社の承認も要ります。ここでも、役員と議決権がそろっていることが前提です。
買い手は、株式の受け継ぎ方を書類で確かめます。遺言や遺産分割協議書の写しで、売り手が株主であることを示せるようにしておきます。
定款も確かめます。相続人に、株式を会社へ売り渡すよう求められる定めがあると、経営権が思わぬ形で動くことがあります。売却を考えるなら、この定めが使われる可能性も含めて、先に確かめておきます。
3|交渉より先に、期限が来ます
相手探しと交渉には、時間がかかります。そのあいだも、相続と会社の手続きの期限は進みます。
・2週間以内:代表取締役の変更の登記
・2週間以内:建設業の会社は、経営業務の管理責任者などの変更の届出
・3か月以内:相続放棄(相続人が判断)
・相続開始の翌日から5か月を経過する日:事業承継税制(特例措置)を使うなら、後継者が代表者になっている
・相続開始の5か月後から8か月後まで:事業承継税制の、都道府県への認定申請
・10か月以内:相続税の申告・納税
建設業の会社では、社長が経営業務の管理責任者を兼ねていることがあります。後任がいないと許可の要件を欠き、許可の取消しの対象になります。許可を保てるかどうかは、売却を考えるときにも大きな前提です。
事業承継税制は、後継者が株式を受け継いで経営を続ける場合に、相続税の納税を猶予する制度です。特例承継計画は、相続の後に作っても、認定申請の時までに出せば足ります。計画の提出期限は、2027年9月30日です。
後継者は、原則として、相続開始の直前に役員である必要があります。先代が70歳未満で亡くなった場合などは、例外です。
受け継いだ株式を後で売ると、猶予が打ち切られ、猶予されていた税を納めることがあります。使うかどうかは、継ぐか売るかの見通しと合わせて決めます。
4|資金繰りと保証を、売却の話と切り分けます
会社の預金は、会社のものです。取引のある金融機関には早めに連絡し、新しい代表者が決まったら、変更を届け出ます。
会社が受取人の生命保険は、資金繰りや、死亡退職金の原資になります。相続人が受け取った死亡退職金の合計額は、500万円に法定相続人の数を掛けた額まで非課税です。死亡後3年以内に、支給額が確定したものが対象です。
社長個人の保証債務は、原則として相続の対象です。相続放棄をするかどうかの判断に関わるため、3か月の期限の内に、財産と借金を調べます。
会社が社長から借りていたお金も、返済を受ける権利が相続人に移ります。売却するときは、この借入金を譲渡の前に返すのか、価格の中で調整するのかも決めます。
借入金の経営者保証は、後継者に当然に引き継がせるものではありません。金融機関には、保証の必要性を改めて検討することが求められています。売却の交渉では、譲渡の後に保証をどう外すかも、条件の一つになります。
5|継ぐか売るかは、決める人と期限がそろってから
代表者と、議決権を使う人が固まって、初めて会社として、継ぐか売るかを決められます。選択肢は、親族や社内の人が継ぐ、会社を売る、廃業するの3つです。
社長がお元気なうちにできる備えもあります。遺言で株式の行き先を決める、定款の定めを見直す、保証の扱いを金融機関と話しておく。どれも、急逝の後では、相続人だけでは決めにくいことです。
株式会社トマックは、M&A支援機関登録制度に登録しています。決算書から企業価値の目安を無料で算定していますので、継ぐか売るかを考える材料にお使いください。
ご相談・注記
北陸(富山・石川・福井)の登記の窓口や、事業承継税制の申請先は、当社サイトの記事にまとめています。
→ 社長が急死したら|北陸の中小企業が最初に決める3つのこと https://tomac-gr.jp/news/shacho-kyushi/
同じ内容を動画でも解説しています(約8分)
https://www.youtube.com/watch?v=r0214hYnzHU
出典:e-Gov法令検索「会社法」(第106条・第139条・第174条・第300条・第346条・第349条・第351条・第362条・第868条・第915条・第976条)「民法」(第898条)/国土交通省「許可の要件」/中小企業庁「法人版事業承継税制(特例措置)」/裁判所「相続の放棄の申述」/国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」「No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金」「No.4148 非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例等」/経営者保証に関するガイドライン研究会「事業承継時に焦点を当てた『経営者保証に関するガイドライン』の特則」
※ 株式会社トマックがご相談の窓口になり、提携する士業専門家と連携して進めます。
※ 本記事は2026年10月時点の法令と公表資料にもとづいています。制度の内容や窓口は変わることがありますので、手続きの前に各窓口でご確認ください。
株式会社トマック(中小企業庁 M&A支援機関登録制度 登録M&A支援機関/中小M&Aガイドライン遵守宣言)
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