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2026/08/21

事業用の土地が先代名義のまま――相続登記の義務化が、譲渡の現場で止める3つの場面

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登記簿を取ったら、名義が先代のままだった
デューデリジェンスで登記事項証明書を取ったら、工場の土地の名義が先代のままだった。中小企業のM&Aでは、珍しい話ではありません。 2024年4月1日から、相続登記の申請は義務になりました。施行より前に起きた相続にも、2027年3月31日という期限があります。 譲渡を考えている会社にとって、これは「いつかやる手続き」ではなくなりました。案件のスケジュールに、直接かかってきます。
なぜ、事業用の土地は個人名義のまま残るのか
法人にする前から経営者個人が持っていた土地。そこへ、あとから工場や事務所を建てた。よくある形です。 会社は個人に地代を払い、個人はその収入を受け取ります。税務上の判断でこの形を選んだ、という経緯もよく伺います。 日々の事業には支障がありません。だから代替わりのときも、登記だけが置き去りになります。 中小企業庁の事業承継ガイドラインは、承継の準備として次の確認を挙げています。 「経営者所有の不動産で、事業に利用しているものの有無、当該不動産に対する会社借入に係る担保設定、経営者と会社間の貸借関係、経営者保証の有無等、会社と個人の関係の明確化を図る。」 (中小企業庁「事業承継ガイドライン(第3版)」) 「会社と個人の関係を明確にする」の入口が、登記簿上の名義です。
2027年3月31日が、譲渡のスケジュールに重なります
相続で不動産を取得した相続人は、取得を知った日から3年以内に登記を申請することになりました。 施行前に起きた相続は、2027年3月31日が期限です。先代が10年前に亡くなっている場合も対象になります。 正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象です。ただし実務で効いてくるのは、過料よりも期限直前の混雑のほうです。 出典:法務省「相続登記の申請義務化について」
止まる場面① 表明保証に、資産の帰属を書けない
株式譲渡契約では、事業に使っている資産の状態について表明保証を求められます。 事業の基盤である土地の権利関係がはっきりしないと、ここを書き切れません。買い手側の稟議も通りにくくなります。
止まる場面② クロージングまでに、名義が揃わない
相続登記には、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍が要ります。相続人全員の署名押印も必要です。 集めるだけで数か月かかることがあります。基本合意から決済までの期間に、収まらないことがあります。
止まる場面③ 相続人が増えて、同意が取れない
先代の相続を放置している間に、その相続人も亡くなる。これを数次相続といいます。 ひと世代放置しただけで、権利者が二桁になることがあります。全員から同意を得る手間は、人数に比例しません。
買い手から見ると、どう映るか
買い手は、事業そのものより先に、リスクの有無を見ます。登記簿は最初に取る資料のひとつです。 名義が故人のままだと、二つのことが読み取られます。一つは、権利関係の整理が済んでいないこと。もう一つは、承継の準備がまだ始まっていないことです。 実際には、手続きの順番の問題にすぎません。それでも、価格の交渉材料になったり、条件付きの提案に変わったりすることがあります。 先に直しておけば、この論点は最初から議題に上がりません。
相続人申告登記は、譲渡の場面では効きません
2024年4月に始まった相続人申告登記は、期限に間に合わないときの受け皿です。 相続人の一人が申し出れば、登記官がその氏名と住所を職権で付記します。これで申請義務は果たしたことになります。 ただし、権利関係を公示するものではありません。売却や担保の設定には、別途、相続登記が必要です。 義務は消せても、取引はできません。譲渡を控えているなら、本来の相続登記まで進める必要があります。 出典:法務省「相続人申告登記について」
譲渡を考え始めた時点で、確かめておく4つのこと
まだ何も決めていない段階でも、ここだけ先に見ておくと後が楽になります。 ・事業に使っている不動産の、登記簿上の名義。全部事項証明書で確認します ・名義人が亡くなっている場合、その時期。2024年4月1日より前かどうかで期限の考え方が変わります ・相続人の人数。先代の相続人が、さらに亡くなっていないかを確認します ・会社と個人の間の賃貸借契約。書面があるか、地代がいくらかを確かめます あわせて、土地の地目も見ておいてください。田や畑が混ざっていると、農地法の許可や届出が別に要ることがあります。 前面道路が私道で、共有持分になっている場合も同じです。手続きが一段増えます。 2026年2月2日からは、所有不動産記録証明制度も使えます。亡くなった方名義の不動産を、全国分まとめて一覧にできる制度です。 請求できるのは名義人本人と相続人で、代理人からの請求も認められています。 出典:法務省「所有不動産記録証明制度について」
不動産と自社株は、同じテーブルで決める
不動産の扱い方は、ひとつではありません。法人へ移す、個人に残して賃貸借を続ける、譲渡の対象から外す。 どれを選ぶかで、株価も、税負担も、買い手からの見え方も変わります。順番に決めていくと、決め直しになります。 名義を直すこと自体はゴールではありません。誰が何を引き継ぐかを決めたうえで、登記をその形に合わせます。
誰が、何を担当するか
・戸籍の収集と遺産分割協議書の作成:行政書士 ・登記の申請:司法書士 ・株価の算定と税務の判断:税理士 ・全体のスケジュール管理:仲介・アドバイザー 窓口がばらばらだと、経営者が全員と個別にやりとりすることになります。束ねられる形にしておくことをおすすめします。
ご相談は、決める前の段階で構いません
「工場の土地の名義が、たぶん先代のままだ」という一言で十分です。何を、いつまでにやるかを整理してお伝えします。 株式会社トマックは1998年から中小企業のM&A・事業承継に取り組んでいます。グループに行政書士法人を併設しているため、戸籍の収集から関係者の調整まで、同じ窓口で進められます。 相続登記の期限や、手続き窓口の具体的な流れについては、行政書士法人トマックのサイトで詳しく書いています。 【富山】相続登記の義務化|過去の相続は2027年3月31日が期限 https://tomac-law.jp/souzoku-touki-kigen/ 事業承継のご案内(株式会社トマック) https://tomac-gr.jp/shoukei/ ※ 不動産の名義変更(相続登記)の申請は司法書士、相続税や株価に関する税務の判断は税理士の業務です。当社は必要書類のご準備と関係者との調整を担当し、提携する専門家が対応します。 ※ 本記事は2026年8月時点の法令・制度にもとづいています。制度は改正されることがありますので、お手続きの前にご確認ください。
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