| 公開日 | 2023/07/04 |
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| 記載者 | 株式会社トマック |
M&A
後継者が決まらないのは、順番が決まっていないから──承継先を上から順に消していく
後継者の話には、締切がありません
後継者の問題には、締切がありません。だから毎年、来年でいいという結論に落ち着きます。
中小企業庁の中小企業白書は、事業承継に要する期間について、3年以上を要するとの回答が半数を超えていると書いています。締切がないので、気がつくと時間だけが経っていきます。
後継者を決めきれない理由は、情報が足りないことではありません。どこから手を付けるかの順番が決まっていないことです。
この記事では、承継先を確かめる順番と、期間から逆算する考え方を整理します。
「決めていない」と「決められない」は違います
2025年版の中小企業白書は、後継者不在率について「減少傾向にある」としています。60代以上の事業者でも同じ傾向です。全体としては、後継者不足の解消が一定程度進んでいるという見方です。
一方で、同じ白書は経営者年齢の水準が依然として高いとも書いています。60歳以上の経営者が過半数を占めている、という状況です。解消が進んでいることと、自分の会社が間に合うことは別の話です。
承継の意向を見ると、法人企業の約3割が親族内承継を考えていると答えています。個人企業では約4割が、自らの代での廃業を考えているという結果でした。
相談の場で多いのは、探していないという状態ではありません。親族に継ぐ人がおらず、次の手が決まらないまま止まっている状態です。ここを分けて考えないと、対策が「後継者を探す」だけになります。
決められない状態が続くと、選べる手は年々減ります。体調や取引先の代替わりが先に動くからです。決めるのが難しいときほど、順番を決めるところから始めるのが現実的です。
承継先は3つ。上から順に消していきます
渡す先は、親族、従業員や役員、第三者の3つしかありません。同時に走らせると、どれも中途半端になります。上から順に、可能性を確かめて消していくほうが早く進みます。
親族から確かめます。最初にやることは、株価の試算でも遺言でもありません。継ぐ意思があるかどうかを、本人の口から聞くことです。ここを飛ばしたまま対策だけ進めると、数年分の準備が無駄になります。
次が従業員・役員です。ここで立ちはだかるのは、株式の買取資金と、借入に付いた個人保証の2つです。本人にその気があっても、この2つが解けなければ前に進みません。金融機関と先に詰めておく論点です。
最後が第三者への譲渡です。確かめるのは、自社にいくらの値が付くかです。決算書と資産の中身を見れば、目安は出ます。相手探しから引き渡しまでの時間も、ここで見込んでおきます。
順番に消していくと、後戻りが要りません。逆に、いきなり第三者から入ると、親族の感情の整理が後から追いかけてきます。
3つを同時に走らせないほうがよい理由は、もう1つあります。相手の数が増えるほど、検討している事実が社内や取引先に伝わりやすくなるからです。上から1つずつなら、話す相手を絞れます。
話が止まる、3つの誤解
1つ目は、会社が無くなるという受け止めです。株式を譲る形なら、法人格は変わりません。会社はそのまま残り、社名も続きます。取引先との契約や許認可も、原則はそのまま残ります。ただし契約の条項や許認可の種類によっては、届出や相手方の同意を求められます。
2つ目は、従業員がどうなるかという心配です。雇用を続けることを条件に掲げ、それを飲める相手だけを探す、という進め方ができます。最終的な扱いは交渉を経て、契約書に書き込みます。条件として先に出せることが、あまり知られていません。
3つ目は、赤字なら引き取り手がない、という決めつけです。譲渡価額が付くかどうかは、損益計算書だけでは決まりません。土地や建物、保険の積立、許認可、資格を保有する従業員に価値が残っていることがあります。見ないまま廃業するのは、いちばんもったいない終わり方です。
3つとも、確かめないまま結論だけが出ているところです。事実かどうかを先に当たると、選択肢が1つ増えます。増えた選択肢を使うかどうかは、その後に決めれば足ります。
期間から逆算します
「事業承継に要した期間は3年以上」という数字を、逆に使います。いま60代後半なら、70歳で引退するとして、準備に入る時期は今年か来年です。10年以上かかったという回答も、白書は少なくないとしています。
期限がはっきりしている制度もあります。法人版の事業承継税制の特例措置には、期限が2つあります。1つは計画の提出で、2027年9月30日までです。もう1つは贈与の実行、または相続による取得で、2027年12月31日までです。個人版は、それぞれ1年遅れの2028年です。
この計画には、後継者の氏名を書きます。つまり、後継者が決まっていない段階では書類が作れません。制度を使う可能性を残すなら、人を決めるほうが先になります。
資料をそろえる時間も、逆算に入れておきます。決算書は3期分、ほかに株主名簿、不動産の資料、借入と保証の一覧が要ります。探すところから始めると、ここだけで数か月かかることがあります。
資金の手当てとして、事業承継・M&A補助金という制度もあります。ただし、申請すれば通るというものではありません。公募は回ごとに締め切られ、2026年9月の時点で次回の日程は出ていません。見積りは補助金を当てにしない金額で組み、通ったら軽くなる、と考えるほうが安全です。
第三者への承継は、増えています
事業承継・引継ぎ支援センターは、国が各都道府県に設けている公的な窓口です。費用はかからず、方針が固まっていない段階でも使えます。
ここで決めなければいけないことは、何もありません。売ると決めていなくても相談できます。話した内容が外に出ることもありません。
全国のセンターの令和7年度実績では、新規相談が24,000者を超えました。第三者承継の成約は2,265件で、過去最多です。相手が見つからない時代ではなくなってきています。
民間の支援会社に頼む場合の目安は、中小企業庁の中小M&Aガイドライン(第3版)です。これに沿って運営されているかどうかを見ます。報酬の算定基準と契約の中身は、依頼する前に確かめてください。
継ぐ人がいないことと、企業価値が付かないことは、まったく別の話です。取引先とのつながり、残ってくれている従業員、積み上げた実績は、相手が価値を判断するときの材料になります。廃業すると決める前に、目安だけでも確かめてください。
当社は、決算書から企業価値の目安を無料で算定しています。ご相談は全国どこからでも承ります。
ご相談・注記
地域ごとの数字と、県の窓口の具体名は、当社サイトの記事に書いています。
富山県の事業承継|後継者が決まらない会社は42.6%、次の一手
https://tomac-gr.jp/news/toyama-jigyo-shokei/
出典:中小企業庁「2025年版中小企業白書」第1部第1章第9節(後継者不在率・経営者年齢・承継の意向・事業承継に要する期間)/中小機構「令和7年度 事業承継・引継ぎ支援センターの実績」/中小企業庁「法人版事業承継税制」「個人版事業承継税制」/中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」/中小企業庁「事業承継・M&A補助金」
※ 事業承継に伴う登記は司法書士、税務は税理士の業務にあたるため、提携する各士業と連携して進めます。
※ 本記事は2026年9月時点の法令・制度にもとづいています。制度は改正されることがありますので、お手続きの前にご確認ください。
株式会社トマック(中小企業庁 M&A支援機関登録制度 登録M&A支援機関/中小M&Aガイドライン遵守宣言)
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