| 公開日 | 2023/07/04 |
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| 記載者 | 株式会社トマック |
M&A
「事業承継税制の期限が延びた」は半分だけ正しい──実行期限2027年12月31日から逆算する
「期限が延びた」は半分だけ正しい
自社株にかかる税の納税猶予、いわゆる事業承継税制(特例措置)について、「計画の提出期限が2027年9月30日まで延長された」という情報が広まっています。
これは正しい情報です。ただし、延びたのは締切の片方だけです。
実行の期限──株式を実際に贈与・相続する締切──は、2027年12月31日から動いていないのです。「延びたからまだ先の話だ」と受け取ると、判断の時間を失います。
締切は2つ。延長されたのは、手前の1つだけです
この税制には、性質の違う2つの締切があります。
1つ目は、特例承継計画を都道府県へ提出する締切です。令和8年度の税制改正で、2027年9月30日まで延長されました。
2つ目は、株式の贈与・相続を実際に行う締切です。こちらは従来どおり2027年12月31日です。
中小企業庁が示す対象は「2027年12月31日までに株式を取得した経営者」です。贈与でも相続でも、この日が区切りになります。計画を出せる期間が延びただけで、承継そのものの期限は据え置かれています。
出典:中小企業庁「法人版事業承継税制(特例措置)」
計画をぎりぎりに出すと、実行に使えるのは約3か月です
2つの締切の間隔を見てください。2027年9月30日まで計画づくりを先送りした場合、贈与の期限まで約3か月しか残りません。
株価の算定、承継の形の決定、関係者の合意。これらを3か月に押し込むのは現実的ではありません。
締切に間に合わせる段取りは、「計画をいつ出すか」ではなく「贈与をいつ実行するか」から逆算して組む必要があります。
※ 一定の場合には、株式の承継後に、認定申請と併せて特例承継計画を提出する取扱いもあります。ただし個別要件の確認と、周到な事前準備が必要です。
何がどれだけ猶予されるのか
事業承継税制には、従来からの一般措置と、期限つきの特例措置があります。
一般措置は、対象となる株式が総株式数の最大3分の2までです。納税猶予割合は、贈与税が100%、相続税が80%です。
特例措置は、要件を満たす株式の全部が対象になります。対象株式に対応する贈与税・相続税の100%が、納税猶予の対象です。雇用要件も実質的に緩和されています。
業歴の長い会社ほど、内部に積んだ利益で自社株の評価は膨らみます。一般措置と特例措置の差が数千万円規模になる会社は、珍しくありません。
出典:国税庁「事業承継税制特集」
実行までの工程は5つ。時間を食うのは最初の工程です
贈与の実行までの流れは、おおむね次のとおりです。
1. 自社株の評価額をつかみ、承継の相手と形を決める
2. 認定経営革新等支援機関の所見を受けて、特例承継計画を作る
3. 計画を都道府県へ出す(2027年9月30日まで)
4. 株式の贈与を行う(2027年12月31日まで)
5. 都道府県の認定を受け、税務署へ贈与税の申告をする
工程3や4は、書類が揃えば動きます。時間が読めないのは工程1です。
株価の算定は決算書だけでは終わらず、不動産や保険の評価が関わります。そして、親族・役員との話し合いは一度でまとまるものではありません。
当社がお受けした案件でも、株式が親族と従業員に分散していました。株主の意見をまとめる段階だけで、半年以上を要しています。
工程1を2027年に持ち越すと、残りの工程が締切に押し込まれていきます。
役員要件は緩和されました。それでも時間の問題は残ります
後継者の役員要件は、令和7年度の改正で緩和されました。従来求められていた「贈与の3年以上前からの役員就任」は不要になり、現在は贈与の直前に役員であれば足ります。
「後継者がまだ役員になっていないから間に合わない」という理由で諦める必要は、なくなりました。
ただし、緩和されたのは形式要件です。株価の把握と関係者の合意という中身の工程には、変わらず月単位の時間がかかります。
猶予はゴールではありません。5年間の要件が続きます
この税制は、使って終わりではありません。
原則として贈与税・相続税の申告期限のあと5年間は、要件と手続きが続きます。後継者が代表者として経営を続けること、対象株式を保有し続けることなどに加え、毎年の報告・届出があります。
5年を過ぎれば終わり、でもありません。その後も、対象株式の継続保有と定期的な届出は必要です。
要件を満たさなくなると、猶予されていた税額の全部または一部を、利子税とともに納付することになります。一定の免除・減免事由に当たる場合は除きます。
贈与の翌年にも手続きが続きます。認定申請が翌年1月15日、贈与税の申告が翌年3月15日という順です。
「税が消える制度」ではなく「納税を止めたまま次の代へつなぐ制度」と捉えるほうが、実態に合っています。
向いているのは、後継者が決まっている会社です
効果が大きいのは、次の条件が重なる会社です。
・後継者が親族か社内に決まっている
・自社株の評価額が高く、税負担が承継の障害になっている
税負担を理由に承継を先送りしてきた会社にとって、特例措置の期限内に実行できるかどうかは、数千万円単位の違いになり得ます。
社内にも後継者がいない会社には、この税制は答えになりません
一方で、この税制は、株式と経営を引き継ぐ後継者がいることを前提としています。後継者は親族に限られません。役員や従業員などの社内人材でも、一定の要件を満たせば対象になる可能性があります。
親族にも社内にも適切な後継者がいない場合には、第三者への譲渡(M&A)が有力な選択肢になります。
全国の事業承継・引継ぎ支援センターの実績では、2025年度の第三者承継の成約が2,265件と過去最多になりました。第三者への譲渡は、特殊な会社だけの手段ではなく、承継の標準的な選択肢の1つになっています。
出典:中小企業基盤整備機構「令和7年度 事業承継・引継ぎ支援センターの実績について」
税制の期限に合わせて、無理に渡さないでください
期限が迫ると、「とにかく2027年中に親族へ贈与する」という判断に傾きがちです。
しかし、継ぐ覚悟が固まっていない相手に、期限を理由として株式を渡してしまうと、5年間続く要件がかえって重荷になります。
会社が続く形を優先して、親族承継とM&Aを並べて比べる。期限は、その検討を始める合図と捉えるのが健全です。
判断の材料は、自社の値段です
税制を使うにせよ譲渡を選ぶにせよ、検討はどちらも「自社株がいまいくらか」を知るところから始まります。
それが分かってはじめて、納税猶予の効果と、譲渡した場合の手取りとを同じテーブルに載せられます。
株式会社トマックは1998年から中小企業のM&A・事業承継に取り組んでいます。決算書を拝見して、企業価値の目安を無料で算定しています。
なお、特例承継計画の提出先は主たる事務所を置く都道府県です。北陸3県(富山・石川・福井)の窓口の課名・電話番号は、当社サイトの記事にまとめています。
・【2027年】事業承継税制の2つの締切|計画9月・実行12月 https://tomac-gr.jp/news/shokei-zeisei-kigen/
・事業承継・M&Aのご相談(無料 簡易企業価値算定) https://tomac-gr.jp/shoukei/
※ 事業承継税制の適用判断、株価の税務上の評価、贈与税・相続税の申告は税理士の業務です。当社は提携する税理士法人と連携し、計画づくりから承継の実行までを一体でお手伝いします。
※ 本記事は2026年8月時点の法令・制度にもとづいています。制度は改正されることがありますので、お手続きの前にご確認ください。
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