法務・労務
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2026/11/02

会社を譲る最終契約書で、社長が署名の前に確かめておきたいこと

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最終契約書で見るのは、代金の額より「譲ったあとに何が残るか」
最終契約書でまず確かめたいのは、譲ったあとに社長と元の会社に何が残るかです。どの資産と契約が買い手に移り、どの借入と未払いが元の会社に残り、連帯保証をだれがいつまでにどう扱うのか。この三つがはっきり書かれていない契約には、まだ署名しないほうが安全です。 何が残るかは、譲り方で変わります。株式譲渡なら会社の法人格は変わらず、借入もそのまま会社に残ります。事業譲渡なら、契約書の一覧に載らなかった借入と未払いが、元の会社に残ります。 事業譲渡で、代金より元の会社に残る借入のほうが大きいなら、金額のページより先に、残る債務をだれがどう払うのか、保証をどう扱うのかが書かれているかを見てください。代金で残る債務を払い切れる見込みなら、移る資産と契約の一覧の読み合わせから始めて構いません。
事業譲渡では、契約書の一覧に載ったものだけが買い手に移る
事業譲渡では、買い手に移すものを契約で選びます。中小M&Aガイドライン(第3版)も、事業譲渡では譲渡の対象となる財産を選択でき、譲り渡し側の法人格から切り離せると説明しています。裏を返すと、一覧に載っていないものは元の会社に残ります。 当社が扱う譲渡案件は、9割を超えるものが事業譲渡です。だからこそ、契約書の別紙にある資産と契約の一覧を、一行ずつ読み合わせることをおすすめしています。 当社が仲介する譲渡案件44件で、2026年1〜10月に買い手から受けた質問999問を分類すると、「借入・未払いのうち、どれを引き継ぐか」は8.5%を占め、約半数の案件で聞かれていました。代表的なのは「金融機関の借入・税金・社会保険料・未払金は、買い手が引き継がないということでよいか」という質問です。 資産の側は別の分類にあたり、「引き継ぐ資産」が13.4%、6割超の案件で聞かれていました。ここには「売掛金・未収金は譲渡の対象に入るか」「リース契約を引き継げるか。残りの支払額はいくらか」といった質問が入ります。 売り手の側も同じ目で、車両、リース、借りている事務所、売掛金、取引先との契約が、移るのか残るのかを一つずつ確かめてください。元の会社に残る未払いをだれがいつ払うのかも、会社の整理と合わせて決めておく必要があります。
保証を外す約束は、契約書に書いただけでは完了しない
社長が誤解しやすいのが、連帯保証の扱いです。契約書に「買い手が経営者保証を解除する」と書いてあれば、署名した日に保証が外れると考える方がいますが、そうはなりません。 保証契約は、社長と金融機関とのあいだの契約です。中小M&Aガイドライン(第3版)は、経営者保証の解除や移行は最終的に金融機関等の判断によるもので、正式な手続きはクロージングを経て、登記簿上で代表者が変わったあとに行う必要があると説明しています。買い手の信用力が著しく低いときには、円滑に解除できないおそれがあることも書かれています。 ですから、契約書で見るべきは解除の約束があるかどうかにとどまりません。同ガイドラインは、買い手による保証の解除または引継ぎの義務と、それが果たされなかった場合の契約解除や補償を、最終契約で取り決める項目に挙げています。いつまでに金融機関へ申し入れるのか、外れなかったら何が起きるのか。そこまで書かれているかを確かめてください。
草案に保証解除の条文が無ければ、署名の前に理由を聞く
保証の条文については、業界の自主規制ルールにも定めがあります。M&A支援機関協会は自主規制ルールを改正し、2025年1月1日施行で、最終契約書の草案を作る段階で、買い手に経営者保証の解除を義務付ける条文案を盛り込むことを定めました。あわせて、買い手の資力を調べる義務も定めています。 これとは別の制度として、2024年10月1日から「特定事業者リスト」の運用が始まっています。不適切な買い手の情報を加盟社のあいだで共有する仕組みで、M&A取引の実行日から60営業日以内に経営者保証が解除されない場合、掲載の対象になりえます。 草案を受け取ったら、保証の解除を定めた条文があるか、期限が書かれているかを、最初に探してみてください。見当たらないときは、署名する前に、仲介会社にその理由を聞いておくことです。
会社の名前を引き継ぐときなどは、買い手が元の会社の債務を負う場合がある
事業譲渡でも、借入から完全に切り離せるとは限りません。条文の上で注意したい場面が二つあります。 一つは、買い手が元の会社の商号をそのまま使う場合です。会社法22条1項により、譲受会社も、譲渡会社の事業から生じた債務を弁済する責任を負います。ただし、譲り受けたあと遅滞なく、登記か、譲受会社と譲渡会社の双方から第三者への通知で、債務を弁済する責任を負わない旨を示せば免れられます(同条2項)。名前を引き継ぐ話が出ているなら、登記と通知のどちらを、だれがいつ行うかを契約に入れておきたいところです。 もう一つは、売り手が、元の会社に残る債権者を害すると知りながら事業を譲った場合です。その債権者は買い手に対し、承継した財産の価額を限度として支払いを求められます(会社法23条の2)。買い手が譲渡の効力が生じた時点でそれを知らなかったときは、この規定は適用されません。 代金が不当に低いことは、こうした事情を疑わせる一つになります。中小M&Aガイドライン(第3版)も、事業譲渡等の対価が不当に低額な場合のリスクとしてこの条文を挙げています。代金を決めた根拠は、決算書と、移す資産をいくらと見たかの資料の形で手元に残し、買い手にも説明できるようにしておいてください。
署名の前に、手元の書類と照らし合わせておくこと
草案を受け取ったら、次の点を手元の書類と照らし合わせてください。 1. 移る資産・契約の一覧に、車両台帳、リース契約、事務所や車庫の賃貸借契約、取引先との契約が漏れなく載っているか 2. 借入・税金・社会保険料・未払金のうち、元の会社に残るものはどれで、その支払いをどう手当てするか 3. 連帯保証について、買い手の義務、金融機関へ申し入れる時期、外れなかった場合の扱いが書かれているか 4. 買い手が会社の名前を使うかどうか。使うなら、債務を負わない旨の登記か通知をだれが行うか 5. 株主総会の承認がいつまでに要るか。事業の全部や重要な一部を譲るときは、効力発生日の前日までに株主総会の承認が必要です(会社法467条) 6. 許認可が要る業種なら、認可や届出の時期と、譲渡の効力が生じる日がずれていないか 7. 従業員が移る日と、移ったあとの条件を本人にいつ説明するか 6番は業種によって中身が違います。たとえば一般貨物自動車運送事業の譲渡は、国土交通大臣の認可を受けなければ効力を生じません(貨物自動車運送事業法30条)。認可が下りる前の日付を契約に書いても、その日には事業が移らないということです。ほかの業種の要件は、個別に確認します。
あさひ国際会計なら、こう進めます
あさひ国際会計は、赤字・債務超過の会社のM&Aと、経営者の連帯保証の解除を専門にしています。他社に断られた会社のご相談も受けています。 会社の譲渡とあわせて、連帯保証の解除を見据えたスキームを設計し、ご提案します。成約した案件で、保証が残ったままになった例はありません。ただし解除には金融機関の同意が前提で、譲渡と同時に解除されるとは限らず、すべての会社で同じ結果になると言い切れるほど単純ではありません。 交渉が進むと、買い手からは従業員、決算、資産、借入について質問が続きます。答えるために、従業員の一覧(担当業務・資格・勤続年数)、決算書(直近3期分)と今期の月次試算表、車両・設備とリース契約の一覧、事務所・車庫の賃貸借契約書、借入・未払い・滞納の一覧を用意しておくと、話が進めやすくなります。相談の前にすべてそろえる必要はありません。 法的な手続きの実行は、ご依頼者が委任する弁護士等の専門家が担います。赤字・債務超過の案件は、おおむね2〜4週間で成約まで進むことが多く、相談した月のうちに成約することがほとんどです。報酬は成功報酬のみで、成約時に譲渡代金の中から精算しますので、手元からの持ち出しはありません。
契約書の草案を前に迷っている社長は、一度ご相談ください
他社に断られた会社、赤字が続いている会社、借入が多い会社でも構いません。草案がまだ手元になくても、まずは決算書(直近3期分)と借入の一覧があれば話を始められますし、そろっていなくても相談はできます。平日の営業時間内のご連絡には、最短で当日に対応します。 なお、状況によっては、破産や清算などの法的整理のほうが適切な場合もあります。その場合も、どの道がよいかを一緒に整理します。 相談から事業が引き継がれるまでの流れは、資料にまとめています。 相談してから、事業が引き継がれるまで(https://asahi-int.com/download/soudan-kara-hikitsugi/)
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