M&A
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2026/10/28

相手探しは4つ目の段階です──会社を手放す前に進める「見える化」と「磨き上げ」

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相手探しの前に、「見える化」と「磨き上げ」があります
会社を手放すと決めたとき、多くの経営者がまず考えるのは「誰に渡すか」です。売るなら買い手を、継ぐなら後継者を探すことになります。 中小企業庁の「事業承継ガイドライン(第3版)」では、事業承継を次の5段階に分けて説明しています。 ・ステップ1 事業承継に向けた準備の必要性の認識 ・ステップ2 経営状況・経営課題等の把握(見える化) ・ステップ3 事業承継に向けた経営改善(磨き上げ) ・ステップ4 事業承継計画の策定(親族内・従業員承継)、またはM&Aの工程の実施(社外への引継ぎ) ・ステップ5 事業承継・M&Aの実行 ステップ1から3は、親族や従業員に継ぐ場合にも、社外に引き継ぐ場合にも共通です。社外に引き継ぐ場合について、ガイドラインは、譲渡側は1〜3のステップを経た後にM&Aの工程に移るとしています。相手探しは、4つ目の段階ということです。 この記事では、相手を探す前の「見える化」と「磨き上げ」で何をするのか、どのくらいの時間を見ておくとよいのかを整理します。売るか継ぐかを決める前からでも、始められる内容です。
1|下準備と相手探しには、年単位の時間を見ておきます
下準備にかかる時間は、会社によって異なります。ただ、目安になる数字が、ガイドラインにいくつか載っています。 一つは、後継者の準備期間です。引き継ぐことが決まっている後継者候補に、経営者になるために必要だと思う準備期間を尋ねた調査があります。「1年以下」という回答も少なくない一方で、5年以上という回答が約5割を占めています。 もう一つは、社外の相手と出会うまでの期間です。ガイドラインは、希望する譲受側とのマッチングには、通常、数か月から1年程度かかると見込んでいます。 株式の整理には、法律で決まった期間があります。連絡のつかない株主の株式は、会社法の手続きで、会社が売却などをできる場合があります。 要件は、株主への通知が5年以上続けて届かず、その株主が5年間続けて配当を受け取っていないことなどです。経営承継円滑化法の特例で都道府県知事の認定を受けると、この「5年」は「1年」に短くなります。早めに手を付けておきたい作業の一つです。 ガイドラインは、M&Aの判断が遅れるほど、選択肢が狭まる傾向にあるとも述べています。手放したい時期が決まっているなら、下準備と相手探しの両方の時間を見込んでおく必要があります。
2|見える化:会社の状態を、相手に見せられる形に整理します
ガイドラインは、見える化の目的を、経営者自身が会社を理解することにとどめていません。関係者に自社の状態を開示することも目的だとしています。相手に見せる前提で、会社の情報を整理する段階です。 ガイドラインが見える化の取組として紹介しているのは、例えば次のようなものです。 ・「中小企業の会計に関する基本要領」などを使い、適正な決算処理がされているかを点検する ・保有する自社株式の数を確かめ、株価を評価する ・会社と個人の関係を明確にする。対象は、経営者名義で事業に使っている不動産とその担保、経営者と会社の間のお金の貸し借り、経営者保証などです ・商品ごとの損益や、在庫の売れ筋・不良を把握し、磨き上げにつなげる ・自社がなぜ取引先に選ばれているのかという観点から、知的資産を捉え直す ここでいう知的資産は、決算書には載らない強みのことです。ガイドラインも、経営資源には貸借対照表に載る資産だけでなく、目に見えない資産も含まれるとしています。 こうした強みは、経営者の頭の中にだけあることもあります。それを文書にする様式として、経済産業省の「事業価値を高める経営レポート(知的資産経営報告書)」があります。経営方針や自社の強み・弱みを書き出すための様式で、ガイドラインでも見える化に使える枠組みとして紹介されています。 会社の状態と並んで、承継そのものの課題も書き出します。 ・後継者の候補はいるか ・親族の株主や取引先から、異論が出るおそれはないか ・親族に継ぐ場合、将来の相続に備えて、相続財産の洗い出しと相続税額の試算をしたか
3|磨き上げ:引き継ぐ相手が判断しやすい会社に整えます
磨き上げというと、業績を上げることや経費を減らすことを思い浮かべるかもしれません。ガイドラインは、対象はそれにとどまらないとしています。商品やブランドイメージ、優良な顧客、金融機関や株主との良好な関係も対象です。優秀な人材、営業上のノウハウ、法令遵守の体制なども含まれます。 具体的な取組として、ガイドラインは次の3つを挙げています。 【本業の競争力を強くする】 強みを作り、弱みを改善します。取引先や市場に偏りがある場合は、それを正して、事業のリスクを分散することも大切だとしています。 【経営体制を総点検する】 役員や従業員の職制と職務権限をはっきりさせ、業務の権限を段階的に移していきます。規程類やマニュアルを整え、業務が効率よく流れる体制を作ります。 事業に必要のない資産や、動かない在庫を処分する。余剰な負債を返済する。こうした経営資源のスリム化も、重要な取組とされています。 【財務を把握し、説明できるようにする】 足元の財務状況を、適時に、正確に把握します。財務の情報を経営者自身が金融機関や取引先に説明できれば、信用力の獲得につながるとされています。 権限を段階的に移すことや、取引先の偏りを正すことは、一度に済ませられるものではありません。早く始めるほど、余裕をもって進められます。 親族や従業員に継ぐ場合も、磨き上げは同じように意味があります。ガイドラインが紹介する中小企業庁の調査は、後継者の候補に、事業を継ぐことに前向きでない理由を尋ねています。「事業の将来性」が、「自身の能力の不足」の次に多く挙がっています。 ガイドラインは、後継者の候補が継ぎたくなるような経営状態まで引き上げておくことが大切だとしています。
4|相手探しに進む前に、確かめておきたいこと
見える化と磨き上げがどこまで進んだかは、次の点で確かめられます。すべてがそろうまで待つ必要はありませんが、相手と話し始める前に、状況は把握しておきたいところです。 ・決算書の処理を点検し、その内容を自分の言葉で説明できる ・株主名簿と実際の株主が一致している。連絡のつかない株主がいれば、整理の手続きに着手している ・会社と経営者個人の資産、貸し借り、保証の関係を一覧にした ・自社の強みを、具体的な取引や数字を挙げて説明できる ・後継者の候補の有無と、異論が出るおそれを確かめた ・下準備の途中で万一のことがあった場合に、自社株を誰が受け継ぐかを決めている 最後の点は、会社の準備とは別に、経営者個人で進めるものです。経営者が亡くなると、自社株は遺産分割がまとまるまで相続人の共有になり、売る話も継ぐ話も進めにくくなります。 判断能力への備えも必要です。民法では、意思能力のない人がした契約は無効です。判断能力が大きく衰えてからでは、経営者本人が株式を譲る手続きを進めにくくなります。遺言などで行き先を決めておくことも含め、早めに専門家に相談してください。 マッチングサイトに案件を載せる場合も同じです。見える化で整理した情報が、案件の紹介文や、買い手の質問に答えるときの材料になります。相手探しは、こうした下準備の上に進めるものだと考えてください。
ご相談・注記
当社では、決算書などを基に、企業価値の目安を無料で算定しています。見える化の一つとして、ご利用ください。 株主の整理、会社と経営者個人の線引き、経営者個人の遺言の進め方は、当社サイトの記事にまとめています。北陸3県の公的な相談窓口も載せています。 → 3〜5年後に会社を手放す社長へ|北陸で始める承継の下準備 https://tomac-gr.jp/news/shokei-shitajunbi/ 出典 ・中小企業庁「事業承継ガイドライン(第3版)」(令和4年3月) ・中小企業庁「所在不明株主に関する会社法の特例 申請マニュアル」 ・e-Gov法令検索「会社法」(第197条)、「民法」(第3条の2) ※株式会社トマックがご相談の窓口となり、必要に応じて提携する士業専門家と連携して進めます。 ※本記事は2026年10月時点の法令と公表資料に基づいています。制度の内容や手続の要件は変わることがありますので、個別の判断を行う前に専門家へご相談ください。 株式会社トマック 中小企業庁「M&A支援機関登録制度」の登録M&A支援機関/中小M&Aガイドライン遵守宣言
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