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業務提携とは何かを分かりやすく解説。実施するメリットや成功事例も紹介

2023年06月07日

業務提携とは他社と技術やノウハウなどの経営資源を出し合い、事業拡大や課題解決などを目指す方法のことです。どのような手順で実施するのか、メリットやデメリットとともに解説します。業務提携の種類や、業務提携と似た用語についても見ていきましょう。

 

 

 

業務提携とは

業務提携他社と技術やノウハウを提供し合い、協働して業務を行うことです。各社の独立性やブランド性はそのままに、お互いの業務効率化や、リソースの共有、付加価値の向上などを期待できます。

例えば、独自技術とそれを使った新商品のあるA社と、A社の新商品にフィットする販路を持つB社が業務提携すれば、新商品を効果的に販売可能です。

 

業務提携の目的

業務提携の目的は、自社で不足している経営資源を、他社の力を借りて調達することです。社内で活用できる資源には限界があり、事業に必要な資源をすべて揃えるためには、費用や時間がかかります。また、多額のコストをかけて資源を調達しても、うまくいくとは限りません。

事業を行うために必要な経営資源を、現時点で自社にないが他者との提携により調達し、コストやリスクを抑えて事業を進めることが業務提携の目的です。

 

業務提携のメリット

他社と業務提携を結ぶと以下のようなメリットを得られます。

⚪︎比較的緩やかな協働体制を構築できる

⚪︎小さなリスクで相乗効果を得られる

⚪︎新規事業に進出できる

⚪︎少ない資金で実施できる

⚪︎状況によっては提携関係を解消できる

資本提携やM&Aと比較しつながりが緩やかな分、柔軟に関係性を構築できる点がメリットです。それぞれのメリットについて見ていきましょう。

 

 

比較的緩やかな協働体制を構築できる

業務提携は、資本提携M&A(買収・合併)のように資本によるつながりがないため、会社同士の関係性を緩やかに構築可能です。企業のフェーズや課題に応じて、技術だけ、販路だけ、包括的になど、提携の範囲を変えられます。自社の独自性やアイデンティティを保ちながら、企業価値を高められる方法です。

 

 

 

小さなリスクで相乗効果を得られる

自社にない技術やノウハウ、人材等のリソースを他社と共有する業務提携を実施すると、短期間で大きな成果を期待できます。製造・生産や研究開発・販売チャネルの開拓などを効率的に実施できるためです。

他社との提携によってシナジー効果を生む方法として、企業買収も考えられます。ただし、買収するにはデューデリジェンスを実施したり、何度も打ち合わせを行って経営層・現場レベルで意思疎通を図ったりと、複数のステップを踏み、慎重に契約を締結する必要があります。手間も資金もかかる方法です。

一方、業務提携であれば、特定の分野や一部の事業のみ提携するため、必要な手続きや資金を削減できます。また業務提携の範囲を徐々に拡大していけば、相手企業の内情を理解した上での買収も可能です。リスクを分散させつつ、利益を得られる可能性があります。

 

 

 

新規事業に進出できる

新規事業への進出には大きな資金が必要です。開発や設備を整えるには、収益化する前に大きな資金を投入しなければならず、新規事業のアイデアはあっても資金不足から二の足を踏んでいる企業もあるかもしれません。

業務提携では自社が今持っていない他社のリソースを活用できます。新規事業のアイデアを実現するために必要な技術・設備・販路などを持つ企業と業務提携できれば、スムーズに新規事業へ進出できるでしょう。

既に必要なリソースがそろっているため、収益化までの時間を短縮しやすいメリットもあります。

 

 

少ない資金で実施できる

買収合併といったM&Aでも他社の持つリソースを獲得できます。ただし資本の移動を伴うため、実行するには多額の資金が必要です。M&Aを検討している企業の価値によっては、数千万~数億円かかることもあるでしょう。

業務提携では、M&Aのように大きな資金を用意する必要がありません。多額の現金を用意するのが難しい場合でも、他社のリソース活用できます。

 

 

 

状況によっては提携関係を解消できる

業務提携は提携関係を臨機応変に変更できるのもメリットです。業務提携を結んだ企業は、M&Aで企業や事業ごとリソースを獲得した場合と異なります。利益向上を目的としたパートナーであり、それぞれ独立しているのが特徴です。

提携している企業のリソースを活用した事業が好調であれば業務提携を継続できますし、状況次第では提携の範囲を拡大してもよいでしょう。反対に思うような成果が出ていないときには、提携を解消する選択肢もあります。

 

 

業務提携のデメリット

他社と業務提携(事業提携)を結ぶことには、メリットだけでなく以下のようなデメリットもあります。

⚫︎人材・技術の流出

⚫︎法的なリスクが見つかりにくい

⚫︎結びつきが希薄になりやすい

業務提携をする際は、デメリットを理解し適切に対策することが大切です。有効な対策ができるよう、それぞれのデメリットについて見ていきましょう。

 

 

人材・技術の流出

業務提携のデメリットの1つに、人材や技術の流出があります。自社内の人材や技術・蓄積したノウハウなどは、会社にとって大きな財産ですが、業務提携にあたって他社に解放しなければいけません。それらのリソースが他社に流出すると、将来の経営に影響を及ぼす可能性もあるのです。

人材や技術の流出を防ぐにはリスク管理が必要です。
あらかじめ情報開示に関する内容を契約書に明記したり、情報漏洩に対する対策を講じたりするなど、リスク管理を事前にしておきましょう。

 

法的なリスクが見つかりにくい

大きな資金移動のない業務提携では、契約書や契約内容に法的な不備・問題などがないか調査するリーガルチェックを実施しないケースもあります。調査を実施しないまま提携すると、あとから思わぬリスクが見つかるかもしれません。

例えば利益の分配についてのトラブルです。事前に明確な決まりを設けないことで、収益化したあとの利益をどのように分けるかでトラブルが発生する可能性があります。

 

 

結びつきが希薄になりやすい

独立した企業同士の業務提携は、状況に応じて提携を解消しやすい反面、結びつきが希薄になりやすい点がデメリットです。現場の担当者レベルで提携が維持されているケースもあり、担当者が異動になると自然消滅してしまうこともあります。

 

 

 

 

業務提携のフロー

業務提携を行うときには以下のステップで進めるのが一般的です。

1. 目的の検討
2. 業務提携企業の選定
3. 業務提携契約書の確認・締結
4. チーム体制の構築
5. 業務提携の開始

 

それぞれのステップについて詳しく見ていきましょう。

 

1. 目的の検討

まずは、業務提携を行う目的を検討しましょう。業務提携の目的や戦略が曖昧なままでは、適切な相手を見つけたり交渉を進めたりすることができず、双方にメリットのある業務提携を実現できません。

目的を検討する際は、現状の課題を分析し、他社と提携して外部の経営資源を活用すべき事項を洗い出します。さらに、自社の強みとなる経営資源も明らかにすることで、契約を進める際の交渉に役立てましょう。

業務提携で達成したい目的をもとに、提携の内容や戦略を具体的に検討します。目的によっては、業務提携に限らず資本提携やM&Aなども検討するとよいでしょう。

 

 

2. 業務提携企業の選定

業務提携の目的や戦略を明確にしたら、それを実現できる相手先を探します。提携先を選ぶ際は、専門家への依頼がおすすめです。

有力な提携候補が見つかったら、提携によって生まれるシナジー効果や、相手方にとってのメリットを伝え、交渉を進めましょう。提携交渉を開始する合意を得られたら、本格的な交渉がスタートします。

 

 

3. 業務提携契約書の確認・締結

業務提携企業が決まり、交渉を開始する合意を得られたら、条件調整や契約の締結などに進みます。

まずは、秘密保持契約の締結が必要です。交渉の際、会社が持っている技術やノウハウなど、重要な内部情報や個人情報を公開する必要があります。情報漏えいの防止や、万が一漏えいした場合に責任の所在を明らかにするために、必ず秘密保持契約を締結しましょう。

業務提携に関する条件がまとまったら、基本合意書を締結します。基本合意書には法的拘束力がありませんが、提携内容や条件などを双方が整理し、確認するために必要です。

契約内容や業務提携企業に問題ないと判断できたら、いよいよ業務提携契約を締結します。最終的な交渉で契約内容を確定しましょう。契約書が完成したら、必ず内容に問題がないかを確認しましょう。双方にとって利益のある契約であることが重要です。

 

 

4. チーム体制の構築

業務提携にあたって、社内体制も整備しましょう。専用のプロジェクトチームを編成し、チームが主体となって業務提携を進めていきます。プロジェクトチームの役割は、提携先との協力体制や協力について検討することです。

契約後の具体的な提携の進め方やスケジュールの調整、定例ミーティングの開催有無や社員同士の交流方法などを検討します。専門のチームを構築することで、実効性のある業務提携が実現するのです。

 

 

5. 業務提携の開始

契約を締結し、プロジェクトチームを編成したらいよいよ業務提携を開始します。有効な業務提携をより有効にするため、プレスリリースで締結をアナウンスするのもおすすめです。

業務を進めるうえで、業務提携契約に加え、必要な契約や確定すべき事項が生じた場合は、必要に応じて契約の見直しや業務提携内容の拡充を行いましょう。業務内容によっては、さらに個別契約を締結することもあります。

 

 

業務提携契約書の主な要項

業務提携契約書を作成する際、記載が必要なのは以下の要項です。

・業務提携の目的
・業務内容・担当範囲
・成果物の帰属
・収益および費用の負担
・契約期間

 

これらの要項を契約書に記載しない場合、トラブルに発展するかもしれません。以下では、それぞれの要項をなぜ記載するのか解説します。

 

 

業務提携の目的

まず記載が必要なのは業務提携を行う目的です。業務提携の実施に向け明確にした目的を、契約書に記載することで、それぞれが担うべき役割が明らかになります。

また、そのほかの項目について齟齬が生まれた場合、目的をもとに解釈を統一することもあるでしょう。重要な役割を持つ項目のため、明文化して客観的に確認できるようにします。

 

 

業務内容・担当範囲

提携後の業務内容やそれぞれの担当範囲も、契約書内で明確にしましょう。具体的な業務内容だけでなく、業務に必要なツールやシステムなどにかかる費用をどちらが負担するか、トラブルが発生した際はどのように対応するかなどについても記載します。

この条項を設けていれば責任の所在が明確になり、トラブル発生時にも安心です。

 

 

成果物の帰属

業務によって製品やサービスなどの成果物ができたとき、その権利がどちらに帰属するのか、また権利の範囲はどこまでなのかについても明確化しましょう。

成果物には、知的財産も含まれます。成果物の帰属について明確化になっていないと、せっかく生み出した成果物や知的財産を、自社で扱えなくなる可能性があるので注意が必要です。自社で使用できるよう契約書に記載しましょう。

 

 

収益及び費用の負担

業務提携で実行した事業によって収益を得た場合、その収益をどのように分配するかを決めなければいけません。一般的には事業への貢献度によって分配額を決めることを決めます。

また、事業に必要な費用負担の割合について記載することで、トラブルを未然に防げるでしょう。費用負担は、事業への貢献度を算定する際の指標にもなるため、非常に重要な項目です。割合だけでなく、支払い日や支払い方法なども事前に決めて明記します。

 

 

契約期間

業務提携の期間や、契約延長・更新の方法、期間内の打ち切りなどについて定める項目です。業務提携は一定期間限定で行われるのが一般的です。また、契約期間の定めがないと、いつまでも契約に拘束され、思うように事業を進められない場合もあります。

加えて契約期間だけでなく、延長や更新したい場合はどうするか、さらにどのような事由が生じたら期間内でも契約を終了できるか、などについて明記しましょう。

なお、業務提携の期間が終了しても、秘密保持や成果物の帰属など、契約当事者に発生する権利義務が別途継続する場合もあるため、契約内容に応じて必要な内容を盛り込みます。

 

 

 

 

業務提携契約を結ぶときの注意点

業務提携契約書を作成する際、記載が必要なのは以下の要項です。

契約を検討するときには秘密保持契約を結ぶ

提携する企業にデューデリジェンスを行う

契約書は雛形を使ってもリーガルチェックを受ける

提携前に契約書を締結しておく

業務提携は契約書の締結やデューデリジェンスなど、注意深く進めなければいけません。具体的にどのような点に注意が必要なのか詳しく見ていきましょう。

 

 

 

契約を検討するときには秘密保持契約を結ぶ

業務提携契約を結ぶときには、会社の機密情報を伝えることも多いでしょう。万が一伝えた情報が漏れれば、大きな損失が発生し経営に影響が出る可能性もあります。

このような事態を防ぐために締結するのがNDAともよばれる秘密保持契約です。秘密保持契約を結ぶことで情報漏えいの抑止力となりますし、情報が漏れたときの責任の所在も明らかになります。

 

 

 

提携する企業にデューデリジェンスを行う

提携の際には、相手企業が知らない負債を持っていないか、企業ブランドの既存につながるトラブルの種を持っていないかなどを明確にしておく必要があります。そのために行うのがデューデリジェンスです。

デューデリジェンスとは、M&Aや組織編成を行う際に、買収対象企業の経営環境や事業内容などの調査、法務面から問題点やリスク、財務状況や収益力について分析を行うことです。企業をあらゆる面から調査し、正確な実力や実態を精査します。

デューデリジェンスを行わないと、思わぬ不利益を被る可能性があるため、専門家に必ず依頼しましょう。

 

 

 

契約書は雛形を使ってもリーガルチェックを受ける

インターネットで検索すれば、無料で使える業務提携契約書の雛形が見つかります。ただし、弁護士や行政書士などが作成した雛形であっても、リーガルチェックを受けましょう。

雛形はあくまでも一般的な内容を盛り込んだもので、個別の契約には合わない内容も含まれています。チェックしないまま締結すると、自社に不利に働く契約書を結んでしまうかもしれません。

締結前にチェックを受けることで、自社の業務提携に最適な内容の契約書を取り交わせます。

 

 

 

提携前に契約書を締結しておく

業務提携を実施する際は、提携前に必ず契約書を交わしましょう。事前に口頭で業務提携の目的や、実施する範囲、提供する人材、費用負担などについて話し合い合意していても、契約書がなければ口約束に過ぎません。

あとから約束と異なる条件を提示される可能性もあります。合意した内容について盛り込んだ契約書を事前に締結しておけば、このようなトラブルを回避可能です。

 

 

 

業務提携の種類

業務提携は提携するリソースの種類によって複数に分類されます。
どのような種類があるのでしょうか?

 

 

 

協力し新技術や新商品を開発する「共同開発提携」

企業が集まりそれぞれのリソースを提供し合い、製品やサービスの開発を行うことを「共同開発提携」といいます。技術・ノウハウ・人材など、それぞれの持つリソースを提供し、補い合える点がメリットです。

自社のみでは開発が難しい商品やサービスも、恊働することで開発できる可能性があります。

 

 

自社の技術開発や製造・販売を活用する「技術提携」

「技術提携」とは、他社が持つ開発やノウハウなどの経営資源を、自社の技術開発や製造、販売などに活用することです。自社にない技術を用いることで、シナジーを発揮できます。技術提携は以下の2つのケースに分類できます。

◎共同研究開発契約:新技術や新製品の共同開発を行う

◎ライセンス契約:特許など既存技術を駆使して開発を行う

 

共同開発は複数の企業で開発にかかるプロセスを分担・協力して行うため、自社内だけで新製品の開発に取り組むよりも開発期間を短縮可能です。さらにリスクの分散や負担の軽減にもつながります。

またライセンス契約では、知的財産権を所有している企業はライセンス収入を獲得できるでしょう。知的財産権を持たない企業はライセンスを使用し画期的な商品やサービスを開発できるかもしれません。

 

 

自社の生産(製造)工程のすべてまたは一部を委託する「生産提携」

「生産提携」とは、自社の生産・製造工程のすべてまたは一部をパートナー企業に委託することです。自社のみでは不足している生産能力を補充できます。企業が生産量を増やすためには、生産ラインの稼働率を上げ、設備投資を行うなどの対策が必要です。しかし同時に、品質管理やそれに関わる人材の育成や採用もしなければなりません。

生産提携を行えば、設備投資や人材の確保といったプロセスを省いて生産量を増やせます。委託側も安定的に稼働率を高められ、双方にメリットがある取り引きです。

生産提携の場合、相手企業とは「製造委託契約」を締結し、製造する製品の仕様や品質レベル、製造数量はもちろん、原材料や検収方法に至るまで細かく書面に記す必要があります。

品質管理や欠陥が生じると、企業のブランド価値を傷つける事態につながるため、注意が必要です。

 

1.OEM

OEM(Original Equipment Manufacturing)は生産提携の一種で、自社製品の製造のみを他社へ委託する生産方法です。委託先の製造ラインを使い製品を作れるため、自社内で製造ラインを用意しなくてもすぐに自社製品を作れます。生産量を増やしたいという場合にも設備投資することなく即座に解決可能です。

 

2.ODM

ODM(Original Design Manufacturing)は受託者が開発や設計を行った製品やサービスを、委託者が自らのブランド名で販売する生産提携の形態です。委託者からの依頼で受託者が開発や設計をするケースと、受託者が開発済みの製品を委託者へ売り込むケースがあります。

 

 

パートナー企業の販売資源を活用する「販売提携」

「販売提携」とは、パートナー企業の持つ販売チャネルやブランド力、人材、製品・商品などを共有し、販売資源を活用することです。販売提携を実施すると、販売力の向上が期待できます。

販売提携の契約形態は以下の3種類です。

  1. 代理店契約
  2. 販売店契約
  3. フランチャイズ契約

 

 

 

1.代理店契約

代理店契約とは、代理店側がメーカー(サプライヤー)の代理として営業活動を行い、商品を販売する契約のことです。エージェント方式とも呼ばれます。商品を販売するのはメーカーで、代理店はメーカーの代理人として営業活動を行います。

代理店は、販売実績などに応じてメーカーから手数料を受け取る仕組みです。代理店にとっては在庫を抱える必要がないというメリットがある一方、販売実績によって利益が変わるため、実績が悪ければ利益が出ない可能性もあります。

 

 

2.販売店契約

販売店契約とは、販売店側(ディストリビューター)がメーカー(サプライヤー)から製品を仕入れて、在庫を抱えて販売を行う契約のことです。ディストリビューター方式とも呼ばれます。

販売店は、製品仕入時と販売時の価格の差で利益になります。メーカーにとっては、販売店に製品を売った時点で売上が立つ点がメリットです。販売店にとって在庫リスクがありますが、利益が出やすい傾向があります。

 

 

3.フランチャイズ契約

フランチャイズ契約とは、特定のサービスや商品について、独占的な権利を有する親会社(フランチャイザー)が、加盟店(フランチャイジー)に対して、商標・商号の使用権、商品やサービスの販売権、それに伴うノウハウや教育などを与え、その対価として加盟店から保証金やロイヤリティの対価を受け取る契約のことです。フランチャイズ契約では、基本的には親会社が用意したプランにのっとった契約を交わします。

 

 

その他の業務提携

業務提携の種類は他にも、商品や原材料を共同購入する「調達提携」や、物流施設の共同利用や共同配送を行う「物流提携」などがあります。どちらも複数の企業で提携することで、スケールメリットによるコスト削減が期待できる提携です。

 

 

業務提携と似た用語の違いを解説

企業同士が協力体制を築く方法は、提携の範囲や資本の移動の有無によって種類が異なります。業務提携と似た用語の意味について解説します。

 

 

業務提携より広範囲な「事業提携」

業務提携でリソースを出し合い恊働するのは、特定の業務限定です。例えば新商品を販売する事業の中でも、小売店への輸送に関する部分のみで提携した場合は業務提携といえます。

一方、新商品を販売する事業全体で提携するのが「事業提携」です。より広い範囲で協力関係を築くため、業務提携より結びつきが強い傾向があります。

ただし業務提携と同じで資本の移動はありません。

 

 

資本が移動する「M&A」

他社のリソースを活用できるようになるという点で、業務提携と似ているのは「M&A」です。ただし資本と経営権が移動する点は異なります。

例えば株式譲渡という手法でM&Aを実施した場合、買い手は売り手へ株式の対価を支払わなければいけません。株式を取得することで、リソースを含む企業の所有しているものをすべて獲得する手法です。

株式譲渡では売り手企業の経営権も買い手へ移動します。買い手は自社の傘下へ売り手企業を入れ自社グループとしたり、会社同士を統合したりして、相乗効果の発揮を目指す方法です。

 

 

一部の業務を外部へ依頼する「業務委託」

業務委託とは、一部の業務を外部へ委託することです。委託する側と受託する側の間で業務委託契約を締結します。

業務委託が委託を受け製品やサービスを作る契約であるのに対し、業務提携は互いの経営資源を活用し、相乗効果の発揮により利益を目指す契約です。業務提携と業務委託は似ていますが、業務提携の方がより密な関係を構築する契約といえます。

 

 

資本の移動を伴う「資本提携」

業務提携と資本提携の違いは、資本の移動の有無です。資本の移動とは、両者で株式の移動や自己株式・新株の取得による増資などが行われることを指します。業務提携では、資本の移動は発生しません。あくまでも、資本関係がない両者間で、互いの経営資源を活用して協力して事業を進めます。

一方、資本提携では、会社間で互いの株式を持ち合ったり、出資を行ったりするため、資本の移動が発生します。このように、資本が移動するか否かが業務提携と資本提携の違いです。

 

 

協力関係を強固にする「資本業務提携」

業務提携のうち資本の移動を伴うものが「資本業務提携」です。例えば提携している企業の増資を引き受け株式を持つことで、出資を伴わない業務提携より強固な関係性を築けます。

資本を出す側は自社にない技術やノウハウを活用した製品やサービスを作りやすくなりますし、資本を受け取る側は経営に必要な資金を獲得できる方法です。

 

注意点は出資比率

資本の介入が伴う業務提携を行う際は、両社の「出資比率」に注意しましょう。株主は原則として、所有する株式の割合に応じて株主総会で議決権を行使できます。議決権の3%以上を取得していれば、相手企業の帳簿閲覧権を行使可能ですし、議決権の過半数を保有していれば、取締役の解任や配当の決定が可能です。

このとき注意しなければいけないのが、資本の出し過ぎです。議決権のある株式のうち過半数を取得してしまうと、提携先企業の独立性が危ぶまれてしまいます。出資比率を決める際は「どの程度相手に出資比率を与えるか」「相手企業と長期間関係を維持できるか」などに留意しなければいけません。

 

 

 

 

ベンチャー企業と大手企業の業務提携事例

ベンチャー企業と大手企業の業務連携は、アメリカをはじめとする海外諸国で盛んです。日本でもいくつかの成功事例があります。ここでは、ベンチャー企業と大手企業の業務提携事例について、以下の3つを紹介します。

 

①ソフトバンク

②KDDI

③パナソニック

 

業務提携を検討しているベンチャー企業の経営者は、ぜひ参考にしてください。

 

①ソフトバンク

携帯電話事業を中核に事業を展開しているソフトバンクは、現在では「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」という10兆円規模の巨大ファンドを組成して、世界中に点在しているAI、IoT、ビッグデータの技術などに関する最先端のテクノロジー企業に出資・業務提携を行なっています。

主な対象のベンチャー企業は、3億人以上のユーザーを抱えるインド最大のモバイル決済事業「Paytm」、全世界で400以上の拠点を持つシェアオフィス最大手の「WeWork」、東大発のベンチャー企業で、二足歩行ロボットの開発を行う「Schaft」などです。

世界各地に点在するさまざまな領域のベンチャー企業に出資、提携を行っています。

 

②KDDI

ソフトバンク同様、国内で携帯事業や光回線事業を展開する総合通信大手企業のKDDIは、IoTプラットフォームを提供しているスタートアップ企業の「ソラコム」を200億円で買収、データ分析事業を展開する「ALBERT」と資本業務提携契約を締結しています。

このほかにも、IoT専業のソリューションベンダーとして、センサー・自社開発デバイスの提供を行う「エコモット」、価格コムや食べログを運営する「カカクコム」など、幅広く資本・業務提携を行なっています。

このように、KDDIが推進する「通信とライフデザインの融合」という目的に対し、ビックデータの分析分野の強化、車や産業機械、5G、IoTなど先端技術を組み合わせ、デジタルとランスメーションをサポートするため、あらゆる分野のベンチャー企業と業務提携を図っています。

KDDI は、このほかにも、「KDDI ∞ Labo」や「KDDI Open Innovation Fund」と新たな枠組みを作り、各業種において豊富なアセットやノウハウを有するパートナー企業との連携を実施中です。ベンチャー企業を広く支援するファンドをもとに投資にも取り組み、グループ傘下のさまざまな事業やアセットと、シナジーやイノベーション創出に向け恊働しています。

 

③パナソニック

総合家電大手であるパナソニックは、デジタルキーの分野で先端的な技術とプラットフォームを持つビットキーとの間に、業務提携契約を締結しました。デジタルキーはスマートフォンを活用した遠隔地からの住宅設備の操作に活用されている技術です。

従来インターネットと接続されていなかったさまざまなものが、サーバーやクラウドサービスへ接続されるようになってきています。家電を提供するパナソニックが、ユーザーへより価値ある製品を届けるために役立つ事業提携です。

またビットキーはパナソニックからの出資を受ける契約となっており、資金面でのメリットを得られます。

 

 

 

業務提携は業績アップに活用できる

自社にない技術やノウハウ・販路などを活用できる業務提携を実施すると、自社のリソース不足で実行できていなかった事業拡大や新規事業への進出を実現できる可能性があります。提携先企業の持つリソースを活用できるため、自社で一から取り組むより資金も手間もかかりません。

同じように他社の持つリソースを活用できる手段であるM&Aと比較しても、わずかな費用で実施できる方法です。

アイデアはあるけれど「資金が足りない」「ノウハウがない」「販路がない」などの理由で業績アップへ向けた取り組みが進まないなら、業務提携の活用による事業展開の可能性もあります。

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