| 公開日 | 2023/07/04 |
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| 記載者 | 株式会社トマック |
M&A
譲渡日は最後に決める──許認可のある会社を引き継ぐときの、譲渡スケジュールの設計
条件はまとまったのに、日取りだけが動かない
条件の交渉はまとまった。買い手も乗り気で、あとは日取りを決めるだけ。
そこまで来てから、許認可の手続きに何日かかるかを調べ始める。許認可を持つ会社の譲渡では、この順番でつまずくことがあります。
日程が決まったあとに手続きの所要日数を知ると、動かせるものがもう残っていません。逆に、所要日数を先に置いてから日取りを決めれば、同じ案件がすんなり流れます。
順番の話です。難しい制度の話ではありません。
許可は、誰に付いているのか
最初に確かめるのは、その許認可が会社に付いているのか、それとも事業や人に付いているのかです。
会社に付いているものは、会社そのものが動かなければ残ります。事業に付いているものは、事業が別の器へ移った時点で切れます。この線引きが、そのまま手続きの重さになります。
そして、許認可の多くは「会社の人の体制」も見たうえで出されています。技術や経営の要件を満たす人が社内にいることが前提になっている、という意味です。ここは、株式を買う形であっても影響します。
株式を買うのか、事業を買うのか
株式譲渡では、法人格が変わりません。会社が持っていた許認可は、原則としてそのまま会社に残ります。契約も雇用も同じです。
事業譲渡は違います。事業が別の法人へ移るので、許認可は自動では付いてきません。合併や会社分割も、法人格の入れ替わりを伴います。
許認可のある会社で株式譲渡が選ばれやすいのは、この差が大きいためです。ただし「株式譲渡なら何も要らない」ということではありません。中心にいた人が抜けるなら、要件を満たし続けられるかの確認が要ります。
建設業は、型がいちばん整理されています
業種によって扱いは違いますが、建設業の仕組みは考え方の見本になります。
2020年10月1日に施行された改正建設業法で、事業承継の事前認可制度ができました。建設業法17条の2が譲渡及び譲受け・合併・分割、17条の3が相続にあたります。
この認可を受けると、承継する側は、承継される側の建設業者としての地位の全部を引き継ぎます。空白の期間を生じることなく、営業を続けられます。
制度ができる前は、譲り受けた側が新しく許可を取り直していました。取り直しが終わるまでは許可のない期間が生まれ、その間は金額の大きい工事を請け負えません。
出典:国土交通省 関東地方整備局「事業承継等の事前認可制度」 https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000877209.pdf
効力が生じるのは、認可の日ではありません
ここが日程設計の一番の重要ポイントです。
許可の地位が移るのは、承継の日です。認可が下りた日ではありません。つまり、認可は承継の日より前に下りていなければならない。
国土交通大臣の許可を受けている会社では、地方整備局長等が認可を行います。国土交通省の通知では、認可の標準処理期間をおおむね90日程度としています。譲渡等でも相続でも同じ日数です。
都道府県知事の許可の場合、日数は県ごとに違います。標準処理期間を40日と公表している県もあれば、県のページに日数の記載が見当たらない県もあります。
いずれにしても、審査に要する期間とは別に、申請書類をそろえる期間を考える必要があります。逆算するときは、この2つを足してください。
出典:国土交通省「国土交通大臣に係る建設業許可及び建設業者としての地位の承継の認可の基準及び標準処理期間について」(国総建第99号/最終改正 令和6年12月13日) https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001445529.pdf
「いいところだけ」は引き継げないことがあります
もうひとつ、許可を引き継ぐスキームの組み立てに関わる縛りがあります。
建設業では、承継する側は、承継される側の建設業のすべてを引き継ぐ必要があります。業種を選んで一部だけ、という形は認められません。
採算のよい業種だけを買う、という組み立てを考えていた場合は、ここで作り直しになります。基本合意の前に確かめておきたい点です。
買い手も同業のとき、許可の中身がぶつかります
許認可のある会社を買うのは、同じ許認可を持つ会社であることが少なくありません。そのときに起きるのが、許可の内容の衝突です。
建設業では、同じ業種について、一方が一般建設業、もう一方が特定建設業の許可を持っている場合、その地位を引き継げません。両社が許認可保有会社であることが、かえって障害になります。
両社の許可の内容を並べて見るところから始めてください。買い手が決まってからでは、選び直しに時間がかかります。
相続には、許認可引継ぎ日程に期限があります
個人で事業を営んでいた方が亡くなった場合、許認可引継ぎ日程は、法律で決まった期限になります。
建設業では、相続人は死亡後30日以内に認可を申請します。期限内に申請しておけば、認可の処分があるまでの間、相続人は許可を受けた者として扱われます。審査の途中で前の許可の満了日が来ても、効力は切れません。
裏を返せば、30日を過ぎるとこの扱いを受けられません。葬儀と並行して動くことになる期限です。
個人で建設業を営んでいる方は、全国で65,733者、許可業者の13.6%にあたります。法人化しないまま続けるなら、この30日が実際の期限になります。
出典:国土交通省「建設業許可業者数調査の結果について(令和8年3月末現在)」 https://www.mlit.go.jp/report/press/content/002000769.pdf
最初に作るのは、許認可の一覧です
業種が違えば、扱いも違います。事前の認可で引き継げるもの、届出で足りるもの、取り直しが必要なもの。同じ会社が複数の許認可を持っていることも珍しくありません。
ですから、値段の話より先に一覧を作るのが早道です。
・どの許認可を、いつ取得し、いつ満了するのか
・その許認可の要件を、社内の誰が満たしているのか
・その人は、譲渡後も残るのか
・承継の手続きは、認可・届出・取り直しのどれか
・所管はどこか。審査に何日かかるか
この5つが埋まれば、譲渡日は自然に決まります。埋まらないうちに日取りを先に決めると、あとで動かせなくなります。
許認可は、それ自体が引き継ぐ価値です
許認可の話は、どうしても「手続きの面倒」として語られがちです。
けれども、許可を持ち、要件を満たす人を抱え、実績を積んでいることは、新しく参入する会社が一朝一夕には作れないものです。買い手がその会社を選ぶ理由そのものになります。
全国の建設業許可業者は、令和8年3月末で483,823者。3年続けて増えています。市場が縮んでいるわけではありません。引き継ぎ方さえ間違えなければ、渡せる相手はいます。
段取りの順番は、ひとつだけ覚えておけば足ります。日取りを決めるのは、最後です。
ご相談・注記
北陸3県(富山・石川・福井)の担当窓口と、県ごとの標準処理期間は、当社サイトの記事にまとめています。
建設業のM&A|北陸で建設業許可を引き継ぐ手順と期限
https://tomac-gr.jp/news/kensetsu-kyoka-shokei/
※ 建設業許可の承継の認可について、申請書類の作成や提出の代理を専門家へ依頼される場合は、行政書士の業務にあたります。譲渡に伴う登記は司法書士、税務は税理士の業務です。
※ 本記事は2026年9月時点の法令・制度にもとづいています。制度は改正されることがありますので、お手続きの前にご確認ください。
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