M&A
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2026/09/04

廃業と譲渡、手取りはどちらが残るか──見積もりを2枚並べる

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「廃業したらいくらかかるか」を、数字にしていますか
譲渡のご相談では、譲渡した場合の手取りは必ず話題になります。ところが、廃業した場合にいくら出ていくのかは、数字になっていないことがほとんどです。 比べる相手の金額が空欄のまま、提示条件の是非だけを議論している。それでは、条件が高いのか安いのかを決めようがありません。 廃業の見積もりは、譲渡を進めるためではなく、判断の物差しを作るために要ります。
休廃業・解散企業の約半数は、直前期が黒字だった
倒産件数は2024年で10,006件でした。これに対し、同じ年の休廃業・解散はおよそ7万件にのぼります。2025年版の中小企業白書が示す数字です。統計上、倒産として整理される企業よりも、休廃業・解散として事業活動を終える企業のほうが、はるかに多くなっています。 注目したいのは内訳です。2024年に休廃業・解散した企業の51.1%は、休廃業・解散直前の当期純利益が黒字でした。黒字なら将来も安泰、という意味ではありません。ただ、赤字だから廃業するという単純な図式でもない、ということです。
登記費用は定額、官報公告は行数で決まります
手続きの骨格は、解散と清算の二段構えです。清算人が債権の回収、債務の弁済、残余財産の分配などを行い、清算事務の終了後に清算結了を登記します。 登録免許税は、法務局の申請書ひな形に明示されています。解散で3万円、清算人と代表清算人の選任で9千円、結了で2千円。締めて4万1千円です。 そこへ官報での債権者保護手続きが乗ります。法定公告は22文字で1行と数え、会社が出す場合は1行あたり税込3,947円。掲載してから2か月以上を空ける必要があります。 登記の分は定額、公告は行数しだいです。いずれも会社の規模で桁が変わる類の費用ではありません。問題は、この先です。
金額が変動するのは、設備・原状回復・在庫です
製造業なら、機械の撤去と搬出があります。基礎から据え付けた設備は、外すだけで見積もりが要ります。 賃借している工場や店舗は、原状回復が待っています。長く使ったほど範囲は広がります。産業廃棄物の処理も、品目によって単価が変わります。 在庫は、売れる相手がいなければ処分費に転じます。買い手にとっては引き継ぐ資産でも、清算では負担側に回ります。 この部分は業種と規模で桁が変わるため、一般的な相場では読めません。現物を見た見積もりでないと、比較の材料になりません。
従業員への支払いは、退職金規程の有無だけでは決まりません
解雇する場合、原則として30日以上前に予告しなければなりません。30日前に予告しない場合は30日分以上の平均賃金を支払い、予告期間が30日に満たない場合は、その不足日数分の平均賃金を支払う必要があります。 つまり、30日前に予告できていれば手当は要りません。20日前なら原則10日分です。段取り次第で消える費用である一方、駆け込みで決めれば丸ごと乗ってきます。 退職金の規程があるなら、当然そこも支出です。規程を置いていない会社でも、長年の慣行があれば同じ水準を求められる場面があります。 そして金額に表れないものが残ります。従業員がそれぞれ次の職を探すことになり、取引先は仕入先を組み替えることになります。
廃業費用が補助対象になる制度もあります
事業承継・M&A補助金には、廃業・再チャレンジ枠が設けられることがあります。十五次公募では、一定の要件を満たす場合に、廃業支援費、在庫廃棄費、解体費、原状回復費などが補助対象とされ、補助上限は300万円でした。 ただし、単に廃業するだけで使える制度ではありません。M&Aへの取組状況、廃業後の再チャレンジ計画、申請時期、対象経費、交付決定の時期などに条件があります。また、申請すれば必ず採択されるものではなく、対象経費の全額が支給されるものでもありません。 そこで、補助金を見込まない金額と、採択された場合の金額を分けて試算するのが安全です。当てにして段取りを組むと、外れたときに動けなくなります。 十五次公募の申請受付は2026年7月24日に終了しています。今後の公募の有無や要件は、最新の公募要領で確認してください。
譲渡では、処分費のかかる資産が価格の一部になります
株式譲渡では、株主が入れ替わっても法人自体は存続します。そのため、会社が当事者となっている契約や従業員との雇用関係、会社名義の許認可は、原則として継続します。ただし、契約にチェンジ・オブ・コントロール条項がある場合や、許認可の種類によって届出・承認等が必要な場合は、個別の確認が必要です。 ここが廃業との最大の違いです。清算では撤去費を払って手放す設備が、譲渡では評価の対象になります。同じ機械が、一方では支出、もう一方では収入の側に立ちます。 在庫も、許認可も、顧客との関係も同じ構造です。清算価値と事業価値は、別の物差しです。
手取りの計算は、出口によって方程式が変わります
株主が個人の場合、株式の売却で生じた利益──売却額から取得費と譲渡費用を引いた残り──には申告分離課税がかかります。他の所得とは合算しません。内訳は所得税15%と住民税5%、これに復興特別所得税が乗って20.315%になります。 清算はどうか。資産を換価して債務を弁済し、残った財産を株主へ渡します。この受け取りには配当とみなされる部分が含まれ、売却益とは別の枠で課税されます。 同じ会社から払い出されるのでも、手取りの構造そのものが変わります。税引後で並べないと、比較になりません。
いちばん見落とされるのが、経営者保証です
会社が消えても、経営者の保証債務が自動的に消えるわけではありません。清算で返しきれなかった借入があれば、保証人である経営者に残ります。 譲渡であれば、保証の解除は交渉の対象になります。買い手が引き受けるのか、金融機関と個別に整理するのか、手順を組めます。 「廃業なら静かに終われる」という見立ては、保証債務を数えていないことが少なくありません。廃業の見積もりには、保証の行方を必ず入れてください。
早く動くほど、手元に残せる可能性があります
「廃業時における『経営者保証に関するガイドライン』の基本的考え方」が、2023年11月に改定されました。 改定では、廃業手続に早期に着手することが、保証人の残存資産の増加に資する可能性があることが明確化されています。退出の意向がある経営者に、早い段階での相談を促す趣旨です。 譲渡でも同じことが言えます。体力が残っているうちは、相手を探す時間も、条件を交渉する余地もあります。資金繰りが詰まってからでは、選べる道が細ります。 早いか遅いかで結果が変わるのは、譲渡だけではありません。廃業も同じです。
相談の入口は、公的な窓口でも構いません
国が各都道府県に設置する事業承継・引継ぎ支援センターは、令和7年度に新規相談24,000者超を受け、第三者承継の成約は2,265件と過去最多になりました。相談は無料です。 扱う範囲は譲渡に限りません。後継者が見つからないときの進め方も相談できます。「まだ何も決まっていない」段階で足を運んで構いません。
見積もりを2枚、机の上に並べる
当社にも、廃業の相談として来られた会社が、最終的に株式譲渡を選ばれた例があります。決め手になったのは、この2枚でした。撤去費を計上していた設備と在庫、そして取引先とのつながりに、買い手側の評価が付いたのです。 順番はいつも同じです。廃業したらいくら出ていくのか。譲渡したら税引後でいくら残るのか。この2枚が揃ってから決める。 どちらを選んでも構いません。片方しか見ないまま決めてしまうことだけが、あとに残ります。
まだ決めていない、という段階でどうぞ
「廃業するか、渡すか、まだ決めていない」という段階が、いちばんご相談いただきやすい時期です。決算書をお預かりして、譲渡した場合の企業価値の目安を無料で算定しています。ご希望があれば、廃業した場合の見込みも同じ紙に並べます。 各地の窓口や、費用の内訳をもう少し細かく見た記事は、当社サイトにまとめてあります。 ・会社の廃業費用はいくらか|北陸で譲渡と比べる https://tomac-gr.jp/news/haigyo-jouto-hikaku/ ・事業承継・M&Aのご相談 https://tomac-gr.jp/shoukei/ 出典:中小企業庁「2025年版 中小企業白書」/同「事業承継・M&A補助金」/同「『廃業時における「経営者保証に関するガイドライン」の基本的考え方』の改定について」/法務局「株式会社解散及び清算人選任登記申請書」「株式会社清算結了登記申請書」/全国官報販売協同組合「官報公告掲載料金」/厚生労働省「確かめよう労働条件」/国税庁「No.1463 株式等を譲渡したときの課税」/中小機構 ※ 解散・清算の登記の申請は提携する司法書士事務所、清算に伴う税務申告や譲渡益の申告は提携する税理士法人が対応します。 ※ 本記事は2026年9月時点の法令・制度に基づいています。制度は改正されることがありますので、お手続きの前にご確認ください。
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