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2026/04/09

【バトンズ独自コラム】介護・福祉事業のM&A・事業承継を徹底解説【2026年最新】

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この記事でわかること
本記事はバトンズに掲載するために書き下ろした独自コラムです。M&A仲介のプロであるシェアモルM&Aのアドバイザーが、介護・福祉事業におけるM&A・事業承継の最新動向を、現場の実務目線でわかりやすく解説します。 介護・福祉事業のM&Aは、2025年問題の本格化と度重なる介護報酬改定を背景に、かつてないほど活発化しています。本記事では、介護・福祉事業者が直面する経営環境、M&Aが加速している構造的な理由、売却価格の目安、売り手・買い手それぞれのメリット、業界特有の注意点、そして2025年に実際に行われた直近の国内実名事例までを、シェアモルM&Aのアドバイザーが体系的に解説します。事業承継や売却を検討し始めたオーナー経営者の方が、最初に押さえておくべき情報を一通りまとめました。
介護・福祉事業の業界動向とM&Aが増えている背景
【市場は拡大、しかし経営環境は厳しい】 介護・福祉事業は、高齢化の進展を背景に国内で数少ない成長産業の一つです。内閣府の高齢社会白書によれば、日本の65歳以上人口はすでに3,600万人を超え、高齢化率は約29%に達しています。団塊の世代が全員75歳以上の後期高齢者となる2025年以降、要介護認定者数はさらに増加し、介護サービスへの需要は2040年代半ばまで拡大が続く見込みです。 一方で、需要拡大と裏腹に、現場の経営環境は年々厳しさを増しています。最大の要因は慢性的な人材不足です。介護職の有効求人倍率は全産業平均を大きく上回る水準が長期にわたって続いており、人件費の上昇と採用難が事業者の収益を圧迫しています。さらに、2024年度の介護報酬改定では、訪問介護の基本報酬がマイナス改定となり、東京商工リサーチの調査によれば2025年の訪問介護事業者の倒産件数は過去最多を更新し、3年連続で最多を更新する見通しと報じられています。 【M&Aが加速している4つの理由】 シェアモルM&Aの現場感覚としても、介護・福祉分野の相談件数は明確に増加傾向にあります。背景にあるのは、大きく分けて次の4つの構造要因です。 ・後継者不在:創業経営者の高齢化が進み、親族内に承継者が見つからないケースが大半を占めています。 ・人材不足と人件費高騰:単独経営では処遇改善や採用競争に耐えられず、規模の経済を求めて大手グループ入りを検討する事業者が増えています。 ・介護報酬改定リスク:3年ごとの報酬改定で収益構造が変わるため、スケールメリットのある事業者の優位性が高まっています。 ・異業種からの買収需要:不動産、人材、ヘルスケア周辺事業、地域の建設業など、異業種からの参入意欲が依然として強く、買い手候補が豊富です。 こうした需給バランスは、現時点ではまだ売り手優位に近い水準を維持しています。裏を返せば、経営が疲弊しきってからではなく、一定の入居率・稼働率があるうちに動いた方が、良い条件で承継先を見つけやすい業界と言えます。
介護・福祉事業のM&A相場・売却価格の目安
介護・福祉事業の売却価格は、一般的に「時価純資産+営業利益の数年分(のれん)」で算定する年倍法がベースになることが多い業界です。実務上は、時価純資産に正常化後の営業利益(またはEBITDA)の2〜5年分を加算するレンジがひとつの目安となります。大型案件やシナジーの高い買い手がつく場合にはEBITDAマルチプル法で評価されることもあり、評価倍率が引き上がるケースも少なくありません。 【売却価格に影響する主な要素】 ・稼働率・入居率:特に有料老人ホームやグループホームでは、直近3年の稼働率トレンドが価格に直結します。 ・サービスミックス:訪問介護単独よりも、デイサービスやグループホーム、住宅型有料老人ホームなど施設系を組み合わせた複合型の方が評価されやすい傾向があります。 ・エリアのドミナント性:同一エリアに複数拠点を持っているほど、買い手にとってのPMI効率が高く、評価もプラスに働きます。 ・処遇改善加算の取得状況:加算区分が高いほど収益性が安定して見えるため、評価にプラスに作用します。 ・行政指導の有無・コンプライアンス:過去の返戻事例や行政指導歴は、デューデリジェンスで必ず精査されます。 シェアモルM&Aでは、初回の相談段階で「どのKPIを整備すれば評価が上がりやすいか」まで踏み込んでお伝えしています。承継準備を1〜2年かけて行うだけで、譲渡価格が数千万円単位で変わることも珍しくありません。
介護・福祉事業をM&Aで売却・承継するメリット
【売り手オーナーにとってのメリット】 ・従業員の雇用と利用者へのサービスを継続できる:地域に根ざした事業の社会的役割を守りながら、経営からの引退が可能になります。 ・創業者利益の確定:長年積み上げてきた事業価値を現金化できます。相続対策としても有効です。 ・個人保証・連帯保証からの解放:金融機関からの借入に付帯する経営者保証をクロージング時に外せるケースが多く、オーナー個人のリスクを大幅に低減できます。 ・経営疲弊からの解放:人材採用・労務管理・制度改正対応といった重圧から解放され、次のライフステージへ進めます。 【買い手にとってのメリット】 ・許認可の承継:株式譲渡スキームであれば、指定事業者としての許認可を原則そのまま引き継げます。新規指定の取り直しが不要という点は、介護業界では極めて大きな価値です。 ・人材・有資格者の確保:配置基準を満たす人員をまとめて確保でき、採用コストを劇的に圧縮できます。 ・地域ドミナントの構築:既存拠点に近いエリアを面で押さえることで、シフト融通・送迎効率・管理コストを最適化できます。 ・時間を買う:新規開設は土地・建物・人員・指定申請の全工程で1〜2年以上かかりますが、M&Aなら即日稼働中の事業を取得できます。
介護・福祉事業のM&Aで注意すべきポイント
【許認可とスキーム選択】 介護事業のM&Aで最も重要な論点の一つが、スキーム選択と許認可の扱いです。株式譲渡や会社分割であれば、指定事業者としての許認可は原則そのまま引き継げます。一方、事業譲渡スキームを選ぶと許認可は原則引き継がれず、譲受側で新規の指定申請を行う必要があります。この場合、人員基準・設備基準を新たに満たさなければならず、クロージング時に退職者が出ると基準を満たせなくなるリスクもあるため注意が必要です。 【キーパーソンリスクと人員配置基準】 介護・福祉事業は人がすべての労働集約型ビジネスです。施設長、ケアマネジャー、サービス提供責任者といったキーパーソンがM&A後に離職すると、配置基準を満たせなくなり事業継続そのものが危うくなります。DD段階で主要スタッフの勤続年数・満足度・リテンション策を必ず確認し、必要に応じて譲渡後のリテンションボーナス設計まで踏み込むことが重要です。 【過去の行政指導・介護報酬返戻の有無】 介護事業特有のDD項目として、過去の行政指導歴、実地指導での指摘事項、介護報酬の返戻事例の有無は必ず精査されます。過去に不正請求や人員基準違反があった場合、指定取消や報酬返還のリスクが買い手に承継されるため、譲渡価格に大きく影響します。売り手側としては、シフト表・勤務実績・加算算定根拠などの書類を事前に整備しておくことが、スムーズな成約の鍵となります。 【不動産の扱い】 施設系事業では、建物が自社所有か賃貸かによってスキームが大きく変わります。賃貸の場合はオーナーの承諾取得が不可欠であり、定期借家契約の残存期間や更新条件も価格交渉の重要な要素となります。
介護・福祉事業のM&A成功事例(2025年 国内実名事例)
ここでは、2025年に実際に行われた介護・福祉業界の国内M&A事例を3件ご紹介します。いずれもプレスリリースやニュース等で公表されている実名事例です。 事例1:セントケア・ホールディングスによる愛らいふサービスの完全子会社化(2025年5月) 時期:2025年5月1日 売り手:愛らいふサービス株式会社(大阪府池田市)。訪問介護、訪問看護、デイサービス、グループホーム、施設紹介事業を大阪府北部で展開し、地域に根差した知名度を築いていた事業者。 買い手:セントケア・ホールディング株式会社(東証上場、2374)。訪問入浴や訪問介護をはじめ、多様な介護サービスを全国展開する大手事業者。 スキーム:株式譲渡(全株式取得・完全子会社化) 背景・結果:セントケア・グループはこれまで大阪府北部のエリアに営業拠点を持っておらず、愛らいふサービスのグループ入りにより同エリアでの事業基盤を一気に構築することに成功しました。エリア拡大型M&Aの典型例であり、地域ドミナントを目指す買い手企業が、地域で実績ある中小事業者を選定した好例です。 出典:日本M&Aセンター 介護・福祉業界M&Aニュース(https://www.nihon-ma.co.jp/sector/care.php) 事例2:ベネッセスタイルケアグループによる日本ヒューマンサポートの完全子会社化(2025年12月) 時期:2025年12月5日 売り手:株式会社日本ヒューマンサポート。埼玉県を中心に、比較的低価格帯の介護付有料老人ホームを展開していた事業者。 買い手:株式会社ベネッセスタイルケアグループ。入居介護事業を東京・神奈川を中心に首都圏で展開する業界大手。 スキーム:株式譲渡(発行済全株式取得) 背景・結果:ベネッセスタイルケアグループは入居介護事業のM&Aを重要な成長戦略と位置付けており、本件によって従来よりも低価格帯のラインナップと首都圏郊外エリアを同時に取得しました。価格帯の異なるブランドを組み合わせることで顧客層を広げるポートフォリオ戦略の事例として参考になります。 出典:介護M&A支援センター プレスリリースまとめ(https://kaigo-ma.com/kaigoma/jirei/article/?id=1) 事例3:リビングプラットフォームによるエムズコンサルティングの完全子会社化(2025年6月) 時期:2025年6月末(取締役会決議) 売り手:株式会社エムズコンサルティング。愛知県内で住宅型有料老人ホームや訪問介護ステーションを運営していた事業者。 買い手:株式会社リビングプラットフォーム。全国で100以上の介護施設と有料老人ホームを展開する大手事業者。 スキーム:株式譲渡(全株式取得・完全子会社化) 背景・結果:リビングプラットフォームは未進出エリアであった愛知県への参入を目指しており、地場で実績のある事業者をM&Aで取得することで、新規開設を待たずに同エリアでの事業展開を可能にしました。新規開設に要する時間とコストを「買う」典型的なエリア拡大型M&Aです。 出典:fundbook 介護業界M&A動向記事(https://fundbook.co.jp/column/industries-ma/longterm-care/) これら3件の事例からは、いずれも「買い手側に明確なエリア拡大・ポートフォリオ戦略があり、その戦略にフィットする中小事業者が選ばれている」という共通項が読み取れます。売り手側から見れば、自社が立地するエリア・サービス種別・規模感が、どの買い手の戦略と相性が良いかを見極めることが、好条件での成約への近道となります。
介護・福祉事業のM&A・事業承継の流れ
介護・福祉事業のM&Aは、一般的なM&Aのプロセスに、業界特有の準備項目を加えた流れで進みます。初回相談からクロージングまでの期間は、規模や複雑性にもよりますが、おおむね6か月〜1年程度が目安です。 ・初回相談・秘密保持契約:仲介会社に相談し、秘密保持契約を締結した上で事業内容を共有します。 ・企業評価・売却方針の策定:財務資料をもとに企業価値を試算し、譲渡希望価格と条件を整理します。 ・ノンネームシート・企業概要書(IM)の作成:匿名資料と実名資料を作成し、買い手候補への打診に備えます。 ・買い手候補への打診・マッチング:業界特性を踏まえ、戦略適合性の高い買い手に打診します。 ・トップ面談・基本合意:条件のすり合わせを行い、基本合意書(LOI/MOU)を締結します。 ・デューデリジェンス:財務・法務・労務・行政対応履歴(指導歴・返戻有無)を精査します。 ・最終契約・クロージング:株式譲渡契約を締結し、対価決済と経営権の移転を行います。 ・行政への届出・PMI:指定事業者の変更届等の行政手続きを行い、PMIを進めます。 特に介護事業では、行政への届出タイミングと人員配置基準の維持がクロージング前後で最重要論点になります。スケジューリングを誤ると、利用者への請求や報酬算定に支障が出るため、業界経験のあるアドバイザーの関与が不可欠です。
まとめ:介護・福祉事業のM&Aを成功させるために
介護・福祉事業のM&Aは、これから数年がピークを迎える可能性が高い領域です。高齢化による需要拡大という追い風がある一方、報酬改定・人材不足・倒産件数の増加という向かい風も強まっており、「動けるうちに動く」ことが、良い条件での承継に直結します。 売却・承継を成功させるためのポイントを整理すると、以下の通りです。 ・稼働率・加算取得状況・コンプライアンス体制など、評価に効くKPIを事前に整えておくこと。 ・株式譲渡か事業譲渡かを早い段階で見極め、許認可の扱いを含めてスキームを設計すること。 ・キーパーソンの雇用維持策を譲渡条件に織り込み、買い手が安心できる形にすること。 ・業界特有のDD論点(行政指導歴・返戻履歴・人員基準)を事前に自己点検しておくこと。 ・自社のエリア・サービスミックスにフィットする買い手戦略を持ったパートナーを選ぶこと。 シェアモルM&Aでは、介護・福祉分野に精通したアドバイザーが、初回相談から成約後のPMIまで一貫してご支援しています。「まだ売却を決めたわけではないが、選択肢として話を聞いてみたい」という段階からのご相談も歓迎しています。事業承継は、情報収集を始めるタイミングが早いほど、取りうる選択肢が広がる世界です。まずはお気軽にご相談ください。 ※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法務・税務アドバイスを提供するものではありません。実際のM&A実行にあたっては、弁護士・税理士等の専門家にご相談ください。
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