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2026/03/31

【バトンズ独自コラム】管工事・設備工事業のM&A・事業承継を徹底解説【2026年最新】

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この記事でわかること
本記事はバトンズに掲載するために書き下ろした独自コラムです。 M&A仲介のプロであるシェアモルM&Aのアドバイザーが、管工事・設備工事業におけるM&A・事業承継の最新動向をわかりやすく解説します。 •管工事・設備工事業界でM&Aが急増している背景と最新の市場データ •管工事会社の売却価格の相場感と、企業価値を高めるポイント •売り手・買い手それぞれにとってのM&Aのメリットと注意点 •直近の国内M&A成功事例3選から読み解く業界再編のトレンド
管工事・設備工事業の業界動向とM&Aが増えている背景
管工事とは、建物や施設における給排水・空調・ガスなどの配管設備を施工する工事の総称です。 私たちの日常生活を支える水道、エアコン、ガス管などのライフラインに直結する重要な業種であり、建設業の中でも安定した需要を持つ分野として知られています。 国土交通省が公表した調査によると、2025年1月時点の設備工事業の受注総額は約2,991億円に達し、 前年同月比で24.0%の大幅な増加を記録しました。なかでも管工事分野は41.3%増の約1,400億円と、特に顕著な伸びを示しています。 首都圏を中心とした再開発プロジェクトや、高度成長期に建設された建物の老朽化に伴う建替え・改修需要が追い風となっており、今後も堅調な市場環境が続くと見られています。 一方で、管工事業界は深刻な構造的課題を抱えています。その最大の課題が「後継者不在」です。帝国データバンクの調査によれば、 設備業の後継者不在率は63.7%と、全業種平均の57.2%を大きく上回っています。建設業界の経営者の平均年齢は60.5歳に達しており、中小の管工事事業者では後継者が決まっていない割合が60%以上に上ります。 さらに、慢性的な人材不足も業界全体の課題です。若手の入職者が減少し、技能労働者の平均年齢は50歳を超えるなど高齢化が進行しています。 1級管工事施工管理技士をはじめとする有資格者の確保は年々難しくなっており、単独での経営継続が困難になる企業が増えています。 こうした背景から、M&Aによる第三者への事業承継が有効な選択肢として注目を集めています。 後継者不在の解消だけでなく、人材・技術・顧客基盤の獲得を目的とした戦略的M&Aも活発化しており、業界全体の再編が加速しています。 加えて、カーボンニュートラルの推進に伴うZEB(ゼロエネルギービル)対応や省エネ機器の施工ニーズの拡大、BIM(Building Information Modeling)の導入によるDX推進、そして老朽化が進む上下水道の更新需要の本格化など、管工事業界を取り巻く環境は大きく変化しています。 こうした変化に対応するための経営資源を確保する手段としても、M&Aの重要性は今後ますます高まると考えられます。
管工事・設備工事業のM&A相場・売却価格の目安
管工事会社の売却価格は、企業の規模や収益力、保有する許認可、技術者の在籍状況などによって大きく異なります。 ここでは、一般的に使われる算定方法と、価格に影響を与える主な要素をご紹介します。 一般的な算定方法 中小規模の管工事会社のM&Aでは、主に以下の算定方法が用いられます。 •時価純資産+営業権方式(年買法) 時価ベースの純資産に、営業利益の2〜5年分を加算して算出する方法です。中小M&Aで最も一般的に使われます。管工事業界では営業権(のれん)を営業利益の2〜3年分で評価するケースが多く見られます。 •EBITDA倍率法(マルチプル法) EBITDA(償却前営業利益)に業界の標準的な倍率を掛けて算出します。管工事業界では3〜5倍程度が一般的な目安です。省エネ技術や特殊な施工能力を持つ企業は、より高い倍率が適用される傾向があります。 売却価格に影響する主な要素 管工事会社の売却価格を大きく左右する要素としては、以下が挙げられます。 •有資格者の在籍状況 1級管工事施工管理技士などの国家資格保有者が多い企業ほど高い評価を受けます。建設業許可の維持に不可欠な人的要件を満たす人材を一括して獲得できる点は、買い手にとって大きな魅力です。 •建設業許可・経審点数 管工事業の建設業許可(特に特定建設業許可)を保有していること、経営事項審査(経審)の点数が高いことは、公共工事の入札資格に直結するため、売却価格を押し上げる重要な要素です。 •安定した受注基盤 元請けとの長期的な取引関係や、メンテナンス契約などのストック型収益の有無が評価に大きく影響します。特にビル設備のメンテナンスは定期的な収益が見込めるため、買い手から高く評価されます。 •技術力と施工実績 空調・給排水・ガスなど複数分野の施工実績があること、省エネ対応やZEB関連の施工ノウハウを持つことはプレミアム評価につながります。 概算レンジとしては、年間売上高1億〜5億円規模の管工事会社の場合、譲渡価格は数千万円〜数億円程度が一般的です。ただし、有資格者の人数や受注残の状況、保有許可の種類によって大きく変動しますので、正確な算定には専門家へのご相談をお勧めします。
管工事・設備工事業をM&Aで売却・承継するメリット
売り手(譲渡企業オーナー)にとってのメリット •従業員の雇用を守れる 廃業すれば従業員は職を失いますが、M&Aであれば雇用を維持したまま事業を引き継ぐことができます。長年ともに働いてきた社員の生活を守れることは、経営者にとって大きな安心材料です。 •創業者利益を確保できる 長年かけて築き上げた企業の価値を対価として受け取ることができます。引退後の生活資金や次のチャレンジへの原資として活用することが可能です。 •取引先・顧客との関係を維持できる 廃業による取引先への影響を最小限に抑え、長年培ってきた信頼関係を次の経営者に引き継ぐことができます。 •建設業許可を活かせる 廃業すれば失効してしまう建設業許可をM&Aで引き継ぐことで、その価値を最大限に活用できます。 買い手にとってのメリット •有資格者・技術者を一括確保できる 管工事施工管理技士などの有資格者を採用で確保するのは非常に困難です。M&Aなら即戦力の技術者チームをまとめて獲得できます。 •商圏・エリアの拡大 地域密着型で事業を展開してきた管工事会社を買収することで、新たな地域の顧客基盤と取引関係を獲得でき、営業エリアを効率的に拡大できます。 •許認可の取得コスト・時間を短縮 建設業許可の新規取得には厳しい要件と時間が必要ですが、M&Aなら許可を保有した状態で事業を開始できます。経審の実績も引き継げるため、公共工事への参入がスムーズです。 •サービスの内製化・多角化 ビルメンテナンス会社や不動産管理会社が管工事会社を買収し、修繕工事を内製化するケースも増えています。外注コストの削減とサービス品質の向上を同時に実現できます。
管工事・設備工事業のM&Aで注意すべきポイント
建設業許可・経審の引き継ぎ 管工事業のM&Aにおいて最も重要なポイントの一つが、建設業許可の引き継ぎです。建設業許可は「経営業務の管理責任者」や「専任技術者」といった人的要件に基づいて交付されるため、M&A後にこれらの要件を満たし続けられるかどうかを事前に確認する必要があります。株式譲渡であれば法人格が変わらないため許可はそのまま維持できますが、事業譲渡の場合は新たに許可を取得し直す必要がある点に注意が必要です。 キーパーソンの引き留め 管工事業は属人性の高い業種です。現場を取り仕切る施工管理者や、元請けとの関係を築いてきたベテラン営業担当者など、キーパーソンの離職はM&A後の事業価値を大きく毀損する恐れがあります。M&A交渉の段階から、キーパーソンの処遇や引き継ぎ期間について明確な方針を定めておくことが重要です。 進行中の工事案件の管理 管工事は工期が数ヶ月から数年に及ぶものも多く、M&A実行時に複数の進行中案件が存在するのが一般的です。各案件の契約内容、進捗状況、原価情報、発注者からの要望事項などを整理した「工事カルテ」を作成し、買い手に透明性のある情報提供を行うことが、スムーズなM&Aにつながります。 協力会社(外注先)との関係維持 設備工事業界は外注比率が高く、専門技術を持つ協力会社の存在が施工品質と納期遵守を支えています。M&A後も主要な協力会社との取引を継続できるよう、事前に協力会社との関係維持の方針を明確にしておくことが大切です。 業界特有のデューデリジェンス項目 管工事業のM&Aにおけるデューデリジェンスでは、通常の財務・法務調査に加え、以下の業界特有の項目を重点的に確認する必要があります。保有する建設業許可の種類と有効期限、有資格者の一覧と年齢構成、受注残と工事粗利の推移、元請け・発注者との取引継続性、施工品質に関する癑疵・クレーム履歴、アスベスト除去など環境関連のリスクなどが代表的です。詳しくはM&Aの専門家にご相談ください。
管工事・設備工事業のM&A成功事例
ここでは、直近の国内における管工事・設備工事業界のM&A実名事例を3件ご紹介します。 それぞれの事例から、業界のM&Aトレンドを読み解くことができます。 事例1:北陸電気工事による日建の子会社化(2023年12月) •売り手:株式会社日建(神奈川県)。1981年設立の首都圏有数の設備工事業者で、空調・給排水管などの管工事を中心に電気工事まで幅広く事業を展開。 •買い手:北陸電気工事株式会社(富山県)。1944年設立の総合設備会社で、北陸を地盤に電気工事・管工事・配電設備工事などを展開。 •スキーム:株式譲渡(全株式取得による完全子会社化) •背景・目的:北陸電気工事は中期経営計画「アクションプラン2024」において連結売上高600億円の目標を掲げており、関東圏への事業拡大を模索していました。首都圏で豊富な実績を持つ日建を子会社化することで、商圏の拡大と成長基盤の強化を図りました。 •ポイント:地方の大手設備工事会社が都市部の管工事会社を買収し、エリア拡大を実現した典型的な事例です。管工事業界では、地域の壁を越えた商圏拡大がM&Aの主要な動機の一つとなっています。 (出典:北陸電気工事株式会社プレスリリース) 事例2:三機サービスによる長沼冷暖房の子会社化(2023年11月) •売り手:長沼冷暖房株式会社(新潟県新潟市)。官公庁を主な顧客とする設備工事会社。 •買い手:株式会社三機サービス(兵庫県姫路市)。ビル・店舗・施設の保守管理事業を全国展開する企業で、自社研究施設と総合技術者を強みに持つ。 •スキーム:株式譲渡 •背景・目的:三機サービスは全国規模でのサービス提供体制を強化しており、新潟エリアの施工体制を確立するために長沼冷暖房の買収に至りました。官公庁との安定した取引基盤を持つ点も評価されました。 •ポイント:ビルメンテナンス系企業による管工事会社の買収事例です。保守管理と設備工事の一体提供による付加価値向上を狙ったM&Aであり、異業種連携による事業拡大のモデルケースといえます。 (出典:株式会社三機サービス 適時開示資料) 事例3:三機工業グループによる邦英商興の子会社化(2025年5月契約・8月完了) •売り手:邦英商興株式会社(愛知県名古屋市)。焼却炉・火葬炉プラント、焼却施設の設置・メンテナンスなどを東海地域で50年以上にわたり展開。 •買い手:三機グリーンテック株式会社(神奈川県大和市、三機工業グループ)。廃棄物処理施設の設計・施工・メンテナンス・運転管理を手掛ける。親会社の三機工業は三井グループの大手総合設備建設企業。 •スキーム:株式譲渡(全株式取得による完全子会社化) •背景・目的:三機工業の環境システム事業における廃棄物処理事業では、老朽化した処理施設の更新需要が今後本格化すると見込まれています。50年以上の実績と地域からの信頼を持つ邦英商興とのシナジー効果を最大限発揮し、事業のさらなる拡大を図ることが目的です。 •ポイント:大手設備建設企業グループが環境関連の設備工事会社を取り込み、成長分野を強化した事例です。カーボンニュートラルや環境規制の強化を背景に、環境対応技術を持つ設備工事会社の企業価値が高まっていることを示しています。 (出典:三機工業株式会社 ニュースリリース 2025年5月1日付・2025年8月1日付)
管工事・設備工事業のM&A・事業承継の流れ
管工事会社のM&Aは、一般的に以下のステップで進みます。 業界特有の留意点を含めてご説明します。 ステップ1:事前準備・相談 まずはM&Aの専門家(仲介会社やアドバイザー)に相談し、自社の状況や希望条件を整理します。管工事業界では、保有する建設業許可の種類、有資格者の一覧、主要な取引先や受注残の状況、協力会社との関係などを事前に整理しておくと、その後のプロセスがスムーズに進みます。 ステップ2:企業価値の算定 専門家が財務諸表や事業内容を分析し、企業価値を算定します。管工事業では、有資格者の人数や年齢構成、メンテナンス契約などのストック収益の有無、経審点数なども評価のポイントとなります。 ステップ3:買い手候補の選定・打診 ノンネームシート(匿名の概要資料)を作成し、買い手候補に打診します。管工事業界では、同業他社のほか、ビルメンテナンス会社や不動産管理会社、電気工事会社など幅広い業種が買い手候補となります。 ステップ4:トップ面談・基本合意 売り手・買い手の経営者同士が面談し、M&Aの方向性や基本条件について合意します。管工事業界では、経営理念や従業員への姿勢、技術に対する考え方などの「相性」が成功の鍵を握ることが多いです。 ステップ5:デューデリジェンス(買収監査) 買い手が売り手企業の詳細調査を実施します。前述の業界特有のDD項目に加え、進行中工事の採算性や工事品質のクレーム履歴、安全管理体制なども入念に確認されます。 ステップ6:最終契約・クロージング 条件交渉を経て最終契約を締結し、株式や事業の引き渡し(クロージング)を行います。建設業許可の要件を満たし続けられるよう、クロージング前後の体制整備が重要です。 ステップ7:PMI(経営統合) M&A後の統合プロセス(PMI)は、M&Aの成否を左右する最も重要な段階です。従業員への丁寧な説明、既存顧客・取引先への引き継ぎ、協力会社との関係維持、業務システムの統合などを段階的に進めます。管工事業界では現場の職人の帰属意識が強いため、急激な変化を避け、段階的な統合を心がけることが成功のポイントです。
まとめ:管工事・設備工事業のM&Aを成功させるために
管工事・設備工事業界は、安定した需要がある一方で、後継者不在・人材不足という構造的課題を抱えています。 こうした課題の解決策として、M&Aは非常に有効な選択肢です。 M&Aを成功させるためのポイントを整理すると、以下のようになります。 •早めの準備が重要: 後継者問題は突然顕在化するものではありません。経営者がお元気なうちに、選択肢の一つとしてM&Aを検討し始めることをお勧めします。 •企業価値を高める取り組み: 有資格者の育成・確保、メンテナンス契約の拡充、財務体質の改善など、日頃から企業価値を高める経営を意識することが大切です。 •信頼できる専門家への相談: 管工事業界のM&Aには、建設業許可や経審など業界特有の知識が求められます。業界に精通したM&Aアドバイザーに相談することで、適正な企業価値の算定や最適な買い手の選定が可能になります。 シェアモルM&Aでは、管工事・設備工事業界をはじめとする建設業のM&A支援に力を入れております。 「まだ売却を決めたわけではないが、自社の価値を知りたい」「どんな買い手候補がいるのか聞いてみたい」といった段階でも、お気軽にご相談ください。初回のご相談は無料で承っております。 ※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言や税務アドバイスを構成するものではありません。M&Aの実施にあたっては、弁護士・税理士等の専門家にご相談ください。 ※本記事は2026年3月時点の情報に基づいて作成しています。記事内のM&A事例はプレスリリースやニュース記事等で公開されている情報に基づいています。
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