| 公開日 | 2024/09/30 |
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| 記載者 | シェアモル株式会社 |
M&A
【バトンズ独自コラム】建設業のM&A・事業承継を徹底解説【2026年最新】
この記事でわかること
本記事はバトンズに掲載するために書き下ろした独自コラムです。M&A仲介のプロであるシェアモルM&Aのアドバイザーが、建設業におけるM&A・事業承継の最新動向をわかりやすく解説します。
この記事でわかること
・建設業界でM&Aが急増している背景と、2025〜2026年の最新再編動向
・建設会社を売却する際の相場感と、価格に影響する主な要素
・建設業M&Aならではの注意点(許認可の引き継ぎ、経営業務管理責任者の確保など)
・直近の国内M&A実名事例から読み取れる成功のポイント
建設業の業界動向とM&Aが増えている背景
建設業のM&Aは、ここ数年で過去最高のペースで増加しています。2025年上半期の建設業界におけるM&A件数は過去最多を更新し、中小企業の事業承継型M&Aだけでなく、大手ゼネコン同士の大型再編案件も相次ぎました。
なぜ今、建設業界でこれほどM&Aが活発なのでしょうか。
市場規模は回復傾向だが、担い手は減少
国土交通省の建設投資見通しによると、2025年度の建設投資額は前年度比約1.9%増の75兆5,700億円となる見通しです。1992年度の約84兆円をピークに長らく縮小傾向でしたが、近年は防災・減災やインフラ老朽化対策に向けた公共投資の拡大、データセンターや半導体工場の建設ラッシュなどにより回復基調にあります。
一方で、建設業の担い手は減り続けています。2025年3月末時点の建設業許可業者数は約48万3,700業者で、ピークだった2000年の約60万業者から約2割減少しました。建設技能者の高齢化も深刻で、若年層の入職者不足と相まって人手不足が慢性化しています。
後継者不在率は約60%超——事業承継問題が深刻
建設業界でM&Aが増加している最大の要因は、後継者不在問題です。帝国データバンクが2023年に実施した調査によると、建設業における後継者不在率は約60.5%であり、全業種平均を上回る深刻な水準です。建設業は業界特有の技術や人脈の引き継ぎに時間がかかる性質があり、後継者選定から承継完了まで3年以上を要する企業が約4割を占めるとされています。
後継者が見つからないまま黒字のまま廃業する建設会社も少なくありません。地域のインフラ整備を担う建設会社の廃業は、地域社会にも大きな影響を及ぼすため、M&Aによる事業承継が現実的な選択肢として広がっています。
2024年問題とその先にある構造変化
2024年4月から建設業にも適用された「働き方改革関連法」(いわゆる2024年問題)も、M&A加速の一因です。時間外労働の上限規制により、これまでの「人海戦術」が通用しなくなり、限られた人材を効率的に活用できる経営体制が求められるようになりました。
小規模の建設会社が単独で労務管理や人材確保に対応するのは難しく、大手・中堅企業のグループに入ることで経営基盤を安定させる動きが加速しています。従来「安く叩かれる存在」だった下請け会社が、施工力や地域ネットワークを持つ「戦略的パートナー」として評価される時代に変わりつつあります。
建設業のM&A相場・売却価格の目安
建設会社の売却を検討する際、最も気になるのが「自社がいくらで売れるのか」という点でしょう。建設業のM&Aにおける売却価格の考え方を整理します。
一般的な算定方法
中小建設会社の売却価格は、多くの場合「年倍法(年買法)」で概算されます。
売却価格の目安 = 時価純資産 + 営業利益(またはのれん相当額)× 2〜5年分
建設業の場合、のれんの評価倍率(年数)は業種や会社の特性によって異なりますが、概ね営業利益の2〜4年分が一般的です。ただし、これはあくまで目安であり、個別の交渉によって大きく変動します。
売却価格に影響する主な要素
価格を押し上げる要素:
保有する建設業許可の種類と数(特定建設業許可は特に評価が高い)、技術者・有資格者の在籍状況(一級建築施工管理技士や一級土木施工管理技士など)、安定した元請先や公共工事の入札参加資格、地域に根差した施工実績や協力業者ネットワーク、重機や資材置き場などの有形資産、安定した受注残高と利益率。
価格が下がりやすい要素:
オーナー社長への依存度が高い(キーパーソンリスク)、未払い残業代や社会保険未加入などの労務リスク、工事の瑕疵担保責任に関する潜在的なリスク、過度に特定の取引先に依存している、建設業許可の更新要件を将来的に満たせない懸念。
概算レンジ
売上高1億円〜10億円程度の中小建設会社であれば、売却価格は数千万円〜数億円の範囲が中心です。ただし、特定建設業許可を持ち、優秀な技術者が多数在籍し、安定した受注を確保している会社であれば、営業利益の4〜5年分で評価されるケースもあります。正確な評価には専門家(M&Aアドバイザーや公認会計士)への相談が欠かせません。
建設業をM&Aで売却・承継するメリット
売り手オーナーにとってのメリット
1. 従業員の雇用を守れる
廃業を選べば、長年働いてくれた従業員は職を失います。M&Aであれば、雇用条件をそのまま引き継ぐことが多く、従業員とその家族の生活を守ることができます。建設業は職人の技術が会社の価値そのものであるため、買い手側も「人材ごと」引き受けることに強い意欲を持っています。
2. 創業者利益(譲渡対価)を得られる
株式譲渡であれば、譲渡代金を個人として受け取ることができます。長年にわたり築き上げた会社の価値を「形あるお金」に換えることで、リタイア後の生活資金や新たな挑戦の原資とすることが可能です。
3. 建設業許可や取引先関係を途絶えさせない
廃業すると建設業許可も失効し、取引先にも迷惑をかけます。M&Aであれば許可や取引関係をそのまま引き継げるため、会社の信用と実績を次の世代に残すことができます。2020年の建設業法改正により、M&A(事業譲渡や合併)でも建設業許可を承継できる制度が整備され、空白期間なく事業を継続できるようになりました。
買い手にとってのメリット
1. 即戦力の技術者・施工体制を一括獲得できる
建設業界では技術者の採用が非常に困難です。M&Aであれば、有資格者を含む施工チームをそのまま獲得できるため、人材採用にかかる時間とコストを大幅に削減できます。
2. 建設業許可や入札参加資格を引き継げる
建設業許可は取得・維持のハードルが高く、公共工事の入札参加資格を得るにも実績が必要です。M&Aによって対象会社の許可や実績をそのまま活用できることは、新規参入や地域展開を目指す買い手にとって大きなメリットです。
3. エリア拡大や事業多角化を迅速に実現できる
地方の優良な建設会社を買収することで、自社の営業エリアを拡大したり、得意分野を補完したりすることが可能です。近年は、ゼネコンだけでなく不動産デベロッパー、住宅メーカー、投資ファンドなど、多様な買い手が建設会社の買収に乗り出しています。
建設業のM&Aで注意すべきポイント
建設業のM&Aには、他の業界にはない固有の注意点があります。以下のポイントを事前に把握しておくことが、スムーズな成約と成功のカギです。
建設業許可の引き継ぎ
建設業のM&Aにおいて最も重要な論点の一つが、建設業許可の引き継ぎです。2020年10月の建設業法改正により、事業譲渡や合併・分割の場合でも事前に認可を受けることで許可を承継できる制度が新設されました。国土交通省によると、この制度を利用した事業承継の認可件数は令和6年度で年間1,060件に達しています。
ただし、認可は事業承継日の「前」に完了していなければなりません。合併や事業譲渡が終わってから許可の承継を申請しても手遅れとなります。また、承継先企業にも経営業務管理責任者(経管)や専任技術者(専技)の常勤が必要で、この人材要件を満たせなければ許可は承継できません。
経営業務管理責任者(経管)の確保
建設業許可を維持するには、社内に経営業務管理責任者が常勤している必要があります。経管になるには、建設業に関する経営経験が一定年数(原則5年以上)求められます。オーナー社長が退任した後に経管の要件を満たす人材がいなければ、許可が維持できなくなるリスクがあります。事業承継を見据えて、早い段階から後継候補者を役員に就任させるなどの準備が重要です。
デューデリジェンス(DD)の重点項目
建設業特有のDD(買収調査)では、以下の項目に特に注意が必要です。
労務面:未払い残業代、社会保険の加入状況、技能実習生の受け入れ体制。建設業は長時間労働が常態化してきた業界であるため、2024年問題以降は特に厳しく確認されます。
工事関連:進行中の工事案件の採算性、過去の工事に対する瑕疵担保責任。粉飾決算の有無だけでなく、工事原価の計上方法にも注意が必要です。
許認可関連:建設業許可の種類と有効期限、経営事項審査の結果、入札参加資格の状況。特に公共工事の比率が高い会社では、経審の点数が事業価値に直結します。
環境・コンプライアンス:アスベスト関連のリスク、廃棄物処理の適正性、下請法の遵守状況。
キーパーソンリスクへの対応
中小建設会社では、オーナー社長が営業・現場管理・取引先対応の全てを担っていることが少なくありません。M&A後にオーナーが退任すると、取引先離れや現場の混乱が生じるリスクがあります。多くの場合、一定期間(1〜3年程度)のオーナー残留(引き継ぎ期間)を設けることで、円滑な経営移行を図ります。
取引先・下請先との関係維持
建設業は元請・下請の重層構造で成り立っているため、M&A後も協力業者(下請先)との信頼関係を維持できるかどうかが事業継続のカギとなります。買い手企業は、既存の協力業者に対して丁寧な説明とコミュニケーションを行い、関係の継続を図ることが求められます。
建設業のM&A成功事例
ここでは、2025年に公表された直近の国内M&A実名事例を紹介します。大型再編から中堅企業の買収まで、建設業界のM&Aの多様な形をご確認ください。
事例1:インフロニアHDが三井住友建設をTOBで完全子会社化(2025年5月)
時期:2025年5月発表、7月上旬頃TOB開始
売り手:三井住友建設株式会社(準大手ゼネコン)
買い手:インフロニア・ホールディングス株式会社(前田建設工業等を傘下に持つ総合インフラサービス企業)
スキーム:TOB(株式公開買付け)による完全子会社化
取得額:約940億円
インフロニアHDは三井住友建設を傘下に収め、国内建設事業の強化・海外事業の拡大・経営資源の共有によるシナジーを狙います。成立すれば合算売上高は約1兆2,700億円となり、土木分野で大手4社に匹敵する規模のグループが誕生します。
出典:日本M&Aセンター 建設業界M&A動向ページ、M&A Online
事例2:大和ハウス工業が住友電設を約2,920億円で買収(2025年10月)
時期:2025年10月30日発表、12月16日TOB成立。2026年3月完全子会社化予定
売り手:住友電設株式会社(電気設備工事大手サブコン。2025年3月期に過去最高業績)
買い手:大和ハウス工業株式会社(ハウスメーカー・ゼネコン・デベロッパー)
スキーム:TOB(1株9,760円)+自社株買いによる完全子会社化
取得額:約2,920億円(大和ハウスにとって過去最大の買収)
大和ハウスはデータセンター・半導体工場などの事業施設分野を収益の柱としており、住友電設の高度な電気設備工事技術を取り込むことで成長領域の競争力強化を図ります。住宅メーカーがサブコンを丸ごと買収する、業界の垣根を越えた再編の象徴的事例です。
出典:日本経済新聞 2025年10月30日付、LOGI-BIZ 2025年12月17日付
事例3:大成建設が東洋建設を約1,600億円で買収(2025年)
時期:2025年
売り手:東洋建設株式会社(海洋土木分野に強みを持つ準大手建設会社)
買い手:大成建設株式会社(スーパーゼネコン)
取得額:約1,600億円
大成建設は東洋建設の海洋土木技術を活用し、ゼネコン業界での優位性確立を目指します。スーパーゼネコンによる過去最大規模の再編案件の一つです。
出典:M&Aロイヤルアドバイザリー M&A事例2026年最新版
事例4:清水建設が日本道路を完全子会社化(2025年5月)
時期:2025年5月14日発表
売り手:日本道路株式会社(清水建設の連結子会社、道路舗装工事)
買い手:清水建設株式会社(スーパーゼネコン)
スキーム:TOBによる完全子会社化
清水建設は既存グループ会社である日本道路を完全子会社化し、ノウハウ共有と経営資源の相互活用で成長戦略の実現を目指します。グループ内再編型M&Aの典型例です。
出典:日本M&Aセンター 建設業界M&A動向ページ
建設業のM&A・事業承継の流れ
建設業のM&Aは、一般的なM&Aの流れに加えて、建設業許可の承継手続きなど業界特有のプロセスがあります。
STEP1:事前準備(3〜6か月前)
自社の経営状況を整理します。決算書の内容確認はもちろん、保有する建設業許可の種類、技術者名簿、主要取引先リスト、進行中の工事案件一覧などを整備します。
STEP2:M&Aアドバイザーへの相談・契約
建設業のM&A実績が豊富なアドバイザーを選ぶことが重要です。許認可や技術者要件など業界特有の論点に精通した専門家に依頼しましょう。
STEP3:企業価値の評価と売却条件の設定
純資産に加えて営業利益やのれん、保有許可の価値、技術者の在籍状況などを総合的に評価します。オーナーの希望条件も明確にします。
STEP4:買い手候補の探索とマッチング
ノンネームシート(社名を伏せた案件概要書)を作成し、買い手候補企業にアプローチします。同業の中堅〜大手企業、隣接業種の企業、投資ファンドなどが候補となります。
STEP5:トップ面談と条件交渉
売り手オーナーと買い手経営者が直接面談し、互いの経営理念や事業への想いを確認します。大筋合意後、基本合意書(LOI)を締結します。
STEP6:デューデリジェンス(DD)
買い手側が財務・法務・労務・事業面の調査を実施します。建設業では許認可関連、工事の瑕疵担保リスク、未払い残業代などが重点的に調査されます。
STEP7:最終契約の締結とクロージング
株式譲渡契約書(SPA)を締結します。建設業許可の承継認可申請が必要な場合は、クロージング前に所轄行政庁への申請・認可手続きも並行して進めます。
STEP8:PMI(経営統合)
従業員や取引先への説明、業務プロセスの調整、経営方針の共有などを行います。建設業では、現場の職人や協力業者との関係維持が特に重要です。
まとめ:建設業のM&Aを成功させるために
建設業界は今、かつてないペースでM&Aによる再編が進んでいます。後継者不在、人手不足、資材高騰、2024年問題への対応——。これらの課題を単独で乗り越えることが難しい時代だからこそ、M&Aは事業を「守り、伸ばす」ための有力な選択肢となっています。
第一に、早めの準備を始めること。経営業務管理責任者の育成や許認可の整理には時間がかかります。60代に入ったら一度は専門家に相談しておくことをおすすめします。
第二に、建設業に精通したアドバイザーを選ぶこと。建設業許可の承継手続き、技術者要件の確認、工事関連のリスク評価など、この業界ならではの論点を理解しているアドバイザーでなければ、適切な支援は期待できません。
第三に、自社の「見えない価値」を言語化しておくこと。長年培った技術力、地域での信頼、協力業者とのネットワーク、有資格者の存在——こうした「数字に表れにくい価値」こそが、建設会社の最大の強みです。
シェアモルM&Aでは、建設業の事業承継・M&Aに関する無料相談を承っています。
「自社はM&Aの対象になるのだろうか」「どのくらいの価格で売却できるのか」など、お気軽にお問い合わせください。
秘密厳守で対応いたします。
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