| 公開日 | 2026/03/24 |
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| 記載者 | シェアモル株式会社 |
M&A
【バトンズ独自コラム】病院・クリニックのM&A・事業承継を徹底解説【2026年最新】
この記事でわかること
本記事はバトンズに掲載するために書き下ろした独自コラムです。
M&A仲介のプロであるシェアモルM&Aのアドバイザーが、病院・クリニックにおけるM&A・事業承継の最新動向、相場、メリット、注意点、実名の成功事例までをわかりやすく解説します。
•病院・クリニック業界のM&A最新動向と、なぜ今承継型M&Aが急増しているのかという背景
•病院・クリニックを売却する場合の相場感と、価格に影響する要素
•売り手・買い手双方にとってのM&Aのメリットと、業界特有の注意点
•2024年〜2025年に実際に成約した国内の実名M&A事例
病院・クリニックの業界動向とM&Aが増えている背景
【開設者の高齢化と深刻な後継者不在】
病院・クリニック業界でM&Aが急速に増えている最大の理由は、開設者の高齢化と後継者不在です。
厚生労働省の医師・歯科医師・薬剤師統計によれば、2022年度時点で病院の開設者・医療法人代表者の平均年齢は64.9歳、診療所の開設者・法人代表者の平均年齢は62.5歳に達しており、企業全体の経営者平均年齢を大きく上回る水準となっています。
帝国データバンクの後継者不在率調査でも、病院・診療所の後継者不在率は全業種平均を10ポイント以上上回る高い水準にあり、医療業界は全国でもっとも承継問題が深刻な業界のひとつです。子や親族が医師資格を持っていても、診療科が異なる、勤務医として働き続けたい、研究を続けたいといった理由で後を継がないケースが多く、第三者承継であるM&Aへのニーズが年々強まっています。
【休廃業・解散の急増】
後継者問題を放置した結果として、医療機関の休廃業・解散件数も急増しています。報道各社の集計によれば、医療機関の休廃業・解散件数は近年過去最多を更新する勢いで増えており、地域医療の担い手が静かに失われつつあります。
シェアモルM&Aのアドバイザーとしても、「気づいたら近所のクリニックが閉院していた」という相談を受ける機会は年々増えています。
第三者承継を早めに検討しておくことが、自院の存続だけでなく地域医療を守ることにも直結する時代になっています。
【診療報酬改定と経営環境の悪化】
もうひとつ見過ごせないのが、診療報酬改定による経営環境の悪化です。診療報酬は2年ごとに改定され、医療機関側で価格を決めることはできません。近年は薬価部分のマイナス改定が続き、本体部分も実質マイナスとなる場面が増えています。
新型コロナウイルスの補助金で一時的に持ち直した経常利益率も、補助金縮小に伴って2023年度以降は再び低下しており、単独経営では収益基盤を維持しづらい医療機関が増えています。
加えて、医師・看護師の不足と地域偏在、設備の老朽化、ICT投資の必要性など、コスト要因は増える一方です。こうした経営難を背景に、規模拡大やバックオフィス共通化を狙った医療法人グループによる買収が活発化しており、業界再編が進んでいます。
病院・クリニックのM&A相場・売却価格の目安
【基本の算定方法】
中小規模の病院・クリニックのM&Aで広く用いられているのが、「時価純資産+営業利益の数年分(のれん)」という年倍法をベースにした算定方法です。一般的な事業会社では営業利益の3〜5年分をのれんとして加算することが多いのに対し、クリニックの場合は院長個人への依存度が高いことから、営業利益の1年分前後をのれんとして見るケースが多いとされています。
規模の大きな病院や医療法人では、DCF法(ディスカウント・キャッシュ・フロー法)や類似会社比較法を組み合わせるケースもあります。
いずれの手法を採用するかは、施設規模、財務状況、保有不動産の有無などによって変わってきます。
【売却価格に影響する主な要素】
•立地条件と通院圏内の人口動態(駅近、駐車場の有無、競合の少なさなど)
•患者数・カルテ数・リピート率、自由診療収入の比率
•医師・看護師など医療従事者の定着状況と平均年齢
•土地・建物の所有形態(自院所有か賃貸か)と築年数
•医療機器の更新状況、電子カルテ等のICT投資状況
•診療科の専門性、近隣医療機関からの紹介ルート
クリニック規模であれば数千万円から1億円程度の取引が中心ですが、好立地で患者基盤が安定しており、土地・建物を保有しているような案件はそれ以上のバリュエーションがつくこともあります。詳しい価格感を知りたい場合は、シェアモルM&Aのアドバイザーまでお気軽にご相談ください。
病院・クリニックをM&Aで売却・承継するメリット
【売り手(譲渡側)のメリット】
売り手側の最大のメリットは、後継者がいなくても自院を存続させ、地域医療と従業員の雇用を守れる点です。廃業を選んだ場合、長年通ってくれた患者さんの行き先がなくなり、看護師や事務スタッフは職を失います。M&Aを活用して第三者承継を行えば、医療サービスの提供を継続したまま、ハッピーリタイアを実現できます。
また、株式譲渡や持分譲渡によって創業者利益を得られ、引退後の生活資金や次の挑戦の原資にできることも大きなメリットです。多くの開設者が抱える金融機関からの個人保証・担保提供についても、M&Aを契機に解消できるケースが少なくありません。
【買い手(譲受側)のメリット】
買い手側のメリットとしては、医師・看護師といった即戦力人材をまとめて確保できる点が大きいです。新規開業や採用活動だけでは人材確保が難しい時代において、稼働中のクリニックを買収することは、人材獲得そのものと言ってもよいほど価値があります。看護配置基準を満たすことで診療報酬上のメリットも得られます。
また、地域医療構想によって新規の病床開設が制限されているエリアでは、買収によって既存の病床を獲得できる点も極めて重要です。新規エリアへの進出や、グループとしての経営効率の向上、設備・備品の共同購入によるコスト削減なども期待できます。
病院・クリニックのM&Aで注意すべきポイント
【医療法人特有のスキームと制度上の制約】
医療法人のM&Aは、株式会社のM&Aとは大きく異なります。医療法人は非営利性が前提とされており、理事長要件、理事構成、持分の扱い、行政認可など、制度上の制約が数多く存在します。出資持分のある医療法人と、出資持分のない医療法人(基金拠出型)では取り得るスキームも異なるため、初期段階で自院の医療法人類型を正確に把握することが不可欠です。
具体的なスキームとしては、出資持分譲渡、社員交代と理事長交代の組み合わせ、事業譲渡などが用いられます。事業譲渡を選ぶ場合は、新たに開設許可を取得し直す必要があり、保健所・厚生局への届出など手続きが煩雑になりがちです。スキーム選定はM&A全体の成否を左右するため、医療業界に精通した専門家への早期相談を強くおすすめします。
【許認可・施設基準の引き継ぎ】
保険医療機関の指定、施設基準、病床機能、各種加算の届出など、医療機関には固有の許認可・届出が数多くあります。これらは譲渡スキームによって引き継ぎ方が異なり、場合によっては再申請が必要です。デューデリジェンス段階で、現在算定している施設基準・加算を一覧化し、承継後も継続できるかを必ず確認する必要があります。
【キーパーソンリスクと医療従事者の処遇】
クリニックは院長への依存度が高く、買収後に院長が早期に退任すると患者が一気に離れてしまうケースがあります。これを防ぐため、譲渡後も一定期間は売り手院長に継続して診療してもらう「ロックアップ」を契約に盛り込むことが一般的です。同時に、看護師・医療事務スタッフの雇用条件や勤務体制についても、譲渡前に丁寧に説明し合意形成を図ることが、円滑なPMI(経営統合)のカギとなります。
【自由診療・保険診療のバランスと診療報酬リスク】
自由診療比率が高い美容クリニックや自費診療中心の医療機関では、収益のボラティリティが大きく、買い手の評価方法も保険診療中心の医療機関とは異なります。一方、保険診療中心の医療機関は診療報酬改定リスクを直接受けるため、過去の改定影響をシミュレーションしておくことが重要です。
病院・クリニックのM&A成功事例(国内・実名)
ここでは2024年〜2025年に公表された国内の実名M&A事例を3件ご紹介します。
なお、税務・法務の詳細は事案ごとに異なりますので、実際の検討にあたっては必ず専門家にご相談ください。
事例1:医療法人社団明康会が古謝内科医院を譲受(2025年5月)
時期:2025年5月
売り手:古謝内科医院(沖縄県)。創業39年の地域密着型診療所で、長年地域住民に医療を提供してきたものの後継者不在に悩み、M&Aか廃業かを検討していました。
買い手:医療法人社団明康会(千葉県)。沖縄県内での分院開設を検討していた医療法人グループです。
スキーム:事業譲渡
結果・ポイント:金融機関の支援を受けて成約に至り、譲受後は「いろのわクリニック」として地域に根差した医療提供が継続されています。県境を越えた承継であっても、地域医療を残したいという売り手の想いと、新エリア進出を狙う買い手のニーズが噛み合えば成立し得る好例です。
出典:fundbook 病院・医療法人業界のM&A動向に関する解説記事
事例2:ファストドクターがメドピア子会社のクラウドクリニックを譲受(2024年6月)
時期:2024年6月
売り手:メドピア株式会社(東証プライム上場)の連結子会社・株式会社クラウドクリニック。在宅医療の医療事務BPOを手掛けていました。
買い手:株式会社ファストドクター。救急医療プラットフォームを展開する企業です。
スキーム:株式譲渡(完全子会社化)
結果・ポイント:ファストドクターは在宅医療支援事業を強化し、診療支援から医療事務までを一貫して提供する体制を構築しました。クラウドクリニックの医療事務BPOノウハウとファストドクターの医療プラットフォームを組み合わせることで、在宅医療の質と効率の双方を高める狙いです。グループ内の事業選択と集中、そして買い手側の機能強化という双方の戦略が一致した事例といえます。
出典:たすきコンサルティング、fundbook の事例解説記事
事例3:メモリードが医療法人社団健若会・エクスロイヤルを子会社化(2023年5月)
時期:2023年5月発表
売り手:医療法人社団健若会および株式会社エクスロイヤル(いずれも東京都港区)。健若会はがん予防・免疫強化・認知症予防など予防医療を行うクリニックを運営、エクスロイヤルはエステティック事業や予防医療コンサルティングを行っていました。
買い手:株式会社メモリード。冠婚葬祭やホテル・レストラン事業などを全国展開する企業です。
スキーム:完全子会社化(株式譲渡)
結果・ポイント:メモリードは冠婚葬祭という主軸事業に加え、日常生活に関わる事業領域への拡大を進めており、予防医療分野は親和性の高い領域と位置付けられました。グループ会員・従業員の健康増進というシナジーも明確で、異業種から医療領域への参入事例として象徴的なM&Aです。
出典:メモリードグループ「医療法人社団健若会および株式会社エクスロイヤルの買収に関するお知らせ」、M&Aロイヤルアドバイザリー解説記事
病院・クリニックのM&A・事業承継の流れ
病院・クリニックのM&Aは、一般的に以下のステップで進みます。準備から成約まで6ヶ月〜1年半程度を要するケースが多く、
余裕を持ったスケジュールで動き始めることが重要です。
•ステップ1:M&A仲介会社等への相談・秘密保持契約の締結
•ステップ2:自院の概算企業価値評価、譲渡条件の整理、ノンネームシートの作成
•ステップ3:買い手候補へのノンネーム打診、関心を示した先への企業概要書(IM)開示
•ステップ4:トップ面談、意向表明書の受領、基本合意書の締結
•ステップ5:デューデリジェンス(財務・法務・労務・医療実務)
•ステップ6:最終契約締結、行政手続き、クロージング、PMI
医療機関ならではの準備として、保険医療機関の指定状況、施設基準の届出書類、医師・看護師の在籍状況、電子カルテ・レセコンの契約状況などを早めに整理しておくと、後工程がスムーズに進みます。
まとめ:病院・クリニックのM&Aを成功させるために
病院・クリニック業界では、開設者の高齢化、後継者不在、診療報酬改定、人材不足という構造的課題を背景に、M&Aによる第三者承継が確実に増えています。
一方で、医療法人特有のスキームや許認可、キーパーソンリスクなど、一般企業のM&Aとは異なる論点が数多く存在します。
自院の価値を最大化し、患者・スタッフ・地域医療を守りながらハッピーリタイアを実現するためには、できるだけ早い段階で情報収集を始め、医療業界に精通したアドバイザーと一緒に準備を進めることが大切です。
シェアモルM&Aでは、病院・クリニックの事業承継に関するご相談を無料で承っています。
「いま売却を考えているわけではないが、選択肢として知っておきたい」という段階のご相談も歓迎ですので、お気軽にお問い合わせください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。実際のM&A・税務・法務の判断にあたっては、必ず専門家にご相談ください。
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