| 公開日 | 2024/09/10 |
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| 記載者 | シェアモル株式会社 |
M&A
【バトンズ独自コラム】電気工事業のM&A・事業承継を徹底解説【2026年最新】
この記事でわかること
本記事はバトンズに掲載するために書き下ろした独自コラムです。M&A仲介のプロであるシェアモルM&Aのアドバイザーが、電気工事業におけるM&A・事業承継の最新動向をわかりやすく解説します。
電気工事業は、住宅やビル、工場、公共施設などにおける電気設備の設計・施工・保守を担う、社会インフラの根幹を支える重要な業界です。しかし近年、熟練技術者の高齢化や後継者不在、再生可能エネルギー需要の急拡大といった構造的な変化の中で、M&A(合併・買収)を活用した事業承継や経営戦略の見直しが急速に広がっています。
本記事では、電気工事業界の最新の市場動向から、M&Aの相場感、売却・承継のメリット、注意すべきポイント、そして実際の成功事例まで、経営者の皆様が知っておくべき情報を網羅的にお伝えします。
この記事でわかること
・電気工事業界の市場規模や業界再編の最新トレンド
・電気工事会社をM&Aで売却・承継する場合の相場観と評価ポイント
・売り手オーナー・買い手企業それぞれにとってのM&Aのメリット
・電気工事業界のM&Aで失敗しないために押さえるべき注意点と、直近の実名成功事例
電気工事業の業界動向とM&Aが増えている背景
市場規模は11兆円超、堅調に推移
電気工事業界の市場規模は、完成工事高ベースで約11.5兆円(2022年度)と推計されています。2019年の東京オリンピック関連工事を契機に受注高が大きく伸び、近年は首都圏の再開発やデータセンター建設ラッシュ、リニア中央新幹線関連工事などの大型案件に支えられ、11〜12兆円規模で堅調に推移しています。内線工事(建物内への電気配線工事)が全体の約7割を占めており、ビルや住宅の新築・リニューアル需要が業界を支える構造は変わっていません。
M&Aが加速する3つの背景
(1)深刻な技術者不足と後継者問題
国土交通省の「建設業構造実態調査」によると、人材不足を課題とする電気工事会社は全体の81.1%にのぼり、後継者問題を抱える会社も40.4%にのぼります。個人事業主に限ると、後継者不在率は59.1%とさらに深刻です。熟練した電気工事士の高齢化が進む中、若手の確保も難しく、M&Aによる人材獲得や事業承継への関心が年々高まっています。
(2)再生可能エネルギー・EV充電インフラの急拡大
太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー関連プロジェクトが全国各地で進んでおり、これに伴う電気工事の需要が急増しています。また、EV(電気自動車)の普及に伴い、充電スタンドの設置工事も拡大しています。EV充電器の設置口数は2024年度時点で累計5万口を超え、政府は2030年までに15万口への拡大を目標としています。こうした新たな需要を取り込むため、大手企業が地域の中小電気工事会社を買収する動きが活発化しています。
(3)DX推進と制度変更への対応
スマートグリッドやIoTを活用したエネルギー管理システムの導入が進み、電気工事会社にもデジタル技術への対応力が求められています。一方で、2025年からの建設業における時間外労働の上限規制の完全適用や、2023年10月のインボイス制度導入など、中小企業にとって負担の大きい制度変更も重なっています。これらに単独で対応しきれない企業がM&Aを選択するケースが増えています。
電気工事業のM&A相場・売却価格の目安
電気工事会社のM&Aにおける売却価格は、事業規模や収益性、保有する許認可、技術者の質と人数など多くの要因で変動するため、「この金額」という一律の相場は存在しません。ただし、中小規模の電気工事会社の場合、一般的に以下のような算定方法が用いられます。
年倍法(年買法):「時価純資産 + 営業利益の2〜5年分」で算出する方法で、中小M&Aでは最も広く使われています。営業利益が安定している会社ほど倍率が高くなる傾向があります。
DCF法:将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いて算出する方法です。成長が見込まれる再生可能エネルギー関連事業を持つ会社では、この方法で高い評価がつくケースもあります。
売却価格を左右する主なポイント
・建設業許可の種類(特定建設業許可は評価が高い)と経営事項審査(経審)の点数
・第一種・第二種電気工事士や電気主任技術者など有資格者の人数と年齢構成
・元請比率の高さ、公共工事の実績、安定した受注先の有無
・再生可能エネルギーやEV充電設備など成長分野への対応実績
・財務内容の健全性(無借金経営や安定した営業利益率は高評価)
バトンズ等のM&Aプラットフォームに掲載されている案件を見ると、売上高1,000万〜5,000万円規模の小規模事業者で譲渡希望価格1,000万〜5,000万円、売上高2.5億〜5億円規模の中堅事業者で7億円前後の事例も見られます。ただし、これはあくまで売り手側の希望価格であり、実際の成約価格はデューデリジェンス(詳細調査)の結果を踏まえた交渉で決まります。
電気工事業をM&Aで売却・承継するメリット
売り手オーナーにとってのメリット
1.後継者不在でも事業を存続できる:M&Aによって第三者に事業を引き継ぐことで、後継者がいなくても会社を廃業せずに済みます。長年培ってきた技術やノウハウ、従業員の雇用を守ることができるのは大きな利点です。
2.創業者利益を実現できる:株式譲渡によって、オーナーはこれまで積み上げてきた企業価値を現金として受け取ることができます。引退後の生活資金や次の事業への投資原資として活用できます。
3.経営基盤の強化と事業拡大:大手企業グループに入ることで、資金調達力や信用力が向上し、単独では受注できなかった大型案件へのアクセスが可能になるケースもあります。また、買い手企業の技術や販路を活用して、太陽光発電やEV充電設備など新分野に進出しやすくなります。
買い手にとってのメリット
1.有資格者・技術者の即戦力確保:電気工事士や電気主任技術者などの有資格者を一括で確保できることは、人材不足が深刻な業界において極めて大きなメリットです。自社で採用・育成するには長い時間がかかりますが、M&Aならば即座に戦力を獲得できます。
2.建設業許可・経審実績の承継:建設業許可や経審の点数、公共工事の入札実績は短期間では構築できない資産です。M&Aによってこれらを一括で引き継げることは、新規エリアへの参入や事業拡大を目指す買い手にとって大きな魅力となります。
3.商圏の拡大と事業の多角化:地域密着型の中小電気工事会社を買収することで、自社がカバーしていなかったエリアへの進出や、既存顧客基盤の活用による相乗効果が期待できます。
電気工事業のM&Aで注意すべきポイント
建設業許可の承継要件
電気工事業を営むには建設業許可が必要であり、許可の種類(一般・特定)や、専任技術者の配置状況がM&Aの成否に直結します。株式譲渡の場合は許可がそのまま引き継がれますが、事業譲渡の場合は原則として新たに許可を取得し直す必要があるため、スキームの選定には注意が必要です。
キーパーソンリスク
電気工事会社の価値は、熟練技術者や現場責任者といった「人」に大きく依存しています。M&Aの発表をきっかけにキーパーソンが離職してしまうと、許認可の維持要件を満たせなくなったり、受注能力が著しく低下するリスクがあります。M&A後の待遇や役割について事前に丁寧なコミュニケーションを取り、定着を図る計画を策定することが重要です。
顧客・取引先の引き継ぎ
電気工事業はゼネコンや不動産デベロッパー、地方自治体など、特定の発注者との長期的な信頼関係によって受注が成り立っています。M&A後にこうした関係が途切れないよう、主要取引先への事前説明やキーマンの引き継ぎ体制の構築が必要です。特に下請構造が多い業界では、元請企業との関係維持が売却後の事業安定性を左右します。
デューデリジェンスの重点項目
電気工事業界のM&Aでは、一般的な財務・法務DDに加えて、以下の業界特有の項目を重点的に確認する必要があります。建設業許可証と専任技術者の配置状況、経審の点数と格付、有資格者の人数・年齢構成・実務経験、過去の工事事故・労災の発生状況、公共工事の入札実績と落札率、下請比率と元請比率のバランス、社会保険の加入状況やコンプライアンス体制などが代表的なチェックポイントです。
電気工事業のM&A成功事例
ここでは、プレスリリースやニュース記事等で企業名が公開されている、電気工事業界の直近のM&A実例をご紹介します。
事例1:きんでんが北弘電社を子会社化(2025年4月)
時期:2025年3月合意、2025年4月1日に株式譲渡実施
売り手:株式会社北弘電社(北海道札幌市)。1951年設立の電気設備工事会社で、北海道を中心に屋内配線工事や電力関連工事を展開。2024年4月に三菱電機の完全子会社となり経営再建中だった。
買い手:株式会社きんでん(大阪市)。関西電力グループの大手電気工事会社で、大型施設の工事に強みを持つ。
スキーム:株式譲渡(三菱電機が保有する北弘電社の全株式をきんでんに譲渡)
背景・ポイント:三菱電機は重点成長事業への集中投資を進めるポートフォリオ戦略の一環として、工事会社であるきんでんの傘下で事業運営を進めることが北弘電社の発展に寄与すると判断しました。きんでん側は、再開発や再生可能エネルギープロジェクトで需要が拡大する北海道エリアにおいて、北弘電社の施工実績や顧客基盤を活用し受注拡大を図る狙いがあります。大手企業間のグループ再編を通じた電気工事会社のM&Aの典型例です。
出典:三菱電機・きんでん共同プレスリリース(2025年3月3日)
事例2:富士電機が富士古河E&Cを完全子会社化(2025年2月)
時期:2024年10月に株式交換契約締結、2025年2月3日に効力発生
売り手:富士古河E&C株式会社(旧・東京証券取引所スタンダード市場上場)。電気・空調設備工事を手がける工事会社。
買い手:富士電機株式会社(東京都品川区)。大手電機メーカーで、パワーエレクトロニクスやエネルギー関連機器に強みを持つ。
スキーム:株式交換による完全子会社化(富士古河E&Cは2025年1月30日に上場廃止)
背景・ポイント:本件では、電気・空調設備工事分野での事業拡大に加え、GX(グリーントランスフォーメーション)関連分野での製品開発とサービス強化、海外事業の拡大といったシナジー創出が狙いとされています。メーカーと工事会社の垂直統合型のM&Aとして、電気工事業界における新たな成長戦略の一例です。
出典:富士電機プレスリリース「富士古河E&C株式会社の完全子会社化に関する株式交換契約締結のお知らせ」(2024年10月31日)
事例3:ETSホールディングスが中央電氣建設を子会社化(2022年6月)
時期:2022年5月に株式取得契約締結、2022年6月1日に全株式取得完了
売り手:中央電氣建設株式会社(徳島県三好市)。四国電力を主要顧客とし、徳島を中心に鉄塔建替や電線張替等の送電線工事を手がける。子会社の電友社を含めた中央電氣グループとして事業を展開。
買い手:株式会社ETSホールディングス(東京都豊島区、証券コード:1789)。1922年創業の独立系電気工事会社で、電力事業・設備事業・再生可能エネルギー事業を展開。
スキーム:株式譲渡(中央電氣建設の全株式を取得し完全子会社化)
背景・ポイント:ETSホールディングスは、中央電氣グループの主要顧客とのリレーションを活用した共同営業体制の構築や、資格技術者・高所作業員・工事施工要員の人材交流を推進することで、送電事業全体の強化を図りました。同業他社のグループ化による人材・顧客基盤の共有は、電気工事業界のM&Aにおける典型的なシナジーモデルです。
出典:ETSホールディングス プレスリリース(2022年6月28日)
事例4:北陸電気工事が日建を子会社化(2024年)
時期:2024年(株式取得による子会社化)
売り手:株式会社日建。関東圏で電気工事を手がける企業。
買い手:北陸電気工事株式会社(富山県富山市)。北陸電力グループの電気工事会社で、電力関連工事業・電気通信工事業・電気設備工事業などを展開。
スキーム:株式譲渡による子会社化
背景・ポイント:北陸電気工事は中期経営計画「アクションプラン2024」の中で、連結売上高を2023年3月期の448億円から2025年3月期に600億円へ拡大する目標を掲げていました。日建の子会社化は、北陸を地盤とする同社が関東圏での事業拡大を目指したM&Aで、地方電力系工事会社の商圏拡大戦略として注目される事例です。
出典:日本M&Aセンター「電気通信工事業界のM&Aと事業承継の動向」
電気工事業のM&A・事業承継の流れ
電気工事業界のM&Aは、一般的なM&Aプロセスに加えて、建設業許可や有資格者の承継という業界固有のステップが加わります。おおまかな流れは以下のとおりです。
Step 1:事前準備・現状整理
財務諸表、建設業許可証、経審の点数、有資格者一覧、主要取引先リスト、受注状況などを整理し、自社の強みと課題を明確にします。これらの情報はM&Aの企業評価(バリュエーション)の基礎資料となります。
Step 2:M&A仲介会社・専門家への相談
電気工事業界に精通したM&Aアドバイザーに相談し、適正な企業評価を受けたうえで、譲渡方針やスケジュールを策定します。秘密保持契約を締結したうえで、買い手候補のリストアップを行います。
Step 3:買い手候補との接触・トップ面談
ノンネームシート(企業名を伏せた概要資料)を通じて買い手候補に打診し、関心を示した候補先とトップ面談を行います。経営理念の共有や相性の確認は、特に中小企業のM&Aでは重要なステップです。
Step 4:基本合意・デューデリジェンス
基本合意書を締結した後、財務・法務・税務に加えて、建設業許可の承継要件や専任技術者の配置状況、労務管理体制など、電気工事業界特有の項目を含むデューデリジェンスを実施します。
Step 5:最終契約・クロージング
デューデリジェンスの結果を踏まえて最終条件を交渉し、株式譲渡契約(または事業譲渡契約)を締結します。クロージング後は、従業員への説明や取引先への挨拶回り、許認可関連の届出など、PMI(統合プロセス)を計画的に進めます。
まとめ:電気工事業のM&Aを成功させるために
電気工事業界は、再生可能エネルギーやEV充電インフラの拡大、DXの進展などを背景に、今後も堅調な成長が見込まれる業界です。一方で、技術者の高齢化や後継者不在という構造的な課題は深刻化しており、M&Aを活用した事業承継の重要性はますます高まっています。
M&Aを成功させるためのポイントをまとめると、以下のようになります。
・早めの準備が肝心:後継者問題が顕在化してから動き始めるのではなく、経営体力のあるうちに準備を始めることで、より良い条件での譲渡が可能になります。
・自社の「見えない資産」を可視化する:建設業許可、経審点数、有資格者、安定した取引先、公共工事実績など、電気工事会社ならではの価値を整理して買い手に伝えることが重要です。
・業界に精通した専門家を活用する:電気工事業界のM&Aでは、許認可の引き継ぎや技術者の処遇など、業界固有の論点が多くあります。業界に精通したM&Aアドバイザーの支援を受けることで、スムーズな成約と円滑な統合が実現しやすくなります。
シェアモルM&Aでは、電気工事業界のM&A・事業承継に関する無料相談を承っております。「自社の売却価格がどのくらいになるか知りたい」「後継者がおらず今後の経営をどうすべきか悩んでいる」といったお悩みをお持ちの経営者様は、ぜひお気軽にご相談ください。秘密厳守で丁寧にサポートいたします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言や税務アドバイスを構成するものではありません。具体的なM&Aの検討にあたっては、弁護士・税理士等の専門家にご相談ください。
※記事内で紹介したM&A事例の情報は、各社のプレスリリースや公開されたニュース記事に基づいています。公開前に必ず実務経験者(M&Aアドバイザー)によるレビューと知見の追加をお願いいたします。
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