公開日 | 2024/04/15 |
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記載者 | 中小PMI支援センター株... |
資金調達
成長期の資金調達に必要な考え方とは?
中小PMI支援センター株式会社はM&Aおよび中小企業経営の課題をワンストップで解決するために多彩な士業・専門家で組織する中小PMI研究会と一体で活動しています。
専門分野
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PMI
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対応可能エリア
日本全国対応可能
成長期に必要な資金の特徴
成長期の事業者が必要とする資金は、非常に多岐にわたり、また金額も大きくなりがちです。成長期は、売上や利益も伸びていきますが、更なる成長のための投資や継続的に運転資金が必要となります。そのため、キャッシュフローが潤沢というようには、なかなか行きません。
成長期の必要資金も、大きく二つに分けられます。一つは成長後を見据えて早めに着手する投資資金、もう一つは継続的に発生する運転資金です。
前者は、店舗や倉庫、工場などの増設に関する投資(固定資産)や、成長に合わせて、あるいは見越して早めに行う人材投資(採用・育成等)、商品・サービス開発投資、情報システム投資、内部管理体制構築などに関連する投資資金です。
後者は、売上の拡大に伴い増加する経常運転資金(※)、残業代や成果報酬、賞与などの人件費、販路拡大に伴う広告宣伝費、売上拡大に伴う運搬費増加など多岐にわたります。
(※)経常運転資金=売上債権+棚卸資産−仕入債務
成長期に必要となる資金は、ほぼ全ての投資・費用に関するものと考えられ、これらの資金をどこから賄っていくのかが最大の課題です。PPM(プロダクトポートフォリオマネジメント)の考え方でいうと、花形事業(Star)の時期であり、キャッシュインも大きいが、キャッシュアウトもそれ以上に大きい時期です。この時期の資金繰りを乗り越えて、初めて安定したキャッシュを生み出す事業へと成長します。
金融機関側から見ると、最大の収益チャンスであると同時に、事業者に対し、いかにメインバンクとしての立場を構築していくかを考えるようになります。
会社としては、投資資金は自己資本ならびに社債や長期借入金で、運転資金に関しては当座貸越や短期借入金等により賄われるのが理想です。
<成長期に必要な資金の具体的内容>
項目 | ①投資資金 | ②運転資金
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具体的内容 |・店舗や倉庫、工場などの増設 |・経常運転資金
|・人材採用・育成 |・人件費(残業代・成果報酬・賞与等)
|・商品・サービス開発 |・広告宣伝・販売促進費
|・情報システム投資 |・販路拡大に伴う交通費等その他経費
保証協会付融資とプロパー融資の関係
成長期に入ると、事業実績もでき、売上・利益も拡大傾向になる中で、金融機関としては信用リスクが低下するため、プロパー融資が受けやすくなります。
事実、従業員規模が大きくなればなるほど、また業歴が長くなればなるほど、プロパー融資による支援額は増えています。
前述のように、成長期の中小企業は更なる成長のため、新商品・サービス開発や海外への販路拡大等を進めるための投資資金や、増加運転資金が必要になってきます。
成長期は、金融機関側は次のように考えます。
■ いかに事業性を判断し、機動的にプロパー融資を実行していくか
■ いかに貸出シェアを伸ばし、メインバンクとなるか
そのため、会社側も、金融機関へ対し、日頃から密に情報提供や対話を行い、関係性を構築していくことが重要です。ここで、有用なのはローカルベンチマークの活用です。
ローカルベンチマークは、経済産業省によって策定されたツールです。同省のHPでは下記のように説明しています。要するに、このツールを利用して、金融機関や中小企業支援機関、専門家、中小企業などが対話をし、事業性評価に役立てるようにと策定されたものです。
○ローカルベンチマークは、企業の経営状態の把握、いわゆる「健康診断」を行うツール
(道具)として、企業の経営者等や金融機関・支援機関等が、企業の状態を把握し、双方が
同じ目線で対話を行うための基本的な枠組みであり、事業性評価の「入口」として活用される
ことが期待されるものです。
具体的には、「参考ツール」を活用して、「財務情報」(6つの指標※1)と「非財務情報」
(4つの視点※2)に関する各データを入力することにより、企業の経営状態を把握することで
経営状態の変化に早めに気付き、早期の対話や支援につなげていくものです。
(※1)6つの指標;①売上高増加率(売上持続性)、②営業利益率(収益性)、③労働生産性
(生産性)、④EBITDA有利子負債倍率(健全性)、⑤営業運転資本回転期間(効率性)、⑥自己
資本比率(安全性)
(※2)4つの視点;①経営者への着目、②関係者への着目、③事業への着目、④内部管理体制
への着目
出所:経済産業省HP
ABL(動産担保融資)の活用
ABLとは、「企業の事業そのものに着目し、事業に基づく様々な資産の価値を見極めて行う貸出」です。「企業が、不動産以外の動産(在庫や機械設備・債権等)などの流動性の高い資産を担保として借入を行うもの」です。
単に動産等を担保とするのでなく、事業活動そのものを担保にするという考えです。「事業活動がどのように動いているか」について継続的に、企業と金融機関が情報を共有化する仕組みになっています。
ABLは成長期の企業に適した融資手法です。成長企業は、売上増加に伴い、売上債権、在庫、仕入債務が増加します。つまり経常運転資金が増加するので資金は不足しがちになります。売上債権、在庫を担保にするので、成長期の企業であれば、その担保価値も増加します。つまり金融機関にとっては、運転資金への貸し出しを増やしつつ、担保価値も増大することになります。さらに、金融機関にとってのメリットは、①動産等の担保化により貸倒リスクを分散・軽減できる、②貸出金の増加が見込める、③モニタリングにより借り手のリスクを緩和(借り手の状況を常に把握)できる、等が挙げられます。
企業にとってのメリットは、①事業の拡大に伴う資金需要ニーズの充足(増加運転資金への対応)、②不動産担保・保証に偏重しない資金調達、無担保に比べ好条件を獲得できる、③金融機関とのリレーション強化で柔軟・迅速なサービスを享受、等が挙げられます。
ABLにおいては借り手と貸し手の間で緊密なやり取りが発生します。借り手から貸し手に対しては、担保提供している在庫や売掛金等の情報やキャッシュフロー等の情報開示を、一定の頻度で行う必要があります。一方、貸し手から借り手に対しては、資金繰りや事業運営に関する支援・指導を行うことが可能になります。その結果、企業と金融機関のリレーションシップが構築され、円滑な資金調達が可能になります。
問い合わせ先:中小PMI支援センター株式会社 コンサルタント
(中小企業診断士)渡邊賢司 e-mail:info@pmis.jp