M&A
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2026/10/01

新聞報道の件から考える ── M&Aで会社を譲ったあと、経営者保証は本当に外れているか

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保証の解除を確かめる電話は、なぜ問題を止められなかったのか
2026年9月、M&A仲介の最大手である日本M&Aセンターが仲介した案件で、担当者が「経営者保証の解除が済んでいない」事実を隠そうとしていたことが報じられました。同社は元社員を解雇処分とし、報酬の見積もりを書面で示していなかったことも認めています。株式を譲渡した創業者の代理人の弁護士は、1億円を超える経営者保証が解除されていないことなどを指摘していました。同社には、成約後に保証の解除を確かめる仕組みがありました。それでも、問題が表に出たきっかけは、ある一通の書面だけでした。
経営者保証は、M&Aが成立しても自動的には外れません
経営者保証は、株式を譲渡しただけでは解除されません。外すには、買い手が借入先の金融機関と交渉して、保証人を差し替えるか、借り換えや返済をする必要があります。 これを後押しするのが、M&A支援機関協会が2024年10月1日に始めた「特定事業者リスト」です。最終契約までに保証の解除を合意していたのに、M&Aの実行日から60営業日を過ぎても解除されていない場合や、10営業日を過ぎても買い手が金融機関に解除の相談をしていない場合などに、買い手が登録されます。登録は最低でも10年間残り、リストを見られるのは協会の会員などの利用者(2026年9月25日時点で134社)です。 ただ、この仕組みは、案件を担当した会員からの報告で動きます。会社の発表によると、元社員は売り手の担当者で、成約後に別の部署がかけた確認の電話に「保証解除済み」と答えるよう、売り手と買い手の関係者に働きかけていました。目的は、買い手がリストに登録されるのを避けることだったと会社自身が説明し、「特定事業者リストの実効性を揺るがしかねない、極めて重大な行為」と書いています。
「2千万円程度」の覚えと、6千万円を超えた請求書
9月28日の報道によると、売り手は担当者と「(最低報酬額の)2千万円程度」と話した覚えがありました。ところが、具体的な金額は株式譲渡の翌日にメールで届いた請求書で初めて示され、税込みで6千万円を超えていました。会社は「概算額は口頭で説明したと考えている」としつつ、見積もりを書面で示していないことは認めています。 中小M&Aガイドライン(第3版)は、報酬の料率、基準となる額、最低手数料、報酬が発生するタイミングを、書面を交付して説明するよう仲介者に求めています(p.88)。協会の自主規制ルールも、契約を結ぶときに報酬の計算書(試算書)等を示すことを求めています(契約重要事項説明規程 第七条)。同社の成功報酬は譲渡企業の「時価総資産額」を基準にするレーマン方式で、基準が決算書の総資産なので、成約の前から報酬はかなりの精度で試算できます。 経営者保証のほうでは、確認の電話という止める側の仕組みが、形だけでなく存在していました。それでも、実際に問題が表に出たのは、2026年6月24日に売り手の代理人の弁護士が送った通知書がきっかけでした。
答えは、売り手が自分で確かめる「順番」にあります
仲介会社の確認に任せきりにせず、売り手の側で何を、いつ確かめればよいのか。仲介契約の前から成約後60営業日まで、中小M&Aガイドラインと協会の自主規制ルールの根拠を添えて、確かめる順に並べたチェックリストを、日本財務戦略センターの一次調査にまとめています。困ったときの相談先もあわせて載せています。日本財務戦略センターも協会の正会員で、評価の言葉は控え、公表された事実と制度の定めを並べることにとどめています。 日本M&Aセンターの経営者保証をめぐる件は、どこが問題だったのか ── 公表された事実と、ガイドライン・自主規制ルールから整理する(https://jfsc.jp/research/nihon-ma-center-keieisha-hoshou/)
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