財務・税務
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2026/04/12

【事例】持分あり医療法人の親族内承継におけるリスクと対策

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はじめに
持分あり医療法人の親族内承継においては、下記の2つのリスクがあります。 これらについて事例を交えて問題点と対応策について見ていきたいと思います。 ⑴相続税の納税の問題 ①現金ではない出資持分を相続するところに相続税を現金で払わなければならなくなるため、後継者や相続人が納税について持ち出しになる。 ②後継者が法人の経営改善をすればするほど先代が保有する出資持分の評価が上昇するため、将来自分が払わなければならない相続税額が増加する。 ⑵経営リスクの問題 ①社員である出資者が社員資格を喪失(死亡・除名・退社)した場合、その出資者に出資持分の時価相当額の払戻請求権が生じ、法人の資金繰りが悪化する。 ②社員出資者が分散している場合、払戻請求をめぐって出資者間でトラブルとなる可能性がある。 ③出資持分の払戻を受けた出資者は、みなし配当として所得税の課税(総合課税として超過累進税率で最高約56%(ただし、配当控除あり))を受ける。
事例1】相続税の納税資金が足りず法人の資金繰りが悪化し、後継者の手元資金もほとんど残らなくなったケース
⑴事例   出資持分の相続税評価額が10億円である医療法人の前理事長(出資持分の全額を保有)に相続が発生し、後継者である子(現理事長)がその出資持分を相続することとなりました。  相続税の納税額が4億円となり、10か月以内に現金で納税する必要がありましたが、他の相続財産や法人の保有財産には現金や換金性の高い財産はほとんどなく、大半が出資持分や不動産でした。そのままでは納税することができなかったため、銀行から納税資金を借り入れして納税することとなりました。  その後、銀行から借り入れた4億円の納税資金の返済のために医療法人での理事長報酬を引き上げたことにより、法人の資金繰りが悪化するとともに、理事長報酬に対する所得税も増加し、なおかつ手取り額から借入金の返済を行うため理事長個人にも手元に現金が残らない状況となってしまいました。 ⑵問題点、どのような対策が必要であったか  本件では、10億円の出資持分という財産を残しているようで、実質的には4億円という負債を負わせている状況になってしまっています。  前理事長の生前、もしくは相続開始から相続税の申告期限までに厚生労働大臣の認定を受けていれば、4億円の相続税の納税の大部分を回避することができていました。
事例2】法人経営に関与していない社員出資者からの払戻請求による経営リスク
⑴事例  医療法人甲会には、理事長である社員出資者Aと、理事や使用人ではなく経営に関与していない社員出資者Bがおり、出資持分割合は半分ずつです。  甲会の時価純資産価額は20億円であり、Bが退社すれば現状10億円の払戻請求をすることが可能です。  ところが、甲会は病院と介護老人保健施設を運営しており、時価純資産価額の大半が非現金である固定資産であり、Bに払戻請求権を行使されてしまうと資金繰りが悪化して経営が成り立たなくなる可能性があります。  AとBは親戚関係にありますが非常に仲が悪く、理事長であるAは、経営にほとんど関与していないBが払戻請求をしてこないか常に懸念している状況です。 ⑵問題点とどのような対策が必要か  クリニック運営の持分あり医療法人からは本件のようなご相談はあまり受けませんが、病院や介護老人保健施設を運営する持分あり医療法人では本件のような問題が生じているケースは一定数存在します。  事前の対策としては、相続や贈与等で出資が分散する前に認定を受けること等により持分なし医療法人へ事前に移行しておく、少なくとも事前に出資額限度法人に移行しておくことにより払戻請求額を当初出資額の範囲内におさめておくこと等が考えられます。  また、仮に本件のように出資が分散してしまっている場合において、Bが甲会の経営に一切関与していないにもかかわらず払戻請求をすることにより甲会の存続が脅かされるようなときは、Bの権利濫用として解決することが可能となる場合があります(最高裁平成22年4月8日判決)。
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