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マルチプル法とは?専門家が詳しく解説

2023年07月03日

今回は、「マルチプル法とは?」について、解説します。

M&Aにおいては、様々な条件交渉が行われますが、最も重要な条件とは「取引価格です。しかし、この取引価格はどのように決定されるのでしょうか?

交渉したい取引価格、つまり売却希望価格を買い手に提示するには、合理的に譲渡対象会社の企業価値を算定する必要があります。では、企業価値はどのように算定されるのでしょうか?

M&Aにおける企業価値の算定方法は以下の方法があります。

・インカムアプローチ

対象会社の収益力にスポットを当てた評価方法です。
評価方法には、DCF法や配当割引モデルなどがあります。

・コストアプローチ

対象会社の純資産にスポットを当てた評価方法です。
評価方法には、簿価純資産法や時価純資産法があります。

・マーケットアプローチ

株式市場の市場株価にスポットを当てた評価方法です。
評価方法には、類似会社比較法や類似取引比較法、市場株価平均法があります。

今回ご説明するマルチプル法は、マーケットアプローチにおける類似会社比較法の1種でもあります。

では、マルチプル法とは、具体的にどういった意味で、どのように企業価値を評価し、どのようなメリット・デメリット、注意点があるのでしょうか?

今回は、マルチプル法についての、

①マルチプル法の意味

②マルチプル法のメリット・デメリット

③マルチプル法における計算式

④マルチプル法における代表的な4つの指標

⑤マルチプル法における企業価値評価プロセス

⑥マルチプル法を用いた企業価値(または株主価値)の計算例

⑦マルチプル法による企業価値算定 3つの注意点

を中心に、解説していきます。

※今回の記事のワンポイントアドバイスでは、「【驚愕!】小規模M&Aの取引価格はどうやって決めてるの?」も解説していますので、是非、ご覧ください!

 


【監修者プロフィール】


合同会社アジュール総合研究所 / 代表社員
スモールM&Aアドバイザー/ M&A支援機関登録専門家
伊藤 圭一(いとう けいいち)

「小規模企業と個人事業の事業承継を助けたい!」そんな想いから、2019年7月に小規模事業専門のM&Aアドバイザー「スモールM&Aアドバイザー・合同会社アジュール総合研究所」を設立。
合同会社アジュール総合研究所」の紹介ページ

【必見!】巻末にスモールM&Aアドバイザー・合同会社アジュール総合研究所 代表 伊藤氏よりM&A実務に即したワンポイントアドバイスや注意点も掲載しています!是非、最後までご刮目下さい!

 

 

マルチプル法の意味

マルチプル法とは、類似上場企業の倍率を利用し、対象会社の企業価値を客観的に評価する方法であり、類似会社比較法ともよばれる評価方法のことです。

マルチプル法の考え方の根幹は、対象会社と類似する上場企業を基準とし、対象会社の価値は類似する上場企業の株価や収益構造から算出した価値とほぼ類似すると仮定することにあります。

類似上場企業の売上高や利益、株主資本等の財務数値における企業価値又は株主価値の評価倍率を利用して、対象会社の価値を評価するのです。

この評価倍率が「マルチプル」というため、この企業価値評価方法がマルチプル法と呼ばれる所以となっているのです。

 

 

マルチプル法のメリット・デメリット

まずは、各企業価値の算定方法のメリット・デメリットを確認しましょう。

 

整理すると以下のような図になります。

企業価値の算定方法 メリット デメリット
インカムアプローチ 将来性を反映させやすい
個別の価値を反映させやすい
恣意性をはらむ
精算予定の会社は不向き
コストアプローチ 客観性が高い 収益性を反映できない
市況を反映できない
帳簿の誤りに左右される
マーケットアプローチ 客観性が高い 類似会社が必要
市況に左右される
個別の価値を反映しにくい

この図を踏まえて、マルチプル法のメリット・デメリットを見てみましょう。

 

 

マルチプル法のメリット

マルチプル法の最大のメリットは、他の評価方法と比べ、最も客観性に優れていることです。「客観性」とは、客観的な前提条件に基づいた株式評価が可能かどうかのことです。

何をもって客観性と言うかは、

①企業評価に、恣意性(自由で勝手気ままな意図)が介在する余地が少ないこと
②誰が企業評価を行っても、類似した評価結果が算出されること

この2点を兼ね備えているかがポイントとなります。

コストアプローチについても、客観性が高い評価方法ではありますが、類似上場企業の売上高や利益、株主資本等の財務数値における企業価値又は株主価値の評価倍率を利用して、対象会社の価値を評価する分、比較的マーケットアプローチの方が客観性に優れていると言えます。

また、マルチプル法は選定した類似企業の平均値から、相対的な企業価値・株式価値を簡単な計算式で算出することができるため、その他の算出方法(特にDCF法)の結果と比較したい時には、非常に重宝します。

DCF法について詳しく知りたい方はこちら▼

 

 

マルチプル法のデメリット

マルチプル法のデメリットは、個別の事象を反映できない点にあります。対象会社の将来の成長性や、その企業固有の事情が反映されず、むしろ、評価基準とした類似上場会社固有の事情に、評価結果が引っ張られる傾向にあります。

また、そもそも類似する上場会社がない場合、マルチプル法は企業評価に適さない方法となります。

 

 

マルチプル法における計算式

評価対象企業の企業価値(または株主価値)=評価対象企業のKPI×マルチプル(倍率)

マルチプル(倍率)=類似企業の企業価値(株主価値)÷類似企業のKPI

※KPI:重要業績評価指標(EBITDAや純利益、純資産、売上高)

この計算式を踏まえて、以降のセクションをご覧ください。

 

 

マルチプル法における代表的な4つの指標

マルチプル(倍率)を算出するために、マルチプル法における代表的な4つの指標を紹介します。

 

・EV/EBITDA倍率(EBITDAマルチプル)

企業価値(EV)をEBITDAで割る計算方式をEV/EBITDA倍率(EBITDAマルチプル)といいます。

投下資本を何年で回収可能かを示す指標となります。

▼EV/EBITDA倍率計算式
EV/EBITDA倍率(EBITDAマルチプル)= 企業価値(株式時価総額 + 有利子負債 - 現金資産) ÷ EBITDA

※補足

EBITDAとは、「EBITDA=営業利益+減価償却費」で求められ、簡単に言うと「簡易キャッシュフロー」のことです。営業利益に、キャッシュが流出しない費用である減価償却費を加算してはじき出すため、キャッシュにスポットを当てた利益、つまり営業キャッシュフローと言えます。

ちなみに、EBITDAは「Earnings Before Interest Taxes Depreciation and Amortization」の略で、「利息控除前の利益減価償却費」という意味です。

 

EBITDAマルチプルについて詳しく知りたい方はこちら▼

 

EBITDAについて詳しく知りたい方はこちら▼

 

 

・PER(株価収益率)

PER(株価収益率)とは、企業業績を勘案し、株価の現状を判断する指標のことです。この指標により、対象株式に投資を行った場合、どれくらいの期間で回収できるかを予測することが可能になります。

PER(株価収益率)の数値が低いほど、現在の対象株価は割安感があり、回収期間が短いと言えますが、数値が高いと、投資金の回収まで時間が長くなると言えます。

▼PER(株価収益率)計算式

・PER(株価収益率=株価÷1株当たりの当期純利益(EPS)

または、

・PER(株価収益率)=株式時価総額÷当期純利益

 

PBRとPERの違いについて詳しく知りたい方はこちら▼

 

 

 

・PBR(株価純資産倍率)

PBR(株価純資産倍率)とは、企業の純資産を勘案し、株価の現状を判断する指標のことです。現在の株価が評価対象企業の企業価値に対して割安か割高かを判断する指標となっており、この数値が低いほど割安であり、高いと割高となります。

前述のPER(株価収益率)と、PBR(株価純資産倍率)は、評価対象企業の市場価値を知ることができるため、マルチプル法と関連が強く、また、投資家が最も重視する指標ともなっています。

▼PER(株価純資産倍率)計算式

・PBR(株価純資産倍率)=株価÷1株当たり純資産(BPS)

または、

・PBR(株価純資産倍率)=株式時価総額÷簿価純資産

 

 

 

・PSR(株価売上高倍率)

PSR(株価売上高倍率)とは、売上高の増加が企業価値に直結する傾向にある、新興成長企業の株価水準を判断する指標のことです。

創業間もないベンチャー企業など、赤字ですが高い成長率が見込める企業や収益モデルやキャッシュポイントが類似している企業の評価には適していると言えます。

▼PSR(株価売上高倍率)計算式

・PSR(株価売上高倍率)=株式時価総額÷売上高

 

 

 

 

マルチプル法における企業価値評価プロセス

ここでは、マルチプル法における企業評価プロセスについて、順を追って解説します。

 

①類似上場企業の選定

類似上場企業の選定は、事業内容・事業成熟度(または成長性)・事業規模・ビジネスモデル・財務上の特徴・収益モデル・地域・業界動向などを勘案し、類似している企業を対象とします。

参考とするデータは、会社四季報やインターネット検索(EDINET-エディネット)などを見ると良いでしょう。数社選定出来たら、さらに3社程度に絞り込みましょう。

 

 

②マルチプル(倍率)の算定

マルチプル法における代表的な4つの指標」のセクションで解説した通り、マルチプル(倍率)の算定をします。

倍率指標もどれを採用するかで、算定結果が変わってくるため、最も適している指標を選定する必要があります。評価対象企業と類似上場企業の特性などを勘案し、選定すると良いでしょう。

 

 

③企業価値や株主価値の算出

マルチプル(倍率)を用いて、評価対象企業の企業価値(または株主価値)を算出します。

▼前出の計算式を再掲 

・評価対象企業の企業価値(または株主価値)=評価対象企業のKPI×マルチプル(倍率)

・マルチプル(倍率)=類似企業の企業価値(株主価値)÷類似企業のKPI

※KPI:重要業績評価指標(EBITDAや純利益、純資産、売上高)

マルチプル法における企業評価プロセスは上記のように行いますが、次のセクションでは具体的に、マルチプル法を用いた企業価値(または株主価値)の計算例を解説します。

 

 

マルチプル法を用いた企業価値(または株主価値)の計算例

それでは、マルチプル法を用いた企業価値(または株主価値)の計算例を解説します。

※前のセクションで解説した、「マルチプル法における企業評価プロセス」とリンクしておりますので、併せてご参照ください。

【計算例】
◆前提
・評価対象企業をA 選定した類似企業をBとします。
・マルチプル(倍率)はEV/EBITDA倍率を採用します。

 

◆A・Bの財務数値

財務数値 評価対象企業A 類似企業B
営業利益 5,000 60,000
減価償却費 1,000  20,000
有利子負債  40,000
株式時価総額  200,000

(単位:千円)

 

 

①類似上場企業の選定

様々な状況を勘案し、今回はB社1社と類似上場企業に選定しました。
※実際は3社ほど選定してみてください。

 

 

②マルチプル(倍率)の算定

マルチプル(倍率)はEV/EBITDA倍率を採用する事となりました。

マルチプル(倍率)を算定します。

B社のEV/EBITDA倍率
=(B社の株式時価総額200,000+B社の有利子負債40,000)÷(B社の営業利益60,000+B社の減価償却費20,000)
=3

 

 

③企業価値や株主価値の算出

まずは、A社のEBITDAを算出します。

A社のEBITDA=A社の営業利益5,000+A社の減価償却費1,000=6,000

上で算出されたA社のBITDAにB社のEV/EBITDA倍率を乗じます。

A社の企業価値=A社のBITDA6,000×B社のEV/EBITDA倍率3=18,000千円

 

 

マルチプル法による企業価値算定 3つの注意点

マルチプル法による企業価値算定の注意点は以下の3つです。

①マルチプル(倍率)算定の対象となる類似上場企業をどこに選定するか?
②マルチプル(倍率)指標は、何を採用するか?
③マーケットアプローチだけではなく他のアプローチも実施する

①②については、不適当な類似上場企業の選定と、指標の採択を行った場合、当然算定結果も実態に適さないものとなってしまいます。さらに、マルチプル法は算定者の裁量に影響を受けるため、唯一無二の結論がでるわけではありません。

この点を補填すべく、マーケットアプローチだけではなく、DCF法などのコストアプローチも実施し、算定結果が適切であるかどうかを判断する事が重要なのです。

 

 

まとめ

以上、「マルチプル法とは?」を、解説しました。

今回の内容を、おさらいしましょう。

 

【マルチプル法の意味】

・マルチプル法とは、類似上場企業の倍率を利用し、対象会社の企業価値を客観的に評価する方法であり、類似会社比較法ともよばれる評価方法のこと。

 

【マルチプル法のメリット・デメリット】

・マルチプル法の最大のメリットは、他の評価方法と比べ、最も客観性に優れていること。
何をもって客観性と言うかは、

1. 企業評価に、恣意性(自由で勝手気ままな意図)が介在する余地が少ないこと
2. 誰が企業評価を行っても、類似した評価結果が算出されること

この2点を兼ね備えているかがポイントとなる。

・マルチプル法のデメリットは、個別の事象を反映できない点にある。
対象会社の将来の成長性や、その企業固有の事情が反映されず、むしろ、評価基準とした類似上場会社固有の事情に、評価結果が引っ張られる。
そもそも類似する上場会社がない場合、マルチプル法は企業評価に適さない。

 

 

【マルチプル法における計算式】

 

・評価対象企業の企業価値(または株主価値) = 評価対象企業のKPI × マルチプル(倍率)

マルチプル(倍率)= 類似企業の企業価値(株主価値) ÷ 類似企業のKPI

※KPI:重要業績評価指標(EBITDAや純利益、純資産、売上高)

 

 

【マルチプル法における代表的な4つの指標】

・EV/EBITDA倍率(EBITDAマルチプル)
企業価値(EV)をEBITDAで割る計算方式をEV/EBITDA倍率(EBITDAマルチプル)と言う。

・PER(株価収益率)
PER(株価収益率)とは、企業業績を勘案し、株価の現状を判断する指標のこと。

・PBR(株価純資産倍率)
PBR(株価純資産倍率)とは、企業の純資産を勘案し、株価の現状を判断する指標のこと。

・PSR(株価売上高倍率)
PSR(株価売上高倍率)とは、売上高の増加が企業価値に直結する傾向にある、新興成長企業の株価水準を判断する指標のこと。

 

 

【マルチプル法における企業評価プロセス】

1.類似上場企業の選定
2.マルチプル(倍率)の算定
3.企業価値や株主価値の算出

 

 

【マルチプル法を用いた企業価値(または株主価値)の計算例】

※具体的な計算例を掲載しておりますので、本セクションを再度ご参照下さい。

 

 

【マルチプル法による企業価値算定 3つの注意点】

1. マルチプル(倍率)算定の対象となる類似上場企業をどこに選定するか?
2. マルチプル(倍率)指標は、何を採用するか?
3. マーケットアプローチだけではなく他のアプローチも実施する

今回の内容は、企業価値評価方法の1つである、マーケットアプローチに属するマルチプル法について解説しましたが、本文中にもある通り、企業評価方法は、インカムアプローチコストアプローチが存在します。

全ての評価方法で企業価値をはじき出す必要はありませんが、多面的な評価を行うことによって、評価対象としている企業の特性や個性が見えてくることもあります。

一つのアプローチ方法にこだわらず、様々な角度からその企業を評価してみて下さい。売り手も買い手も納得のいく、合理的に見積もられた取引価格が見えてくることでしょう。

※企業価値評価の依頼やセカンドオピニオンを受け付けてくれるM&A専門家もいます。気になる方は、下記URLより専門家に依頼しましょう!

 

 

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ここからは、スモールM&A専門家である、わたくし伊藤が、M&A実務に即した、成約に大きく前進するためのアドバイスと注意点などを、なるべくわかりやすく(そして、くだけた感じで?)スモールM&Aの現場の経験をもとに解説していますので、是非、ご刮目下さい!

 


はいっ!

今回は、「マルチプル法」について解説しました。

が……いやはや……

難しかったですね、マルチプル法……

計算が苦手な方は、後半は頭が痛くなったのでは!?(その前に、画面とじちゃったかも!?)

企業価値評価って計算も複雑なので、みなさん嫌厭しがちなんですね。しかし、M&Aをする上では避けて通れないところでもあるので、ぜひ(我慢しながらでも)何度も読み返していただきたい内容でした。

というのも、企業価値評価って別にM&Aにだけ使うものではないからなんですね。

そもそもM&Aって何ですかね? M&Aってビジネスへの「投資」ですよね?

会社や事業を買収して、利益を上げてM&A費用を何年で回収して更に利益を上げていくっていう「投資」なわけですよね?この、ビジネスへの「投資」って、何もM&Aの話だけではなく、「事業規模拡大」や、「新規事業」も当然、事業投資なわけです。

事業拡大や新規事業を始める時って、やみくもに始めませんよね?事業計画やらなにやら作成して、綿密に計画を練って実行しますよね。では、その投下資本の金額って、どうやって決めますか?

「予算枠内」と一言で片づけてしまえば、それまでですが、おおよそでも投下資本の金額を読んでおくことに越したことはないのでは?そのためには、「計算」って、非常に重要だと思うんですね。

例えば、新規事業を始める際、上場企業の数字を用いてマルチプル(倍率)を計算しておいて、新事業が目標とする売上や利益を見積もっておけば、

「この新規事業は3年程度で回収できそうだ!」

など、大まかな投資回収期間などもわかってくるわけですよね?(利益か投資回収期間など、何を逆算するかで状況も変わってきますが)

算定された数字が目標としている利益や投資回収期間に見合わない場合は、投資計画のどこかを修正しなくてはいけないですし、どうしても目指す数字にならない時は、撤退と言う投資判断も下せるわけです。

M&Aも同様で、目標としている利益や投資回収期間に見合わない場合は、見送ることもあるわけです。

また、M&Aで買収するか、自社でイチから立ち上げるかの比較材料にもなりますよね。

そのためには、企業価値の評価方法はマーケットアプローチであれ、コストアプローチであれ、知っておいていただき、精度の高い投資判断をしていただきたいと思います。

この点、よくよく思うのですが、「机上の空論」って案外大事だったりするわけですよね。

さてさて、話が投資の方にずれてしまいましたが、M&Aに戻しますね。この記事が投稿されているサイトがバトンズさんと言う事もあり、小規模M&A(スモールM&A・マイクロM&A)に興味のある方が多く閲覧されていると思います。

 

【参考記事はこちらから】

▼スモールM&AとマイクロM&Aとは?両者の違いとメリット・デメリットを解説
▼【完全攻略】事業承継とは?

突然ですが、

小規模M&Aの取引価格ってどうやって決定しているか分かりますか?

小規模M&Aの企業価値評価の実態って気になりませんか?

売り手も買い手もこの部分って結構気になる方が多いと思うんですね。ということで、今回のワンポイントアドバイスは「【驚愕!】小規模M&Aの取引価格はどうやって決めてるの?」を解説していきます!

 

 

【驚愕!】小規模M&Aの取引価格はどうやって決めてるの?

ではでは、小規模M&Aの取引価格の決定方法について解説していきましょう!

今回解説するポイントは以下の3つです!

①これが王道!相対取引!
②一般的には年倍法!
③業種によっても企業価値評価がちがう!

それでは順に、ご説明しましょう!

 

①これが王道!相対取引!

当然のことながら、小規模事業は上場されているわけではないので、売り手・買い手、当事者同士が話し合い、取引価格が決定されます。つまり、「相対取引」です。
(ちなみに相対取引の対義語は、市場取引:株式市場における、需要と供給のバランスにより、価格が決定されます。)

そもそものところ、売り手が自社や事業の売却を検討し、M&Aマッチングサイトなどで買い手を募集する際は、サイトに案件登録をするわけなんですけど(この登録情報を「ノンネームシート」と言います。)、一旦は、売り手が売却したい価格、つまり「売却希望価格」を提示するわけなんですね。(ご自分でおおよその売却価格が見当もつかない場合、「応相談」という登録も可能です。)

 

【参考記事はこちらから】

▼「ノンネームシート」と「企業概要書」とは?M&Aアドバイザーが詳しく解説

その案件登録情報を買い手が見て、アプローチ(マッチング)してくるわけで、そこで両者が、その売却希望価格に納得すれば、それで決定します。

かなり雑にいうと、売り手が、

この価格で売りたい!

 

に対し、買い手が、

その価格で買います!

 

と言ってしまえば、成約と言うわけです。

もちろん、売り手側の資料の閲覧や、トップ面談の交渉経緯、金額以外の条件、そして、デューデリジェンスの結果などを緻密に精査し、最終決定されるので、上記のように単純にはいきません。

しかし、小規模M&A(スモールM&A・マイクロM&A)のほとんどのケースでは、売り手と買い手が合意した金額で、成約されます。

「小規模M&Aってなんて雑な取引なんだ!」

と、驚かれた方もいるでしょうけど、これには小規模M&A特有の事情もあるからなんですね。

小規模事業では、赤字や借入金過多、債務超過はかなり散見されるんですね。しかし、小規模事業って、あえて税金対策で赤黒トントンにしたり、金融機関のお願いセールスで、多額の借入金をしていることが一般的なんですね。

そういった事情もありますし、そもそも、株主は社長(と奥さん)だけなどの場合、決算書をよく見せる必要もないわけですよね。つまり、そもそものところ小規模事業の決算書自体、経営実態から乖離している事が多く、M&Aを実行するには不向きなわけです。

にもかかわらず、杓子定規に様々なアプローチで企業価値評価をしても、価格が付かなくなってしまうんですね。

赤字だからダメ!

借入金が多いからNG!

などなど。

これでは、小規模M&Aの成約なんてできなくなるわけですよ。しかし、事業の魅力は数字上だけのものではなく、ノウハウや権利、人員、取引先、顧客、立地など、帳簿には反映されない要素ってかなりあるんです。

こういった事情もあり、小規模M&Aの取引価格は、帳簿の数字から機械的に算出されるのではなく、その会社や事業特有の事情を鑑みながら、売り手と買い手が交渉し、両者納得のいく価格で決定されるというわけです。

とはいえ、これだとあまりにも価格決定が雑すぎますよね。両者が納得するにも、取引価格には何かしらの根拠がないと、さすがに交渉にならないですよね。そのためには合理的に見積もられた何かが必要です。

次のセクションに行ってみましょう!

デューデリジェンスについて詳しく知りたい方はこちら▼
債務超過について詳しく知りたい方はこちら▼

 

 

②一般的には年倍法!

今回のテーマが「マルチプル法」でしたけど、小規模M&Aの取引価格の決定には「年倍法」を採用するのが一般的ですね。

年倍法とは、時価純資産に営業利益の1~5年分(相場としては3年分)を上乗せした
価格を取引価格とするものです。

▼年倍法の計算式

・年倍法による取引価格=時価純資産(※1)+営業利益の1~5年分(※2)

※1簿価純資産を使用する事もあります。
※2ここがいわゆる「のれん」と言われる部分。

上乗せされる営業利益は3年が相場。減価償却費や譲渡する事によりコスト削減(役員報酬や接待交際費、旅費交通費など)がある場合は、それを反映させた「修正営業利益」を使用する事が一般的。

時価純資産をベースに利益を加算して見積もることから、コストアプローチとインカムアプローチの合いの子みたいなイメージですね。

計算方法も簡便なので、好んで活用される企業評価方法となっていますね。まあまあ、これも1つの評価方法に過ぎず、他にもいろいろあるわけです。年倍法も良いですけど、企業や事業ってその業種特有の事情もありますよね。

これが年倍法に反映されているかと言うと、やはり疑問!

それを埋めるには??

次行ってみましょう!

 

③業種によっても企業価値評価がちがう!

年倍法のセクションでもお話しした通り、業種特有の事情もあるわけですね。

取引価格を合理的に決定するためには、その業種やジネスモデルにおける事情に即した形で反映させる必要があるんですね。

例えば、各業種の企業価値評価の根拠となるものを列挙すると、

業種 企業価値評価の根拠
学習塾 生徒数×平均月謝・講師数
運送業 運搬車の台数・ドライバー人数
調剤薬局 処方箋枚数・有資格者数
IT企業 エンジニア人数とスキル・実績
税理士事務所 顧問先数・従業員数・有資格者数

こういったものが挙げられます。

これ何にスポットを当てているかと言うと、

「売上・収益の源泉になるもの」

なんですね。学習塾で言えば、生徒数と平均月謝はもちろん売上ですし、講師数についても、教える人が不足していれば、売り上げが伸ばせません。

変わり種で言うと、IT企業ですね。ほぼ、人材にスポットを当ててますよね。なぜならば、優秀なエンジニアが多く在籍していればいるほど、高単価な仕事を受注できる可能性が高くなりますし、納期も短縮できるからです。

小規模M&Aでは、年倍法が一般的と説明しましたけど、業種やビジネスモデルに焦点を当てた企業価値評価の方が、より実態を反映した価値評価と言えますよね。

年倍法よりもまずはこの方法を優先して、企業価値評価をしてみて下さい。

それが、売り手・買い手の双方が納得のいく取引価格になりますから。

 

 

今回記事の「まとめ」の「マトメ」

以上、「【驚愕!】小規模M&Aの取引価格はどうやって決めてるの?」を解説しました。

企業価値評価で、一番の肝となる部分は「業種やビジネスモデル特有の事情を反映させる」。

これに尽きると思うんですね。

決算書の数字で全て決めてしまうことももちろん合理的と言えますが、事業は小規模であれば小規模であるほど、会社固有の事情もあり、この点も加味した企業価値評価を行う事が、一番だと感じます。

取引価格は相対取引で決めると言う事は、自由度は高くなりますが、決して勝手気ままに決定して良いというものではありません。

この点、気を付けながら友好的な交渉をしていただけたら、M&Aアドバイザーとしても本望です。

案件に応じた企業価値評価方法がどうしてもわからない場合は、無理せずM&A専門家に業務を依頼しましょう。

【M&Aアドバイザーについてはこちらから】

▼M&A支援専門家一覧

今回のワンポイントアドバイスでは、「【驚愕!】小規模M&Aの取引価格はどうやって決めてるの?」について解説しましたが、今後もM&A実務に即したネタをご紹介しますので、これからもご覧いただけますと幸いです。

また、この記事が良かったなと感じたら、SNSでのご紹介をお願いします!

最後に、みなさまのM&Aが、安全にご成約されることを心よりお祈り申し上げます。

 

また次の記事でお会いしましょう!

それでは!

 

 

 

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