M&Aを検討する際、多くの経営者はM&A仲介会社やFA(ファイナンシャル・アドバイザリー)などの「M&A専門会社」へ依頼を考えることが多いと思います。
実際にバトンズが実施した調査によると、「M&Aマッチングサービス以外で今までにM&Aを実施・検討した上で利用したサービスすべて(複数回答可)」において、M&A支援専門家に依頼したと答えたのが45.7%を占めていました。
そのようななか、「検討はしているけれど手数料がいくらになるのか」「最適な相手が見つかるのか」といった不安をお持ちの経営者向けに、M&A専門会社の手数料の相場や専門会社別にみた特徴・メリットなどをご紹介します。
M&A専門会社に依頼するときの費用・手数料相場
M&A専門会社に依頼するときの費用や手数料は、主に「成功報酬」と「その他の手数料」に分けられます。成功報酬やその他手数料の相場や概要を見ていきましょう。
費用のほとんどは成功報酬(レーマン方式)
M&A専門会社への依頼でかかる手数料は、成功報酬が大きな割合を占めます。
成功報酬とは、M&A成立時の取引金額の大きさに応じて発生する報酬です。大抵は各社が設定している「料金率◯%」の数値に、M&Aで得た取引金額を乗じて計算します。
M&A専門会社における成功報酬の計算は、レーマン方式と呼ばれる報酬体系での計算がほとんどです。レーマン方式とは、「M&Aで生じた売却益」や「企業株価の価値」などの基準額に、定められた手数料率を乗じて計算する方法を指します。
レーマン方式の料金率は次のとおりです。
取引金額 | 手数料率 |
---|---|
5億円以下 | 5% |
5億円超~10億円以下 | 4% |
10億円超~50億円以下 | 3% |
50億円超~100億円以下 | 2% |
100億円超 | 1% |
算出方法は少し複雑で、たとえば取引金額が51億円だったときは「5億円までは5%、5億1円から10億円までは4%、10億1円から50億円は3%、残り1億円は2%」で計算します。計算式は、次のとおりです。
51億円の成功報酬は、1億6,700万円です。
算出元となる取引金額にどの数値を使うかは、依頼先によって異なります。移動した総資産額ベースや株式価格ベース、企業価値ベースなどがあるので、事前にチェックしておきましょう。
なかには、M&A総合研究所やINTEGROUP(インテグループ)のように、成功報酬のみが費用となる「完全成功報酬制」を取るM&A専門会社も存在します。
細かい手数料一覧
成功報酬以外にM&A専門会社への依頼にかかる手数料をご紹介します。
着手金
着手金とは、契約が成立したときやM&Aに関する調査を開始するときに発生する手数料です。M&Aの最終的な成否に関係なく支払います。イメージとしては、プロスポーツ選手の契約金や賃貸の礼金などが近いでしょう。
相場は50万円~300万円程度で、業者によっては無料であったり、成功報酬に組み込まれていたりします。
月額報酬(定期顧問料・リテイナーフィー)
月額報酬とは、M&A専門会社や専属アドバイザーへ毎月支払う手数料です。顧問弁護士・税理士への依頼料が、イメージとして近くなります。
相場は、月額30万円~200万円程度です。性質上、交渉が長引けば長引くほど支払う金額が上がります。
中間報酬
中間報酬とは、譲渡企業と譲受企業の双方が「基本合意書」を締結したときに発生する手数料です。
M&Aの取引では、最終的に売買が成立する前に、これまでの交渉の内容や今後実施することを「基本合意書」としてまとめます。基本合意書の役割は、最終契約に向けてスムーズな進行と拘束力をもたせることです。
M&Aの交渉では、基本合意までで「一定の成果が出た」と見なされ、事業者にインセンティブとして金額を支払うことが一般的です。性質上、第一次成功報酬と呼ばれることもあります。
相場は約50~200万円、業者によっては成功報酬の10~20%です。
デューデリジェンス費用(企業調査手数料)
デューデリジェンス費用(企業調査手数料)とは、M&Aに関するさまざまな分析や調査を行って評価する、「デューデリジェンス(DD)」という作業に対して支払う手数料です。
もしもこの費用を出し渋ってデューデリジェンスを疎かにすると、企業の正確な分析ができずにM&Aが大失敗に終わるかもしれません。非常に重要な手数料といえます。
相場は10万円~100万円ですが、着手金や月額報酬のなかに含まれているケースも多いです。
手数料を支払ってでもM&Aをプロに依頼すべき理由
M&Aの相談をする際は、M&A仲介会社やFAなど、M&A専門会社への依頼をおすすめします。
M&Aの専門家に依頼せず相対で交渉する方もいますが、M&A後のリスクを見落とす可能性が非常に高く、想定外の費用や損害が発生しトラブルとなってしまったケースが多数見られます。そうしたトラブルを防ぐためにも、M&Aに精通したプロから適切なアドバイスとサポートを得ながら交渉を進めましょう。
ここからは、「なぜM&A専門会社に依頼すべきなのか」について詳細を見ていきます。
①M&Aは専門性の高い領域である
M&A領域の業務は、検討、分析、評価、交渉など、すべてのフローにおいて高い専門的知識が必要です。
とくに、分析にあたるデューデリジェンスを実施するには、税理士や弁護士、中小企業判断士など専門家レベルの知識や経験が求められます。
<デューデリジェンス(DD)の種類の例>
・ビジネスDD:事業の強みや弱み、リスクなどを分析
・財務・税務DD:企業価値評価に必要な収益力、資本や資産などを分析
・法務DD:株式や取引先関係などの法務的リスクの洗い出し など
M&A専門会社は、これまでの実績と経験から、デューデリジェンスを加えたM&A全体に精通しているため対応可能です。これは、M&A専門会社の大きな強みといえます。また専門家に依頼することで、M&A後に発生し得るリスクを発見できる可能性が高くなります。
さらに専門家に依頼しデューデリジェンスを行うことで、最終契約後に訴訟等の大きなトラブルになるのを防ぐ効果があるだけでなく、M&A後に発覚したトラブルによる損害も補填することも可能です。
②適正価格で事業を売却しやすい
M&A専門会社に依頼することで、専門家による第三者目線と客観的評価を得られるため、適正価格での売買が成立しやすくなります。
前述のとおり、企業を適性に評価するには、財務や税務、法的リスク、ビジネスモデルなどを分析したのちに正確に評価をしなければなりません。
しかし、売りたい側はより高く、買いたい側はより安く取引したいという思いがある限り、相手を騙したり損失を隠したりなどの不正が出る可能性もあります。
多くの経験や知見を持つM&A専門会社であれば、希望価格と同等かそれ以上の利益を挙げられるでしょう。
③経営者が本業に集中できる
M&Aの成立には、長いときで1~2年以上の時間が必要です。その間、経営者は本業の傍らで分析や検討、交渉などの作業を進めなければなりません。
そこで、M&A専門会社に依頼することで経営者は本業に専念できます。その間に自社の経営戦略を練り直したり、企業価値を上げたりなどの戦略を実施すれば、より高いM&Aの効果が得られるでしょう。
失敗しないM&A専門会社の選び方
M&A専門会社と一言でいっても、世の中には多くの事業者が存在しています。実力に見合わない料金を請求したあげく、適切な業務を行わない事業者やアドバイザーの存在も否定できません。実績はもちろんのこと、さまざまなポイントでの検討が必要です。
ここからは、失敗しないM&A専門会社の選び方をご紹介します。
自社の業界を得意分野としているか
M&A専門会社といっても、得意とする業界や職種、規模などの属性によって違いがあります。「自社の業界を得意分野として精通しているのか」を見るのが、M&A専門会社の選び方のコツです。
・中・小規模企業の実績
・○○業界、○○関係のM&Aの実績◯件以上
・業界特化型か、全業界向けの非業界型か など
自社のビジネスモデルの実績や経験が豊富な専門家に依頼できるかによって、より高い成果を得られるでしょう。
専門家・経営者とつながっているか
M&Aに強いアドバイザーでも、法務や税務関係に特化した専門性を持っているのかは未知数です。各業界のエキスパートが在籍しているかもM&A事業者選びのコツです。
・税理士や会計士、弁護士などの士業
・各業界のエキスパート
・東京や大阪、その他地方特化の経験 など
在籍していないときは、士業事務所や企業などと業務提携を行っているかをチェックします。また、依頼先が「どのくらい経営者とのパイプを持っているか」も指標のひとつです。多くの経営者とつながっている事業者であれば、そのネットワークを駆使して最適なマッチングをサポートしてくれます。
料金体系は明確か
どの業務にどれだけ料金がかかるのかを明確にしている事業者を選びましょう。料金体系が曖昧だと、後出しで料金を請求されたり、成功報酬に不当な手数料率を使われたりなどのトラブルになるリスクがあります。
どの料金体系を選べばよいのか判断が不明であれば、まずは各社に無料の問い合わせを行なってみることをおすすめします。
手数料や実績を見て適切なM&A専門会社を選ぼう!
M&Aを検討する際は、手数料や実績を見つつ適切なM&A専門会社を選びましょう。適切な情報を集めて比較検討することで、M&Aにおいて予想以上の成果を挙げられるはずです。
選ぶ際は「自社業界の実績」や「専門家や経営者とのつながり」「料金体系」に注目することをおすすめします。
もしも「それでもまだ不安…」と感じるときは、バトンズの無料相談にて一度相談してみてはいかがでしょうか。
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