M&Aにおけるレーマン方式とは?小規模M&Aとの違いなどを詳しく解説
2022年10月17日
2022年10月17日
レーマン方式は、M&Aの仲介およびアドバイザリー会社において報酬額を計算する際に一般的に使われている計算方式です。広く利用されているレーマン方式ですが、報酬基準額の決め方についてはいくつかの方式がありその基準によって大きく金額が変化します。
また、小規模M&Aにおいては、一般的なレーマン方式を基準としながらも移動する資産の額が小さいこともあり、最低報酬額等を基準としながら各アドバイザーによって個別に金額の設定されている場合が多いです。
本記事では、そのような一般的なレーマン方式の説明と、小規模M&Aにおけるレーマン方式の適用についてと分けて説明したいと思います。
レーマン方式は、総資産額等の算定基準額に対して、料率をかけて手数料を求める方法です。算定基準額そのものの算定についてはいくつかの方式があるほか、料率についても算定基準額によって段階的になっており、算定基準額が高いほど料率が低くなる基準となっております。
(一般的なレーマン方式の表)
| 算定基準額 | 料率 |
|---|---|
| 5億円以下の部分 | 5% |
| 5億円超~10億円以下の部分 | 4% |
| 10億円超~50億円以下の部分 | 3% |
| 50億円超~100億円以下の部分 | 2% |
| 100億円超の部分 | 1% |
レーマン方式の算定基準額についてはいくつかの種類があります。
株式の価値基準については、譲渡する株式の価額をベースに算定される基準となります。一番シンプルな方式ですが、株式譲渡対価の一部を退職金とする場合などは算定基準額に加算となるので注意が必要です。
こちらの方式は中小企業の実態に即した基準であると考えます。上記株式の価値基準に加えて役員借入金や、売り手所有の不動産の譲渡などがある場合に算定基準額に加算されます。
株式の譲渡価額に加えて有利子負債を加算した金額が基準となります。上記オーナーの受取費額基準では有利子負債のうち役員借入金などを基準としていましたが、それらに加えて金融機関等からの借入金も加算することとなります。金融機関の借入が多い場合については高額な報酬となる場合もあるので注意が必要です。
株式の譲渡価額に加えてすべての負債を加算した金額が基準となります。上記企業の価値基準では負債のうち有利子負債を基準としていましたが、それらに加えて買掛金などすべての負債を加算することとなります。今までの方式のなかで最も高額になる報酬となる場合が多いので注意が必要です。
ここまでが一般的なレーマン方式の説明となります。
次に小規模M&Aにおけるレーマン方式の適用についてです。
レーマン方式では、ある一定以上の規模の組織再編等を含むM&Aを前提としています。その場合、企業の収益力向上の源泉となる移動する資産を算定基準額として手数料を算出する方式は妥当性があると考えます。
ただ、小規模M&Aはどうでしょうか。事業規模や移動する資産の額が少額になるため、移動する資産に対して手数料を算出するという方式が適さないケースが発生します。
ここで大事になってくるのが最低報酬額の設定です。
小規模M&Aについては、上記の一般的なレーマン方式の表では当てはまらないケースがほとんどで、最低報酬額を基本に報酬を設定することになります。
注意したいのは、最低報酬額の設定についてはアドバイザーによって各社違いがあるという事です。
大手仲介会社だと2000万前後、小規模M &Aを専門とする所だと200万前後で設定されていることが多いと思います。ひとえにM&Aの仲介会社といえど扱う案件の規模が異なりますので、アドバイザーを選定する際に最低報酬額は一定の目安になると思います。
小規模M&Aにおける実際の報酬額の提示については、最低報酬額を基本として案件の規模や、対応する範囲、状況等による難易度などによって、担当アドバイザーとの交渉によって決められるケースが多いです。
先ほど最低報酬額の相場が、大手仲介会社だと2000万前後、小規模M &Aを専門とする所だと200万前後と述べましたが、取り扱う案件の規模が1/10になれば、その案件にかかる手間も1/10になるかと言えばそうはなりません。
具体的に、後継者不在案件を例として考えてみましょう。
小規模M&Aを検討する場合、売り主の一番の関心事は将来の廃業リスクです。後継者不在などの状況の場合、自分自身の健康や年齢によっては将来廃業しなければならない可能性が高く、廃業に関わる費用・手続き・取引先・従業員への影響・金融機関等の借入の個人保証等、諸々のリスクやコストが生じるということを意味します。
そういった背景の場合、売り主の関心事は譲渡金額もさることながら、今の事業を継続して実施してくれる相手という点を重要視する可能性が高くなります。ただし、条件を整理したうえでそれに見合った相手を探すという点においては、案件の規模が1/10であろうが手間が1/10になるということにはなりません。そのため、実際の実務においては案件規模の大小に関わらず、手間としてはほとんど変わらないというのが現実です。
レーマン方式の算定基準である移動する資産の額が少額であるにも関わらず、最も重要で手間がかかる、移動する資産以外の部分は同じようにコストとしてかかってくるため、小規模M&Aにとっては相対的に大きなウェイトを占めるということになります。
次に、買い主の立場としては小規模M&Aはどのような考え方で実施しているのでしょうか。
自分で創業するよりは既にある事業を買いたいといった、実質的には創業を意味するケース、既に事業は展開しているが新しい事業への参入のため、もしくは同事業で他の地域へ展開するため、等の理由となります。
この中でも最近増えているのが実質的に創業のための買収であるというケースです。新たに創業するよりも、費用もしくは、時間を短縮することができ創業のリスクを減らすことができると考える場合です。その場合は、買収しようとする事業について、これから自分で創業した場合の費用や時間を勘案して比較します。また買収した企業に対しての伸びしろなどを調査して、自分自身が加わった時にどの程度シナジー効果が見込まれるかを勘案します。これにアドバイザーの費用を加味して自分で創業するよりもメリットがあるかどうかということが関心事になります。
・売却する立場
希望の売却金額だけではなく、M&Aによって将来発生するであろう廃業のコストやリスクをどれだけ回避することができるのかといったことが関心事になる。
・買収する立場
新たに創業する場合と比較してどれだけメリットがあるかを勘案する。新たに創業する場合のリスクと買収する事業に潜むリスクを勘案する。また買収する場合、自分自身が経営に加わることでどの程度シナジー効果が見込まれるかが関心事となる。
これらの売却する立場と買収する立場のそれぞれの思惑を汲み取って進めなければなりません。売却する立場には、M&Aで実現されるメリットを提示しつつ、その条件で買収する立場においてもメリットが生じるよう、細く狭い解決口を見出すことがM&Aアドバイザーに求められる役割と言えます。
レーマン方式では、基本的な考え方として移動する資産の額によって貢献度を測定するという考えが元になっていますが、小規模M&Aでは移動する資産の額が小さいため、相対的に移動する資産の額以外にかかるコストのウェイトが大きくなるということが生じます。
その結果、成約に最も重要な部分であるにも関わらず、アドバイザーにとっては重要な部分が報酬に繋がらないという事になってしまいます。これは、レーマン方式では移動する資産の額以外の部分を測定する方法がないため生じてしまう事象です。
小規模M&Aではこういった移動する資産以外のことに関する調整というのが、成約に向けて非常に重要な要素となることは間違いありません。売り主や買い主にとっては、提案するアドバイザーが移動する資産以外の部分にどのように寄り添ってくれるのか、そこの見極めが成約に向けて大きなポイントになるでしょう。
小規模M&Aでは移動する資産自体が少額であるため、相対的に移動する資産以外の部分に関する事が成約に向けて大きなウェイトを占める事になります。よって移動する資産を算定基準とするレーマン方式は適さず、最低報酬額をベースに個別に設定されるケースが多いです。小規模M&Aにおいては、レーマン方式で算定基準とされている移動する資産ではない部分が成約に向けて大きな鍵となってきます。
売り主や買い主にとって移動する資産以外の事に関してどのように寄り添ってくれるのか、またどのような提案をしてくれるのか、といった点が小規模M&Aにおける良いアドバイザー探しのポイントとなるかもしれません。
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