M&A
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2020/05/17

事業再生とM&A(1) (今後急増する)事業再生とは?

記載者情報
今後増える事業再生
新型コロナウィルスの感染拡大、これに伴う緊急事態宣言・営業の自粛により、多くの企業や市民に影響が出ています。 当社にも、資金繰りが難しくなり、「借金の返済の停止(借金カット)」「コロナ緊急融資」などの深刻な相談が入ってきています。リーマンショック後の回復で比較的経済活動は好調でしたので、「後継者不足による廃業」が問題になっていましたが、ここにきて「経営(資金繰り)悪化による倒産・廃業」がクローズアップされてきています。 今回の政府の対策により、一時的に運転資金を得ることができても、市況の回復が進まない場合、この借入金が重荷になってより深刻な状態になる企業が増えてくることが予測されます。この時は、金融機関との調整が必要になりますが、計画がなく場当たり的に、あるいは金融機関の言いなりで進めると、残せる財産も根こそぎ手放す不幸なことになります。 事業再生の出口戦略の一つとして「M&A」があります。今回、「事業再生とM&A」について、3回シリーズで紹介します。第一回目は、「事業再生とは?」です。
事業再生とは?
事業再生とは、企業が経営状態の良くない事業の立て直しを図ることをいいます。単一の事業しかない場合(特に中小企業)は会社全体の立て直しになります。 具体的には次の状態の場合に検討が必要です。 ・赤字が継続している ・急激に受注が減少した ・債務超過に陥っている ・銀行への借入金・利息の返済が苦しくなっている、払う目処が立たない ・仕入先へ支払う買掛金を遅らせてもらっている ・従業員への給料の支払が遅れている ・税金、社会保険料などの支払いが滞っている ・役員報酬(社長の給料)が払われていない  など
事業再生の種類
事業再生は、進め方により次の3つに分類されます。 1 債務(借金)整理を含む「自力による事業再生」 2 「M&Aによる事業再生」 3 「廃業による事業再生」:倒産は避ける 実際には、気付いた時には、いつ倒産してもおかしくない状態の場合が多く、これらをじっくりと実施することが難しく、まずは、外科手術的な対応(支払を一時的に止めるなど)を行ってから、上記を実施します。対象の企業の経営状況によりますが、各方法の組み合わせで進める場合があります。 事業再生の目的は、倒産、廃業を回避し、自力再生またはM&Aに持って行くことです。 1 自力による事業再生 事業の再構築(販路再検討・生産性向上など)を行って計画的に経営状況を改善する方法です。 この場合、資金が不足する場合、銀行などからの借入金、仕入代金、税金などを交渉により支払を遅らせ、遅らせた分の資金を運転資金に回すことも実施します。また、経営に影響を与えない資産を売却して資金を得ることも検討します。 内部のメンバーだけでは現状分析が不十分、効果的な改善策が得られない場合が多いので、当社のような経営コンサルタント会社や中小企業診断士などの専門家の力を使って実施することが効果的です。この場合、専門家への報酬の支払は国の補助金(経営改善計画)が使用できる場合があります。 2 M&Aによる事業再生 スポンサーに会社や事業を購入してもらう(M&A)方法です。 債務(借金)がある場合、将来性がある事業部分を譲渡(売却)し、債務は元の会社で処理する方法があります。状況によっては債務を含んで購入してもらえる可能性もあります。 3 廃業による事業再生 廃業による事業再生は、上記2つの方法が実践できない場合に会社の清算を図るものです。この場合、経営者の個人資産を保全するなどの損失が少ない形で行うことが重要です。 次回は、事業再生とM&A(2)「M&Aによる事業再生の方法・手順」を紹介します。
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