M&A
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2020/05/10

事業承継の3類型

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事業承継の現状
中小企業の経営者の高齢化が進み、現在、多くの中小企業が事業承継の時期を迎えています。 2019年12月、経済産業省によると、2025年に70歳を超える中小企業経営者が「245万人」になり、そのうち半数は後継者未定という厳しい状況です。 政府は、後継者未定企業(約120万者)の約半数の「60万者(黒字企業を想定)」を今後10年間に「M&A」による承継を行うことを目標にしています。年に「6万者」という非常に高い数値です。なお、直近の1年間で「4,000者」なので、10倍以上を目指しています。 当然、「M&Aに関係するコンサルタント」を増やしていく必要があります。1人が年間6件を成立させても、「10,000人」のコンサルタントが必要になります。 今回は、事業承継の「3つの類型」のメリットを紹介します。
親族内承継
現経営者の子をはじめとした親族に承継させる方法です。 メリットとしては次のことが挙げられます。  ・他の方法と比べて、内外の関係者から受け入れられやすい  ・後継者の早期決定により長期の準備期間の確保が可能である  ・相続等により財産や株式を後継者に移転できるため、所有と経営の一体的な承継が期待できる ここ数年は、事業承継全体に占める親族内承継の割合が急速に落ちてきています。 子供がいない場合もありますが、いても「事業の将来性や不安定な経営」に対する不安があり、より安定な職業につくケースが多くなっています。 経営者である親も子供に苦労させたくないという気持ちもあります。
親族外承継(役員・従業員)
「親族以外」の役員・従業員に承継する方法です。 メリットとして、次のことが挙げられます。  ・経営者としての能力のある人材を見極めて承継することができる  ・社内で長年働いてきた従業員であれば経営の一貫性が保ちやすい 親族内承継の減少を補うように、親族外承継の割合は近年増えてきています。 これまで親族外承継の課題であった「資金力問題」については、次の点で緩和されてきたことによります。  ・種類株式や持株会社、従業員持株会を活用する方法の浸透  ・親族外の後継者も「事業承継税制」の対象になったこと
社外への引継ぎ(M&A)
株式譲渡や事業譲渡により「第3者」に承継を行う方法です。 メリットとしては次の点が挙げられます。  ・親族や社内に適任者がいない場合でも幅広く候補者を外部に求めることができる  ・現経営者は、会社売却の利益を得ることができる M&Aは過去は大企業が中心でしたが、近年は中小企業の後継者の確保の難しさから中小企業・小規模事業者でも増加傾向にあります。 中小企業のM&Aを手掛ける民間仲介業者が増えてきたことや、国の事業引継ぎセンターが全国に設置されたことも増加の要因になっています。中小企業・小規模事業者のM&Aでは、ネットを使ったマッチングが増えてきています。 M&Aの場合、受け継ぐ側が価値を見出さないと成立しなく、現経営者が利益を得ることができません。 そのためには、計画的に企業価値を高めておく必要があります。
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