PMI
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2024/09/30

買い手様による中小企業PMIの要諦①:Pre-PMIの概要

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PMIとは?
PMI(Post Merger Integration)とは、M&A後における経緯統合を意味する略称です。 近年、中小企業M&A件数が増加すると共に、M&A後の経営統合であるPMIについても徐々に注目されております。 しかしながら、PMIはいわば企業経営・事業運営そのものを意味することでもあるので、M&Aプロセスの様に「型化」されていない状況です。 故に、PMIに関する手法はM&Aに比べて確立しておらず、M&A前後でPMIについて、どのように「買い手は動くべきか?」を知ることは、大変有意義であると考えます。 本稿では、PMIを見据えて、M&Aプロセス中に実施する「Pre-PMI」について解説いたします。
Pre-PMIとは?
Pre-PMIとは、M&Aプロセス中に実施するデュー・ディリジェンス(DD)の一つです。 事業DDを通じて予めPMI論点をあぶりだし、必要なアクションやコストを見積もることをゴールとしたDDを意味します。 Pre-PMIの結果は、最終的な買収価格の見積もりや買収条件(前提条件や表明保証)の設計にも影響を与えます。 従って、M&Aプロセス自体にも非常に重要な役割を果たします。 「事前にこの論点に気づいていれば良かった」「買収後に予想以上にコストが掛かる」「システム導入や人材採用が想像以上に必要となる」などが典型的な事後的発見事項です。 M&Aの成功率は30%程度であるという旨をご存じの方も多いと思料しますが、その内容を分解すると、事業DDであるPre-PMIの工程を疎かにしている場合が散見されます。
Pre-PMIの実施方法の概要
Pre-PMIの実施方法について、簡易的な内容を以下に記載いたします。 主に「守りの論点(=事業承継)」について記載いたします。※攻め(=事業成長)の論点については、別記事にてご案内申し上げます。 ■買収対象のケース ・従業員が30名以下の場合 → この組織規模ですと、対象会社の経営者が重要な意思決定を全て実施しており、日常業務における「方針の指示」や「従業員の疑問解消」などの多くを担っている可能性が高いです。 ■日常業務(直接業務)に関する分析(=オペレーション分析) ・仕入→(支払)→製造→保管→営業→輸送→(入金)という「モノ」「カネ」「ヒト(社内)」「ヒト(社外:重要仕入先・重要販売先・重要委託先)」の流れについて全般的に質問を実施します。 ・対象会社からの回答内容に基づいて、「社長が対応している仕事(=難しい仕事)」と「従業員が対応している仕事(=通常業務)」に分けるための質問を実施します。 ・買い手企業は「上記の難しい仕事」を任せられる人材は自社に存在するかどうか、新しく採用できるかどうか、などの買収後の組織について想定することが可能になります。 ■日常業務(間接業務)に関する分析(=マネジメント分析) ・経理業務:経理システムのヒアリング・月次決算の実施有無・経理人材(誰が・専任もしくは兼務・買収後も継続するか否か) ・財務業務:仕入先・業務委託先・経費の支払に関する業務の流れの確認・顧客への請求書発行から入金確認、入金遅延の連絡などの業務の流れを確認 ・総務業務:仕事内容の確認・委託先の確認 ・経費確認:販管費の明細の内、上位科目の支払先について事前確認(どのような業務を委託しているのか?・代替の難しさ・社長との関係性の強さ) ・人事業務:給与水準の確認・昇給条件の確認・賞与の確認・人事評価の有無の確認・社長による従業員評価のポイントの確認 ■よくあるPre-PMIの結果のまとめ方 ・社長が担っている業務が難しいため1年間は通常通り勤務して頂くことが必要(役員報酬が1年分増加) ・経理財務は社長の親類が担っているため継続意向を確認。業務引継ぎを行う場合6か月が必要であり新しく採用が必要(人件費が増減) ・対象会社の顧問税理士はフェードアウトしてもらうものの、自社の顧問税理士費用がアップする可能性あり(税理士費用が増減) ・社長が担っている直接業務は1名では難易度が高く代替できないので、2名ないし3名の採用が必要(人件費が増減) ・労務管理がシステム化されておらず、未払残業代も発生している(システム料増加・想定人件費の増加) ・重要仕入先・重要販売先・重要委託先への買収後の挨拶の有無(手紙の送付・面談の設定・先方の取引上の不安のヒアリングなど) →コツ:社長が実施や判断を下している仕事を「直接業務」と「間接業務」に分解し、買収後(社長が離反した後)に買い手企業として困ることをリストアップする。その後、必要な人材やシステムなどをおおざっぱに見積り、その分をコスト増として保守的に見積もる。当該コストアップを企業価値評価に全部反映させるか、一部を反映させるかを買い手企業として判断する。 PMIはケースバイケースになりますが、どのようなM&Aでも上記の様なフレームワークで分析・見積もりを行うことで、M&Aをより有意義なものにできると考えられます。
ご参考情報:弊社紹介
・事業理念:「M&A費用を最小に。PMI成果を最大に。」 ・事業内容:経営承継・M&A・PMIに関するファシリテーションおよび伴走型コンサルティングサービスのご提供 ・ウェブサイト:https://spotlight-biz.co.jp/ ・PMIに関する資料*(資料ライブラリ > 買い手企業様向け > Spotlight. PMI説明資料):https://spotlight-biz.co.jp/document *一切の連絡先入力は不要で資料を閲覧・DLが可能です。 ・無料お問い合わせ(月間数件程度、無料サービス提供を行っておりますので、お気軽にお問い合わせください):https://spotlight-biz.co.jp/contact
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