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カーブアウトとは?意味やメリット・デメリット、実行方法を専門家が詳しく解説

2024年01月24日

監修者
合同会社アジュール総合研究所 / 代表社員
スモールM&Aアドバイザー/ M&A支援機関登録専門家
伊藤 圭一 (いとう けいいち)
「小規模企業と個人事業の事業承継を助けたい!」そんな想いから、2019年7月に小規模事業専門のM&Aアドバイザー「スモールM&Aアドバイザー・合同会社アジュール総合研究所」を設立。

【必見!】巻末にスモールM&Aアドバイザー・合同会社アジュール総合研究所 代表 伊藤氏よりM&A実務に即したワンポイントアドバイスや注意点も掲載しています!是非、最後までご刮目下さい!

今回は、「カーブアウトとは?」について、解説します。

カーブアウトとは、企業が保有する子会社または事業の一部を切り離し、単独の組織として独立させる経営戦略のことです。企業の組織再編方法のひとつであり、近年では中小M&A市場が活発になったことから、大企業だけではなく、中小企業でも盛んに行われています。

経営戦略を策定する上で、カーブアウトも視野に入れることで、経営課題の改善にもつながる可能性もあり、今回の記事は大企業から中小企業の経営者まで幅広く読んで頂きたい内容となっています。

今回のラインナップは、カーブアウトについての、

①カーブアウトの意味
②スピンオフとスピンアウトとの違い
③カーブアウトの実行方法
④カーブアウトのメリット
⑤カーブアウトのデメリット
⑥カーブアウトの実行手順
⑦カーブアウトを実行する上での留意点

 

を中心に、解説していきます。

※今回の記事のワンポイントアドバイスでは、【重要】事業譲渡の注意点!も解説していますので、是非、ご覧ください!

 

カーブアウトの意味

カーブアウトとは、企業が保有する子会社または事業の一部を切り離し、単独の組織として独立させる経営戦略のことです。カーブアウトを行うことにより、切り離された事業は親会社や新たな出資者からの支援を受けることが可能となり、新経営陣のもと、更なる事業規模の拡大や経営改善を行うことが可能となります。

また、切り離した側の企業としても、その分、身軽となるため経営効率や収益構造の改善を行う事が可能となるのです。この点、M&A戦略としてとらえると、「選択と集中」にあたると言えます。

 

スピンオフとスピンアウトとの違い

カーブアウトと似た用語に、スピンオフとスピンアウトがあります。

それぞれの相違点について見ていきましょう。

スピンオフ

スピンオフとは、親会社との資本関係を維持したまま、企業が保有する子会社または事業の一部を切り離し、単独の組織として独立させる経営戦略のことです。

資本関係が維持されていることで、親会社の経営資源やサポートを継続的に受けることができるメリットがある一方、株式を握られているため、勝手気ままな経営はできず、企業経営は支配され続けるというデメリットがあります。

 

スピンアウト

スピンアウトとは、親会社との資本関係を解消し、企業が保有する子会社または事業の一部を切り離し、単独の組織として独立させる経営戦略のことです。

スピンアウトの場合、完全に独立した企業体となるため、元親会社の経営資源やサポートを継続的に受ける事ができなくなるというデメリットがある一方、資本関係はもうないことから、自由度の高い企業経営を行えるというメリットがあります。

 

カーブアウトの実行方法

カーブアウトの実行方法としては、会社分割と事業譲渡があります。

それぞれについて見ていきましょう。

会社分割

会社分割とは、企業が展開する事業の一部または全てを切り離し、他の会社に承継することです。また、会社分割には「吸収分割」と「新設分割」の2種類があり、案件の状況に応じて使い分ける必要がります。

詳しくは下記リンクより関連記事をご参照ください。

 

 

事業譲渡

事業譲渡とは、企業の保有する全部または一部の事業を譲渡するM&Aスキーム(譲渡形態)のことです。事業を譲渡した売主は、その代価を現金でもらい、事業を譲受した買主は、その代価を現金で支払い、譲渡対象事業の経営権を得るのです。

小規模M&A(スモールM&A・マイクロM&A)では、最も多い譲渡スキームではありますが、株式譲渡に比べると若干複雑で手間も要します。

※今回の記事のワンポイントアドバイスでは、【重要】事業譲渡の注意点!も解説していますので、是非、ご覧ください!

 

 

カーブアウトのメリット

ここでカーブアウトのメリットを見てきましょう。

財務体質の改善と経営資源の効率化が図れる

特に不採算事業を切り離した場合、切り離した元の企業の収益が回復し、財務体質が改善されます。また、中核事業のみの経営に集中特化することも可能となり、経営資源の効率化も図れることとなります。

 

切り離した事業の成長を図れる

切り離すべき事業は、何も不採算事業だけではありません。

自社の資本力だけでは、急速な事業規模拡大が難しい有望な事業を切り離し、自社と資本力のある企業の資本を投入し、切り離した事業の成長を一気に加速させることも可能となります。

 

企業グループ全体の企業価値が上昇

親会社と切り離した事業に資本関係が継続されている場合(つまりスピンオフ)、子会社となった企業の価値が上昇すれば、グループ全体の企業価値も当然高まります。

この点、数字上の企業価値だけではなく、ブランド力や競争優位性なども向上する可能性もあり、このメリットは「選択と集中」の醍醐味ともいえでしょう。

 

自由度が高く経営効率も向上する

親会社と切り離した事業に資本関係が解消される場合(つまりスピンアウト)、独立した企業は、切り離し元の企業の影響を受けることなく、自由度の高い経営を行うことが可能となります。

特に大企業からスピンアウトした場合などは、身軽になったことにより経営スピードも速くなるため、経営効率が格段に向上します。

 

カーブアウトのデメリット

次にカーブアウトのデメリットもみてみましょう。

 

許認可の引継ぎ

カーブアウトにおけるスキームに会社分割を用いた場合、許認可を引き継ぐことが可能であるため(一部許認可は再取得する必要があります。)問題がありませんが、事業譲渡を用いた場合、許認可を引き継ぐことができないため、再度取得する必要があります。

独立したものの、事業を行うために必須の許認可が取得できないとなれば大問題です。

この点、十分に気を付けるようにしましょう。

 

経営資源が分断される

カーブアウトを実行すると、「ヒト」「モノ」「カネ」をはじめとする経営資源は分断されることとなります。経営資源は企業の財産であり、それを分けることで元の企業も切り離しされた企業も弱体化しては何の意味もありません。

カーブアウトを実行する際は、「どこに」「なにを」「どれだけ」分配するかを十分に検討する事が必要であり、切り離したことによる軋轢を生じさせてはいけません。

それだけに、カーブアウトの計画は綿密に策定する必要がるのです。

 

意思決定の複雑化

スピンオフで親会社の資本関係継続と外部資本が新たに注入される場合や、スピンアウトで新たに外部資本が多く注入される場合、企業経営に影響を与えるステークホルダーが増える事となり、意思決定が複雑化するデメリットも発生します。

新たな出資者を募る場合、彼らとの経営方針がマッチしているかを入念に協議し、経営理念や将来ビジョンをはじめとする企業文化が切り離した事業に良い影響を与える先を選定し、提携関係を構築する必要があります。

この点、通常のM&Aと共通する部分であり、企業間のマッチングにおいて最も重要な論点となります。

 

カーブアウトの実行手順

カーブアウトの実行手順は以下のような流れとなります。

実行計画の策定

まずはカーブアウト実行計画の策定を行います。

カーブアウト実行計画の策定
・実行スキームは会社分割か?事業譲渡か?
・カーブアウトの目的は何か?
・切り離す資産の範囲は?
・切り離した資産を引き継ぐ会社はどれにするのか?
・実行時期はいつか?
・カーブアウト後の目標設定

 

など、綿密に計画策定を行いましょう。

 

手続き事項の把握

実行計画の策定が完了したら、具体的な手続き事項を把握していります。

手続き事項には、

・法人、役員など登記手続きの把握

・実行後の社員の待遇の決定

・COC(チェンジ・オブ・コントロール)条項の把握

・許認可、知的財産の引継ぎ方法

 

など、枚挙にいとまはありません。手続き事項に抜け漏れがないように注意しましょう。

 

適時開示の検討

上場企業の場合、カーブアウトを実行するには、情報開示をする必要があります。

開示のタイミングは、カーブアウトの実行時となることが一般的であり、これも忘れないようにしましょう。

 

カーブアウト財務諸表の作成

カーブアウト財務諸表とは、カーブアウトにより切り離した事業が、単体で事業を運営することができると仮定し、擬似的に作成する財務諸表のことです。特定の事業部門は個別に会計データ(部門別財務諸表など)を管理していることは稀であり、切り離す事業の財務状態を把握するために作成されるのです。

 

カーブアウトを実行する上での留意点

カーブアウトを実行する上での留意点もみていきましょう。

実行計画の策定

前のセクションでもお話ししましたが、カーブアウト計画の策定は綿密に行う必要がります。実行スキームはじめ手続き面においても何が必要なのかまで考え得るものは全て書き出してみましょう。

また、実行計画にはカーブアウト後のPMI(ポスト・マージャ―・インテグレーション)についても計画しておくことが望ましく、短期、中期、長期計画を意識した計画策定を実施するようにして下さい。

 

プロジェクトチームの編成

カーブアウトは、計画策定から実行、その後のケアまで非常に多くの経営リソースを費やします。特に人員への負担は大きく、カーブアウト実行のために本来やるべき業務が疎かになっては支離滅裂です。

これを防止するためには、プロジェクトチームを編成し、プロジェクトリーダーや協力者などをあらかじめ決定しておく必要があります。

この点は、計画策定前の段階で取り決めておくことで、その後の業務もスムーズに行くことでしょう。

 

知的財産の取り決め

知的財産の取り決めは非常に重要な部分となります。特許などの知的財産を、切り離した事業の受け入れ先となる企業(子会社など)にも使用させたい場合は、2つの方法が考えられます。

一つは、

実行スキームに会社分割を採用し、事業を切り離す会社と受け入れる会社で知的財産を共有する方法

と、もう一つは、

事業譲渡を実行スキームとし、事業を切り離す会社から受け入れる会社に知的財産を使用することができるライセンス契約を締結する方法

が、あります。

最適解がどちらかは、その時の状況によっても変わってきますので、熟考して決定するようにしましょう。

 

従業員・取引先への説明と配慮

カーブアウトにより転籍することとなる従業員へは十分な説明と配慮が必要になります。

これを怠ると、切り離されたのは事業だけではなく、自分もお払い箱にでもなった気分になるため、モチベーションの低下や大量離職が発生してしまう可能性さえあります。

また、取引先も同様であり、この点が疎かになるとカーブアウトを機に契約を打ち切られてしまう可能性も出てきます。

カーブアウトを実行したものの、企業として成り立たなければ何の意味もありません。通常のM&A同様、カーブアウトも「人」対「人」であるため、相手を尊重しながら実行する事が重要と言うことなのです。

 

まとめ

以上、「カーブアウトとは?」を、解説しました。

今回の内容を、おさらいしましょう。

 

①カーブアウトの意味

・カーブアウトとは、企業が保有する子会社または事業の一部を切り離し、単独の組織として独立させる経営戦略のこと。

②スピンオフとスピンアウトとの違い

・スピンオフとは、親会社との資本関係を維持したまま、企業が保有する子会社または事業の一部を切り離し、単独の組織として独立させる経営戦略のこと。

・スピンアウトとは、親会社との資本関係を解消し、企業が保有する子会社または事業の一部を切り離し、単独の組織として独立させる経営戦略のこと。

③カーブアウトの実行方法

・会社分割
会社分割とは、企業が展開する事業の一部または全てを切り離し、他の会社に承継すること。

・事業譲渡
事業譲渡とは、企業の保有する全部または一部の事業を譲渡するM&Aスキーム(譲渡形態)のこと。

 

④カーブアウトのメリット

・財務体質の改善と経営資源の効率化が図れる
特に不採算事業を切り離した場合、切り離した元の企業の収益が回復し、財務体質が改善される。また、中核事業のみの経営に集中特化することも可能となり、経営資源の効率化も図れる。

・切り離した事業の成長を図れる
自社の資本力だけでは、急速な事業規模拡大が難しい有望な事業を切り離し、自社と資本力のある企業の資本を投入し、切り離した事業の成長を一気に加速させることも可能となる。

・企業グループ全体の企業価値が上昇
親会社と切り離した事業に資本関係が継続されている場合(つまりスピンオフ)、子会社となった企業の価値が上昇すれば、グループ全体の企業価値も高まる。

・自由度が高く経営効率も向上する
親会社と切り離した事業に資本関係が解消される場合(つまりスピンアウト)、独立した企業は、切り離し元の企業の影響を受けることなく、自由度の高い経営を行う事が可能となる。

 

⑤カーブアウトのデメリット

・許認可の引継ぎ
カーブアウトにおけるスキームに会社分割を用いた場合、許認可を引き継ぐことが可能であるため(一部許認可は再取得する必要があります。)問題ないが、事業譲渡を用いた場合、許認可を引き継ぐことができないため、再度取得する必要がある。

・経営資源が分断される
経営資源は企業の財産であり、それを分けることで元の企業も切り離しされた企業も弱体化しては何の意味もない。「どこに」「なにを」「どれだけ」分配するかを十分に検討する事が必要であり、切り離したことによる軋轢を生じさせてはいけない。

・意思決定の複雑化
スピンオフで親会社の資本関係継続と外部資本が新たに注入される場合や、スピンアウトで新たに外部資本が多く注入される場合、企業経営に影響を与えるステークホルダーが増えることとなり、意思決定が複雑化する。

⑥カーブアウトの実行手順

  • 実行計画の策定
  • 実行スキームは会社分割か?事業譲渡か?
  • カーブアウトの目的は何か?
  • 切り離す資産の範囲は?
  • 切り離した資産を引き継ぐ会社はどれにするのか?
  • 実行時期はいつか?
  • カーブアウト後の目標設定

 

など、綿密に計画策定。

  • 手続き事項の把握
  • 法人、役員など登記手続きの把握
  • 実行後の社員の待遇の決定
  • COC(チェンジ・オブ・コントロール)条項の把握
  • 許認可、知的財産の引継ぎ方法

 

など、手続き事項に抜け漏れがないように注意

 

・適時開示の検討
上場企業の場合、カーブアウトを実行するには、情報開示をする必要あり。
開示のタイミングは、カーブアウトの実行時となることが一般的。

・カーブアウト財務諸表の作成
カーブアウト財務諸表とは、カーブアウトにより切り離した事業が、単体で事業を運営することができると仮定し、擬似的に作成する財務諸表のこと。特定の事業部門は個別に会計データ(部門別財務諸表など)を管理していることは稀であり、切り離す事業の財務状態を把握するために作成。

 

⑦カーブアウトを実行する上での留意点

・実行計画の策定
実行スキームはじめ手続き面においても何が必要なのかまで考え得るものは全て書き出し、PMIも意識した計画策定が必要。

・プロジェクトチームの編成
プロジェクトチームを編成し、プロジェクトリーダーや協力者などをあらかじめ決定しておく。計画策定前の段階で取り決めておくことで、その後の業務もスムーズに行く。

・知的財産の取り決め
特許などの知的財産を、切り離した事業の受け入れ先となる企業(子会社など)にも使用させたい場合は、2つの方法がある。

・実行スキームに会社分割を採用し、事業を切り離す会社と受け入れる会社で知的財産を共有する方法

・事業譲渡を実行スキームとし、事業を切り離す会社から受け入れる会社に知的財産を使用することができるライセンス契約を締結する方法
案件に応じて決定すること。

・従業員・取引先への説明と配慮
カーブアウトを実行したものの、企業として成り立たなければ何の意味もない。通常のM&A同様、カーブアウトも「人」対「人」であるため、相手を尊重しながら実行する事が重要。

今回のテーマであるカーブアウトについては、小規模M&A(スモールM&A・マイクロM&A)では、馴染みがないように感じるかも知れません。

 

 

しかし、個人の方がM&Aで独立する際、株式譲渡ではなく事業譲渡を採用する場合、事業を受け入れる法人をあらかじめ設立しておくこともあり、これは立派なカーブアウト(主にスピンアウトとなります)と言えます。

この点、今回の記事については、大企業、中小企業から個人M&Aを目指す方まで幅広く読んで頂きたい内容でもありました。

M&Aを成約させるには、数あるM&Aスキーム(譲渡形態)の検討だけではなく、ディテール部分にも目を向けた計画策定が必要であり、ありとあらゆる可能性を考察することが重要となるのです。

※M&Aのご相談を受け付けてくれるM&A専門家多数!気になる方は、下記リンクより専門家に依頼しましょう!

 

 

 

スモールM&Aアドバイザー「合同会社アジュール総合研究所」伊藤氏からのワンポイントアドバイス!

こんにちは!この記事を監修させて頂きました、スモールM&Aアドバイザー「合同会社アジュール総合研究所」代表の伊藤と申します。

ここからは、スモールM&A専門家である、わたくし伊藤が、M&A実務に即した、成約に大きく前進するためのアドバイスと注意点などを、なるべくわかりやすく(そして、くだけた感じで?)スモールM&Aの現場の経験をもとに解説していますので、是非、ご刮目下さい!

 


はいっ!

今回は、「カーブアウト」について解説しました。

あまり聞き馴染みのないワードなので、「カーブアウト?なにそれ?」で、読みはじめた人も多かったでしょうね。

けど、どうです?読んでみたら、「あ~こういうことね!」って、思った人もいませんでしたか?

何度も、M&Aを経験したことのある方であれば、知らないうちにカーブアウトで成約してたなんてことも珍しくはないと思います。

特に本編でも書きましたが、個人M&Aで独立起業をされた方であれば、M&Aスキームとプロセスの選択次第では、カーブアウトをご経験されていたと言うことです。

なので、「小規模M&Aでもカーブアウトは全然あるよ!」って、ことだったんですね。

小規模M&A専門のアドバイザーをやっていると切に思うのですが、ひとむかし前は大企業でしかやっていなかったM&Aスキームやプロセスがドンドン小規模M&Aにも落とし込まれていき、成約方法の幅が広がってきている感じがするんですよね。

と言うこともあり、会社や事業を売却、買収したい方も日々、M&Aの情報はキャッチアップしていただきたいですね~。と、前置きはここまでにして小規模M&Aについての論点をお話しします。

小規模M&Aにおいては基本的に事業譲渡をM&Aスキームに採用します。

なぜならば、小規模M&Aの場合、

  • 買い手側が引き継ぐリスクを最小に抑えたいということ
  • ノンコア事業を切り離した場合、事業規模自体が小さく必然的に小規模M&Aになること
  • 個人事業の事業譲渡(営業譲渡)が多いこと
  • 売り手側としては、会社分割により親会社の株式をもらうよりも、現金が欲しい

 

などの理由が挙げられます。そういったこともあり、小規模M&Aにおけるカーブアウトは、会社分割ではなく事業譲渡が選択されるわけです。

スモールM&Aアドバイザーであるわたくしとしては、カーブアウトについてのお話しだけではなく、事業譲渡の注意点もお話ししておいた方が良いかなと思いました。

と言うことで、今回のワンポイントアドバイスは「【重要】事業譲渡の注意点!」を解説していきます!

 

 

【重要】事業譲渡の注意点!

ではでは、事業譲渡の注意点について解説していきましょう!

今回解説するポイントは以下の4つです!

① 全ての契約は引き継げない!
② 従業員や顧客・取引先の離脱防止!
③ 許認可も新規で取得しなければいけない!
④ 事業資金も準備!

それでは順に、ご説明しましょう!

 

①全ての契約は引き継げない!

本編でもお話ししましたが、事業譲渡は全ての契約を引き継げないんですね。株式譲渡や会社分割と違い、包括承継する事が出来ず、事業を行うのに必要な契約は受け入れ先で再度契約を締結し直さなくてはいけません

なぜならば、事業譲渡は厳密にいうと、ひとつの事業を集約した「モノ」を売買すると言うことだからなんですね。つまり、売買契約なんです。

なので、消費税もかかるし、事業譲渡契約書には収入印紙も必要になります。(※結構知らない方が多いので注意ですよ!)

そう言うこともあり、従業員との雇用契約、顧客や取引先との契約、賃貸借契約、リース契約などなど、事業運営に必要な契約は全て締結のやり直しです。

再契約が必要なものはしっかりチェックして抜け漏れのないようにしましょう!

 

②従業員や顧客・取引先の離脱防止!

前のセクションでもお話しした通り、従業員や顧客・取引先とは契約を締結し直さなくてはいけないんですね。ここでご注意いただきたいのが、従業員や顧客・取引先の離脱なんですね。

従業員であればキーパーソン、顧客や取引先であれば大口先などの離脱が原因で、譲渡後、即無理ゲーになっては目も当てられないですよね(涙)

この点はやはり注意が必要で、譲渡契約前には売主の協力を仰ぎ、従業員との個別面談や顧客、取引先とのご挨拶などを実施しておくべきですね。

譲渡後も両者の離脱がないようグリップしておくことが重要と言うことですね。

 

③許認可も新規で取得しなければいけない!

本編でもお話ししましたし、この流れでもご想像がつくかと思いますけど、許認可ももちろん引き継げませんよ!

小規模M&Aでよくある飲食店の事業譲渡でも、受け入れ先は飲食店営業許可を新規で取得しなければいけないですし、食品衛生責任者や防火管理者の資格も取らなくちゃいけません。各許認可は申請から取得までの時間や、申請窓口・方法も当然異なります。

この点も事前にしっかりチェックし、クロージング期間内で手続きが完了するようにしましょう!

 

④事業資金も準備!

これも絶対に忘れないで下さい!

株式譲渡であれば会社ごと丸々っと手に入るので、現預金ももちろんついてきますが、事業譲渡はついてきませんからね。M&Aの譲渡代金ばかり目が行って、事業資金を失念している方って結構いるんですね。
(いやホントに・・・ビックリするくらいいらっしゃいます。)

この点、譲渡代金を融資で賄う際、あらかじめ金融機関にも事業資金のご相談もしておいてください。

そのため、譲渡後の事業計画は綿密に練っておき、当面どのくらいの事業資金が必要なのかをしっかり把握しておくようにして下さいね!

 

今回記事の「まとめ」の「マトメ」

以上、「【重要】事業譲渡の注意点!」を解説しました。

事業譲渡は株式譲渡に比べ、手続きも煩雑で難しい部分も沢山ありますが、リスクを引き継ぐ可能性が低くなるなどのメリットもあり、是非、マスターしてほしいM&Aスキームです。

バトンズさんの売り案件登録情報を見ていると、サイズの小さい案件のほとんどは事業譲渡を条件にしていますよね。

 

比較的、手続きが簡単である株式譲渡ではないので、アプローチするのを敬遠される方もいらっしゃいますが、小規模M&Aを繰り返して、事業規模の拡大や多角化戦略をとっている方って、事業譲渡案件へ積極的にアプローチしているんですね。

と言うのも、小規模M&Aのほとんどが事業譲渡であり、これをマスターすれば、小規模案件を何度も買収して事業拡大ができるってことを、ご理解されているからなんですね。

また、小規模M&Aの場合、そもそも事業規模が小さいので、新規に締結し直す契約も少なく、許認可についても申請が面倒じゃなかったりするんですね。むしろ、株式譲渡よりもメリットが多いケースもあるくらいです。

「事業譲渡を制する者は、小規模M&Aを制す」

と言っても過言ではないくらいです。

勇気をもってドンドン事業譲渡案件にアプローチしていただきたいですね。

小規模M&Aを狙っている方は、今回のテーマでもあるカーブアウトとワンポイントアドバイスでお話しした事業譲渡についての知識を身に付けていただき、「事業譲渡マスター」になっていただけたら嬉しいです!

※M&Aのご相談を受け付けてくれるM&A専門家多数!気になる方は、下記リンクより専門家に依頼しましょう!

 

今回のワンポイントアドバイスでは、「【重要】事業譲渡の注意点!」について解説しましたが、今後もM&A実務に即したネタをご紹介しますので、これからもご覧いただけますと幸いです。

また、この記事が良かったなと感じたら、SNSでのご紹介をお願いします!

最後に、みなさまのM&Aが、安全にご成約されることを心よりお祈り申し上げます。

また次の記事でお会いしましょう!それでは!

 


【監修者プロフィール】


合同会社アジュール総合研究所 / 代表社員
スモールM&Aアドバイザー/ M&A支援機関登録専門家
伊藤 圭一(いとう けいいち)

「小規模企業と個人事業の事業承継を助けたい!」そんな想いから、2019年7月に小規模事業専門のM&Aアドバイザー「スモールM&Aアドバイザー・合同会社アジュール総合研究所」を設立。
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