眼鏡業界で7年間勤務されてきた二村様は、この度、1976年の創業以来市民に頼られてきた大阪府箕面市の眼鏡店「メガネのサンクス」を譲り受けされました。眼鏡の専門学校で認定眼鏡士SSS級の資格を取得され、卒業後は眼鏡業界に就職。複数の眼鏡店を経験する中で、眼鏡作製技能士一級を取得された二村様。「いつかは自分のお店を持ちたいとぼんやり考えていた」と話す二村様が、この度M&Aで経営者としての道をスタートされた経緯について、お話を伺いました。
譲渡企業 | |
---|---|
事業名 | メガネのサンクス |
業種 | 小売業 |
拠点 | 大阪府 |
譲渡理由 | 後継者不在 |
譲受企業 | |
---|---|
区分 | 個人 |
業種 | 小売業 |
拠点 | 大阪府 |
譲受理由 | 起業 |
複数の眼鏡店を経験。ご縁で事業承継の話が舞い込む
眼鏡の専門学校を卒業後、眼鏡チェーン店を展開する老舗企業にご就職された二村様は、その後デザイン性の高いファッション系の眼鏡店を展開する会社にに転職。そして、結婚を機にパートナーの地元である大阪の眼鏡屋さんに再転職をされます。
「眼鏡業界の中で、さまざまなジャンルの眼鏡店を経験してきました。眼鏡屋さんは、お店によってまったく毛色が違います。直近で働いていたところは、『両眼視機能検査』と呼ばれる特殊な検査技術を得意とする眼鏡店で、もともとは妻が『より高い技術を身につけたい』という思いで働き始めた場所でした。
妻が出産を機に仕事を離れないといけないということになり、それがきっかけで僕が入れ替わりで働くことになったんです。」
二村様が前職勤めていた眼鏡店は、両眼視機能検査で有名な先生が代表を務めており、両眼の検査に特化した眼鏡店。今回の譲渡事業である「メガネのサンクス」の前店主であった石田様も、「両眼解放検査」と呼ばれる、左右の視線のズレを補正し、両眼のバランスを整える検査を得意とされていました。
前店主の石田様は、ご自身の病気が発覚したことにより後継者探しに奔走していましたが、病状は想定外の速さで悪化。後継者を見つけることが叶わぬままにご逝去されました。そこで、石田様のご意向を汲み、代わりに後継者を探そうと立ち上がったのが、親族のおひとりにあたる藤田様(仮称)でした。
「僕が勤務していた眼鏡店の検査方法とは少し異なりますが、最終的に目指す方向は同じだったんです。そのつながりで、藤田様から僕が勤務する眼鏡店の先生に『後継者を探している』と相談があり、最終的にスタッフだった僕に事業承継のお話がきました。」
一般的な眼鏡店での視力検査は、片目ずつ行うものが主流ですが、メガネのサンクスでは両眼の検査を行なっており、両目でみた場合のズレを正しく補正できるメガネを制作できることが、事業の価値でした。その技術を持った技師やお店は国内でもごく少数であったために、藤田様は後継者探しに苦戦されていたとのこと。
後継者には「視え方」を検査する高い技術力が必要だった
「相談に来るお客様の中で一番わかりやすい症状は、本来一つしか見えないものが二つ見えてしまうというものです。右目と左目が本来同じ方向を向いていなければならないところが、別々の方向を向いてしまっているという状態です。
日常生活でモノが二つに見えたら混乱しますし、下手したら日常生活もままならない状態になってしまいますよね。ですが、そういった眼の症状をケアできる眼鏡屋さんというのはなかなかないんです。そのケアができるのが、両眼視機能検査なんです。」
両眼視機能検査では、「プリズムレンズ」という特別なレンズを用いる検査方法。また、検査で出た数値を活かしてどういった眼鏡を作るのかということも、高度な技術と経験が必要になるとのこと。
「一般的な眼鏡屋さんであれば、右目の視力と左目の視力をそれぞれ測り、片目ずつのレンズを作って終了となります。「両眼視」というのは、ベースとしては左右それぞれの視力を測った上で、さらに『両目で見たときにどう見えるのか』を重視しています。僕が前職で先生に教わったのは、両眼をいかにバランスよく動かすかでした。」
例えば、右目はスムーズに見たい方向に視線を向けていても、左目が追いついていないという症状があります。左右の視線がずれていると、目が疲れたり、ズレを直そうとして首をかしげるような見方をする癖がついてしまうことで、姿勢が悪くなり身体痛に繋がることもあるそうです。
「頭痛や腰痛は、意外と眼からきていることが多いんです。視え方は人と共有したり比較することができないので、自分がちゃんと見えているのかどうかは、なかなか気づけません。今まで気づいていなかった身体の症状に、検査を通じて気づかれる方もいます。
単純な度数だけではなく、視え方まで測り、ケアをしていく。お客様の両眼のバランスを整えて、最終的には体のバランスまで整えるのが、私たちの目標なんです。」
両眼解放検査を取り入れていた「メガネのサンクス」も、普通の眼鏡店では合わない人たちにとって、長年頼りにされてきた眼鏡店でした。そのため、ただ眼鏡店の経営ができる人ではなく、引継ぎ後もお客様の悩みに寄り添える、知識と経験のある人を必要としていた中で、今回二村様に声がかかることになります。
会社員から経営者へ。不安を乗り越えてM&Aを決意
眼鏡業界での勤務歴が長く、両眼視機能検査の技術はあったものの、経営経験がない二村様。自分の力でお店をやっていけるのか、不安はやはり大きかったそうです。
「自分はいわば平社員で、経営はおろか、店長経験すらありませんでした。ただ、いつか自分で眼鏡店を持てたらいいな、という想いは頭の片隅にありました。
M&Aのことを妻に相談したときは、『これもご縁だね』という話になって賛成してくれましたし、一緒に店舗に足を運んで話を聞きに行くなどして、できる限り夫婦二人で話し合いながら進めてきました。
前店主の石田様にお会いできなかったことは非常に残念でしたが、従業員の方や、お客様の声を聞く中で、『本当に皆さんに愛されて、必要とされているお店なんだな』と感じました。藤田様が、『このままお店を無くしてしまうのはもったいない』と、後継者探しを引き継がれた理由がよくわかりました。」
先代の石田様がバトンズに登録しており、藤田様がそれを引き継いでいたことから、二村様も交渉を進めるためにバトンズに登録。しかし、大きな決断を短期間で果たさないといけないことや、会社員として働きながら交渉を進めていくことは、簡単なことではありませんでした。
「一番大変だったことを振り返ると、シンプルにお金の問題ですね。一般のサラリーマンにとってお店を買うことは高額ですし、自分が覚悟を決めてお金を準備したとしても、その先の経営があります。
周りの理解を得るのも大変で、特に父親にはリスクが高すぎると猛反対されました。最終的には反対を振り切って、なんとかお金もかき集めて交渉に望みました。」
多くのお客様の悩みに応え、自分自身も楽しめるお店に
眼鏡屋としての勤務経験、両眼視機能検査の技術と知見があること、そして真面目な人柄が評価され、無事に交渉は成立。二村様は、会社員を辞め、正式に「メガネのサンクス」を引き継ぐこととなりました。お店を引き継いで二ヶ月がたった現在、どのような思いを抱いているのでしょうか。
「今はまだお店を引き継いだばかりなので、とにかくやる事だらけですね。会社員の頃は、与えられた仕事さえしていればよかったのですが、経営者となると眼鏡のことだけを考えているわけにはいきません。本当に全部自分でやらないといけないんだなというのは、改めて実感しています。」
また、二村様が今後新しく取り組みたいことを伺うと、技術面や集客面、お店の空間のこだわりなどについてお答えくださいました。
「とはいえ、お店の存り方としては一緒ですね。第一に、お客様の視え方の悩みを解決することです。多くのお客様の悩みに応えられるよう、技術を磨いていきたいです。
自分の色は、今までのお店の色を変えすぎないようにつつ、少しずつ足していくつもりです。元々のお客様に安心して来てもらえることを前提に、新しいお客様や若い世代の方にも来ていただけるようなお店作りをしていきたいなと思います。
眼鏡って、すごくいろんな要素を含んでるんです。自分は色んなお店で働いてきましたが、見え方を補う道具としての要素がありますし、ファッション的な要素もある。取り扱いブランドを増やして、『サンクスにくればオシャレなメガネがある』と思ってもらえるようなお店にしていきたいです。
また、僕はヴィンテージの家具や小物が好きなので、少しずつそういったアイテムを集めて、自分自身が楽しめる空間にしていきたいです。」
これまでの現場経験を存分に活かし、経営の道を歩み始めた二村様。「メガネのサンクス」の三代目としての、二村様の今後のご活躍とご発展を、バトンズ一同心より応援しています!
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