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M&Aにおけるロングリスト・ショートリストとは?意味やポイント・注意点について専門家が詳しく解説!

2023年08月07日

今回は、「M&Aにおけるロングリスト・ショートリストとは?」について、解説します。

当然の話ですが、M&Aは、売り手と買い手が存在しなければ成立しません。また、売り手と買い手が何かしらのきっかけでお互いを知り、交渉の機会を設けなければ、何も始まりません。

では、売り手と買い手は、どのようにしてお互いを知り、交渉の機会を得るのでしょうか?

そのために必要なものは、「ロングリスト」 と 「ショートリスト」になります。

リストと言うからには、どちらも何かに基づいてリスト化されたものと言うのは、容易にご想像ができると思いますが、「ロングリスト」・「ショートリスト」とは、具体的にはどういったものなのでしょうか?

今回のラインナップは、M&Aにおけるロングリスト・ショートリストについての、

①M&Aにおけるロングリストの意味
②M&Aにおけるロングリストを作成する目的
③M&Aにおけるショーリストの意味
④M&Aにおけるショートリストを作成する目的
⑤M&Aにおけるロングリストとショートリストの違い
⑥M&Aにおけるロングリストの作成方法
⑦M&Aにおけるロングリストを作成する際のポイントと注意点
⑧M&Aにおけるショートリストの作成方法
⑨M&Aにおけるショートリストを作成する際のポイントと注意点

 

を中心に、解説していきます。

※今回の記事のワンポイントアドバイスでは、「【実録】M&A現場のロングリスト・ショートリストの活用方法!」も解説していますので、是非、ご覧ください!


【監修者プロフィール】


合同会社アジュール総合研究所 / 代表社員
スモールM&Aアドバイザー/ M&A支援機関登録専門家
伊藤 圭一(いとう けいいち)

「小規模企業と個人事業の事業承継を助けたい!」そんな想いから、2019年7月に小規模事業専門のM&Aアドバイザー「スモールM&Aアドバイザー・合同会社アジュール総合研究所」を設立。
合同会社アジュール総合研究所」の紹介ページ

【必見!】巻末にスモールM&Aアドバイザー・合同会社アジュール総合研究所 代表 伊藤氏よりM&A実務に即したワンポイントアドバイスや注意点も掲載しています!是非、最後までご刮目下さい!

 

 

M&Aにおけるロングリストの意味

M&Aにおけるロングリストとは、ある一定の基準を設けて絞り込んだ譲渡先・譲受先候補をリスト化したものです。

M&Aを検討する上で、初期段階で作成されるリストであり、少しでも可能性がある企業は、なるべく広範囲にピックアップされます。そのため、リストアップされる企業は30~100社程となることが一般的です。

 

M&Aにおけるロングリストを作成する目的

M&Aにおけるロングリストを作成する目的は、可能性のある譲渡先・譲受先候補の抜け漏れを防止することにあります。

前のセクションでも、少しでも可能性がある企業は、なるべく広範囲ピックアップされ、リストアップされる企業は30~100社程となることが一般的であるとお話ししましたが、ずいぶん多くの会社がリストアップされるなと感じた方も多いのではないでしょうか。

しかしこれは、譲渡先・譲受先の検討対象となる企業がリストから漏れることを防止するためでもあるのです。

リストアップする企業は、何の基準もなくピックアップしてしまっては、時間や手間も要しますし、むしろ軸のブレたロングリストになってしまいますが、可能性があると判断した企業はなるべく多くピックアップし、守備範囲の広いロングリストになるように作成することが重要となります。

 

M&Aにおけるショーリストの意味

M&Aにおけるショートリストとは、ロングリストにピックアップされた譲渡先・譲受先候補を、自社との親和性や期待されるシナジー効果を勘案・考察し、対象候補に、より絞り込みをかけたリストのことです。

ロングリストがなるべく可能性のある企業を広範囲にピックアップしたのに対し、ショートリストは、交渉まで持ち込みたいターゲット先をスクリーニング(選定・ふるい分け)することになります。

 

M&Aにおけるショートリストを作成する目的

M&Aにおけるショートリストを作成する目的は、交渉まで持ち込みたい譲渡先・譲受先候補をスクリーニング(選定・ふるい分け)することにあります。

ロングリストでリストアップした50~100件の候補先すべてに交渉を持ち掛けることは、時間も労力も要し、現実的とは言えません。そのため、ロングリストから交渉対象として相応しい候補先を更に絞り込む(スクリーニング)ことが必要となります。

スクリーニングは、より詳細な条件を設定して実施されますが、精度の高いショートリストが作成されます。最終的に5~10社程が選定されることが一般的です。

 

M&Aにおけるロングリストとショートリストの違い

ロングリストとショートリストの違いを、図を使って比較してみましょう。

【ロングリストとショートリストの比較】

項目 ロングリスト ショートリスト
意味 ある一定の基準を設けて絞り込んだ譲渡先・譲受先候補をリスト化したもの ロングリストにピックアップされた譲渡先・譲受先候補を、自社との親和性や期待されるシナジー効果を勘案・考察し、対象候補に、より絞り込みをかけたリストのこと
作成目的 可能性のある譲渡先・譲受先候補の抜け漏れを防止すること 交渉まで持ち込みたい譲渡先・譲受先候補をスクリーニング(選定・ふるい分け)すること
作成時期 M&A検討の初期段階 ロングリスト作成後、スクリーニングにより、更に絞り込みをかけると自動的に作成される
記載項目 会社名、URL、本社所在地・支店、主力事業、資本金、売上高、利益、従業員数など 事業における3C・4P・SWOT、USP(特許・特殊技術・独自ノウハウ)など、ブランド力、期待されるシナジー効果、親和性、財務状況など
リストアップ数 30~100社 5~10社

 

ロングリストは、M&A検討の初期段階に、可能性のある譲渡先・譲受先候補の抜け漏れを防止することを目的に作成されるため、記載項目も最低限のものとなります。

一方、ショートリストは、ロングリスト作成後、交渉まで持ち込みたい譲渡先・譲受先候補をスクリーニング(選定・ふるい分け)することにあるため、記載される項目も、より詳細な情報が求められます。

ここまでで、ロングリストとショートリストの基礎的な解説をしてきましたが、次のセクションからは、2つのリストの作成方法などを具体的に見ていきましょう。

 

 

M&Aにおけるロングリストの作成方法

まずは一般的なロングリスト例を実際に見ていきましょう。

【ロングリスト例】

No 会社名 URL 所在地 主力事業 資本金 売上高 利益 社員数 優先度
1 〇製作 ○○○ 東京 製造 1億 5億 5千万 500人 A
2 〇製造 ○○○ 大阪 製造 8千万 4億 400人 C
3 〇技研 ○○○ 名古屋 設計 6千万 3億 3千万 600人 B
4 〇部品 ○○○ 横浜 3千万 1.5億 300人 E
5 〇総研 ○○○ 仙台 設計 1千万 1億 1千万 D

↓30~100社程リストアップ↓

 

上記のように、エクセルなどで簡易的に作成します。項目も決まったものはなく、自社が最低限欲しい情報を羅列する形式で構いません。

会社情報は、WEB掲載のコーポレートサイトや信用調査会社から取得します。情報が取得できない項目に関しては、現時点では空白でも構いません。

前出の通り、ロングリストの作成目的は、可能性のある譲渡先・譲受先候補の抜け漏れを防止することにあるので、網羅的に会社情報が拾えれば問題ありません。だいたい30~100社程のリストアップを目指しましょう。

 

M&Aにおけるロングリストを作成する際のポイントと注意点

ロングリストの作成ポイントと注意点を3つご紹介します。

 

自社分析

まずは自社分析です。自社分析には財務分析だけではなく、3C、4P、SWOT、USPなどのビジネスフレームワークも活用します。

ここで最も重要なことは、これらのビジネスフレームワークを活用した自社分析を行うことによって、自社の実態を可視化することにあります。なぜならば、自社の実態が可視化されなければ、M&Aの目的や期待されるシナジー効果・親和性も不明確になってしまうからです。

何度も記述しているとおり、ロングリストの作成目的は、可能性のある譲渡先・譲受先候補の抜け漏れを防止することにありますが、無制限に対象となる企業をピックアップしていては、非効率となりますし、M&Aの目的や期待されるシナジー効果・親和性が明確ではない場合、全く見当違いのロングリストが生成されてしまいます。

ロングリストの作成は、はじめの一歩となる自社実態の「見える化」が最重要であると言うことを覚えていてください。

 

M&Aの目的を明確化

次は、M&Aすることにより何を達成したいのか?つまり、M&Aの目的を明確にすることになります。

前のセクションの自社分析を実施してみると、自社の強みや、問題点、今後の課題などが見えてきます。自ずと次に打つべき手も見えてくるため、M&Aの目的も明確になってきます。

M&Aの目的には大きく分けてふた通りあります。

1. 売上・利益の拡大や強みの有効活用

2. コスト削減・商流の効率化や弱みの補填

 

前者はM&Aによりアップセル・クロスセルを可能とし、また自社の強みを有効活用することを目的とする、「攻め」のM&Aです。一方後者は、M&Aによりコスト削減や商流の効率化を可能とし、また自社の弱みを補填することを目的とする、「守り」のM&Aです。

自社分析の結果によっては、他の目的が明確化されることもあります。目的が複数個となった場合は、ロングリストをM&Aの目的別に作成することも必要となってきます。

また目的によっては、欲しい情報も異なってくることもあるため、リスト項目の追加・削除をすることでより、目的に即したリストが作成されます。

M&Aの目的が明確になったら、手を動かしロングリストの項目を埋めていって下さい。作成している過程でブラッシュアップされていくので、高精度なロングリストが生成されていきますから。

 

シナジー効果・親和性を意識

M&Aの醍醐味と言っても過言ではない「シナジー効果」を意識したロングリストはより精度の高いロングリストと言えます。

M&Aによる代表的なシナジー効果は以下の4つです。

◉販売シナジー:
販売チャネルを共有することによって販売領域の拡大、売上増を狙い、共有箇所のコストの削減に相乗効果を生み出すこと。

◉生産シナジー:
生産ラインを共有することによって生産性の向上と効率化を行い、商材の生産力アップと生産コストの削減に相乗効果を生み出すこと。

◉投資シナジー:
研究開発のノウハウを共有することによって、研究開発力の向上と開発期間の短縮、コストの削減に相乗効果を生み出すこと。

◉経営シナジー:
経営ノウハウを共有することによって、新たな経営戦略の立案や、経営ノウハウのマネージメントによる子会社の経営力強化に相乗効果を生み出すこと。

シナジー効果を意識したリスト作成は、ショートリストの作成時でも遅くはありませんが、ロングリスト作成時点で盛り込んでももちろん問題はなく、より精緻なリストとなっていきます。

また親和性、つまり、事業との関連性や社風、企業文化、経営理念・ビジョンなどもM&A(特に小規模M&A)においては、重要な要素であるため、ロングリスト作成時点でも意識しておくことを推奨します。

シナジー効果について詳しく知りたい方はこちら▼

 

 

【ロングリスト例】の最後の項目に「優先度」が記載されているのは、シナジー効果・親和性も意識し、対象企業を格付けする目的で設定しました。

格付けの対象となる要素設定(シナジー効果・親和性だけではなく、優先的にショートリストに掲載したいなど)やランク付け(A~Eまたは1~5の段階評価など)については、任意に行ってもらって問題ありません。

社内共有した際、誰がみても明瞭となるようなリストが作成できれば二重丸です。

 

M&Aにおけるショートリストの作成方法

前述のとおり、ショートリストの目的は、交渉まで持ち込みたい譲渡先・譲受先候補をスクリーニング(選定・ふるい分け)することにあります。基本的には、前のセクションの解説で作成されたロングリストを、更に絞り込みをかけて作成していくイメージです。

ここで重要となってくるのが、スクリーニングの方法と言うことになります。最終的には5~10社程にターゲットを絞り込み、アタックリストとして活用していきますが、スクリーニング方法によって結果は変動していきます。

次のセクションでは、M&Aにけるショートリストを作成する際のポイントと注意点と称し、スクリーニング方法について解説していきます。

 

M&Aにおけるショートリストを作成する際のポイントと注意点

ショートリストの作成ポイントと注意点を2つご紹介します。

 

M&Aの目的を徹底追究

M&Aの目的を明確にしたうえでロンクリストを作成しましたが、ここから更に目的自体を徹底追究します。

M&Aの目的は、

・強みを生かして売上規模を拡大したい(攻め)!

・弱みを補填し経営体制の立て直しをしたい(守り)!

・業種は同業で拡大路線を取りたい!

・関連している業種で川上から川下まで網羅したい!

・一極集中したい!

・事業分散してリスクヘッジ!

など、枚挙にいとまはありませんが、まずは目的を決定します。その目的に対し、更に深堀をして行きます。

例えば、「強みを生かして売上規模を拡大したい(攻め)」という目的の場合、相手先としては、

・既存商品に付加価値をつけ、既存市場での売上を拡大できる先

・既存商品を新規市場で提供できる販路を確保できる先

・新規商品の製造が可能となり、既存市場での売上を拡大できる先

・新規商品の製造が可能となり、新規市場で提供できる販路を確保できる先

などが挙げられます。次のセクションで説明するシナジー効果にもつながってくる部分ですが、M&Aの目的を徹底追求していくことで、自社の真の目的が見えてくるはずです。

それと同時にターゲットとなる対象も徐々に明確になってくることでしょう。

 

シナジー効果・親和性の徹底追究

目的を深掘りした上でシナジー効果・親和性も徹底追究していきましょう。

前出の通り、M&Aにおける代表的なシナジー効果は、

・販売シナジー
・生産シナジー
・投資シナジー
・経営シナジー

の4つですが、これも更に深堀することで、自社が本当に獲得したいシナジー効果が見えてきます。

例えば、「生産シナジー:生産ラインを共有することによって生産性の向上と効率化を行い、商材の生産力アップと生産コストの削減に相乗効果を生み出したい。」であれば、相手先としては、

・生産ラインが共有化しやすい先

・相互に持つノウハウで生産力のアップが期待できそうな先

・生産効率が上がりコスト削減も期待できそうな先

などが挙げられるでしょう。

また、親和性も非常に重要な考察ポイントであり、親和性には

・事業との関連性
・社風、企業文化
・経営理念、ビジョン

などが挙げられますが、

・事業の関連性が希薄ではないか?

・経営者同士の哲学に乖離はないか?

・企業自体の考え方や文化が合致するのか?

・社員同士が馴染めるか?

などを考察する必要があり、可視化が難しい部分ですが、ミスマッチしている場合、そもそも交渉テーブルを設けてもらえません。

目的やシナジー効果を徹底追究した上で、更に親和性も熟考することで、精度の高いスクリーニングをかけることが可能となり、ターゲットに照準を合わせたショートリストが完成するのです。

 

まとめ

以上、「M&Aにおけるロングリストとショートリストとは?」を、解説しました。

今回の内容を、おさらいしましょう。

①M&Aにおけるロングリストの意味

・M&Aにおけるロングリストとは、ある一定の基準を設けて絞り込んだ譲渡先・譲受先候補をリスト化したもの。

 

②M&Aにおけるロングリストを作成する目的

・M&Aにおけるロングリストを作成する目的は、可能性のある譲渡先・譲受先候補の抜け漏れを防止すること。
・リストアップする企業は、何の基準もなくピックアップしてしまっては、時間や手間も要し、むしろ軸のブレたロングリストになってしまう。しかし、可能性があると判断した企業はなるべく多くピックアップし、守備範囲の広いロングリストになるように作成することが重要となる。

 

③M&Aにおけるショーリストの意味

・M&Aにおけるショートリストとは、ロングリストにピックアップされた譲渡先・譲受先候補を、自社との親和性や期待されるシナジー効果を勘案・考察し、対象候補に、より絞り込みをかけたリストのこと。

 

④M&Aにおけるショートリストを作成する目的

・M&Aにおけるショートリストを作成する目的は、交渉まで持ち込みたい譲渡先・譲受先候補をスクリーニング(選定・ふるい分け)すること。
・スクリーニングは、より詳細な条件を設定して実施されるため、精度の高いショートリストが作成される。
・最終的に5~10社程が選定されることが一般的。

 

⑤M&Aにおけるロングリストとショートリストの違い

【ロングリストとショートリストの比較】(再掲)

項目 ロングリスト ショートリスト
意味 ある一定の基準を設けて絞り込んだ譲渡先・譲受先候補をリスト化したもの ロングリストにピックアップされた譲渡先・譲受先候補を、自社との親和性や期待されるシナジー効果を勘案・考察し、対象候補に、より絞り込みをかけたリストのこと
作成目的 可能性のある譲渡先・譲受先候補の抜け漏れを防止すること 交渉まで持ち込みたい譲渡先・譲受先候補をスクリーニング(選定・ふるい分け)すること
作成時期 M&A検討の初期段階 ロングリスト作成後、スクリーニングにより、更に絞り込みをかけると自動的に作成される
記載項目 会社名、URL、本社所在地・支店、主力事業、資本金、売上高、利益、従業員数など 事業における3C・4P・SWOT、USP(特許・特殊技術・独自ノウハウ)など、ブランド力、期待されるシナジー効果、親和性、財務状況など
リストアップ数 30~100社 5~10社

 

ロングリストは、M&A検討の初期段階に、可能性のある譲渡先・譲受先候補の抜け漏れを防止することを目的に作成されるため、記載項目も最低限のものとなる。

一方、ショートリストは、ロングリスト作成後、交渉まで持ち込みたい譲渡先・譲受先候補をスクリーニング(選定・ふるい分け)することにあるため、記載される項目も、より詳細な情報が求められる。

 

⑥M&Aにおけるロングリストの作成方法

【ロングリスト例】(再掲)

No 会社名 URL 所在地 主力事業 資本金 売上高 利益 社員数 優先度
1 〇製作 ○○○ 東京 製造 1億 5億 5千万 500人 A
2 〇製造 ○○○ 大阪 製造 8千万 4億 400人 C
3 〇技研 ○○○ 名古屋 設計 6千万 3億 3千万 600人 B
4 〇部品 ○○○ 横浜 3千万 1.5億 300人 E
5 〇総研 ○○○ 仙台 設計 1千万 1億 1千万 D

↓30~100社程リストアップ↓

・項目も決まったものはなく、自社が最低限欲しい情報を羅列する形式でOK。
・会社情報は、WEB掲載のコーポレートサイトや信用調査会社から取得。
・情報が取得できない項目に関しては、現時点では空白でもOK。
・網羅的に会社情報が拾えれば問題はなく、だいたい30~100社程のリストアップを目指すこと。

 

⑦M&Aにおけるロングリストを作成する際のポイントと注意点

◆自社分析
・まずは自社分析。財務分析だけではなく、3C、4P、SWOT、USPなどのビジネスフレームワークも活用。最も重要なことは、これらのビジネスフレームワークを活用した自社分析を行うことによって自社の実態を可視化することにある。

◆M&Aの目的を明確化
・自社分析を実施してみると、自社の強みや、問題点、今後の課題などが見えてくる。自ずと次に打つべき手も見えてくるため、M&Aの目的も明確になってくる。
・目的が複数個となった場合は、ロングリストをM&Aの目的別に作成することも必要となり、目的によっては、欲しい情報も異なってくることもあるため、リスト項目の追加・削除をすることでより、目的に即したリストが作成される。

◆シナジー効果・親和性を意識
・シナジー効果を意識したリスト作成は、ショートリストの作成時でも遅くはないが、ロングリスト作成時点で盛り込んでも、もちろん問題はなく、より精緻なリストとなっていく。
・親和性、つまり、事業との関連性や社風、企業文化、経営理念・ビジョンなどもM&A(特に小規模M&A)においては、重要な要素であるため、ロングリスト作成時点でも意識しておくことを推奨。

 

⑧M&Aにおけるショートリストの作成方法

・基本的にはロングリストを、更に絞り込みをかけて作成していくイメージ。
・ここで重要となってくるのが、スクリーニングの方法。最終的には5~10社程にターゲットを絞り込み、アタックリストとして活用していくが、スクリーニング方法によって結果は変動する。

 

⑨M&Aにおけるショートリストを作成する際のポイントと注意点

◆M&Aの目的を徹底追究
・M&Aの目的を徹底追求していくことで、自社の真の目的が見えてくるはず。それと同時にターゲットとなる対象も徐々に明確になってくる。

◆シナジー効果・親和性の徹底追究
・目的やシナジー効果を徹底追究した上で、更に親和性も熟考することで、精度の高いスクリーニングをかけることが可能となり、真にターゲッティングされたショートリストが完成する。

 

企業は生き物であり、千変万化しています。当然、自社の状況も日々変化しているため、それに連動しM&Aの目的や期待するシナジー効果・親和性に変動が生じることとなります。

そのため、ロングリストもショートリストも、古くなったものは現在の自社のニーズを適切に反映されているとは言えません。

M&A戦略を長期的に計画する際は、常にリストの更新を行い自社の現状に最も適した内容になるよう、鮮度を保つことが重要であると言うことを覚えていて下さい。

M&A戦略について詳しく知りたい方はこちら▼

 

※ロングリスト・ショートリスト作成のご相談を受け付けてくれるM&A専門家もいます。気になる方は、下記URLより専門家に依頼しましょう!

【M&Aアドバイザーについてはこちらから】
▼M&A支援専門家一覧
https://batonz.jp/adviser/experts

 

 

【スモールM&Aアドバイザー「合同会社アジュール総合研究所」伊藤氏からのワンポイントアドバイス!】

こんにちは!この記事を監修させて頂きました、スモールM&Aアドバイザー「合同会社アジュール総合研究所」代表の伊藤と申します。

ここからは、スモールM&A専門家である、わたくし伊藤が、M&A実務に即した、成約に大きく前進するためのアドバイスと注意点などを、なるべくわかりやすく(そして、くだけた感じで?)スモールM&Aの現場の経験をもとに解説していますので、是非、ご刮目下さい!

 


 

はいっ!

今回は、「ロングリストとショートリスト」について解説しました。ロングリスト・ショートリストと聞くと馴染みがないかも知れませんが、本文の内容はすんなり頭の中に入ってきませんでしたか?

それもそのはず、リストってみなさんかなりの確率で職場で見てると思うんですよね。

例えば、新規顧客獲得のためのアタックリストや既存顧客への二次商材を売り込むための見込み先リストって見たことないですかね?営業部の方などはもちろん見たことがあるでしょうし、管理職の方ならば自ら作成して営業チームに配布したことがあるんじゃないですか??

もうお気づきかと思いますが、そうなんです。

別にロングリストもショートリストもM&Aだけで活用されているものじゃないんですね。見込み先としてリストを作成して、さらに確度の高そうな先を絞り込んで優先的にアタックしていくという考え方ってM&Aでも通常の営業でも全く同じと言うことなんですね。

ざっくり作成した見込み先リストがロングネームであり、ソート機能で属性などを絞り込んだリストがショートリストって考えて頂ければ、分かりやすいんじゃないですかね?

ただ、ここの「絞り込む」というところが肝心要で、受注の精度を挙げるにはどうしたらいいのかを考えるのが、非常に難しいところですよね。

この点も、M&Aと全く一緒で、

買い手サイド
買い手サイド
どうしたら、当社グループにジョインいただけそうな先を見つけられるか?

または、

売り手サイド
売り手サイド
どうすれば、当社を大切に受け入れてくれる先を見つけられるか?

 

を考えて、作成することが重要ってことなんですね~。

また、アタックリストって、新規顧客獲得、既存顧客へのアップセル・クロスセル、地域、提供商材、季節・時期などでも変わりますよね。もっと言うと、顧客ニーズの多様化やPLC(プロダクトライフサイクル)の短期化も激しいので、リストの陳腐化も早いんですよね。

本文中の最後の方でも、お話ししましたが、M&Aの場合も同様で、会社の状況も半年前とは全く別物になっていることもあるので、それに連動してロングリストもショートリストも見直す必要があるんですね。

これって結構大変ですよ。普通の商材を売り込むためのリストを整備するだけでも大変なのに、ロングリストならまだしもショートリストまで常に最新版にバージョンアップしておくってかなり難しい話だと思うんですね。

こうなってくると、

じゃあ、どうやってロングリストとショートリストを活用してM&Aを成約させればいいんだ!?

 

って、話になってきますよね。うんうん。

と言うことで、今回のワンポイントアドバイスは「【実録】M&A現場のロングリスト・ショートリストの活用方法!」を解説していきます!

今回解説するポイントは以下の3つです!

①ロングリスト・ショートリストってみんな作っているの?

②ロングリスト・ショートリストが作れない時はどうすればいいの?

③小規模M&Aの現場でロングリスト・ショートリストはどう活用されてるの?

 

それでは順に、ご説明しましょう!

【実録】M&A現場のロングリスト・ショートリストの活用方法!

そもそもロングリストとショートリストってみなさん作ってるんですかね?

文中ではロングリスト・ショートリスト作成の相談を受け付けてくれるM&A専門家もいるとか書いてあるし、小規模M&A(スモールM&A・マイクロM&A)の場合、どう活用されているんでしょうかね??

次のセクションにGO!

 

①ロングリスト・ショートリストってみんな作っているの?

結論から言うと、一般の企業はM&Aを目的としたロングリスト・ショートリストは作成していないのが一般的です。

作成している会社は、よっぽどM&Aに力を入れていて、社内にもM&A専門チームや担当者を設置している企業、または、未公開株に対して投資を行う、プライベート・エクイティ・ファンドなど、M&A戦略を綿密に計画している企業になるんですね。

これは、買い手サイドの話なんですけど、売り手サイドはと言うと・・・

作成している会社は聞いたことがないですね~(ここはあくまで個人的な意見ですが・・・)

一方、普通の企業はと言うと、当然M&Aを本業としているわけではないので、そこまで手が回らないんですね。リストが作成できたとしても、その後、交渉まで持ち込み、成約までさせるノウハウをもっておらず、一般企業がM&A戦略をとるってなかなか難しいですね。

ロングリストもショートリストもない。でもって、M&Aを成約させるノウハウも全然ない。

じゃあ一般の企業は、どうやってM&Aを成約させているんでしょうね??

次行きましょう!

 

②ロングリスト・ショートリストが作れない時はどうすればいいの?

これも結論から言っちゃうと、みなさんM&A専門家にお願いしています。

ロングリスト・ショートリストの作成方法を教えてくれる専門家もいますが、大手のM&A仲介会社は、売り手・買い手からのご相談が多いので、仲介会社独自のノンネームシートの一覧表を持っていることが多いんですね。

相談に来た方と買収ニーズのヒアリングをして、ニーズに合ったリストにソートしてくれるので、実質的にロングリストの役割を果たす資料が入手できるわけです。

更に言うと、リストの中で興味のある案件があれば、秘密保持契約書を締結後、企業概要書まで開示してくれることが多く、ショートリストよりも詳細な情報が入手できます。

「ノンネームシート」と「企業概要書」について詳しく知りたい方はこちら▼

 

 

もっともっと言うと、アドバイザリー契約書の締結後は、売り手・買い手とのトップ面談までセッティングし、交渉がうまく進展すれば成約までサポートしてくれます。

っと、至れり尽くせりなわけですが・・・

そうなんです。

結局、M&A専門家に相談しちゃった方が、料金こそかかるものの、手っ取り早かったりするんですね。「自社でできないものは外注する」って、普通のことかと思いますけど、M&Aも結局一緒なのかなって思いますね。

※M&A仲介会社によって各契約書の締結時期、報酬の発生時期、サービス内容が異なるので、必ず相談時に確認して下さい。

 

③小規模M&Aの現場でロングリスト・ショートリストはどう活用されてるの?

最後も結論から言いますけど、小規模M&A(スモールM&A・マイクロM&A)の現場では、ロングリスト・ショートリストの活用ってほとんどないですね。

スモールM&AとマイクロM&Aについて詳しく知りたい方はこちら▼

 

 

 

ちょっとここで予備知識ですが、中小企業のM&Aは案件規模(ディールサイズ)によって3つに分類されます。

・大規模M&A:売上高10億円以上、従業員数100名以上、譲渡価額10億円以上
・中規模M&A:売上高1~10億円、従業員数50~100名、譲渡価額1~10億円
・小規模M&A:売上高1億円以下、従業員数50名以下、譲渡価額1億円以下

※各数字、目安として

大規模・中規模M&Aは前出の①②のお話と考えてもらえればと思いますが、小規模M&Aの場合は、ロングリスト・ショートリストを作成して活用するよりも、もっと効率のいい方法があるからなんですね。

それは、

「M&Aマッチングサイトを活用する」

これに尽きるんですね。

今まさに、バトンズさんのWebサイトに投稿させていただいてますけど、バトンズさんのようなM&Aマッチングサイトに登録して、売却案件のページで自社の買収ニーズを設定してソートした方が手っ取り早いんですね。

また、結構知らない人も多いんですけど、買い手側から売り手側に問い合わせ(マッチング)をかけるだけじゃなく、売り手から買い手にマッチングをかける機能もあるので、実質的にロングネームの閲覧と交渉打診を相互同時にできちゃうんですね。

 

う~ん そう考えると、小規模M&Aではロングリスト・ショートリストは作成されることは、ほとんどないかな~って感じるんですよね~。
(↑作っている方もいるかもしれないので、保険かけてますが・・・)

今回の記事がなし崩しになっちゃいますが、小規模M&Aを検討している方は、ロングリスト・ショートリストの作成・活用方法よりも、バトンズさんのようなM&Aマッチングサイトの活用方法を勉強していただき、使い倒してもらうことをお奨めしますね。

 

今回記事の「まとめ」の「マトメ」

以上、「【実録】M&A現場のロングリスト・ショートリストの活用方法!」を解説しました。

最後のセクションで、小規模M&Aの場合は、M&Aマッチングサイトを活用した方が効率良く、ロングリストもショートリストもいらない的な感じの記載となってしまいましたが、決して誤解して欲しくないんですね。

と言うのも、ロングリスト・ショートリストを作成して、企業にコンタクトしている会社が少ないということであれば、逆に言うと、そこの層はブルーオーシャンになってる可能性もあるってことなんですね。

小規模M&Aの中には、個人事業のM&Aって結構あるんですけど、堅実に経営されていて、魅力的な事業もあったりするんですね。これらの事業がM&Aマッチングサイトに全て登録されていないとなると、それってねらい目だったりするんですよね。

特に個人事業の場合、譲渡できると言うことを知らない事業主の方が多く、ご高齢の場合、そのまま事業を閉じてしまうことって珍しくないんですね。こういった方の事業を承継して事業を継続させるってM&Aマッチングサイトだけでは限度があると思うんですね。

そもそもご高齢の個人事業主が、譲渡できることを知らなければ当然、M&Aマッチングサイトに登録することはない(ITスキルもないし)ので、そのまま事業が終わっちゃうわけですよね。

これって、大都市圏であれば、そこまで影響ないですけど、地方都市だったらどうでしょうか?

1社、1事業廃業するだけで、地域経済に与える影響って大きくなってくるんですよね。更に都市部から離れた地域になると、税収や雇用、取引などの経済活動が1失われるだけで、かなりのインパクトがあるわけです。

そこを漏れなくロングリストで拾い、ショートリストでご高齢の経営者などで絞り込みをかければ、事業継続が難しい緊急性の高い企業や事業を救済できる可能性もあるわけです。それって立派に地域経済の振興に貢献しているわけですよね。

メディアなどの影響で、M&Aに対してネガティブなイメージを待たれている方って多いと思うんですね。

しかし、企業や事業を救えると考えるとどうでしょう?事業を承継する方ってヒーローに見えてきませんか?

M&Aアドバイザーとして声を大にしてお伝えしたい事は、

M&Aされることは、決して恥ずかしいことではないし、M&Aすることは、地域経済の振興に貢献することでもある

 

と言うことを知っていただきたい。そう思うんですね。

こちらの記事を読んでる方は、売り手・買い手に限らず、多少なりともM&Aに興味・関心がある方だと思います。今回の記事で、M&Aに対して少しでもポジティブな印象を持っていただけたのなら、M&Aアドバイザー冥利に尽きます。

 

今回のワンポイントアドバイスでは、「【実録】M&A現場のロングリスト・ショートリストの活用方法!」について解説しましたが、今後もM&A実務に即したネタをご紹介しますので、これからもご覧いただけますと幸いです。

また、この記事が良かったなと感じたら、SNSでのご紹介をお願いします!

最後に、みなさまのM&Aが、安全にご成約されることを心よりお祈り申し上げます。

また次の記事でお会いしましょう!

それでは!


【監修者プロフィール】


合同会社アジュール総合研究所 / 代表社員
スモールM&Aアドバイザー/ M&A支援機関登録専門家
伊藤 圭一(いとう けいいち)

「小規模企業と個人事業の事業承継を助けたい!」そんな想いから、2019年7月に小規模事業専門のM&Aアドバイザー「スモールM&Aアドバイザー・合同会社アジュール総合研究所」を設立。
合同会社アジュール総合研究所」の紹介ページ

 

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