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2024/08/05

中小企業の循環型経済(CE)対応に有効なM&A

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循環型経済とは?
 循環型経済(サーキュラーエコノミー、以下CE)について、環境省は「令和5年版 環境・循環型社会・生物多様性白書」で、「大量生産、大量消費、大量廃棄型の経済・社会様式から、競争条件への影響も踏まえ、資源・製品の価値の最大化を図り、資源投入量・消費量を抑えつつ、廃棄物の発生の最小化につながる経済活動全体の在り方」と定義しています。  また、経産省は「成長志向型の資源自律経済戦略」で、「バリューチェーンのあらゆる段階で資源の効率的・循環的な利用を図りつつ(中略)付加価値の最大化を図る経済」とあるべき姿を示しています。  これまでの、「大量に作って、使って、捨てる」線形経済(リニアエコノミー、以下LE)は、もはや持続可能なビジネスモデルでなくなりつつあるという認識の広がりが、背景としてあります。
LEからCEへの移行が急務
 LEに対し警鐘が鳴らされて久しく、その脱却を目指す取組みとして、3R(Reduce, Reuse, Recycle)が行われるようになりました。これは廃棄物の発生を前提としており、その管理に焦点があてられています。これに対して、CEは、製品の設計段階からReuseやRecycleを考慮し、製品の寿命を延ばしたり、廃棄物を原料として再生利用したりすることに重点がおかれています。最初から廃棄物を出さないことを前提にしているのが、3Rとの大きな違いです。企業はこうしたCEの取組みを通して、地球環境の保護と企業価値の向上を両立させ、持続可能な 社会を実現し、あらゆるステークホルダーの期待に応えていくことができるのです ※1。  CE推進の根底には、資源枯渇に対する危機意識があります。石炭、天然ガス、石油などの埋蔵年数はもとより限られています。にもかかわらず今後、2080年代半ば103億人のピークに達するまで世界人口は増加し続けると予測されています※2。CEが浸透しないまま、人口動態的に新興国をけん引役として、これまでの「大量に作って、使って、捨てる」LE型ビジネスモデルで国際経済が成長し続けると、資源枯渇のタイムラインが早まることは論を待たないでしょう。
日本企業にとってCEの重要性と中小企業の窮状
 資源小国の日本経済は、国際環境の変化に非常に脆弱です。近時のコロナ禍やロシア・ウクライナ戦争などでも、国際紛争の影響を受けやすい状況が浮き彫りになりました。こうした中、日本の企業にとって、限資源を「効率的、循環的」に有効利用」し、かつ「付加価値の最大化」を図り、「生産性を向上」させていくことは、先送りできない経営課題のひとつなのです。まさにCEの実現は生き残りをかけた取組みであり、次世代に美しい地球を残すための戦いでもあります。国際紛争の火種がくすぶり続け、資源保有国の自国主義の高まりも懸念される中、CEの重要性はますます高まっています。  とりわけ、影響を受けているのが、日本の中小企業です。資源の供給制約やサプライチェーンの混乱による高騰だけが直撃しているのではありません。足元では円安も追い打ちをかけ、輸入価格の高騰が、中小企業の窮境要因のひとつになっています。加えて、人手不足や、コロナ禍時の緊急融資の返済に伴う債務不履行など、複合的な要因により、リーマンショックを上回る勢いで倒産件数が増えています。このような環境変化に対して、ノウハウやケイパビリティをもったリソースに制約のある中小企業がCE課題に取り組む余裕は限られています。
中小企業のCE課題に対する包括的な政策支援の必要性
 経団連は、環境省、経産省と共同創設した循環経済パートナーシップ(J4CE:ジェイフォース)の「注目事例集」を2022年に発表しました※3。主に大企業を中心に啓蒙活動を行いながら、CEの取組みを浸透しつつあることがうかがえます。一方、大多数の中小企業において、CEに対する理解醸成や取組みは十分に進んでいるとはいえません。  CEは一企業単体ではなく社会全体の地球的な課題だからこそ、包括的な政策支援が重要です。例えば、CE対策補助金の拡充、オープンイノベーションによる代替資源や技術の開発のための産官学の連携強化、そしてビジネスマッチング促進などの仕組みなど今後は需要が増加すると見込まれます。実際、政府も本腰を入れ始めました。7月30日、CE実現へ向けて、初の閣僚会議が行われ、年内に政策パッケージを取りまとめる予定です※4。 こうした国や都道府県、市町村が関わる様々な政策支援が中小企業に浸透し、実効性を高めるためにも、中小企業診断士などの専門家によるファシリテーションの仕組みがより一層必要になってくるでしょう。
CEに有効なⅯ&A
 これからの中小企業経営では、世界規模で起こる環境変化に対し高い感度を持つ必要があります。既存の資源調達や輸入経路などのサプライチェーンを維持するだけでなく、変化に柔軟に対応し、ときには覚悟をもって対処することが重要です。  このような環境下で、M&Aは有効な手段の一つと言えます。個々の企業では解決できなかった問題を、M&Aを通して環境変化に対応するノウハウやケイパビリティをもったリソースや、効率的なサプライチェーンを獲得することで、解決の可能性が高まるからです。ただし、M&Aを実行しただけで全てが解決するわけではありません。その後の統合プロセス(PMI)が重要です。  特に、初めてM&Aを行う際には、成約ではなく成功・成長をする道筋をつけるためにも、PMIを計画的に遂行し ていくことが望まれます。それによって、M&A後における想定外のコスト負担を抑制する効果も見込めるからです。中小PMI支援センター株式会社では、多様な専門家の集団で組織されており、M&A戦略策定から実行支援、補助金支援、デューデリジェンス、PMI支援までワンストップで、顧客に合わせた支援を行っています。    問い合わせ先:中小PMI支援センター株式会社 コンサルタント    公認会計士・中小企業診断士 松田博司 e-mail:info@pmis.jp
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