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2024/07/01

「5S」に基づく文書情報管理の方法

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「5S」(※注釈)から考える文書情報管理
 前回の私のコラム(2月24日投稿)では、「文書『情報』管理」による自社の磨き上げについて説明させていただきました。 今回は、その具体的な手法やそのベースとなる考えについてお伝えできればと思います。  製造業の現場で「5S」という言葉を聞きます。「整理・整頓・清掃・清潔・躾」、頭文字のSをとって「5S」となります。生産性の向上を究極まで突き詰め、製造原価の低減に日々取り組まれている製造業で働く方も多いと思います。OECDの中でも労働生産性に関しては下から数えた方が早いと言われてきている日本ですが、製造業の現場では日々、QC活動など研鑽を積んでおります。私のお客様にも数多くいらっしゃいます。ただ、気になるのは意外にも生産現場に紙が多い実情です。生産指示書、生産日報、品質チェック表、出荷指示書などです。これらを「5S」により、日々整理しながらそれぞれの結果をシステム側へ入力しています。入力後、品質チェックやクレーム対応のため、ある一定期間、紙で保管されている企業も多いです。 一方で、以下のような考え方があります。米国の調査統計にある「ナムレコの統計」と呼ばれる調査に基づく考えです。業務上見る文書の99%が1年以内のものという調査結果です。  つまりよく見る文書は1年以内のもので、1年を超えた文書は100回に1回見るに過ぎないということを意味します。よって、1年経ったら捨ててしまっても問題ないという考えとなります。究極な考えで、私もこの統計結果を知った時は正直びっくりしました。しかし、ふと見まわしてみると自分の周りにある文書には、よく見返す文書とそうでもない文書に明らかに分かれます。皆さんはいかがでしょうか。
文書のライフサイクルに基づく文書管理
さて、「ナムレコの統計」はありますが、実際に「5S」に則って文書の管理をするには、文書情報のライフサイクルをどのように考えておけば良いでしょうか。一般的に文書情報のライフサイクルは、以下の通りとなります。  ① 作成・発生(入手) → ②処理 → ③保管 → ④保存 → ⑤廃棄  作成・発生(入手)や処理は、日頃の業務に携わる中でイメージが湧くかと思います。①作成・発生(入手)から③保管までを「100%活用期」、③保管から⑤廃棄までを「低活用期」と呼びます。そして③「保管」とは数か月から1年間ぐらいの参照頻度が高い期間が該当します。 「保管」は事務所で言うとデスクサイドのキャビネに入れているイメージです。「保管」から「保存」は、事務所から文書保存箱に入れて文書庫や倉庫に移す状態を意味します。そして、この「保管」から「保存」の際、「5割の文書を捨て、2割を事務所に、3割を文書庫へ移すことを目標とする」と言われております。私自身もですが、なかなかこのように割り切れないのが実情ではないでしょうか。  
ファイリングと「5S」
 では、どのようにしてこの文書情報のライフサイクルを回していけばよいでしょうか。1つ具体的な取組みとして「席替え」があります。  学生時代のような話ですが、この「席替え」がとても効果的です。1~2年を目途に、社内の席を変えると共に、机の中身も一度取り出し移動させます。もし各個人に割り振っているキャビネなどがあれば、そのキャビネの中身も移動させます。この席替えにより、机やキャビネの中の書類も一度取り出し移動することになり、その際に、「5割の文書を捨て、2割を事務所に、3割を文書庫へ移す」作業を行います。この時、複合機などがあれば、スキャンして紙文書を電子化するのもよいでしょう。電子化した書類(PDFなど)への名付けのルールも組織・企業として作成し、それにならえば、文書管理の属人化は避けられ、後々の検索の際など『探す時間』の削減が可能となります。  これらの作業を「ファイリング」といいます。ファイリングは、紙の保管でも、電子ファイルの保管でも構いません。まずは、組織・企業としてのルールを決め、それに則った「保管」、「保存」、「廃棄」のサイクルを回します。後々の検索の簡易性や再利用の効果を向上させるには、文書を電子化に統一し、一元管理していくこともひとつの手段となります。 また、「ファイリングシステム」の定義は、以下の通りとなります。  「組織体の維持発展のために必要な文書を、その組織体のものとして、必要に応じ即座に利用しうるように組織的に整理保管し、ついには廃棄に至る一連の制度のことである」(三沢 仁「五訂ファイリングシステム」日本経営協会総合研究所) さらに、 ・要らぬ文書は捨てる ・私物化させない ・すぐ出せる ・整理保管するだけではない ・捨てるところまでを管理する ・全社的な制度である としており、文書管理の基本的な考え方が含まれている。 (引用:「文書情報マネジメント概論」公益財団法人日本文書情報マネジメント協会 より、筆者一部再編)  これらがきちんと「5S」に則って管理できていれば良いと思います。文書の管理に基づき、紙の物理的な電子化、その電子化が定着し恩恵を得るよう、今のうちから習慣化し、組織・企業の文化として取り組んでみてはいかがでしょうか。  私自身も、最近、自宅で実行しています。自宅の本や書類の棚を「席替え」してみるだけで効果抜群です。簡単に言えば、「断捨離」ですが、文書の管理、またその管理を電子化することを組織・企業においてルールに則り、実施することで、『電子化の恩恵』を得ることができます。そして、電子化後にその文書を利活用することで、組織・企業にとっては業務の効率化・生産性の向上が実現できるでしょう。これが目標となります。           ※注釈:5Sとは 職場の管理の前提となる整理,整頓,清掃,清潔,しつけ(躾)について,日本語ローマ字表記で頭文字をとったもの。 備考 整理とは必要なものと不必要なものを区分し,不必要なものを片付けること。整頓とは,必要なものを必要なときにすぐに使用できるように,決められた場所に準備しておくこと。清掃とは必要なものについた異物を除去すること。清潔とは,整理・整頓・清掃が繰り返され,汚れのない状態を維持していること。しつけ(躾)とは,決めたことを必ずまもることをいう。(引用:日本産業規格JIS)           問い合わせ先:中小PMI支援センター株式会社 コンサルタント          中小企業診断士/文書情報管理士 森 彦明 e-mail:info@pmis.jp
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