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2024/07/29

事業承継と事業継続計画(BCP)

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事業継続計画(BCP)とは?
 事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)とは、中小企業庁 中小企業BCP策定運用指針によると「企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のこと。」となっています。BCPで最も重要なのは、中核事業を特定することです。そして、中核事業を復旧するために必要な資源や人員、時間などを特定することも重要です。その結果、企業価値の維持・向上に繋がります。  なお、介護事業所など、比較的小さく単一あるいは少数の事業を行っている事業者の場合、BCPを業務継続計画と訳す場合があります。事業継続よりも業務継続のほうがしっくりする場合があります。
BCP策定のプロセス
 BCPは以下の手順で策定します。 ■STEP1 BCP策定の目的設定  経営方針や経営理念を参考に、「事業を早急に復旧して取引先からの信用を守る」などの基本方針を決定します。BCP策定の目的を設定することにより、従業員がBCPを理解しやすくなります。 ■STEP2 重要業務の洗い出し  事業を継続するうえで最も優先する事業を中核事業として洗い出します。中核事業は「売上が大きい事業」「納期の遅延が発生すると影響が大きい事業」「継続する社会的要請が高い事業」などが挙げられます。単一の事業を行っている場合には、「自社が存続するために必要な業務」「社会的要請が高い業務」などになります。  人・もの・カネ・情報の経営資源が限られたなかで、それでも継続しなければならない事業・業務は何か、あるいは行わなくてよい事業・業務は何か、という方法で中核事業を洗い出すやり方もあります。 ■STEP3 リスクの洗い出しと優先順位付け  自社にとって起きたら困ることがリスクです。リスクの例としては地震・洪水・土石流・火災などの災害、新型コロナウイルスなどの感染症、システム障害やサイバー攻撃などがあります。事象の発生頻度と発生した場合の影響の大きさで、リスクの大きさを評価します。リスクの大きさで優先順位をつけ、優先順位の高い事象からBCPを策定します。 ■STEP4 実現可能な対応策の検討  災害などが発生し、事業の継続が困難になった場合に、どのような手順・方法により事業を復旧していくのかを検討します。限られた経営資源の範囲で中核事業を復旧することになるので、目標復旧時間までに復旧できないことが見込まれる場合には、耐震補強等の事前対策を検討・実施する必要があります。 ■STEP5 BCP発動基準や体制の整備  災害等が発生した場合には、自動的に非常時体制がとれるようにBCP発動基準を決めておく必要があります。BCPが発動された場合に、対策本部に参集する人員体制・役割を決めておくことも重要です。 自然災害では、震度5強以上の地震が発生した場合や、豪雨により警戒レベル3が発動された場合をBCP発動基準としていることが多いです。 ■STEP5 社内周知、訓練、見直し  BCPは策定して終わりではありません。社内に周知・共有し、いざというときに自発的に動けるようにしておく必要があります。そのためには日頃から訓練を実施することが重要です。訓練を行うことで、BCPの改善点が分かります。また、自社の状況の変化などもあるため、BCPの見直しが必要になります。定期的に訓練や見直しを行うようにします。
BCPの策定は事業承継に役立つ!
事業承継とBCPには多くの共通点があります。 1. 中核事業の洗い出し  BCPの策定では、中核事業の洗い出しを行いますが、その際に事業の強みや弱みを把握することができます。事業承継の際に、中核事業を優先的に承継し、重要でない事業は承継しないなどの判断にも活用できます。 2. リスク評価  BCP策定の過程でリスク評価を行いますが、承継後の事業に存在するリスクが明確になります。 3. 経営資源情報の把握  BCP策定の過程で人・もの・カネ・情報の経営資源を把握します。経営資源が明確になっていることにより、承継がスムーズに行われることが期待できます。 4. ステークホルダーへの信頼構築  BCPを策定することで、従業員や取引先などのステークホルダーに対して、企業の安定性と信頼性を示すことができます。     問い合わせ先:中小PMI支援センター株式会社 コンサルタント            中小企業診断士 髙橋祐治 e-mail:info@pmis.jp
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