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2024/06/17

中小企業のための人的資本経営戦略

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人的資本経営とは
 経済産業省によると、人的資本経営とは、「人材を『資本』として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方」です。今まで資本というと、機械や原材料、ノウハウなどが挙げられていましたが、この考え方では「人の持つ能力」を新たな資本として捉えます。  この背景には労働人口の減少や働き方改革があります。優秀な人材の確保は、企業の発展や継続に不可欠です。また、変化の激しい現代において、革新的なアイデアや効率的な問題解決能力を持つ社員が、新しい市場の開拓や発展に期待されています。優れた人材は、社外にも影響を及ぼし、顧客との良好な関係構築、企業ブランド価値の向上、そして企業のリスク発生防止にも寄与します。  人材にかける経費はコストではなく、投資と捉え、その効果を可視化するが重要です。人事部は、経営戦略と紐づけて考える必要があり、社員一人ひとりの知識、技能、経験などを評価し、これを戦略的に活用することが、企業の競争力向上に直結します。
大手企業が義務化された人的資本開示とは?
 人的資本開示とは、企業が保有する人的資本に関する情報を公開することです。具体的には、社員のスキルや経験、教育訓練の状況、労働環境などの情報を提供することが含まれます。これにより、ステークホルダーは企業の人的資本の状況を把握しやすくなり、企業の信頼性や透明性が向上します。  2023年3月期の有価証券報告書から、大企業では、人的資本の情報開示が義務化されました。開示項目には、男女間賃金格差、男性育児休業取得率、女性管理職比率などあります。中小企業は義務化されていませんが、既にホームページ上で公開している企業も増えており、これに対応することで、取引先や投資家からの評価を高めることができます。
中小企業の今後の予測
 今後、人的資本に関する情報開示の義務化が中小企業にも及ぶ可能性があります。そのため、今のうちから人的資本の管理と開示に向けた準備を進めることが重要です。人的資本を適切に管理し、開示することで、経営の透明性が向上し、事業の持続可能性が高まると予想されます。また、人的資本の強化は、企業全体の競争力を高め、優秀な人材の確保にもつながります。
事業承継時にありがちな失敗と、M&Aの留意点
 中小企業が人的資本経営を実践するためには以下のステップが必要です。  1.現状分析:自社の人的資本の現状を把握し、強みと弱みを明確にする  2.目標設定:人的資本の強化に向けた具体的な目標を設定する  3.戦略立案:目標達成のための具体的な戦略を策定し、実行計画を作成する。  4.情報開示の準備:必要なデータを収集し、適切な形式で開示するための準備を行う    事業承継やM&Aにおいて、人的資本の管理がおろそかになると多くの問題が発生することがあります。例えば、承継者が社員の能力やスキルを十分に理解していない場合、適切な人員配置ができず、業績の低下につながる可能性があります。また、創業者や周辺の高齢専門職が一度に退職することで、特定の人の暗黙知であったスキルやノウハウが継承できなくなる可能性もあります。  また、M&Aにおいては、人的資本の統合が重要な課題となります。文化の違いやコミュニケーションの不足が原因で、優秀な人材が流出するリスクもあります。これを防ぐためには、事前に人的資本に関する詳細な情報を開示し、適切なコミュニケーションを図ることが重要です。             問い合わせ先:中小PMI支援センター株式会社 コンサルタント                中小企業診断士 永田あゆみ e-mail:info@pmis.jp
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