PMI
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2024/04/01

PMIにおける信頼関係の構築

記載者情報
PMIにおける信頼関係構築はM&A成功の要です
ヒト・モノ・カネ・情報は大切な経営資源といわれています。M&Aで事業を取得する際も、ヒトは最も重要な経営資源です。しかしながらM&Aは秘密保持の観点から、M&Aに関わる情報が経営者、仲介者など、かなり限られた方だけで進められるのが一般的です。目の前にある法的、財務的、契約、金額等の課題をこなすだけで、経営陣には相当の負担です。 M&AのクロージングはM&Aで最も重要なPMIのスタートの筈ですが、最も重要な経営資源である「ヒト」に対する準備が十分でないまま、「ヒト」対応の負担が現場に突然課される事があるようです。準備が不十分なまま譲渡側従業員との信頼関係が築けず、M&Aが思った成果を上げられない事例は、「中小PMIガイドライン」にも記載されています。その為、M&A後のPMIが始まる前に信頼関係を構築について予め準備して置く必要があります。
言葉の重要性
転勤や、転職された方は多く経験していると思いますが、組織が異なると使う言葉が違う事が多くあります。転勤や転職であれば、新しい組織に来た方が、そこで使われている分からない言葉に慣れるしか方法がありません。しかし、M&Aの場合は、異なる組織が融合します。また「買収された側」、「買収した側」のように支配される側、支配する側のような意識が働く場合もあるため、特に気を付ける必要があります。 譲受側はとしては、M&Aを成功させたいという熱意を、譲渡側に伝える事が重要ですが、相手は必ずしも譲受側とコミュニケーションしたいとは思っていない事を理解する必要があります。最も重要な事は、相手の理解出来る言葉で話すという事です。業界や会社が違うと、なにげなく使っている言葉が、一般的に使われているのか、業界用語なのか、社内だけで通用する用語なのか、中にいる方々は分からない事があります。 特に譲渡側の方は、譲受側が話す会話の中に分からない言葉があっても、誰も質問しません。もともとコミュニケーションしたいと思っていない上に、質問する事は自分の弱みを見せる事になるからです。従って譲受側の方が話す際は、相手の表情を見つつ、しっかりと理解している事を確認しながら、話す必要があります。もし言葉が通じていないと、いくらこの会社を良くしたいという気持ちがあっても、その気持ちが空回りするだけでなく、分からない言葉を話す別世界の人になってしまいます。 話が理解されていなければ、話す側にとっても大きな無駄ですし、聴いている側にとっても同じです。言葉の微妙な違いについても神経質になる必要があります。言葉は企業の文化でもありますので、譲受側が自分の言葉と譲渡側の言葉の違いを理解しないと、それだけで、「上から目線で話す人」と誤解される恐れがあり得ます。「上から目線」な態度は徹底的に嫌われます お互いの言葉の違いを重視し、言葉の定義を明確にする等の努力は譲受側にしか出来ません。
あるべき姿を明文化し、人材を育成する
属人化しているオペレーションを、標準化する事も重要です。あるべき姿に向けたルール作りを現場で決め、標準化を推進します。標準化を推進する事で、言葉も標準化します。また属人的オペレーションが少なくなります。ルールが決まったら、社長も社員も協力会社も決めたルールに従います。 ルールの下、社員も協力会社も平等であり、正しいかどうかは、全てルールによって決定します。人材育成はこのルールに基づいて行います。何を教えるかも標準化し、社員の育成は会社全体の責任で行います。ルールで不都合があれば、PDCAを実践し、ルールを変えていきます。こうすることで、譲渡側も譲受側も同じルールに従う事になるので、上下関係はなくなります。 ルール化し、オペレーションを見える化する事で、それが組織の目に見えない資産となっていきます。ルールを作る事が目的化してしまう事も良くあるので、注意が必要です。常に実際に読んでみて理解できる事を確認する等、教育も含め、ルールの徹底を維持する体制を構築する事が重要です。
価値観の相互理解(褒める事の難しさと重要性)
褒める事も大変重要です。しかし、ポイント外れな誉め言葉は自分が分かっていない事を露呈する事になるので、褒める時には相手が一番褒めて貰いたい点を具体的に褒めなくてはなりません。その為には現場の価値観なり、現場の仕組みを聞いておく必要があります。 会社の中にある価値観こそ企業文化だと思います。個々の会社が大切にしてきた事をしっかりと理解する事が重要です。商品の扱い方、取引先への対応などもありますが、もっと身近な事、例えば「挨拶」も重要な価値観だと思います。挨拶が定着している会社であれば「朝挨拶しなかったこと」は大きな問題ですし、挨拶が定着していない会社であれば、挨拶をしなくても大した問題ではありません。 全ての事柄に於いて、「何をすれば褒められるか」を共有する事がとても重要です。その結果、社員は上長から指示を出されなくても自ら動くようになります。しかし、少しでも不安な事象をみたら、直ぐに逆戻りします。これは本当に難しいですし、同じこと繰り返し言い続けるしかありません。特に幹部の方は、譲渡側社員に常に見られている事を一瞬たりとも忘れてはなりません。言っている事とやっている事が異なってしまうと、今迄言ってきた事が一瞬にして無駄になってしまいます。 何の為に仕事をするのかをお互いに共有する事が大切です。自分の意見を言う事が褒められる会社であれば社員は常に考え、自分の意見を言うようになるでしょうし、意見を言えば上長から怒られる会社は、社員は言われた事しかやらなくなります。何をすれば褒められるか、個々人が確信を持てないと、上からの指示を待つようになります。それが一番安全だからです。 現場の事は現場が一番知っていますので、「何をすれば現場が良くなるか」は現場が一番知っています。普段から仕事について考えている人の話に声に耳を傾ければ、建設的な意見が必ず出てきます。このように意見を言って下さる方は大変頼りになります。最近「心理的安全性」という言葉を良く聴きますが、「この会社は何を言っても良い」と社員が心から思えるようにするのが一番大切です。 問い合わせ先:中小PMI支援センター株式会社 コンサルタント 中小企業診断士 菱田州男 e-mail:info@pmis.jp
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