M&A
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2021/08/19

令和3年4月に開始された、株式対価M&A促進税制

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自社株を対価とするM&Aについて、課税繰延措置を新設
令和3年度税制改正において、企業の機動的な事業再構築を促し、競争力の維持・強化を図る観点から、自社株式を対価として、対象会社株主から対象会社株式を取得するM&Aについて、対象会社株主の譲渡損益に対する課税を繰り延べる措置が新設された。 背景には、令和元年12月4日に行われた会社法の改正が絡んでいる。この改正により、株式交付制度が新設された。 改正前の会社法においても、自社の株式を対価として他の会社を子会社とする手段として、株式交換制度があったが、完全子会社とする場合でなければ利用することができなかった。 新設された株式交付制度なら、完全子会社とすることを予定していない場合であっても利用することができる。 株式交付制度を使えば、他の株式会社(被買収会社)を子会社化しようとする株式会社(買収会社)は、被買収会社の株主から被買収会社の株式を譲り受け、その譲渡した株主に対して、対価として買収会社の株式を交付することで、円滑にその被買収会社を子会社とすることができるようになる。
現金が20%以下なら、対価の一部に現金が入っていてもOK
上記の会社法改正で創設された株式交付制度を利用した場合、被買収会社の株主については、自分が保有している被買収会社の株式を買収会社に譲渡することになるため、現在の税制では、株主が法人なら法人税が、個人なら譲渡所得が課税されることになる。 制度の普及を図るためには、税制面での対応が必要となるため、令和3年度税制改正において、株式交付をした時点ではなく、その後、実際に買収会社の株式を売却した時まで課税を繰り延べる制度が新設された。 具体的には、会社法の株式交付により、その有する株式を譲渡し、株式交付親会社の株式等の交付を受けた場合には、その譲渡した株式の譲渡損益の計上を繰り延べることとされた(法人も個人も同様)。 この制度は事前認定が不要で、事前手続きが一切必要ないほか、恒久的措置として定められたので、適用期限もない。 対価の一部に現金を用いている場合については、対価として交付を受けた資産の価額のうち株式交付親会社の株式の価額が80%以上である場合に課税繰延を認め、株式交付親会社の株式以外の資産の交付を受けた場合には、株式交付親会社の株式に対応する部分の譲渡損益の計上を繰り延べることとされた。 なお、申告の際には、株式交付親会社の確定申告書の添付書類に株式交付計画書及び株式交付に係る明細書を添付するとともに、その明細書に株式交付により交付した資産の数又は価額の算定の根拠を明らかにする事項を記載した書類を添付することとされている。 この話が経営者・資産家の皆様のお役に立つことができれば幸いです。 ※上記は執筆現在(2021.6.22)での情報ですので、今後の動向により変更される可能性がありますので、ご注意ください。
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