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2021/08/10

個人M&A失敗の要因⑦/ブランディング

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個人M&A失敗の要因⑦/ブランディング
 M&Aでは、小規模なものから大規模なものまで、実は多くの買収企業の社長が「M&Aは失敗した」と感じているのが現状です。  失敗の原因は様々ですが、本章では特に、個人M&Aでの中小企業の買収で失敗する要因と思われる内容について、7回に分けてご紹介します。  個人M&A失敗要因の7つめは、中小企業は「ブランディング」を意識している経営者がほとんどいないことです。  もともと大企業と中小企業ではブランド力に大きな差があり、このブランド力の差は、販売力などの経営力に大きな差となります。  「ブランド」や「ブランディング」という言葉は曖昧で、コンサルタントでもこれらを正確に理解している人は少ないのが現状です。  そのため多くの人が「ブランド」と聞いてイメージすることは、ブランド力の高い企業名や商品名という場合が多いのではないでしょうか。  例えば、アップルやアマゾン、フェラーリ、シャネルなどです。  そのため、ブランドとは、会社名や店舗名、商品名そのものであり、大企業や有名企業の話で、中小企業には関係ないと考える人が多くいます。  しかし社名や商品名自体がブランドではありません。  また、ブランディングとは、デザインを洗練させることだと考えている人が多いかもしれません。  実際にブランドコンサルティングを行っているのはデザイナーが多く、そのコンサルティングの中身は、単にカタログや各種ツール、会社のロゴや商品のデザインを再構築することが多いのが現状です。  しかしブランディングとは、デザインを洗練させることではありません。  まず「ブランド」とは、顧客が、その会社や商品・サービスに対して思い浮かべる「価値イメージ」です。  つまり顧客や消費者が、会社名や商品名を見聞きして、そこからイメージするものです。  例えば、アップルと聞いてイメージするのは「革新的」「おしゃれ」「高機能」「世界屈指の優良企業」などと思いますが、これこそがブランドなのです。  そして「ブランディング」とは、会社のブランド力をつける活動のことです。  具体的には、企業の価値を高め、価値の高い商品を提供すること、そしてターゲット顧客に対して価値を発信し続けて浸透させるという経営活動全般を指します。  単に商品やツールのデザインを構築することではないのです。  中小企業は大企業のように、低価格で勝負することはできません。  大企業は、大量仕入や、最新の設備やシステムを導入することで、人手のかからない高い生産性を実現し、低コストで高付加価値な製品を大量生産することができます。  しかし中小の製造業は、大企業のように低コストで生産することはできません。  小売でも、大企業のように大量に低コストで仕入れることができません。  そのため中小企業は、低価格で勝負しても大企業にはまったく歯が立たず、十分な利益を獲得することができません。  そのような中、多くの中小企業は、何とか売上を確保するために値段を下げて大企業と勝負しているのが現状です。  しかしそれでは利益が確保できず、売上高は増えても利益が減り、業績は悪化する一方です。  昨今の日本の市場は、モノや情報が溢れ、便利なモノやおいしい料理が安価で手に入る時代になりました。  そのため、消費者のニーズは多様化し、多くの業界が成熟し、良いモノをより安く購入できるようになりました。  さらに新型コロナウィルスによる影響ですべてがリモートで完結する世の中になりつつあり、人件費等のコストが下がってますます低価格化が進む状況です。  このような市場環境においては、中小企業が売上のボリュームを追求するのは困難です。  そのためターゲットを絞り込み、絞り込んだ顧客のニーズに応えられるような、差別化された商品を提供していかなければ生き残れません。  つまり、少量しか売れない中小企業は、量を売って利益の「額」を稼ぐのではなく、少ない量でも一定の利益額を稼ぐために、利益の「率」、つまり高利益率で勝負するしかありません。  しかし、大企業と同じような商品では、消費者は安価な商品を選ぶため、徹底した差別化を図ることで自社のブランドを確立することが重要になります。  その差別化がブランドとして認知されることで、大企業よりも高額であっても顧客に選んでもらえるのです。  そのためには、「他社と異なる特徴のあるもの」で、かつ「顧客に受け入れられるもの」を販売するしかありません。  この2つを満たすものが「価値」であり、自社の持つこの価値が顧客に浸透している状態こそが「ブランド」なのです。  つまり、中小企業の生きる道は、お客様自らが自社を選ぶようになるための自社ブランドを確立し、しっかりと利益を出す体質にすることなのです。
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