M&A
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2021/05/12

ビジネスデューデリジェンスの意義

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ビジネスデューデリジェンスの意義
 ビジネスデューデリジェンス(以下ビジネスDD)とは、コンサルタントが企業を調査・分析し、その企業の事業のありのままの現状をあぶり出して、今後のあり方を示した「事業調査報告書」を作成することをいいます。  この調査報告書は、その企業の経営状態や業務遂行状況を、経営・組織・営業・製造・店舗など、様々な視点から分析し、見える化した上で、今後の企業の方向性や施策などをまとめたものになります。  ですから、ビジネスDDという名称にはなっていますが、「企業を調査して、報告書にまとめる」という意味では、従来のコンサルティング手法とほとんど変わりません。  ただ、調査対象となる企業が「M&Aの売却側」や「再生企業」であるという違いだけです。  再生企業とは、業績が悪化して赤字が続き、資金繰りが厳しく、銀行に対して約定通りの返済(銀行からの借入金に対する、毎月決まった額の元金と利息の返済)が困難な状況に陥った企業のことです。  このビジネスDDは、M&A以外では、事業再生コンサルティングの世界でもよく実施されるもので、事業再生の場合、再生企業を通常の企業に再生させるための調査を行うのがビジネスDDです。  そしてM&Aと事業再生コンサルティングとでは、その調査方法と報告書の中身は大きく異なる訳ではありません。  ただし、いわゆる一般的に実施されるコンサルティングのものとは多少異なってきます。  異なる点は、調査開始から報告書作成まで、短い期間で実施する必要があるということです。  M&Aや事業再生コンサルティングにおけるビジネスDDでは、依頼主はそれほど多くのコストをかけることができません。  一般的なコンサルティングのような、ビジネスDDだけで数百万円もかけて実施するものではありません。  そのため、短期間で報告書を作り上げる必要があるのです。  そしてもう1つは、具体的な「答え」が必要であることです。  一般のコンサルティングでは、調査・分析が主体となり、どの市場がねらい目かといった方向性を示せばよいだけで、具体的な施策まで求められるケースはほとんどありません。  一方でM&Aや事業再生コンサルティングの場合は、買手側で売手企業の様々な問題を解決し、強みを活かした施策を実施して成長させるための具体的施策が必要になります。  つまり、M&Aや事業再生のビジネスDDは、短期間で低コストで実施しつつ、詳細に分析を行って企業の問題点や強みを見出し、問題の解決策や、強みを活かした成長戦略および施策という「答え」を見出さなければならないのです。  しかし現状は、ビジネスDDを行ってもほとんど「分析(あるいは情報の整理)」止まりで、明確な「答え」がない、あるいはビジネスDDを実施しないで、事業計画書を作成する場合が多いのが現状です。  その場合、事業の中身をふまえず「数値ありき」となってしまいます。  そのため、M&Aでは買収後に想定外の問題が多発し、後から「M&Aは失敗だった」という結末に陥ることが多く発生しているのです。  また事業再生では、事業計画で示した売上や利益を達成できないケースが多発しているのです。  多くの中小企業では、社長自身も、自社の問題点や強みを理解していないケースが非常に多いのが現状です。  そのため、短時間であっても詳細に分析を行い、社長も気づいていないような問題点と強みをしっかりと見出すことが必要になるのです。
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