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2021/07/20

個人M&A失敗の要因⑤/業績未把握、PDCA未構築

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個人M&A失敗の要因⑤/業績未把握、PDCA未構築
 M&Aでは、小規模なものから大規模なものまで、実は多くの買収企業の社長が「M&Aは失敗した」と感じているのが現状です。  失敗の原因は様々ですが、本章では特に、個人M&Aでの中小企業の買収で失敗する要因と思われる内容について、7回に分けてご紹介します。  個人M&A失敗要因の5つめは、社長自身が業績を把握しておらず、経営のPDCAが回せていないことです。  業績を把握するためには、年に一度作成される決算書があります。  決算書とは中小企業の場合、PL(損益計算書)とBS(貸借対照表)の2つです。  ちなみに決算書にはもう一つCF(キャッシュフロー計算書)がありますが、CFは大企業では作成されますが中小企業では通常作成されません。  中小企業で資金状況を確認する場合は、CFではなく資金繰り表が使われます。  PLは、どの程度儲かっているかという収益状況を表すものです。  またBSは、会社の財産と、その財産を得るための資金の出所を表すものです。  このPLとBSで、一年間の経営成績を確認することができ、次年度の経営戦略の構築や事業計画を策定するためのベースになるため、経営者にとっては極めて重要です。  しかし、この決算書をしっかりと振り返ることをしない経営者が以外と多く、経営の基本となるPDCAが回せていません。  PDCAとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(検証)、Action(改善行動)の頭文字を取ったもので、経営状況を振り返り、問題があれば改善する、ということを繰り返すものです。  つまり、日々発生する様々な課題をタイムリーに改善し、価値向上や生産性向上を図って価値を高めていくものです。  これは経営に限った事ではなく、工場の製造現場や、個人の成長でも使われるものです。  経営でPDCAを回す場合、まずは数値で現状把握をします。  そしてもし数値が悪化している場合、なぜ悪化したかの原因を究明するために、現場で発生している現状を把握し、現場での問題点、そしてその原因を究明します。  そしてその上で、改善策を構築し、即座に改善施策を実行に移していくのです。  これを繰り返すことで、より良い経営が実現し、業績が上向いていくのです。  つまり、業績の悪化や低迷の原因は現場にあるため、「問題点(数値)の発見→原因(現場)の究明→改善行動(現場)」を繰り返せば、業績はおのずと良くなるのです。  そのため、よりよい経営を行っていくには、PDCAを回すことが大切なのです。  なお、期中で業績の状況を把握するためには「試算表」を活用します。  試算表とは月次のPLとBSのことです。試算表で各月と、その月までの累計の業績を把握し、実績だけでなく、前年同月比や計画比で状況を把握します。  年間通してではなく、試算表で期中の毎月の業績をチェックすることも、経営者にとっては必要不可欠です。  そして毎月の経営会議で、試算表を見てPDCAを回していき、タイムリーに現場の問題点を改善しながら業績向上を図っていくのです。  しかしながら、試算表を作成しない中小企業も多いのが現状です。  そのため、もし事業を運営する中で問題があり、それが原因で業績が悪化しても、期中でその問題を振り返ることが難しくなります。  その結果、問題を抱えたまま事業を運営し続けることになり、それが積み重なって多くの問題を抱えるようになり、事業価値の低下や赤字額の増加につながっていくのです。
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