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2021/07/12

個人M&A失敗の要因②/中小企業の実態と経営手法の知識不足

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個人M&A失敗の要因②/中小企業の実態と経営手法の知識不足
 M&Aでは、小規模なものから大規模なものまで、実は多くの買収企業の社長が「M&Aは失敗した」と感じているのが現状です。  失敗の原因は様々ですが、本章では特に、個人M&Aでの中小企業の買収で失敗する要因と思われる内容について、7回に分けてご紹介します。  個人M&A失敗要因の2つめは、中小企業の実態とその経営手法を知らずに経営を行うことです。  大企業と中小企業の違いについて以前のブログでご紹介しましたが、大企業で普通にできるようなことが、中小企業ではスムーズにできないことが多くあります。  それを知らずに、大企業の管理者と同じ感覚で中小企業の経営を行ってしまうと、経営者の思い描いた通りに現場が機能しないことが多々発生します。  例えば、大企業では経営幹部が各々の事業の戦略を構築し、具体的な戦術については担当者に任されます。  具体的に何をするかというアクションレベルの話は担当者が考えてくれます。  しかし中小企業では社長自身が戦略だけでなく、具体的なアクションの戦術まで構築しなければ現場は動きません。  社長が新たな戦略や方針を打ち出して声高に発信しても、現場のスタッフは従来通り目の前の仕事をこなすだけです。  そのため、社長自身が全体設計を行って戦略を構築するだけでなく、具体的戦術という詳細設計まである程度構築する必要が出てくるのです。  また、組織体制も脆弱なため、管理機能や統制が十分ではありません。  そのため、各部門の管理や統制の業務まで、管理者ではなく社長が自ら行わなければならないこともあります。  例えば、社長が各部門の管理者に指示を出しても、管理者自身が一従業員として業務を行う場合も多いため、情報が現場まで届きません。  社長自身が現場にまで情報を伝えなければ、現場に方針を徹底することは難しくなります。  また、各部門の現場で何か問題が発生しても、その部門の管理者が責任をもって対応することなく放置されるケースもあります。  その他、組織図上は機能別の組織体制となっていますが、組織の役割が徹底されておらず、各部門の管理者自身も現場の一作業員でしかないこともあるため、各部門で問題を解決できない場合も多くあります。  いくら管理者に「この部門を取りまとめるのはあなたですよ」と言っても、管理者自身に自分が管理者であるという自覚がなく、管理の経験もないため、すぐに変わることはありません。  さらに、業務自体が属人的で、業務ルーチンが確立していない場合もあります。  例えば、ルーチン業務の中で一人の従業員しか実施できない業務です。  これは、OJTが行われていない事以外に、その従業員が自分の居場所を確保するため、他人に業務を教えようとしないケースこともあるのです。  そうすると、その従業員が休暇を取ったらその業務が滞ってしまいますし、一人しかできない業務がボトルネックとなって生産性を低下させてしまいます。  そのような中でも、部門の管理者は、その従業員に改善指示を出しません。  社長も現場の細かいところまで見ていないため、現場の様々な問題が解決されずに長年放置されているのです。  このように、中小企業の社長の役割は非常に大きく、中小企業の実態や、社長自ら現場改善に取り組むという意識がないと、これらの問題に対処できないケースが出てきてしまいます。
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