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2021/06/14

弁理士による知財価値評価のポイント①~事業との関係性、説得力のある理屈

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弁理士による知財価値評価のポイント①~事業との関係性、説得力のある理屈
以前、受講した「弁理士による知財価値評価のポイント」の研修の講師が以下のように言われていました。 「弁理士に期待される知財価値評価業務の本質とは、従来からある鑑定業務(侵害か否か、特許性があるか否か等に対する専門家としての意見)に加えて、事業との関係性をより意識した判断をすることである」 「価値評価は1つの見解であるのに対して、価格設定は合意による約束である」(R.ラズガイティス著「アーリーステージ知財の価値評価と価格設定」中央経済社) 「価値評価に際しては、絶対的に正しいことを行なわなければならないという強迫観念を持つことが多いが、価値評価も従来の鑑定と同様に個人による見解の1つに過ぎない、と柔軟に捉えるべきである」 しかしだからと言って、この見解を以て知財価値評価の結果に対する逃げの理由になってはいけないと思います。客観的に導き出した1つの見解・鑑定としての一貫したストーリーと理屈が必要だということを肝に銘じておかなければなりません。 実際に、知財訴訟を担当する或る裁判官は、「判決文で言及した最終的な金銭的価格が『えいやっ』だということは分かっているが、対象となる特許の内容に基づいて説得力のある理屈を構築した上で、それを数値にどう反映したかというストーリーが欲しい。」と仰ってました。非常に共感するものがあります。 また、価値評価レポート(鑑定書)の読み手や依頼者が誰なのか、M&Aの売り手や買い手なのか、金融機関の融資担当者(決裁者)なのか、中小企業の社長なのか、投資家なのか、裁判官なのか、税務署職員なのか、知財の知識に長けているのか疎いのか、また依頼者がどこまでのレベルの深堀りを求めているのか等々、各々の状況に応じてストーリー展開や理屈の深度や裏付け情報の量・質も変わってきます。 知財価値評価業務は、我々弁理士以外にも公認会計士や不動産鑑定士や税理士らも行っていますが、夫々の専門分野・得意分野の違いから、弁理士以外の者が知的財産権の中身にまで立ち入って周辺技術と対象特許との関係、対象知財(特許権や商標権など)と事業性との関係にまで立ち入って評価することは難しいと思われます。だからこそ知財専門家たる弁理士ならではの、知財価値評価への付加価値というものが存在し、これが弁理士による知財価値評価のアドバンテージになるということです。貸借対照表などには載っていない知財価値評価については、弁理士が主体のチームでやるべきであると考えます。 世の中に期待され、その期待に十分応えられるような知財価値評価を提供できるように、私たちもこの業務の有用性を外部に発信し続けていきます。 以上
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